6172.日米首脳会談で



菅首相が訪米して、バイデン大統領と首脳会談をしたが、6月までに
はワクチン大量確保は出来ないが、9月までには供給するという。こ
れで、ワクチン接種の優先順位を変えれば、五輪開催は可能になっ
た。それを検討する。津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、2020年2月12日29,568ドルまで上昇が、コロナで3月23日
18,591ドルまで急落し、2021年4月9日は33,800ドルの最高額更新で
、12日は55ドル安の33,745ドル、13日は68ドル安の33,677ドル、14
日は53ドル高の33,730ドル、15日は305ドル高の34,035ドル、16日は
164ドル高の34,200ドル。

4月15,16日には、NYダウは3万4千ドル越えの最高額を更新した。こ
の上昇は、コロナワクチン接種が進み、経済環境が良くなっている
ことと、10年国債金利が1.6%割れで安定した上に、企業決算が良い
ことによる。

株価が上昇するので、資金が債券から株に大量にシフトして、需給
が拡大して、より株価が高くなり、より高くなると、ファンドも個
人もそれに従い買っていることで、より強くなっている。企業業績
も良いが、それ以上に株価が高くなっている。

このため、ヘッジファンドも株価が高いので、空売りを仕掛けたい
が、踏み上げに合う心配があり、できないでいる。空売り比率も、
小さいことになっているし、株価が上昇しているのに、出来高は少
ない。

債券を売って株にシフトしていると、債券価格が下落して金利上昇
になるはずが、債券価格が下落したことで、日本の保険会社が大量
に米国債を買っているので、金利も上昇せずに、むしろ下がってい
る。それに伴い、ドルを買うので、ドル高にシフトした。110円寸前
から108円までドル高円安になっている。

1.日本の状況
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日経平均株価は、2018年10月02日24,270円で、コロナで2020年3月19
日に16,358円まで下げ、2021年2月16日に30,467円と高値更新し、
4月9日は29,764円で、12日は229円安の29,538円、13日は212円高の
29,751円、14日は130円安の29,620円、15日は21円高の29,642円、16
日は40円高の29,683円。

日経平均は一進一退であり、29,500円と29,800円のレンジで上下し
ている。三角持ち合いの展開で、今後上に抜けると期待したいが、
菅首相の訪米の結果では、下になる可能性もある。

それと、日本全体でコロナ再拡大で、再度、緊急事態宣言の発令に
なる可能性もあり、今期決算も当初期待したほどには良くならない
と、株価を押さえている。しかし、菅首相の訪米の結果待ちや企業
決算発表前で、様子見になっている。このため、売買代金が4月16日
には2兆円割れになった。

ということで、菅首相の訪米で、ワクチンを大量短期に確保して、
景気回復という期待も大きい。しかし、4月19日以降、期待外れで下
落もある。

期待値通りであれば、上昇する。ワクチン接種率が低いので、積極
的に日本へ投資するファンドもなくなりつつある。このため、ワク
チンの供給が一番の問題となっている。

2.ワクチンの大量早期供給は無くなった。
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大阪、兵庫、宮城で、4月5日に「まん延防止等重点措置」が発令さ
れ、4月12日から東京、沖縄、京都にも発令され、そして4月20日か
らは神奈川、千葉、埼玉と愛知にも発令されることになった。

福岡も近日中に、「まん延防止等重点措置」を要請するという。全
国的なコロナ第4波になってきた。

大阪は1日の感染者数が1000人を越えて、緊急事態宣言の発令を政府
に要請する事態になっている。東京の小池知事も緊急事態宣言の発
令を視野に検討しているという。

第4波は、英国型コロナ変異種が多くなり、既存疾患もない40歳代で
も重症化していることと10歳未満の子供も感染していることが気が
かりである。ブラジル型変異種では、乳幼児もコロナで死亡してい
ると、ブラジルからの報道もあり、全年齢で注意が必要になってい
るようだ。

5月には緊急事態宣言を東京も出すことになる。65歳以上にワクチ
ンを接種しても、それより若い働き盛りの人たちが重症化するので
、ワクチンを選手は勿論、大会関係者全員に接種しないと、五輪開
催は無理になる。そのワクチンを手にいれられるかどうかで、開催
ができるか、どうかが決まる。

しかし、菅首相は、ファイザーのアルバート・ブーラCEOとの直
接交渉予定が、電話での交渉しかできずに、そして、ファイザーの
CEOは、コロナワクチンは、年1回以上の接種が必要だとして、米国
工場分は、米国国民分の供給しかできないが、増産して9月には供給
できるとした。

このため、バイデン大統領とハリス副大統領ともに、五輪開催を支
持するとしたが、米ホワイトハウスは、東京五輪に選手を派遣する
かどうかは、情勢も見て決めるとしたし、バイデン大統領が訪日す
るかどうかも保留とした。

ファイザーのワクチンの6月までに大量供給はないことが、このこと
からも明らかになった。6月までの分を、五輪選手や大会関係者に回
すなどの組み換えが必要になっている。

バイデン米大統領との共同記者会見でも、米メディアが菅首相に東
京五輪開催について、ワクチン接種が進んでいないことを念頭に「
公衆衛生の観点から日本は五輪の準備ができていない段階で進める
のは無責任ではないか」と質問したが、これを無視した。

