6162.ワクチン敗戦で五輪を開催する条件は?



G7首脳会議で菅首相は五輪を開催するというが、それまでにワク
チン確保のめどもなく、どうすれば五輪を開催できるのかを検討し
よう。                  津田より

0.米国および世界の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇が、コロナで3月23日18,591
ドルまで急落し、2021年2月12日は31,458ドルと過去最高値を更新し
、16日は64ドル高の31,522ドル、17日は90ドル高の31,613ドル、18
日は119ドル安の31,493ドル、19日は0.98ドル高の31,494ドル。

米長期金利の1.3%への上昇で、インフレ懸念が出て、その上に大量
の財政出動を行うというので、サマーズ元財務長官が懸念を表明し
たことで、市場は反応して週後半、下落した。

これに対して、イエレン財務長官は、財政出動を大きく行うとして
懸念を打ち消した。FRBも金融緩和を継続するとした。2022年までは
財政出動も金融緩和も止めないようである。

このため、1,9兆ドルの米追加経済対策やコロナワクチン普及の期待
とインフレ懸念の天秤で、ハイテク株からバリュー株へシフトし始
めている。

金利上昇すると、企業も個人も借金が多く、利息の返済で景気を冷
やすことになるので、イエレン財務長官は金利上昇を強く否定して
いる。それなら、FRBは、イールドカーブ・コントロールをするので
はないかとの期待が出るが、FRBはコメントを控えているので、イー
ルドカーブのスティーブ化が起こっている。

景気は良くなって、小売売上高の伸びも大きく、原油を中心とした
資源価格の上昇も起きている。原油は60ドル/Bになり、サウジも減
産をしなくなる可能性が出ている。それと豪ドルやカナダドルなど
資源国通貨が上昇してきた。

しかし、2月13日までの1週間の新規失業保険申請件数は86.1万件と
前週の84.8万件から悪化した。このため、18日のNYダウは大きく下落
した。まだ、コロナによる不安定な状況が続いていることになる。

バイデン政権は、対中国の政策では、トランプ前政権で実施した政
策をそのまま、当面、続ける方向のようである。違うのは、中国に
対して欧米日豪印などの多国が共同して対応することである。

対する中国は、7月に共産党支配100周年の記念日になるので、その
記念日に合わせて、台湾統一の足掛かりを作る可能性がある。具体
的には、台湾が統治する東沙諸島に対して上陸作戦で奪うことのよ
うである。この準備をしているという。

この中国の行動を台湾は阻止できない。東沙諸島の兵力は200人程度
であり、攻める中国軍は10万人以上と推定できる。しかし、米国な
どの諸国は、それを阻止する作戦を行うことになり、戦闘状態にな
る可能性もある。米中戦争になる可能性も出ている。このような状
態になると、日本も戦争に参加することになる。もちろん、米国サ
イドである。

この時は、世界的に大きく株価が下落することになるし、中国市場
の閉鎖も考えられる。中国への投資を行っている人は注意が必要で
ある。

このような情勢で、英国は「脱欧入亜」のスタンスを取り、香港返
還の約束を守らない中国に対して、強硬な姿勢になり、日米豪印の
クワッドに入る意向であり、また環太平洋のTPP加入を表明している
。また空母をアジアに派遣して、中国の近傍侵略に歯止めをかける
取り組みに参加を決めている。そして、香港住民を無条件で英国へ
の移住を認めている。ドイツもフリゲート艦の派遣を決めている。

しかし、ドイツは一方で、中国のファーウェイを5G構築に参加さ
せるなど、中国と米国の中立的な位置にしている。フランスの方が
対中的には英米の方に近い状態をキープしている。

米英加豪のアングロサクソン連合は、一致して対中戦略を強硬なモ
ードにしている。日本もその連合に参加する方がよいとみる。

中国の戦狼外交は、敵を増やして、世界的な孤立状態にしているが
、それを恐れずに突き進むようである。勃興民族の雄たけびを聞い
ているような雰囲気になっている。中国近傍にいる日本を含めた民
族・国家は、恐ろしい状況になっている。

