6171.米中対立の緩和



米中の対立緩和の志向が出てきている。その背景として、米中共に
バブル崩壊の兆候が出てきた。それを検討する。津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、2020年2月12日29,568ドルまで上昇が、コロナで3月23日
18,591ドルまで急落し、2021年3月29日は33,171ドルで最高額更新、
4月1日は33,153ドルで、5日は373ドル高の33,527ドル、6日は96ドル
安の33,430ドル、7日は16ドル高の33,446ドル、8日は57ドル高の
33,503ドル、9日は297ドル高の33,800ドル。

4月5,8,9日と連日、NYダウは最高額を更新した。この上昇はバイデ
ン米大統領は8年間で2.3兆ドル規模をあてるインフラ投資計画を発
表したことであるが、もう1つが、長期金利上昇が一服しているこ
とによる。

その上に、FOMCでは、長期に量的緩和を続けるとして、市場の懸念
を払拭していることも大きい。そのため、またもや、ゴルディロッ
クス相場と言う声も出ている。

しかし、そうするとアルケゴス・キャピタル・マネージメントが破
綻したように、行き過ぎたレバレッジで破綻する個人資産投資オフ
ィスが出てくることが予想できる。この防止をする必要になってい
る。

特に個人資産管理を行う1万社もあるファミリー・オフィスはレバ
レッジなどの規制を受けていないので、この破綻を防ぐ規制強化が
必要になっている。破綻すると金融機関が貸出した資金の回収がで
きずに金融危機になる可能性がある。

このため、イエレン財務長官は、規制当局の体制強化を行い始めて
いるし、規制強化の議論を始めた。FRBも金融機関のSLRの緩和を3月
末で停止した。このように量的緩和と財政出動は積極的に行うが、
過剰投資への規制強化を行い、バブル崩壊を防ぐようである。

SPAC(空箱会社)についても、新規上場数を上げるために考えられ
た手法であるが、そのSPACも行き過ぎには規制が必要であり、規制
と上場促進のバランスを取る必要になっている。

もう1つ、米国債の金利を押さえる方向で、特に短期金利の高騰が
バブル崩壊の起点になるので、押さえるようである。

しかし、規制強化時に、レバレッジを過度に掛けている複数のファ
ミリー・オフィスの株式売却で、それもブロック取引での売りで株
価を大きく下げることに注意が必要である。

このようなことから、将来の株価下落を見越して、どこかのファン
ドが、VIX指数25以上での大規模CALLオプションをブロック取引した
。少し大きめの下落が起きると見越したことになる。しかし、同じ
ファンドがVIX指数40以上のCALLオプションを同数分売っているので
、大暴落はないと見越しているようだ。

それも理解可能な市場環境になったということだ。少し不安がある
ので、最高値更新にもかかわらず、出来高の少ない市場にもなって
きた。

もう1つが、法人税を21%から28%へ増税するとしたが、企業との話
し合いで25%へ税率を縮小するという。

そして、「宮崎正弘の国際情勢」によると、中国人民銀行は3月22日
に大手銀行24行に対して、「与信枠を増やさず、2020年のレベルに
保ち、貸出しをおさえろ」とする通達を出した。

2020年のローン合計は19兆6000億元(3兆ドル)で、2021年は、すで
に最初の2ヶ月で4.7兆元を貸し出しており、前年同期比の11%増と
なっている。

もし、2021年の与信枠が前年同様のレベルにおさえられると、過去
15年間で最低の与信枠増となり、この通達が遵守されると、熱狂に
沸いてきた不動産投資、株式投資への与信枠が限定される。つまり
中国経済を牽引してきた両輪が破壊されることになる。

このように、中国のバブル崩壊が起きる可能性が高い。コロナ危機
で、民間企業は金を借りたいが、これもできないことになる。民間
企業潰しでもある。

このため、資金枯渇で、中国でのサッカーリーグのチーム閉鎖が続
発している。どうも中国のバブル崩壊が近いようである。そして、
米国もバブル崩壊が近い。どちらかのバブル崩壊が起きても、日本
は大きな影響を受けることになる。

