6132.ドル基軸通貨の揺らぎ



米中対決で、中国をドル決済システムから追い出せばよいと思うが
、どうもドル基軸通貨自体に揺らいでいるようだ。それを検討しよ
う。                 津田より

0.米国および世界の状況
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
3月2日は26,703ドル、その後急落して3月23日18,591ドルまで下げて
、8月7日は27,433ドルになり、暴落前の水準を抜けた。8月10日は、
357ドル高の27,791ドル、11日は104ドル安の27,686ドル、12日は289
ドル高の27,976ドル、13日は80ドル安の27,896ドル、14日は34ドル
高の27,931ドル。

NYダウは27,000ドルをキープして、米国株は好調である。新規失業
保険申請件数が96万件まで減った。そして、13日実施の260億ドルの
30年物国債の入札が不調で、長期金利上昇になり、それに伴い金が
下げた。1オンスが、1900ドルまで下げたが1950ドルまで戻した。

1兆ドル規模の追加経済政策が議会で依然紛糾していて、特別給付が
無くなり、失業保険給付金しかもらえない状態になっている。この
ため、失業が増えないようである。ロシアでコロナワクチンが承認
されて、それも好感材料のようである。リスクオンの状態とも見え
る。

しかし、株価と実体経済との差が拡大している。ロビンフッダ-と
いう個人投資家が大挙、市場に参入したことで、株価が上昇してい
るようである。

バイデン民主党候補の副大統領候補にカラマ・ハリス氏がなった。
これで、大統領選挙の民主党、共和党の布陣が確定した。

1.日本の状況
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、2月21日は23,427円で、3月19日16,358円まで下げ、6月10日は
23,124円まで戻したが、8月7日は22,329円、11日は420円高の22,750
円、12日は93円高の22843円、13日は405円高の23,249円、14日は39
円高の23,289円。

日経平均株価は、6月10日の23,124円を抜いて、23000円台を復活し
た。8月14日ミニSQで先物のヘッジで大幅高になったようで、特殊要
因の可能性もある。7月までの企業の経営破綻は、430件と広がり始
めている。今後も経営破綻が増えていくことが予想できる。

ということで、株価の上昇と実体経済との差が拡大していることは
確かである。日本も個人投資家が増えてきて、株価の上昇が起きて
いるようだ。

そして、日本での格差拡大は、止めることができない水準になって
いる。新階級社会とも言える状態である。非正規社員はすでに、雇
用止めになっているし、個人経営の飲食業は、すでに潰れたか、潰
れそうである。この上に秋口には、多くの企業で正規社員のリスト
ラが開始することになる。

一方、政府は有名な大企業の雇用を守ろうと、雇用調整補助金の延
長や日銀の株ETF買いの量的緩和で株価を維持することで、格差が拡
大することになる。日本の中産階級が没落して、多くの貧困層と少
しの小金持ち層、ごく少ない富裕層という社会が来ることになる。

このため、小金持ちたちの資産が少なく、資産税を取ることもでき
ずに、ごく少数の富裕層から資産税をとっても高が知れている。

今度の財政再建でのプライマリー・バランスをどう取っていくのか
が、課題になるはず。一方、債務が多いので円安にしてインフレを
起こしたいが、ドル安の傾向で円安にもできない。

2.ドル基軸通貨制度の揺らぎ
米中対立で、中国は、国際的なドル決済システム(SWIFT)から追い出
される可能性から、ドルの貿易決済から人民元の貿易決済にシフト
する必要になっていた。

その中国は、2015年に人民元の国際決済システムのCIPS「Cross-Border 
Interbank Payment System」を作り、現在、世界で2000銀行が加入
している。日本のメガバンクも参加している。

中国政府は、中国の銀行に対して、ドル決済システムを使わないで
CIPSを使えと指令した。主に一帯一路に関係する国との間で使い、
2019年実績で1日当たり1753億元の取引がなされている。

ドルはもう1つ、原油取引の主要通貨であるが、これも中国は人民
元取引の原油先物市場を作り、それを通じて原油を購入し始めてい
る。

というように、中国はドル基軸通貨を使用しない貿易決済を行い始
めている。特に、2020年にはドル利用をしないように銀行に指令し
ているので、中国のドル離れが進んでいる。この中国が世界貿易に
占める割合がトップであり、そのため、ドル基軸通貨の地位が揺ら
ぎ始めている。

逆に、外交問題評議会の雑誌FAで「ドルの基軸通貨を捨てて、貿易
赤字を減らした方が良い」という意見の出てきた。ドルをどうする
のかという議論が今後出てくることになる。

その上にパウエルFRB議長がインフレでも金利を上げるつもりはない
と発言したことで、ドル通貨量は上昇し続けると投資家は判断した。

これらを受けて、ドルの信認の低下が起きている。このため、ドル
安方向になってきた。次の基軸通貨は、人民元ではなくユーロであ
ろうとドル売り、ユーロ買いが出ている。しかし、米長期金利の上
昇でドルを買い戻す動きも出ているが、一時的であろう。

