6168.魚道よ、16年間ご苦労様でした



魚道よ、16年間ご苦労様でした。
       琵琶湖湖西 喜撰川での魚道の試み
          令和3年(2021)3月20日(土)
                 「地球に謙虚に運動」代表 
              びわこ自然環境ネットワーク 会員
                         仲津 英治

 去る令和3年(2021)3月14日(日)、琵琶湖の西側の比良山中よ
り発する小河川、喜撰川の下流に設けた魚道の撤去作業を行ないま
した。

  この魚道は木製で魚の遡上を妨げる約1.3■位ある段差の用水堰
に設けられたもので、最初に平成17年(2005)5月27日(金)、NPO法人
びわこ自然環境ネットワーク&みどりのNPO他団体のメンバー等によ
って仮設されました。河川管理者の滋賀県の許可は同年6月7日まで
だったので、同4日に撤去されましたが、魚道を構成する7段の木箱
には鮎二匹が確認されていました。そこで本格的魚道設置に向かう
ことができました。その設置から撤去に至る経緯を下記に述べます。

琵琶湖の河川と用水堰

 琵琶湖には大小400本の河川が流れ込んでいます。ほぼ日本全国に
共通する事ですが、それら河川には利水&用水用のダムあるいは堰
がほぼ設置されています。湖西を流れる喜撰川には例として高さ1.3CM
位の用水堰が設けられており、琵琶湖から上って1番目の堰です。高
さ30CM位の段差なら、鮎のような小魚でも飛び越えられます。私も見
かけました。

 しかし用水堰は成人の胸に近い高さがあり、魚は遡上できません。
この堰は田んぼに水を引くために貯水するもので、その上流側には
水を田畑に導く穴が土手に開けられています。     

 鮎は遡上する習性を持っている魚で、初夏に川を上って成長し、
秋に川を下って下流域で産卵します。従って高い堰があれば、繁殖
できないことになります。そこでびわこ自然環境ネットワーク
(代表 寺川庄蔵氏)などのメンバーが集まって、木箱で7段の魚道
を設置したのです。平成18年(2006)3月26日のことです。

 この魚道には水が流れ込んでくれましたが、木箱間の水面には20
センチ程の段差があり、魚の遡上数はそう多くありませんでした。
そこで木箱間に斜めの滑り板を設置し、さらに最下段の箱では水流
を直角に振っていたのですが、直線化したところ、鮎などが多く登
ってくれるようになったのです。
 当時、鮎が魚道を登るシーンを見た時は、感激もひとしおでした。    
 
 喜撰川は1級河川であり、管理者は滋賀県なので、魚道を設けるに
は滋賀県の許可を得る必要があります。びわこ自然環境ネットワー
クの名前で許可を得、二年毎に更新されました。場所はJR湖西線和
邇駅の北方です。
 魚は鮎を筆頭に毎年数千匹が遡上してくれ、平成21年(2009)の7月
に魚道の傍らに群れる鮎の黒っぽい魚影を見掛けました。

 魚道は、プロの大工並みの腕を持っているメンバーの一人西村さん
の手でネジ釘などを使ってしっかと組み立てられ(材料は杉板)、
予期していた以上に長持ちしました。もちろん途中で何度か補修し
ました。

 しかし台風等の豪雨の時は、人間の頭ほどある石が上流から流れ
て来て、魚道の木箱の底が抜けたり、斜め板が壊されたりすること
が結構ありました。そこでこの段階で我々としては補修回復困難と
判断しました。
 そして寺川氏の友人の坂田さんが(大津みどりのNPO会員 以前)
自らのユニックを操作して魚道の木箱を持ち上げ、トラックに積ん
で、寺川氏の山林へ運び込んでくれました。

 遡上が確認できた魚は鮎を筆頭にニゴイ、アマゴ&ナマズなどで
す。他にも多種の魚が遡上し、繁殖したはずですが、専門家ではな
い、私どもには判りません。
 しかし、16年間の長きに渡って、生態系の回復に貢献してくれた
魚道でした。
 
以上、お付き合い、有難うございました。


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