6164.バイデンの政策=(トランプの政策+オバマの政策)/2



米バイデン政権の政策が徐々に固まってきたようである。このバイ
デン政権の政策を見て、日本の今後の政策を考えたいと思う。 
                         津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇が、コロナで3月23日18,591
ドルまで急落し、2021年2月16日は31,522ドルの過去最高値になり、
19日は31,494ドルで、22日は27ドル高の31,521ドル、23日は15ドル
高の31,537ドル、24日は424ドル高の31,961ドル、25日は559ドル安
の31,402ドル、26日は469ドル安の30,932ドル。

NYダウは、2月24日に過去最高値になったが、週後半に、米10年債の
長期金利が1.61%に上昇したことを受けて、大幅な下げになっている
。長期金利は住宅ローン・自動車ローンの金利になるので、金利上
昇のスピードが速いと景気を冷やすと株は下落することになる。

それとハイテク企業は多額の社債を発行しているので、今後に金利
の上昇不安があると、下落スピードが速い。このため、ナスダック
の下げがきつかった。

30年債の下落もすごいことになっている。債券も株も金も下落して
いる。上がっているのは銅、食料などだ。分散投資でも、この下げ
をカバーできないことになっている。全部上げの反動で、今度は全
部下げの局面になっている。

その中でも、10年債金利は、市場行動を決める手掛かりになるので
、重要である。1.5%が節目であり、それを超えたので株価は調整局
面に入った。

将来期待価値は、現在価値に(1+金利)を年数乗した値を掛ける
ので、金利がゼロなら、現在価値が将来価値であり、将来期待値が
高いと判断できるなら、将来に期待して企業の現在の株を買えるが
、金利が上がると、将来期待値の水準が上がり、判断しないと買え
ないことになる。このため、現在の株価は下落する。

次の節目は10年債金利が1.75%になった時で、この1.75%は、米国企
業の株配当利回りの平均であり、この金利以上になると、安全資産
である債券に資金が移動することになる。

この原因は、景気回復期待による商品価格の高騰でインフレになる
と思われたことと、1.9兆ドル追加経済対策で大量の国債発行がある
との懸念から国債の売りが出て、国債価格が下落して、このことか
ら金利が上昇した。

これに対して、パウエルFRB議長は金融緩和を継続するとしか言わな
いので、国債下落が続くと懸念されて、株価の下落が止まらない。
金利上昇では、2013年のテーパー・タントラムの暴落を思い出す。
テーパリングが早期に実施されるとの観測で株価が暴落したことで
、その懸念を市場は感じているようだ。

FRBが、日銀と同じようなイールドカーブ・コントロールをするまで
、米国債売りが止まらず、株価の下落が続くことになる。市場がYCC
を要求するために、金利上昇と株価下落を続けるからである。

しかし、金利が上昇すると、日本などの機関投資家が米国債を買う
ので、一時的には金利が下降しドル高円安になるが、そのうちに一
層の金利上昇を狙い待つようになる。

このため、パウエルFRB議長は、金利低下したことで様子見をするが
、その内、再度金利上昇になる。このため、どこまで金利上昇を容
認するのかである。YCCを言わなくても、金利上昇を抑えるために10
年国債の大量買い付けを行うと言えば、金利上昇も止まる。この発
言を、いつするのかでしょうね。市場はその発言を待っている。

景気は良くなって、小売売上高の伸びも大きく、原油を中心とした
資源価格の上昇も起きている。銅が急上昇して、食料価格や海上運
賃も上昇して、商品価格の全面的な上昇が起きている。

しかし、26日は、足元の相場下落を受けて投資家の慎重姿勢が強ま
り、持ち高調整や利益確定目的の売りが優勢となったことで、NYダ
ウが下落した一方、国債価格の下落で値ごろ感からの買いが入り、
米長期金利が1.4%まで下落して、高PERのハイテク株には買いが入っ
たことで、ナスダックは上昇した。

1.日本の状況
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日経平均株価は、2018年10月02日24,270円で、コロナで2020年3月19
日に16,358円まで下げ、2021年2月16日に30,467円で高値更新し、
19日は30,017円で、22日は138円高の30,156円、24日は484円安の
29,671円、25日は496円高の30,168円、26日は1202円安の28,966円。

米国の長期金利上昇で、日経平均も2万9千円を割り込んだ。26日に
は、日銀は501億円のETF買い入れを行ったが、大きく下落した。

米国金利上昇で、ドル円も106円前半までドル高円安になっている。

どこまで下がるのか、株価動向を見るにはエリオット波動分析しか
ない。この分析では、3月中旬までに2万8千円近くまで下がる可能性
があるようだ。高山緑星氏も同様なことを言っていた。

