6165.平時対応で東京五輪を開催できるのか?



コロナワクチン獲得競争で負け、その上にワクチン認可を遅らす日
本に世界の指導者たちは唖然としている。その状況を検討したい。
                     津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、2020年2月12日29,568ドルまで上昇が、コロナで3月23日
18,591ドルまで急落し、2021年2月24日はの31,961ドルで最高値にな
り、26日は30,932ドルで、3月1日は603ドル高の31,535ドル、2日は
143ドル安の31,391ドル、3日は121ドル安の31,270ドル、4日は345
ドル安の30,924ドル、5日は572ドル高の31,496ドル。

4日のWSJインタビューで、パウエルFRB議長は、ツイストオペ(短期
国債を売り、長期国債を同額買う操作)や長期米国債の買い付けに
言及することもなく終えた。このため、市場は催促相場になり、金
利を1.55%まで上昇させ、株価を345ドル安にした。

パウエルFRB議長は、コロナ後を見据えて、金融政策の正常化の筋道
をつけて退任しようとしているようだ。FRBの資産は去年の7倍まで
増加しているので、正常化させる必要がある。

米国経済は、企業収益が過去最高に2021年にはなる予想なので、年
内には金利2%になる可能性がある。穀物価格やコモディティなどの
価格も上昇している。

市場は金融相場持続を望むが、FRBは業績相場に移行させようとして
いる。そのため、市場が金利低下を催促するために癇癪を起してい
る。この市場の要求をパウエル議長は見ぬふりをしている。

バイデン政権のイエレン財務長官は、財政政策で大量の資金を国民
に配るために大量の国債が発行するので、金利は上昇する。

しかし、FRBは短期国債を買うが長期国債を買う金融緩和はしないよ
うである。このため、30年国債の暴落で金利上昇はすごいことにな
っている。10年国債もパウエル議長は買わないようである。このた
め、当然10年国債の金利も上昇してくる。

逆に5日は572ドル高となったが、雇用統計で雇用が予想20万人増よ
り多い37.9万人も増えた。金利は1.5%まで上昇したが、雇用者数が
伸びたことと、もう1つ、上院が1.9兆ドルのコロナ経済対策法案を
修正し民主党議員の造反を抑えた。これを受けて株価は上昇した。
事実6日には上院を通過した。月内には1人最大1400ドル(約15万円)
の現金給付が行われる。

給付には条件があり、現金給付は年収7万5000ドル以上は減額し、8
万ドル以上は支給対象外とした。

このため、当分、株価は持ち直すはずで、上昇もあり得る。ナスダ
ックも大きな下げから上昇基調になる。

しかし、民主党政権の目的は、貧富の差を解消することであり、ウ
ォール街の都合を考えない。コロナ後には法人税を上げ、株式取引
税を増税する方向であり、景気回復で業績相場に市場をシフトしな
いと、大幅な株価の見直しや銘柄選定の見直しをする必要になる。

市場が金融相場から業績相場に乗り換えることが必要であるが、そ
れの移行期には、大きな波乱がありそうである。

このため、まだボラの高い状態は続くとみる。

1.日本の状況
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日経平均株価は、2018年10月02日24,270円で、コロナで2020年3月19
日に16,358円まで下げ、2021年2月16日に30,467円と高値更新し、
26日は28,966円で、3月1日は697円高の29,663円、2日は255円安の
29,408円、3日は150円高の29,559円、4日は628円安の28,930円、5日
は65円安の28,864円。

5日の株価28,864円は、先週の2月末の28,966円より安い値で引けた。
しかし、5日午後に黒田日銀総裁は、長期金利を抑制すると述べると
ともに、日銀ETF買いが入り600円超安から65円安に戻した。黒田プ
ットにより、日本株は大幅な下落を免れた。