3.米中関係と大統領選挙
CIPS体制ができたので、香港へ国家安全法を施行したようである。
香港のペッグ制が廃止されても、中国は、人民元中心の国際決済が
できるということのようだ。しかし、CIPSでの世界貿易決済の1%
程度しかない。

もう1つの決済方法として、今まで、人民元と香港ドルを交換して
、その香港ドルを米ドルに交換してきたが、HSBCへ米国がドル貸出
を止めると、香港ドルと米ドルの交換ができなくなる。この結果、
香港でもドルペッグ制ができなくなる。決済手段の大きな1つがな
くなる。

中国は、欧米日などのドル決済国との貿易に支障をきたすことにな
るが、ドルから離れるようである。

米国も中国をドル決済システムから追い出すと、中国との貿易決済
ができなくなり、中国からスマホや中国日用品の輸入ができなくな
る。

米国は、中国へのバッシングを強めているが、ドル決済システムか
らは追い出せないでいる。

しかし、当初はトランプ大統領は口だけの対中強硬の姿勢であり、
戦略的な取り組みではなかったが、チェコ上院でポンペイオ国務長
官の演説は、米中関係を冷戦期の米ソ対立と比較し「中国共産党の
脅威に対抗するのはそれよりもずっと難しい」と述べた。

このため、民主主義の同盟国と共に対中国との取組みが必要と戦略
的な政策になるとも言う。

孔子学院を中国の宣伝機関であり、1つの外交機関として認可対象
としたり、FBIは、中国のスパイが米国の技術を盗み出していると
して、中国人のスパイを逮捕するとした。入国管理では、中国人学
生のビザ審査を厳格化した。また、中国先端企業5社との取引がある
企業の米国政府への納入禁止など、戦略的な取り組みになってきた。

しかし、中国との第1次協議の合意の履行をクドロー商務長官は協調
したり、8月15日の米中閣僚会議を行い、ドル決済の利用を制限しな
いことで、第2次協議に入る予定だったが、無期延期になった。しか
し、クドロー氏は「その他の問題では中国との意見の相違は大きい
が、第1段階の通商合意については、われわれは履行している」と
述べている。

トランプ政権内で、クドロー商務長官、ライトハイザーUSTR代
表、ムニューシン財務長官などの経済系閣僚とポンペイオ国務長官
ナバロ補佐官などの安全保障系閣僚の対立があると見えるが、現時
点では安全保障系閣僚の方の意見が優勢になっている。

しかし、米国社会でも、対中強硬派の安全保障系閣僚の意見を支持
されているので、強い対応を取るトランプ大統領の支持率が上昇し
てきた。

もう1つ、シカゴでの略奪事件などで、黒人暴動に嫌悪感が出てき
て、トランプ支持が伸びている。隠れトランプ支持者が増えている。

トランプ大統領の再選する可能性が出てきている。ニューヨーク・
タイムズなどは、郵便投票を推進して、かつ大統領候補同士の討論
会の中止を言い始めて、討論に弱いバイデン候補を応援している。

4.コロナ感染拡大
重症者は、6月中旬には36人まで減っていたが、8月07日116人、11日
162人、12日171人、13日203人、14日211人と日増しに増えている。
そして、大阪の重症者は70人と過去最多を記録しているが、東京の
感染者数は多いが、重症者数は21人と少ない。

GOTOトラベルによるのかどうか、地方の重症者数が多い。このため
、地方の脆弱な医療体制に問題が生じ始めている。特に沖縄での医
療体制がひっ迫してきて、看護師の派遣を他県に要請している。

このように、重症化しやすい65歳以上の人と基礎疾患がある人は、
今後も注意が必要である。50歳から減り始めるT細胞の減少やACE2受
容体の数によって、コロナ感染症で重症化しやすくなる。

首都圏の若い人たちは、抗体検査でも、抗体がある可能性があり、
コロナに感染してなくても、結核菌やその他インフルエンザなどの
感染で既に抗体があり、その抗体の交差作用でコロナウィルスに効
いている可能性もある。この人たちには、コロナ感染症は、単なる
風邪のようなものである。

このため、若い人は、周りに65歳以上や基礎疾患の人がいなければ
、自粛の必要がないが、この人たちまで夏を満喫しないで自粛する
ので、経済活動停滞で、日本の景気を非常に悪くしている。しかし
、この景気の悪さが、日銀のETF買いなどで株高になり、実感として
見えない。

しかし、大不振のANAは、赤字のために5000億円規模の資本調達する
ように、今のままであると、秋口には、空運、鉄道、旅行業などの
企業からリストラが本格的に始まり、この対応が必要になる。

このため、9月に選挙などはできないし、来年までコロナ感染者数が
減らないと、来年の選挙も自民党安倍政権のままでは、大逆風にな
るはず。自民党議員は、逆風を前提とした準備をする必要がある。

というより、内閣支持率が3割割れの寸前まで落ち込んで安倍首相
が退任して、次の首相の下でしか選挙ができないと見える。

それと、東京オリンピック開催も絶望的でしょうね。

感染対策を検証して、重症者が増えきたので、政策を変えることが
必要になっていると思うが、今の政権は、それができないようだ。

さあ、どうなりますか?



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