6160.バイデン政権の対中国政策と米株価の大混乱



バイデン政権の外交姿勢や対中政策が徐々に見えてきている。それ
と、米株式の大混乱であり、それとバイデン政権の中国政策を検討
しよう。               津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇が、コロナで3月23日18,591
ドルまで急落し、2021年1月20日の31,188ドルで最高値になり、22日
は30,996円。1月25日は36ドル安の30,960ドル、26日22ドル安の
30,937ドル、27日は633ドル安の30,303ドル、28日は300ドル高の
30,603ドル、29日は620ドル安の29,982ドル。

27日は、NYダウが大幅な下げになり、ゲームストップ株やAMCエンタ
ーテインメント株にヘッジファンドが大量の売りを出したが、その
情報を見て、ロビンフッダー集団がコールオプションという金融派
生商品を駆使して買い、400%余り上昇させて、踏み上げを食わして
、ヘッジファンドが負けて、買い戻しになり大幅な損を出して、そ
のカバーのために上昇した主要株を売ったことで、NYダウなど3指数
が大幅に下がった。

もう1つが、FOMC後の会見で、パウエル議長にゲームストップ株が
バブルかどうかという質問をしたが、これを無視したことで、対策
が取られないと多くの機関投資家が利益確定売りに走った。

これと同時に起きたのが、株から債券にシフトすることで、10年国
債金利が1%まで急落しドル安円高になるはずが、逆に円安104円後半
までドルが買われた。リスクオフのドル高・円安が起きている。

しかし、SECは、特定の株の上昇が「風説の流布」スキームだするこ
とで、その裏にはヘッジファンドが保有資産売却する可能性を懸念
して、28日に株取引規制をネット証券に依頼した。

このため、ネット証券は、個人トレーダーに対し、一部銘柄の取引
の証拠金比率を通常30%であるが100%に引き上げた。

株取引アプリのロビンフッドは、証券会社への保証金が足りず、仕
方なくゲームストップ株やAMC株の買いを制限した。ところが、ロビ
ンフッドが取引き制限したことで、これに納得しない個人投資家は
28日、訴訟を相次いで起こした。

しかし、ロビンフッドが買いを制限したことで、28日ヘッジファン
ドの投げ売りがないことへの安心感から米株価は上げた。

この動きに対して、ヘッジファンドはこれまで空売りで株価維持を
崩し、個人投資家をいじめてきた。しかし、彼らが空売りで損失を
出すと規制強化で救済されることに、不公平だとの個人投資家から
の不満も出た。それがロビンフッドへの訴訟に結びついている。

このことで、ロビンフッドのブラッド・テネブ最高経営責任者は「
マーケットメーカーやヘッジファンドなどからの指示で取引を制限
したわけでは絶対にない」と述べた。保証金が足りなかっただけと
した。

また、交流サイトのレディットの株式市場掲示板で議論して、個人
投機家がヘッジファンドの売りに共同で対抗したことで、特定の株
の上昇が「風説の流布」に当たると一時停止の制限を受けた。
というように、このようなネットプラットフォームの規制論も出て
いる。

「個人投資家がソーシャルメディア上で互いにけしかけていたので
あれば、これは事実上のクラウドソース型『パンプ・アンド・ダン
プ(虚偽の情報を流して価格をつり上げたところで売り抜けて利益
を手にする不正行為)』に相当する」と法律家もいう。

このため、上院銀行委員会で公聴会を開き議論することになった。
この上院の議論で、米株価は変動する可能性がある。オカシオ・コ
ルテス下院議員は「ヘッジファンドが自由に売買できる一方で、個
人投資家の買いを止められた」と批判して、ヘッジファンドの規制
議論に参戦。特にウォーレン上院議員がウォール街への規制強硬派
であり、全般的な米国の株取引の規制強化が議論されることになっ
た。

事実、証券取引委員会(SEC)のクレイトン委員長は、「空売りの監視
では、米市場は最も透明性が高いと言えるだろう。しかし、常に改
善の余地はある」とした。

このような動きから、29日株取引アプリの「ロビンフッド」は銀行
の与信枠を活用したり、投資家から資金を受け10億ドル超を調達し
、証券会社に保証金の積増しして規制を解除したが、AMCとゲームス
トップ株が再び急騰した。

このため、29日のNYダウは再び大幅な下落し、3万ドルを割り込んだ
。ヘッジファンドは高値警戒感が強かったので、一斉にポートフォ
リオのリスク減らしに走った。米VIXは、前日より6%ほど高い33台で
推移している。