1.日本の状況
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日経平均株価は、2018年10月02日24,270円で、コロナで2020年3月19
日に16,358円まで下げ、2021年2月16日に30,467円と高値更新し、
4月2日は29,854円で、5日は235円高の30,089円、6日は392円安の
29,696円、7日は34円高の29,730円、8日は21円安の29,708円、9日は
59円安の29,764円。

日経平均は一進一退であり、かつ2月16日30,467円、3月18日30,216
円、4月5日30,089円と山のピークが下がってきた。この状況を見る
と三尊天井(トリプルトップ)の完成と見えてしまう。ここから当
分、下がる方向になる。長期基調は上昇方向のままであるが、短期
方向は下げになっている。

循環物色で、バリュー株からグロース株に戻り、全てが高い状態で
今は方向感がない展開になっている。このため、横バイになってい
る。

もう1つが、コロナ再拡大で、コロナ影響業種での下落があること
と、多くの企業の今期決算が悪いので、次期決算予想が大幅上昇で
ないと、買えないと、企業決算発表前の利食いが出ている。

期待は、菅首相の訪米で、ワクチンを大量短期に確保して、景気回
復期待を煽れるかどうかに掛かっている。このため、4月19日以降、
上昇する可能性もある。勿論、期待外れであると下落する。

期待値通りであれば、1週間程度は上昇するでしょうが、米国の第
2のアルケゴスが出てくる可能性がある。徐々に市場の行き過ぎを修
正する動きで、株価は安定しないような気がする。米政府が規制強
化して、一時的に膿を出さないと、この状況ではバブル崩壊が何時
か起きることになる。

まるで、リーマンショック時の住宅バブル崩壊の場面の再来のよう
に見える。あの時2007年8月7日、仏金融大手BNPパリバが、「米サブ
プライム問題により、3つのファンドの価格の算出、募集、償還を
一時的に停止する」と発表した。この一見小さな事件は、サブプラ
イム問題の顕在化の一歩だったことを思い出すからである。そして
、2008年9月15日に、リーマン・ブラザーズが破綻する。1年前から
兆候があったのである。

2.「まん延防止等重点措置」が東京にも発令
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大阪、兵庫、宮城で、4月5日に「まん延防止等重点措置」が発令さ
れたが、とうとう4月12日から5月11日まで東京、沖縄、京都にも発
令されることになった。

前回のコラムで5月にも東京で「まん延防止」を発令されるとしたが
、非常に早く発令されることになった。

65歳以上の高齢者に6月末までに接種を完了するとしたが、医療関係
者への接種は大きく後れている。まだ380万人の医療関係者が接種を
受けていない。

この状態では変異種が流行して、40歳以上が重症化して、10歳未満
の子供たちにも感染拡大するので、6月には緊急事態宣言を出すこと
になる。65歳以上にワクチンを接種しても、それより若い働き盛り
の人たちが重症化するので、五輪開催は無理になる。

しかし、菅首相は、4月16日に訪米してバンデン大統領との会談で、
そこで、どれだけ早期にワクチンの大量供給を受けられるかで、五
輪開催可能の目が出てくる。

医療関係者、65歳以上の高齢者、オリパラ選手、五輪関係者全員へ
の接種が6月末までに可能な量の供給を受けられれば、そして、接種
に必要な医者や看護師、歯科医師などの手配ができれば、なんとか
開催に漕ぎ着ける可能性も出てくる。もし、供給がないなら、五輪
開催を諦めるしかない。

大量補給になったら、五輪後の選挙では、自民党は負けない。この
菅首相の訪米は、日本の大きな分岐点でもある。

しかし、この見返りを米国は要求してくる。この要求レベルも相当
に高いような気がする。

3.米中の対立緩和の方向
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米中対立が激しくなり、経済関係も途切れるのではないかと心配し
ていたが、政権内部には中国に進出した金融投資機関の関係者多数
がいて、その上にケリー元国務長官が気候問題担当特使でいて、中
国の要人とのパイプを通じて、中国と対話をしているようである。