これに習って、ロシアも強権的な外交をし始めている。中露同盟が
欧米日に対抗する構図ができてきた。そして、日本に対しても、昨
年7月の憲法改正で領土の割譲を禁じる条項が新設して、プーチン
大統領も「ロシアの基本法(憲法)に反することは一切行わない」
と発言し、日本との北方領土交渉をしないと明言した。

やっと、日本は、曖昧な状態でのロシア援助を中止できることにな
ったようだ。安倍前首相は「自分の任期内に領土問題の決着をつけ
る」としたが、領土返還ゼロと決着したようである。

今後、英米日豪印独仏などと中露の対立が各地で起きることになる。
しかし、独仏は、軍事的な対応では共同歩調を取るが、経済面では
中立の可能性もある。

1.日本の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日経平均株価は、2018年10月02日24,270円で、コロナで2020年3月19
日に16,358円まで下げ、2021年2月10日は29,562円と高値更新、12日
は29,520円で、15日は564円高の30,084円と3万円台に突入し、16日
は383円高の30,467円で高値更新し、17日は175円安の30,292円、18
日は56円安の30,236円、19日は218円安の30,017円。

15日に、待望の3万円台に突入した。16日に高値更新したが、決算
を見た上げで、決算が終わった17日からは利益確定売りで調整入り
した。米国の失業者数増加で、19日下落して、場中で一時3万円を
割れた。

19日にはTOPIXが0.76%下げたのに、日銀のETF買いもなく、3日続
落になっている。日銀は3万円台での下落に買いを入れないようであ
る。このため、3万円台での日銀買い支えは期待できないことが明確
化した。このため、ここからは買い支えを期待しない相場になる。

しかし、どちらにしても、日本市場の取引の70%以上が海外投資家の
売買であり、NYダウとの連動で動くので、NYダウの動向次第である。

2.五輪を開催できる条件は?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前回、五輪開催をあきらめて、選挙に負けないようにした方がよい
のではないかと言ったが、逆に菅首相は、五輪を開催するとG7首
脳会議で宣言した。

それなら、五輪を開催できる条件を検討しようと思う。

現時点で、7月までに国民全員分のコロナワクチンの確保が不可能に
なっていることが明確化している。五輪開催までに医療従事者のワ
クチン接種ができるが、65歳以上の人の少数にワクチン接種が行え
る程度の状況になっている。

2月の実績を見ると、ファイザー製は、週に20万人分が確保できる程
度であり、月80万人分であり、6月までに400万人分が確保できる程
度である。医療従事者400万人分が確保できる程度だ。

アストラゼネカ製のワクチンは、全量日本で生産するというので、
このワクチン生産量で日本の運命が決まる。6月末までにどれだけの
生産ができるかですが、初期からフル生産はできないので、どれだ
け立ち上がりが急峻にできるかにかかる。

そのワクチンは、4月から供給できるというが、初期には大量生産が
できるはずがなく、週20万人分とすると、月80万人分で6月までに240
万人分となり、65歳以上の3000万人分には、足りない。やっても3ケ
月で1000万人分でしょうから、1/3分の確保である。もう少し多くな
る可能性はあるが、全員には届かないはず。

ということで、残念ながら、ワクチン接種ができない状態で、五輪
を開催することになる。

菅首相は、東京五輪は、「コロナに打ち勝った証」「安心安全な大
会にする。」として行うというが、残念ながら、コロナ感染流行中
での開催となる。

この状態で五輪を行うことになることをまず、前提として、どうす
れば、五輪を行えるかの条件を探るしかない。「無理が通れば、道
理、引っ込む」であり、大きな犠牲を覚悟した方がよい。