このような展開を見て、米著名ヘッジファンドのシトロンは29日、
株式の空売りの調査と自身の空売りをすべて中止すると発表した。
ロビンフッダー集団に負けた。市場では「支配階級と庶民の対立」
とみる向きがあり、庶民に負けたことになる。

しかし、まだ当分、ロビンフッダー集団とヘッジファンドの戦いが
続き、これに味を染めたロビンフッダーたちは、「レディット」で
議論して次の標的として、日量たった70バレルの石油会社ニュー・
コンセプト・エナジーや銀価格の国家統制に対抗するという。

このため、ニュー・コンセプト・エナジーは1000%近く上昇し、銀
価格も大幅に上昇している。ニュー・コンセプト・エナジーの空売
り残高は浮動株の0.3%と、今月早い時期の13%から減少した。ここ
でも踏み上げが起こっている。今後も、空売り残高の大きな株が狙
われることになる。

事実、ファースト・マジェスティックも1月前半の空売り比率は24.9
%と12月後半の21.1%から上昇しているので、「レディット」に「ゲ
ームストップを手掛けた後は、ファースト・マジェスティックに買
い戻しが入るだろう」と投稿されている。

このため、株取引アプリの「ロビンフッド」は再度、売買制限を発
表した。その対象リストには、空売りが多い株を主体的にスタバや
GMまで拡大した。この理由が謎のまま週末を迎えることになった。
というように、当分、株価は乱高下する展開になる。

個人へ給付した膨大なマネーが株式市場に流入して、株取引の主体
がヘッジファンドなどの機関投資家から個人投資家にシフトした影
響が出ている。

中央銀行の量的緩和では、銀行などに資金が滞留するが、政府の財
政出動で個人にお金を渡すと、その資金が暴れ始めると言うことで
ある。大きな教訓を得させてくれている。ということで、日本は本
当に困っている人にしか、財政出動でお金を渡してはいけないとい
うことである。

売りから入るヘッジファンドが負け、買いから入る個人の時代にな
ったとも言える。新しい膨大な個人投資家の多くが30歳以下の人で
デイトレードが主体であり、暴落を経験していないことも影響して
いる。その上、数秒での取引で、大きな損失を抑えている。

このように、若い人たちは、ゲーム感覚でプレーしている。株価の
適正水準という考え方はない。空売り勢を踏み上げて、1日で株価上
昇を狙う手法である。株価が高いと見て空売りするヘッジファンド
を狙うという飛んでもない世界になっている。

そして、この株の売買が異常なレベルになっていることで、SECと
議会を中心に規制議論が出てくる。この動向に目が離せない。

1.日本の状況
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日経平均株価は、2018年10月02日24,270円で、コロナで3月19日に
16,358円まで下げ、2021年1月21日は28,756円で30年ぶりの高値更新
、22日は28,631円。1月25日は190円高の28,822円で高値更新、26日
は276円安の28,546円、27日は89円高の28,635円、28日は437円安の
28,197円、29日は534円安の27,663円。

28日は、NYダウの下げに伴う大幅な下げになった。調整局面になっ
たようだ。そして、米国の株取引混乱の影響が日本株にも出ている
。29日も大きな下落なり、1月7日以来の28,000円割れになった。

当分、米株価の影響を受けることになる。この下落は米国の事情か
らで、どこまで下げるか知らないが、下げ止まったら大きな買い場
になる。大きなチャンスが来たとみるが、どうであろうか?

しかし、米国株価の変調で、月曜日の朝も大変である。

2.バイデン政権の対中政策
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バイデン大統領にとっては、国内問題の処理が何より急務である。
コロナ感染拡大が米国を悩ませており、国民生活防衛と経済回復を
直ちにおこなわなければならない。何より、米国民の分断で、バイ
デン大統領にとって決して楽な状況ではない。

これにより、外交問題は優先度が国内問題より低い。

サキ米大統領報道官は、米国が「21世紀を定義づける中国との熾烈
な競争」の中にあると指摘し、中国の言動が国際機関などに悪影響
を与えていると批判、「戦略的忍耐」を持ち同盟国と連携した対応
を進めるとした。

サキ氏の一連の発言は、超党派で合意のある対中強硬路線は維持し
ながらも、その手法は転換する方針を示したようだ。

「戦略的忍耐」はオバマ元政権が用いた対北朝鮮政策のキーワード
であり、時間を掛けて問題を解決するという感じである。

米中貿易合意は昨年2月に発効したが、中国による米国産品の購入
は目標を下回っている。サキ氏は、依然として合意が有効かどうか
問われたのに対し「さらに進める前に同盟国や連邦議会議員らと調
整し、決断を下す」と語った。