選手や大会関係者優先と言う決断を菅首相ができないなら、五輪開
催は無理になる。それも早期の決断が必要になっている。東京五輪
までの時間が迫っているからだ。

3.日米首脳会談と世界情勢
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菅首相が訪米して、日米同盟強化と日本の役割拡大で、その見返り
に大量のワクチン供給を期待したが、どうも半分期待外れだったよ
うである。

昼食会、晩さん会や歓迎会もない素っ気ない訪米であり、両首脳だ
けの20分のハンバーガー昼食会のみであった。

その日米首脳会談で菅首相は、「台湾海峡の平和と安定の重要性を
改めて確認した」とした。バイデン氏は「とても生産的な議論がで
きた。日米同盟、共通の安全保障への強固な支援を確認した」と語
った。

というように、台湾有事では、日本も米国と共に行動することにな
り、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念
を共有するとはしたが、中国に共同して経済面や人権で制裁を行う
という文言は、米国が6月までにワクチン大量供給をできないことで
なくなったようだ。

ということで、台湾有事に日本が出動する見返りに、沖縄県・尖閣
諸島への日米安全保障条約第5条の適用を改めて確認したということ
である。そして、ワクチンの9月までの供給という成果で訪米を終
えた。来年4月までと言うより、半年以上前倒しになった。この経過
で衆議院選挙が戦えると見て、解散を述べたのであろう。これは評
価が微妙になっている。

5Gの共同開発と、知的財産権保護を行うとしただけで、中国への
輸出を止めるような文言もない。経済的な締め付けもない。

議会の「2021年の戦略的競争法」とバイデン政権の対中政策で
は、大きく違うことも確認できた。特に経済政策では、バイデン政
権はハイテク分野だけに焦点が当たり、それ以外の分野では、中国
との経済関係を止めることはないようである。

この日米首脳会談中に、米国はケリー特使を中国に送り、米国は対
中政策では、それほどには強硬策に出ないと説明したようである。

中国が、近隣諸国への軍事的な圧力を強めているので、軍事的な面
での対抗処置を取るだけである。特に心配なのが、台湾海峡での挑
発行動であるので、これを日米で共同して抑止することになったと
いうことである。

駐米中国大使館は、日米首脳共同声明について「強烈な不満と断固
とした反対を表明する」と発表したが、中国本土での声明がない。
思っていたほど、日米の対中強硬策がないことを確認したからだ。

逆に、台湾外交部は、日米首脳が共同声明に「台湾海峡の平和と安
定の重要性」を明記したことに「心からの感謝」を表明した。

特に重要なのが、台湾を守ることは、TSMC(台湾セミコンダク
ター)を守ることであり、TSMCが世界の半導体生産の半数を占
め、主要な米先端IT企業の半導体のほとんどを生産しているので、
米国の最先端分野を守ることでもあるのだ。

その対抗として、中国はTSMCの技術者を100名引き抜いて、中国での
半導体生産を強化することと、台湾に攻撃を仕掛けることで、米軍
を台湾に括り付けて、他の地域を取る可能性が出ている。特に中東
から米軍が撤退するので、中東に手を出している。イランやサウジ
との関係を強化している。

イランは、ナタンズのウラン濃縮施設をイスラエルからサイバー攻
撃されて、その施設が壊れていないと、ウラン濃縮を60%まで行うと
宣言した。それと同時に、イスラエルの自動車運搬船を攻撃した。

一方、中東から引き上げる米軍を引き留めるために、イスラエルは
イラン核関連施設にサイバー攻撃して緊張を高めたが、施設は健在
でウラン濃縮ができると、イランは米国を核合意へ復帰させ、経済
制裁を解除させたい。中東でのつばぜり合いが起きている。

米国から見捨てられた中東は、力の真空地帯になり、スンニ派サウ
ジ+イスラエルとシーア派イランの生き残りを掛けた戦争になる危
険性も増したようだ。サウジが米国の求めに応じて、石油の増産を
したのも、米国の軍事支援を引き続き得るためだ。

もう1つが、ロシアがウクライナ南部国境付近に、全軍の1/3に当た
る8万のロシア軍を派遣して、紛争拡大を嗾けている。米軍が東欧
には来れないという見極めがあるからだと見る。

その意味では、中露が一体的に行動をしている。

このため、ウクライナ大統領は、NATOに支援を要請して、NATO軍も
ウクライナに軍隊を派遣することで合意した。また、米軍も黒海に
2隻の艦艇を派遣して、情報を収集するようだ。

もう1つが、米国が外交官追放などの対ロ制裁を発動した。これに
対して、ロシアも報復の外交官追放の対米制裁を発動したが、米ロ
の報復合戦につながる恐れもある。

そしてアジアでは、ミャンマーの軍事クーデターで、欧米は、少数
民族を含めた民主派統一政府を設立させて、そこを支援することに
なるが、中国は対抗上、軍を支援することになりそうである。ここ
でも米中の代理戦争に発展する方向で、泥沼になったシリア内戦と
同じような展開になりそうである。

このように、外交や軍事面で、日米欧対中露の全世界的な紛争拡大
になっていく様相である。まるで第2次大戦前の様相になってきた。

さあ、どうなりますか?



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