6146.菅政権の大戦略とは



菅首相は、個別の政策は話すが、日本の課題を整理して、その上で
の日本の戦略を話さない。ここでは、個別の政策を総括して、日本
の戦略を検討する。        津田より

0.米国および世界の状況
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
そして3月23日18,591ドルまで急落して、9月2日29,099ドルまで上昇
したが、10月23日は28,335ドルで、26日は650ドル安の27,685ドル,
27日は222ドル安の27,463ドル、28日は943ドル安の26,519ドル、29
日は139ドル高の26,659ドル、30日は157ドル安の26,501ドル。

NYダウは、ダブルトップとなり下降トレンドへの転換となっている。
200日線も割り込み、明確な売りサインで、NYダウは、週間で6.5%も
下げた。

GAFAの決算は、アップル以外はよかった。アップルの下落が大きい
が、それ以外も下落して、ナスダックも274安の10,911pと11,000p割
れになった。大統領選挙後まで、この状態が続き、大統領が決まる
まで下降になると思われる。

11月3日には、大統領は決まらないとみられているが、バイデンでも
トランプでも決まれば、上昇に転換する可能性が高いので、そこま
では、様子見なのであろう。しかし、大統領決定までどのくらいか
かるかが、問題である。その期間は下落トレンドのままになる。

しかし、トリプル・ブルーの民主党全勝の時は、バイデン政策が、
即日に実行できるので、一時的に大幅な上昇が見込める。しかし、
バイデン政策の法人税増税、キャピタルゲイン税の増税などが出て
くると、株価は再度調整になることが考えられる。

そして、トランプ大統領の再選でも上下院が民主党になると、トラ
ンプ政策が思い存分には実行できなくなる。特に本格的な経済政策
ができないと、米国にとって、大きな障害になるはず。

トランプ再選ができたら、共和党の財政均衡政策から民主党の財政
出動政策にシフトしていけば株価上昇になるが、共和党の財政均衡
政策をとると株価は下落する。

しかし、バイデンは、都市貧困層と軍部の利益代表であり、トラン
プは白人労働者・農民と投資家や富裕層の利益代表である。このた
め、長期的にみると、トランプは株を上げ、バイデンは株を下げる
可能性が高い。

バイデン政権では、中国との貿易戦争も緩和して、当分米中は経済
的な協調体制になり、日本企業も米中対立に阻害されなくなる。日
本企業にとっては、バイデン政権のほうが良いが、将来的な日本の
安全保守上では、不安を抱えることになる。

もう1つ懸念するべきことは、冬に向かい、欧米では、再度コロナ感
染拡大で再度ロックダウンになることだ。このため、経済的な打撃
が大きいのに、ECBのラガルド総裁は「12月の政策決定に向けてあら
ゆる手段を検討する」と言い、11月には様子見で対策を打たなかっ
た。

これにより、欧州経済は大きく下降することが想定でき、この発言
で、株価は大きく下落した。ユーロも安くなっている。世界経済的
にも、大きな重しになるはず。

一方、中国の5中全会で、2035年までには先進国並みの1人当りの
GDPにするとの目標を掲げて、そのために最先端の技術的な製品でも
国内で作れるようにするという。特に電気自動車や自動運転など未
来志向で産業を構築すると宣言した。

もう1つ、習近平国家主席は、世界企業の中国依存度を高め、原材
料や部品の供給停止が米国など欧米諸国に対し強力な威嚇能力を持
つようにと指示している。

このため、世界企業の製品構築に、日本の部品メーカーの中国工場
が必要になり、ということで中国でも日本企業が必要になっている
。日本企業が中国内での生産をすることである。世界企業の製品の
質を上げる、精度の高い日本企業の部品が必要だからだ。

1.日本の状況
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、3月19日16,358円まで下げ、10月23日は23,516円で、26日は22
円安の23,494円、27日は8円安の23,485円、28日は67円安の23,418円
29日は86円安の23,331円、30日は354円安の22,977円。

日経平均もNYダウに引きずられて、じりじりと下落し、30日は大き
く下げて23,000円を割り込んだ。特にNYダウ先物の影響が大きい。
場中に先物が下がると日経平均も同一歩調で下げていくので、場中
のNYダウ先物を見ている必要がある。

11月4日は、東京市場の場中に米国大統領選挙の開票が始まり、大き
く上下に乱高下する可能性がある。特にバイデンシフトしている市
場予想と違い、トランプリードになると、混乱は大きくなる。

また、日本でも冬に向かい、コロナ感染拡大が心配になっている。
特に北海道では、寒くなり、コロナ感染が増えている。しかし、コ
ロナ治療の方法が確立してきて、死亡者数は大きく下げている。コ
ロナ感染拡大を防止できれば、経済への影響は限定的と見たいが、
どうであろうか。

2.給付金終了の論理
日本の景気は、ウイズコロナでも徐々に戻している。このため、持
続化給付金、雇用調整補助金などを、12月までには終了することに
なったようだ。

コロナの特性が徐々にわかり、効果的で低負担な感染防止策も見え
てきたことにより、その防止策をする企業は存続できるからである。

落ち込みの激しい業界に向けては、GOTOトラベル、GOTOイート、GOTO
イベントなどで企業を応援する方策を打ち、そちらに予算を振り向
けようとしている。徐々に感染防止策を打ち、野球や演劇などの観
客数を満員まで戻せるようにするともいう。