サキ氏のニアンスの中には、「戦略的忍耐」の意味として、政府機
関内、また議会との調整をまずはじっくり行うとという内向きな根
気ある調整を意味している可能性もある。

もう1つ、バイデン新大統領はトランプの「バイ・アメリカン」ル
ールを採用した。その内容はトランプより保護主義的である。国内
経済立て直し優先ということである。

バイデン大統領は、台湾の駐米代表の大統領就任式への招待に加え
、中国の圧力が増す間は、台湾への武器売却の継続を約束している。
米中間の高官級交渉については、同盟諸国との協議後にする意向で
ある。

しかし、バイデン政権発足後、米国務省のウェブサイトから「中国
の脅威」、次世代移動通信網(5G)セキュリティなどの問題が主要
政策項目から取り下げられた。

同サイトには、国内問題でもある、反腐敗、気候と環境保護、新型
コロナウイルスなど17項目が掲載されている。

ここまでの意味は、冷戦の罠にはまらず 協力する分野は協力し、
『是々非々』を貫くということかもしれない。伝統的米国外交へ復
帰することになるともとれる。

しかし、中国への柔軟な政策の裏には、バイデン民主政権下には既
に親中派が入り込んでいるとも指摘されている。同時に、リベラル
なメディアには中国資本が入っている。このリベラルなメディアが
トランプ前大統領を攻撃していたとも言われる。

バイデン新政権の外交政策をめぐり、米誌ニューズウィークは「台
湾問題では緊張緩和のシグナルを中国に送る可能性が高い」と報じ
た。「トランプ政権が台湾に大量の兵器を売却している以上、改め
て中国政府の怒りを買うような兵器売却を承認することもないだろ
う」ともみている。

このことは、中国の圧力がなくなった時点で、台湾への兵器売却も
止めるという意味であるとみる。その方向で中国との交渉をするの
であろう。

このため、アジアの各国、各地域で民主主義や人権を擁護する多様
な勢力の間では、トランプ前大統領への支持が圧倒的に強く、バイ
デン大統領の姿勢には懸念が多い。

香港の民主活動を支持する香港市民の実業家は「バイデン氏は中国
の現政権と共存していくという姿勢だが、この姿勢は私たちにとっ
てホワイトハウスに習近平が座っているような危険を感じさせる」
と語った。

バイデン米新政権は、5月にシンガポールで開かれる世界経済フォ
ーラムの年次総会(ダボス会議)で、中国側の高官らと会談する可
能性がある。世界経済フォーラム(WEF)総裁が29日、明らかに
した。

中国は米国の姿勢が変化したことを受けて、1997年の香港返還以前
に生まれた香港住民が持つ「海外在住英国民(BNO)」旅券につ
いて、1月31日以降は有効な旅券とは認めないとした。

また、中国国防省の呉謙(ご・けん)報道官は、中国の軍用機が台
湾の防空識別圏への進入を活発化させていることについて、「外部
勢力の干渉と台湾独立勢力の挑発に対する厳正な反応だ」と主張し
た。その上で「台湾独立は戦争を意味している」とけんせいした。

しかし、ブリンケン米国務長官は27日、フィリピンのロクシン外相
と電話会談し、国際法で認められていない南シナ海での中国の権益
主張を拒否する米政府の考えを伝達し、中国に対抗する姿勢を示し
た。

商務長官に指名されたジーナ・レモンド・ロードアイランド州知事
は、中国の「不公正」な貿易慣行に対抗するため、米国は「積極的
」に対応する必要があると語った。生産拠点を国内に戻すため製造
業に投資する方針も示した。

ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、
中国について「香港や新疆ウイグル自治区での行為や、台湾に対す
る脅迫への対価を払わせる準備をすべきだ」と述べ、対中圧力を強
化する考えを示した。

まあ、もう少し経たないと、バイデン政権の対中政策がどうなるか
が見えないが、トランプ大統領とは違い、『是々非々』的な政策に
なることが徐々に見えている。

日本が対中強硬的な対応をすると、米国の支援を受けられずに孤立
する可能性もある。バイデン大統領の対中政策は、まだ確定した見
た方をしない方がよいかもしれない。

しかし、このような曖昧な対応では、中国は強く出るし、世界が米
国を見下すことになるだろうとも思える。

また、再度、トランプ氏が大統領になるかもしれない2024年までは
、対中政策では、まだわからないが、日本はオバマ時代と同様に、
我慢の時期かもしれない。

というより、米国の曖昧な対応が続くと、日本企業の対中でのビジ
ネスは活況になるとも思える。

さあ、どうなりますか?


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