宮田直彦氏も、28,500円前後まで落ちる可能性を言っていたと思う
が、この原稿を書くために調べたが、動画がなくなっていた。どち
らにしても、下げの波動になり大きな調整ではあるが、2万円を割れ
ることはないと思う。そして、宮田氏は、2040年まで日本株は長期
上昇の軌道にあるとも言っている。

28,400円にサポートラインがあるので、そこまでは下がる可能性が
高いようである。

そして、いつ終わるかというと、パウエルFRB議長が10年国債を大量
に買い入れて、長期金利を抑えるような発言をした時である。それ
をいつ言うかでしょうね。それまでは、ボラティリティの高い状態
が続くことになる。

バブル崩壊と騒ぐ評論家がいるが、バブル崩壊は金利上昇で、2%以
上に早いスピードでならない限り、つぶれない。今までのバブル崩
壊は、政府が意図的に金利を早いスピードで上げたときと、大手銀
行を倒産させた時である。

しかし、バブル崩壊は経済的なダメージが大きいと、数回のバブル
崩壊で分かったので、意図的にはつぶさない。特に今回のバブルは
中央銀行バブルであり、このバブル退治は長期のインフレ政策でし
か収拾できないとみる。

米長期金利上昇で、一時的な株価下落はあり得るが、30%以上も株下
落するバブル崩壊ではない。しかし、米国民主党左派が騒ぐとバブ
ル潰しが起きる可能性もあり、米国政治には注意が必要である。

2.バイデン政権の政策
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バイデン大統領は、16日に中西部ウィスコンシン州ミルウォーキー
で主催した対話集会に出席し、新疆ウイグル自治区や香港での人権
弾圧、台湾への脅迫について、「文化的に国ごとの異なる規範があ
る」と発言し、中国の暴走を容認するかのような発言をした。

この発言と同期を合わせて、アメリカ国防総省のカービー報道官は
「尖閣諸島の主権について明確に日本を支持する」と述べたことに
ついて、アメリカ政府の立場に変更はないとして、自らの発言を訂
正した。つまり、尖閣に関する米政府の公式見解は従来通り「日本
の施政下」として、主権の存在を明確化していない。

この裏を調べていたら「新X論文」があり、この論文は米国の元外交
官・政府関係者が書いた匿名論文である。
2021年02月26日『「新X論文」:長期的な対中戦略の必要性』の松川
るい氏のコラムから該当部分を借りたが、
「中国共産党ではなく習近平が強権的拡張主義な中国の問題の本質
。したがって、共産党政権打倒ではなく、習近平降板又は習近平に
策をより協調的に変更させることを米国の戦略目標とすべし。

そのための手段として、中国内政に習近平に批判的なエリート達に
影響を与えるべし。「2013年までの中国」に戻れば米国は中国と協
調して共存できる。

実現のための手段として、米国自身の力を回復し、かつ、米国の同
盟国・パートナー国と連携して経済的、政治的な中国依存を減らし
、軍事的にはレッドラインを明確にして中国の行動を抑止する。こ
れを何十年か続ければ達成される。」と。

というように、どうもp0648のコラムで述べた「是々非々」の
内容の具体的な政策は、このようなことになりそうである。

ということで、先のバイデン大統領の発言も、対中国では、あまり
厳しくしない方向のようである。そこがトランプ前政権とは違う。

オバマ政権に近い印象でもある。敵対的になりすぎて戦争もできな
いために、中国との間合いをどう取るのかが問題視されているので
ある。

しかし、イラクの米軍拠点を狙った先週15日のロケット弾攻撃への
報復として、シリアで親イラン武装勢力への空爆を行い、軍事力を
使う方向のようである。中国へのけん制でもあると見る。台湾や南
シナ海、東シナ海でレッドラインを越えたら、軍事力の使用もする
ということであろう。

一方、国内政策では、トランプ前政権が導入した米国永住権(グリ
ーンカード)の発給停止措置を解除した。メキシコ国境沿いの「壁
」建設停止や、不法移民の市民権取得に道を開く関連法案の提出な
ど、バイデン政権と民主党は厳しい移民規制からの政策転換する。

中国の人口減少で今後、GDPの伸びが鈍化する方向であり、米国も、
コロナで都市部の人口減少になり、移民規制を排除して人口増加を
維持するようである。これにより、経済規模の逆転を防ぎたいので
ある。

金融業界への規制緩和でも、トランプ前政権の金融規制改革法(ド
ッド・フランク法)の影響緩和を図る取組みを無効化して、金融証
券機関の規制を強化した。証券取引などの規制を強化する方向であ
り、その一環であろう。

1.9兆ドルの追加経済対策は、下院を通過して上院に送られた。今後
上院での審議になる。上院は共和党と民主党が50対50であり、民主
党の議員に造反が出ると通らないが、順調に行けば3月中旬には議
会と通ることになるが、規模が大きいと共和党や一部民主党議員か
らの反対も強い。