五輪の試合は無観客で行うことであり、聖火リレーも観客なしで行
うしかないか、声を出さない条件で観客を少し入れるかでしょうね。
3月から始まるので、島根県丸山達也知事が言うように聖火リレーを
中止して、車で聖火を運ぶ手もあると思う。

五輪開催では、五輪選手には、世界的にワクチンを優先的に接種し
てもらい、試合に来てもらうことが必要となる。

もし、接種できないなら、日本で試合前にワクチン接種をしてから
競技に出ることも考える必要になる。このワクチンを優先的に確保
しておくことである。

東京五輪直前の7月にコロナが蔓延して、1日1000人もの新規感染者
が出ると、国民の健康も守れない、もちろん選手の健康を守れない
状態で五輪というのはおかしいので、五輪期間中は、感染拡大しな
いことが重要になる。

ということは、五輪期間前に、十分感染者数を抑え込むことが必要
となる。

だとすると、3月以降も緊急事態宣言と同じレバルの対策をし続ける
ことが必要となる。特に飲食は午後8時以降は営業禁止、GOTOトラベ
ルも東京五輪終了以降に再開する方がよいことになる。感染者数を7
月五輪開始までは徹底的に抑えて、五輪開催に備えるしかない。

大阪府や兵庫県、京都府などは、2月末で緊急事態宣言解除を要請す
るというが、西村担当大臣からは、まだ早いと述べているが、その
理由がわかることになる。政府は緊急事態宣言の早期解除を中止す
る方向で検討しているとも伝わる。

経済学者からも「三たびの宣言発出に至れば、それこそ経済は致命
的なダメージを負う」との警告が上がったいるが、政府は今までは
聞かなかった提言を聞いているのは、五輪開催優先だからである。

五輪に備えるために、感染者数をなるべく小さくしておきたいとい
うことである。もう1つ、問題となっているのは感染者数の減少が
止まっている点であり、新規感染者の前週比を見ると、愛知と岐阜
は下降している一方、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵
庫、福岡の8都府県で上昇した。

新規感染者数が300人以下にならないで、東京都小池知事はそれがわ
かっているので、延長も視野にいている可能性がある。

しかし、その結果は、7月まで8時以降の営業禁止で飲食店を全滅さ
せて、地方のホテルや旅館も旅行会社も多くが倒産することになり
、それでも五輪を行うということになる。

経済的な損失が大きくとも五輪を行うのか、経済的な損失を抑える
ために五輪を中止するのか、その判断をするべきであるが、菅首相
は、事情を知ってか知らずか、五輪絶対開催という判断をしたよう
である。五輪中止だと4.5兆円の損失になるというが、今や五輪開催
すると、その10倍程度の損害になるとも言われている。

このため、失業者数は20万以上になり、日本経済を大きく痛めるこ
とになる。特に地方は大変なことになる。

このため、恐らく五輪を開催すると、自民党は選挙も負けることに
なる。経済的な損失が大きくても、五輪を行う自民党に国民は愛想
をつかす。

ここで、一発逆転を狙うなら、菅首相は、G7首脳達にワクチンの
日本への優先的な割り当てを行ってもらい、6月までに全国民分を確
保することである。

もう1つが、五輪を12月まで、または2022年まで延期して、ワクチ
ン供給を確保してから五輪を行う手である。

そうすれば、ある程度の国民にワクチン接種を行え、集団免疫がで
きて、コロナ感染の拡大を心配することなく、安心して五輪を行え
ることになる。これなら、東京五輪が「コロナに打ち勝った証」に
なる。

菅首相が強気で7月五輪開催を主張するからには、ワクチン確保が十
分にできたことを示していると思いたいが、河野担当大臣や厚労省
官僚の弱気の発言を聞くと、そうとも思えない。

ワクチン確保なしに7月五輪開催を主張する菅首相の判断力を疑うこ
とになる。もう1つの12月または2022年五輪開催のための交渉を東京
五輪組織委員会がしているとも聞いていない。

さあ、どうなりますか?


コラム目次に戻る
トップページに戻る