もう1つが、米大手金融投資機関が中国の200万人以上の都市に支店
を持ち、中国企業と米国企業の橋渡しをしている。その中にはゴー
ルドマンサックスもあり、米中の経済的な関係を切ることができな
い。

勿論、ハイテク企業への制裁が行われているが、米国企業も中国の
400万人以上もいる中国の中産階級の顧客を失うことは死活問題にな
っている。中国市場への米製品は、中国で作る方向であり、米中の
経済的なデカップリングはあり得ないような状況だ。

今は、議会で経済対策を審議しているので、共和党に配慮して、米
中対立を煽っているが、経済対策が議会を通過したら、政権として
も中国政策の見直しを行うようである。その頃には、ケリー特使と
中国要人との妥協点が明確化して、雰囲気が和らぐことになる。

勿論、日本企業も中国市場が大きく、その市場を失うことはできな
い。ユニクロの柳井社長も、人権問題ではノーコメントとして、中
国市場から排除されないようにしている。米国もハイテク製品の工
場の中国進出を阻止するが、衣料・食料などの日用品での進出は、
米国も止めないようである。米国企業が盛んに進出しているのに、
日本企業だけダメとも言えないからである。

このため、米バイデン政権も、軍部や習近平主席排除であり、中国
国民や中国共産党とは友好な関係を続けるとしている。どうも、中
国の金融危機を米金融投資機関も予測して、準備しているのかもし
れない。中国要人も金融危機を見越して、米国との関係正常化を目
指しているようである。金融危機時に米国の支援が必要になるから
である。

しかし、習近平の指示下で中国軍は、近隣諸国への軍事的な圧力を
強めている。特に心配なのが、台湾海峡での挑発行動であり、偶発
的な事態で戦争になることも考えられる。習近平は、バブル崩壊で
金融危機になったら、戦争で事態を収拾しようとしているにも見え
る。

というように、中国共産党内部で分裂が起きている。権力闘争が起
きている気配を感じる。

米国は台湾防衛をコミットしていないが、米軍は台湾からの要請が
あれば、軍事行動をとることになる。ここは心配な点ではある。

この法的根拠を準備している。米上院外交委員会は中国の影響力拡
大に対抗するため、人権の促進や同盟国の国家安全保障への支援を
基軸とする「2021年の戦略的競争法」の法案を準備し審議に附
した。一連の外交的、戦略的対策の権限を付与する内容だ。

このため、日本にもミサイルなどの攻撃用兵器整備と攻撃できる法
体系を要求されることになる。もう1つが、戦争時の代替のサプラ
イチェーンの構築が必要になっている。

サプライチェーンの構築の中心は半導体であり、そのための「デジ
タル技術貿易同盟」の構築が必要になり、その構成メンバーはEU、
日本、台湾、そしてFIVE EYES(米・英・加・豪・ニュージーランド
)諸国で、韓国は外された。

韓国は、中国ファーウェイの5G機器を引き続き使用することで中国
寄りと見なされ、韓国に米国は生産設備を頼れない。そして、この
生産設備の中心は、日本と台湾と言うことになる。

よって、日本への期待が大きい。日本の復活が必要になっている。
この復活に必要なことは、大幅な円安政策であり、米国にはコスト
が一銭もかからない。このため、バイデン大統領は最初に会談する
のを日本にしたのである。中国は米国債を買わないので、日本によ
り多くの米国債を買ってもらう必要もある。

1990年からの円高で日本企業を空洞化させて衰退させ、今後は、円
安で日本企業を復活するということである。日本での生産コストが
中国より低くなる。

現在でもアニメションなどの制作コストは、中国より日本の方が安
いが、それが全般に渡ることになる。そのため、労働力不足が起き
るが、AIとロボットでカバーすることになる。人口減少が日本復活
に大きくかかわることになる。

もう1つが、日本企業の米国工場の建設である。米中偶発戦争でも
日本は戦争の最前線になるので、工場などが操業できなくなる心配
がある。このため、米国工場を必要とするのである。

さあ、どうなりますか?



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