6149.次の世界は統制金融資本主義



日経平均が26,000円まで上昇している。株価を上げるために日銀は
、ETF買いを行っているが、それは次の資本主義の先行的な施策なの
である。次の資本主義を考察しよう。    津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
そして3月23日18,591ドルまで急落して、9月2日29,099ドルまで上昇
したが、11月13日は29,479ドル、16日は470ドル高の29,950ドル、17
日は167ドル安の29,783ドル、18日は344ドル安の29,438ドル、19日
は44ドル高の29,483ドル、20日は219ドル安の29,263ドル。

NYダウは、16日に29,950ドルになり、今までの史上最高株価2月12日
の株価を抜いた。ファイザーのワクチンの他にモデルナのワクチンも
高い有効性を出し、株価が上昇したことによる。

その後は利益確定売りに押される展開である。やっと、大統領選挙
後、追加の経済対策に関する協議を与野党で開始するとの情報から
19日は少し上昇した。

しかし、ムニューシン財務長官がコロナ対応の経済政策を12月31日
以降延長しないとしたこととで、FRBの中小企業の債券買いを批判し
たがFRBが反論して、政府の対応を懸念して、20日は下落した。

日替わりで、経済政策の情報が揺れて、その都度、株価は上下する
展開になっている。金融相場なのに、政府の対応が揺れるので、不
安定な米国株になっている。

1.日本の状況
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日経平均株価は、2018年10月02日24,270円の高値を付けたが、3月19
日16,358円まで下げ、11月13日は25,385円で、16日は521円高の
25,906円、17日は107円高の26,014円、18日は286円安の25,728円。
19日は93円安の25,634円、20日は106円安の25,527円。

日経平均もNYダウに引きずられて上昇して、11月11日は25,000円台
に乗せ、17日には26,000円台に乗せて、1991年5月14日以来29年ぶり
の高値更新となっている。

17日の200日移動平均線からの乖離率が18%にもなったことで、週後
半は、NYダウ下落と東京の感染者数が最大になったことでもあり、
調整局面になっている。

そして、感染者数の急拡大で、前回のコラムで「GOTOトラベル」の
中止を述べたが、その方向で政府も進むことになるようだ。

こお株価上昇の原因は、海外投資家の大幅な買い越しによるが、ワ
クチンの有効性情報を見て、国内信託や海外投資ファンドが、機械
的にポートフォリオの組み換えをしたためで、コロナで上昇した株
を売り、コロナで売られていた日経225の銘柄を買ったことで、17日
はマザーズの大幅な下落と、日経225の大幅な上昇になった。

2.今の金融資本主義の問題点
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拡大再生産のフェーズの時、資本主義はうまく回っていたが、均衡
再生産のフェーズになると、資本主義は回らなくなって、企業競争
が熾烈になり、生産性向上によるコスト削減、価格の引き下げを起
こすことになる。

それと、生産性向上により、均衡再生産時には労働者を大幅に削減
できることになり、労働者の賃金も下降する。さらに、機械化だけ
ではなく、AI化やロボット化で、知的労働の部分まで生産性を向上
できるようになり、比較的賃金の高い労働者の数も減り、賃金も減
少している。

しかし、このAIやロボット開発の少数のエンジニアの給与は、大幅
な上昇を起こしている。このため、大多数の労働者階層は貧困化が
起きているが、一部の人たちの給与は上がっている。機械化と生産
の集中で、一部企業は大きな利益を得ることになる。

そして、均衡再生産社会を放っておくと、多くの人の給与が下がり
、物価もデフレで不景気になるが、その不景気から抜け出せないこ
とになる。

均衡再生産であると、一部企業だけが設備投資するだけで、全体的
には設備投資額も小さくなる。このため、金融機関も回らなくなる。
金融資本主義の中心的な金融機関の存在も不安定になる。

金融資本主義を回すために、金利を下げて紙幣を刷り、市場にばら
撒いて、工場の不動産や企業の株価などの資産価格を上げて、疑似
拡大再生産社会を作ることになる。このため、中央銀行は金融緩和
と量的緩和で、疑似拡大再生産社会を維持しようと矢継ぎ早に金を
ばら撒き、そのスピートを上げている。

そして、現在コロナ不況を乗り越えるために、大量の紙幣を刷るこ
とで、より一層、資産価格が上昇している状態になっている。しか
し、日常の生活物資の価格は下落している。不況による労働者の賃
金が減少しているので、生活防衛的になって物が売れていないので
、企業は値下げしているからだ。

このため、疑似拡大再生産の恩恵を受けるのは、資産を持つ人であ
り、資産を持たない者は、大きな恩恵を受けない。このため、貧富
の格差が拡大している。

米国を見ると、貧富の差の拡大で富裕層と貧困層がいがみ合い状態
になっている。

貧困者は、富裕層がずるをして富を得ていると思い、富裕層は貧困
者が怠惰のために富を得られないと見ている。しかし、選挙では貧
困者数の方が圧倒的に多い。このため、政治は貧困者の方を見て政
治を行うことになる。

このため、トランプ大統領は、富裕層の代表であるが、貧困層の一
部の人たちの価値観を取り入れた。それが白人労働者層であり、貧
困の原因は、移民のせいであるし、伝統的なキリスト教的価値観を
持たないことであり、法と秩序を蔑ろにしているからだとした。