もう1つが、最低賃金を時間給7.25ドルから15ドルへ引き上げると
いう。企業経営を圧迫してしまい、150万人規模の失業者が出るとも
言われている。

そして、これらのために、大幅な財政赤字になるので、どこかで富
裕層への増税が必要になる。法人税の増税も必要であり、これによ
り最低賃金UPと合わせて。企業業績が落ちてしまう危険性もある。

この政策で貧富の差を埋めるというが、失業者が増える問題を引き
起こすことになる。民主党左派の政策を見ると韓国の文大統領の政
策との共通性があるようだ。貧困解消が、より一層の貧困を生み出
すことになる。

コロナ対策でも、米国は死者数が50万人を超えたものの、感染拡大
の転換点にあるようだ。新規感染は1カ月前に比べ半分程度に減り
、死者数も減少傾向にある。

マスク着用でも、ワシントン大学保健指標評価研究所によれば、全
米での着用率が77%と過去最高に達して、ワクチン配布に関しても
、全成人の接種に十分なワクチンを7月末までに確保できるとした
。コロナ時代に最も安全な国ランキングでも米国は8位に上昇してい
る。ここでは成果が出ている。

そして、バイデン米政権が基幹産業を支える重要部材のサプライチ
ェーン見直し、半導体やレアアースなど4品目で中国に依存しない
調達体制を築く。日豪など同盟国の企業との連携も模索するとした。

バイデン大統領は、半導体・高容量電池・医薬品・重要鉱物――に
ついて供給網の問題点と対応策を検討するよう求める大統領令に署
名し、重点的に取り組む4品目は「米国の競争力を維持・強化する
のに必要不可欠だ」と指摘した。

逆に、一方でトランプ前政権の対中政策を引き継ぐのようだ。国家
安全保障の脅威になるテクノロジー関連のビジネス取引について、
商務省に禁止する権限を付与する内容で、トランプ政権下の昨年11
月に提案されていた。米国のサプライチェーン(供給網)の安全確
保を目指す広範な取り組みの一環。

しかし、バイデン政権はテクノロジーに関する対中政策を全般的に
見直す中、この規定の発効は先送りされるとみられていたが、その
まま行うようである。

そして、トランプ氏の大統領令に基づき、NY証券取引所は、中国石
油大手の中国海洋石油(CNOOC)の上場廃止手続きに入ると発表した
。3月9日から取引停止される。

というように経済的な面では自立する方向で、かつ中国の強化を助
けないような施策になっている。

そして、トランプ政権時代の対中経済協定は、守ることを要求して
いる。

その上に、バイデン米大統領が「中間層のための外交」という今ま
での民主党とは異質の外交方針を打ち出した。過度な対外関与を見
直し、市井の人々の利益を第一に考えながら内外政策の統合をめざ
すという。

まるで、トランプ前大統領が提唱した「一般の米国民のための政策
」と同じ思想である。トランプ革命思想は、形は違うが引き継ぐし
かないようだ。ということで、米国の自国第一主義は続くことにな
る。(トランプ政権の政策+オバマ政権政策)/2のような政策に
なるようである。

もう1つ、米国内が分断した状態をまとめるためには、強大な敵が
必要であり、中国は国内をまとめるためには重要な敵という存在で
あり、政権内に中国強硬派がいて、中国を強力な敵と言って、米国
内の危機感を高めて、国内統一をしたいようである。

イエレン米財務長官は、同盟国をまとめる必要があり、EUなどが実
施するデジタル課税を巡る国際ルールの見直しに関し、新ルールへ
の参加を企業の選択制にするという、米国がこれまで主張してきた
「セーフハーバー」提案を取り下げるとG20の各国に表明した。

セーフハーバーは制度の導入を企業が自由に選択できるようにする
もので、各国から骨抜きとの批判が上がっていた。米国が提案を取
り下げたことで、新ルールを巡り各国が今夏までに合意する可能性
が出てきた。これにより、米国IT大企業への規制強化にもなる。

これが同盟重視のポイントになっている。また、米IT企業の相手国
のニュース等の使用料についても、認めることになりそうである。

というように、同盟国との連帯を重視した政策も取ることになる。

日本は、米国の供給網の一環として取り込まれる必要があり、かつ
豪州と日本の同盟関係を強化して、豪州からの資源・食料やエネル
ギー供給を確かなものにする必要もある。日米英豪の安全保障と経
済活動の一体化を実現して、中国との経済分離を進めるしかない。

このためにも、日本企業の脱中国を推進しないといけないことにな
る。中国の需要分を中国で作り、西側諸国への輸出分は、日本や米
国や西側に近い東南アジアで作る方向に行くしかない。

さあ、どうなりますか?



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