海外への渡航も感染数が多くない地域とは、徐々に14日間の自粛期
間なしで可能になるようだ。このように感染防止した上で、経済活
動の正常化を進めている。このような施策で経済活動の回復をさせ
ないと、多くの企業の倒産が起こる可能性がある。

この防止策が抵抗なくできたのは、日本が、事前に花粉症という季
節性の疾病でマスクをする習慣ができていたことが、幸いしている
。欧米では、マスクをすることが政治闘争になっているが、日本で
は皆が当たり前のようにマスクをしている。というより、日本では
、マスクをしないと多くの人に睨まれる。

このように、花粉症という疾病は、神が日本を守るためにした仕業
とも見えてしまう。軽い疫病で、より大きな疫病を防止するという
現代の神風が吹いたようだ。

だが、持続化給付金や雇用調整補助金を止めると、それを頼りにし
ていた売上げの回復しない企業の倒産や廃業などが、補助金がなく
なった時点で急増することになる。このため、一時的に景気は悪く
なる可能性もある。もう1つ、日本の伝統的な文化を保持していた
老舗企業の倒産や廃業が、多発することを心配する。

給付終了の論理は、企業に対策する十分な時間を与えたので、その
間にウイズコロナに適応できなかった企業の退去は仕方がないとい
うことのようである。雇用が求人率1倍以上であるし、海外からの労
働力を入れられない現状では、雇用転換はできるとみているようだ。

特にコロナ下で、企業業績が絶好調な物流やECサイト、家需要関係
の雇用は好調に推移している。そちらに移ってもらえばよいという
ことのようだ。特にプログラマーなどが不足することになるので、
職業訓練が必要になるが、そこは国が援助するべきだとは思う。

菅政権では、このコロナ下の時期に過去の実績がある企業より、将
来に向かうウイズコロナ社会でも強い企業を伸ばす方向のようだ。

この見解を示すのがアトキンソン氏である。彼が日本の改革を先導
するようである。デジタル化や中小企業の再編などで生産性を高め
て、賃金を上げて、個人消費を増やすという。

3.菅政権の大戦略とは
菅政権は個々の政策を述べるが、全体的な戦略を語らないが、個々
の政策を見ると、大体、戦略が透けて見えるようだ。菅首相は、大
局を感じてはいるが、言語化ができていない。言語化・戦略化を有
識者が行い、それを首相が、自らの言葉で言う必要はあると思う。

菅政権は、バイデン政権の政策や中国の産業育成策を見越して、再
生エネルギー政策に転換した。デジタル化と再生エネルギー育成策
、地銀や中小企業の再編などが中心になるようだ。しかし、個々の
政策の裏には、大きな戦略課題が見えている。

世界的なコロナ再拡大などで、今後コロナ不況が一層深刻化する可
能性がある。世界でも一番コロナ被害がある米国民の分断が進み、
このため、米国の衰退も見通せる状態になっている。しかし、この
米国の衰退に日本は確実に巻き込まれることになる。

ガン・ドラック氏は、米国のバラマキで社会主義と同じような状態
になり、2027年までには米国の経済的限界に達して、革命が起きる
という。一方、2035年までに中国は、世界の覇権をとるべく、経済
力・軍事力を増強するという。そうすると、近い将来に、米中の力
は逆転する可能性がある。

日本は、中国近傍にあり、中国という全体主義国家の従属国になり
やすい。このため、日本が真の独立を維持するためには、歴史的に
も、経済力・軍事力を中国の侵略を許さないレベルまで上げる努力
をしてきたし、今の日本は、いつまでも米国を頼ることはできない
ので、一層努力が必要になっている。その期限は、2035年というこ
とになる。

1990年以降、日本は米国との構造協議で研究開発力を大きく削がれ
た。このため、国家主導の中国に研究開発力と技術力で抜かされた。
しかし、日本の独立を維持するためには、米国との構造協議を棚上
げして、国家主導で研究開発力・技術力を再構築していくことが必
要になっている。

国家の威信をかけて、中国の侵略を防ぐために軍事力の増強や画期
的な製品を作り経済力を上げる必要になっているのだ。デジタル化
も再生エネルギーも電気自動車、新兵器も中国からの独立維持には
絶対に必要なことだからである。

要するに、日本の大戦略は、米国の衰退を見越して日本が自立して
独立を維持することであり、このためには、中国の経済力と軍事力
に対峙できるほどの力をつけることである。

この一環として、日本自身が敵対国の外国資本による安全保障上重
要な土地の買収に関し、制限を設ける方向で政府は法整備に向けた
検討を開始している。

それとともに、軍事研究を禁止する「日本学術会議」の権威をはく
奪し、日本の技術を他国に売る技術者や研究者を逮捕していく必要
があるのだ。

一方、研究開発力を国家も援助して、再構築していく必要がある。
それと、AIなどで労働生産性を上げて、国民の賃金を上げ、日銀の
量的緩和政策を止めて、財政的な余裕を作り、国民の生活の質を上
げて少子化を止める必要もある。このために、デジタル化や再生可
能エネルギー、電気自動車、中小企業の再編などもある。

黙示録の世界に現在は来ていると、再三再四、このコラムでは述べ
てきたが、世界の人の多くが実感できる所まで来てしまったような
気がする。

特に米国の有名な市場関係者は、ポピュリズムに陥った米国の未来
を危惧しているようだ。

日本も、この状況に対応した戦略を立てて、備える必要になってき
た。安穏とした平和な時代は、とうとう終わりになった。しかし、
その状態を無視して、平和を主張する人たちが多すぎるし、それを
主張する高齢者で頑固な人が多い。

さあ、どうなりますか?


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