この価値観に共鳴して、白人や福音派の貧困層もトランプ大統領を
支持したのである。

しかし、根本的な問題は、均衡再生産社会での資本主義をどう構成
しなおすかを考えることであるはず。

資本主義の根幹は、金融(通貨の流通)であり、その流れを早くし
て、通貨量を増やすことであるが、通貨流通のスピードが落ちたこ
とで、貨幣の量を増やして通貨量を上げ金融活発化政策を打ってい
るとも言える。

3.金融資本主義からの変革
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資本主義は金融が中心であるが、均衡再生産状況で、個人の大きな
自由を認めると、格差拡大で社会の大きな軋轢を生み、政治的には
混乱の時代が来てしまう。

社会の分断を避けるためには、資本主義でも統制的な社会にするし
かない。それもお金をどう配分するかと言う問題が一番大きい。も
う1つ、統制的なことで、大きな政府になる。

今は、世代を跨ぐ貧困の連鎖が起き始めている。金持ちの子供は、
金持ちになり、貧困家庭の子供は貧困になる可能性が高い。

個人の能力の差で、大きな差が出るのは仕方がないが、資産を持つ
か持たないかで格差が開く社会になるのは問題だ。

ということで、適切な再分配の必要な時代になっている。AI化やロ
ボット化で、労働者の必要な数が減ったことで適正な労働分配をす
る必要にもなる。

しかし、現時点は、高齢者の介護職や少子化の影響で労働人口が減
少しているので、将来的な問題であろう。労働者数の減少で、海外
移民を受け入れる状態でもある。

子供の教育の機会の平等化で、能力と意欲がある子供達には、教育
機会を与える必要がある。この部分は、高校の無償化などで一部実
現する方向であるが、能力のある人を大学まで行かせる必要がある。

資産の再分配で、世代跨いだ資産の継承を制限することであり、こ
れは日本では高レベルに相続税を掛けているので実現できている。

非正規問題や年金問題など、他にも問題は多くあり、これも統制
的な解決をして、格差の拡大を起こさないようにすることであり、
放置すると米国のような分断に繋がる。

このように、政府が、強く社会を統制することで、安定した資本主
義になるが、社会主義的な側面を持つことにもなる。しかし、中国
などの独裁国家主義との違いは、個人の自由を最大限守ることであ
り、政府が個人の自由を不当に制限することをしないことと、公衆
の不利益にならない限り、個人の思想や宗教を縛らないことである。

政治的な安定を得るためには、金融の根本にも統制を掛ける必要が
ある。格差を助長する資産インフレを起こさないためには、資産価
格の統制も必要になる。

この金融統制の中心に日銀がいる。資産価格が低い時には、日銀が
不動産や株を買い上昇させて、資産価格が高い時に日銀が不動産や
株を売り、下落させるのである。日常的な物資の価格統制は、政府
には制御できないが、資産価格は制御できる。

このため、政府は、日常の物資の価格を間接的に制御するしかない
。それが通貨量のコントロールであるが、それをすると、資産価格
が直接的に変動することになる。このため、資産価格の変動を抑え
るためにも資産価格の統制が必要なのである。

というように、金融コントロールの中心的な存在が日銀になる。

というように、日本は資本主義の発展という視点では、世界に先行
している。やっと、欧米が金融政策の日本化になってきたが、日本
は次のフェーズに来ているのである。

しかし、次の統制金融資本主義の変革による役割変化を、日銀は気
が付いていないし、政府も経済学者もまだ気が付いていない。

このコラムの見解を見て、どのくらいの人が気が付くのか、楽し
みである。

4.バイデンのコロナ対応で
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コロナ・ワクチンができて、経済の正常化が起きると、財政出動も
金融緩和も、その名目を失い、特別給付がなくなる。

今の株価の上昇は、実体経済が悪く、特別給付の財政出動とパウエ
ルFRB議長の金融緩和策によるのだ。

しかし、バイデン政権では、議会のネジレで財政出動もできずに、
パウエル議長の金融緩和に頼ることになるが、コロナの感染が収ま
ったら、膨大な金融緩和ができなくなる。

この時、株式市場の景色が変わる。膨大な通貨の発行で、金利ゼロ
で、しかも新興国のコロナ不安から、お金の行き場がなくなって、
米国の株投資に回ってきていた。

しかし、コロナの正常化で、膨大な通貨の発行ができなくなること
と、市中のお金の流れが大きく変わることになる。

FRBは、米企業と米国民の膨大な借金のために、コロナ後でも金利を
上げることができない。その上に議会と政府が財政出動をしないの
で、お金が米国から逃げていくことになる。

逃げたお金は、金利のある新興国に向かうことになる。このため、
ドル安が進む。米国株から新興国にという流れが起きる。

上がり過ぎた株価は、暴落の可能性が出てくる。事実、ソフトバン
クの孫社長もリーマンショック級の市場崩壊が起こりえるとしてい
る。シティーもドルは20%程度下がると言う。

ジェフリー・ガンドラック氏も、これからの市場は見通せないとし
て、現金とゴールドの比率を上げて置いた方が良いと述べている。

そして、今、日本株が上がっているのは、この先を読んだ海外投資
家が、コロナ感染の少ない日本の株を大量に買い越しているからで
ある。

この動きは続くと見るが、米国暴落時には、その影響を受けること
になる。注意が必要である。

さあ、どうなりますか?


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