しかし、日本企業3Qの決算は20%程度の上方修正になり、PERも22倍
から18倍程度になったはずであるが、株価は軟調な状態になってい
る。

このため、日銀は株価が高い状態でもETF買入れを行うとした。しか
し、TOPIXの下落0.5%で買入れしていたが、どうも1%下落でしか買入
れをしないようだ。

このため、買入れ回数は減り、小さな下落では買入れをしない。2月
26日の下げと3月5日の下げで買入れをしたが、3月2日の255円下げで
は買入れをしなかった。下落原因は、個人も海外投資家も売越にな
っているからである。

このため、まだ、NYダウに当分上昇になり、その後また不安定な状態
になるが、日経平均株価は大きな急落はないようだ。

2.五輪開催するなら、緊急的な実行あるのみ
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「P0651.ワクチン敗戦で五輪を開催する条件は?」で五輪を行うた
めには、緊急事態宣言を五輪前まで必要と述べたが、政府と東京都
は、述べたとおりのことをするようである。

1都3県は、2週間の緊急事態宣言延長になった。5月連休明けまで
緊急事態宣言を継続という話も出ているという。

東京五輪を開催するなら、五輪直前まで感染者数を低くしておく必
要があり、スレージ3になることが宣言解除に条件であったが、そ
れを延長したことで解除の基準がわからなくなっている。

尾身会長も、菅首相の方針に対する説明に、東京は特殊という説明
で切り抜けるしかないようであり、この説明であると、解除条件が
ないことになってしまった。

「P0651.ワクチン敗戦で五輪を開催する条件は?」で述べたワクチ
ン調達で、英国のジョンソン首相は、日本の菅首相が五輪開催を
G7首脳会議で宣言した時、それに対して強力に支援するとしたが
、開催のためにワクチン接種を進めるはずが、アストラゼネカのワ
クチンの製造販売承認を2月に厚生労働省に申請したが、3月にな
っても認可されないために、英国も日本を見切ってしまった。

7月までにワクチンを国民全員に接種してから五輪を開くしかない
ので、ワクチンに対して特別認可をしないと間に合わない。このた
め、ジョンソン首相は、日本が特別な緊急認可をすると思ったはず
である。しかし、日本は、五輪開催のために、特別処置を取らない
ことが判明した。

アストラゼネカのワクチンは、1億2000万回分の供給合意しており、
うち3000万回分は3月中に輸出することになっていた。しかし、イ
タリア工場からの出荷をEUが阻止しているので、この確保もでき
ない状態になる。というより、日本がワクチンの認可をしないこと
で、EUも日本への配慮が必要なくなっている。

五輪開催に対しての特別な処置をしない日本に対して、世界の指導
者たちは、大きな違和感を抱いてしまったようである。五輪をやり
たいという意思とその準備のための実行に大きな溝がある。

このため、米国もEUも英国も、ワクチン接種をしない日本に選手
を派遣できないと思い始めている。ワクチン確保競争に負け、次に
コロナ感染症との戦いで戦時対応をしている欧米と違い、平時の対
応でワクチン認可行政で認可の遅れをきたす日本を世界も唖然とし
てしまったようである。

ことばと実行が大きく違うことになっている。菅首相の実行力がな
いことが一目瞭然の状態で、菅首相が何がしたいのかわからないと
世界の指導者は思ってしまった。

このため、徐々に欧米諸国は、今のままでは選手を日本に派遣でき
ないと打診してきた。このため、下村政調会長も「主力国の選手が
大量に来られない場合は国際オリンピック委員会も考えざるを得な
いだろう」と中止の可能性に言及した。

もう1つ、東京五輪組織委員会の武藤事務総長も、選手村の関係で
、五輪の再延期は不可能とした。

というように、ワクチン接種を平時モードで行う日本の対応に疑問
符が付き、欧米、特に米国では選手の派遣を見送ることが明確化し
ている。五輪の大スポンサーは米国のテレビ局であり、この資金が
なくなるなら、五輪開催はできない。

東京五輪に選手を派遣しないなら、半年後の北京五輪にも選手を派
遣しないことが必要になり、中国の人権問題を理由に派遣拒否とい
う話になっている。先に東京五輪への派遣中止で、日本には派遣し
ないで、半年後の中国に派遣するのは、おかしいという議論になっ
ているようである。

さあ、どうなりますか?



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