6125.中印国境紛争で世界の構図が変わる



中国とインドの国境で紛争が起こり、中印紛争は世界の構図を変え
てしまう可能性がある。それを検討しよう。    津田より

0.米国および世界の状況
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
3月2日は26,703ドル、その後急落して3月23日18,591ドルまで下げて
6月19日は25,871ドルであった。6月22日は153ドル高の26024ドル、
23日は131ドル高の26,156ドル、24日は710ドル安の25,445ドル、25
日は299ドル高の25,745ドル、26日は730ドル安の25,015ドル。

南部州、西部州で新型コロナ感染再拡大が起き、米国の1日当たりの
新規感染者数が4万人まで増え、フロリダ州とテキサス州でバー営
業を停止し、レストランの入店者数を制限したことで、経済停滞懸
念で株価が大幅に下落した。

特に銀行へのストレステストを行い、基準に達しない銀行の配当制
限や自社株買い禁止の処置を発動することになり、銀行の株価が大
きく下げた。

もう1つの下落理由として、FRBが最近、お札をばら撒かなくなった
ことからのようだ。資産額が横バイになっている。

経済活動が復活すると期待して株価は上昇したが、コロナ感染拡大
で期待が剥げたが、FRBと米国政府がどんどんお札を刷るので、流動
性相場が続くとして、下がると押し目買いが入り、株価は戻ること
になっっていたが、感染者数の増加で経済的な回復が遅れることと
、FRBが想定よりお札をばら撒かないので、株価は1ケ月ぶりの安値
になった。

しかし、ドル札を大量に発行することで、将来的にハイインフレに
なると見て、富裕層では資産の10分の1を金で持とうという動きが出
ている。このため、金価格が上昇している。

1.日本の状況
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、2月21日は23,427円で、3月19日16,358円まで下げ、6月10日は
23,124円まで戻したが、6月19日は22,476円であった。6月22日は41
円安の22,437円、23日は111円高の22,549円、24日は14円安の22,534
円、25日は274円安の22,259円、26日は252円高の22,512円。

上値は重いが、下値も固い相場でレンジ相場になっている。25日移動
平均線の上下で推移している。

しかし、IMFの世界経済見通しで、主要国の20年の実質成長率は、米
国 ▲8.0%、ユーロ圏 ▲10.2%、日本 ▲5.8%、中国 +1.0%である。
日本は、リーマン・ショック後の09年のマイナス5.4%を下回る水準
の悪化となる。

日銀のETF買いと海外投資家の買戻しで、株価が上昇しているが、
IMFは、日米の株価は高すぎると警告している。

2.トランプ外交交渉の失敗
トランプ大統領は、対中強硬策で米国民の期待をつなごうとしたが
、中国が米国からの農産物輸入を止めたことで、突如、対中強硬策
を中止した。豪州は米国の勧めで中国非難の共同声明を出したが、
米国に裏切られている。

トランプ大統領の中国非難は、いろいろ想定をしたシミュレーショ
ン結果から中国非難をしたわけではなく、検討もなしで言ってみる
という底の浅い対中強硬策であったようだ。

これでは、中国の官僚たちが準備万端の検討をしている対抗策で手
玉に取られることになる。このため、コロナ発生源調査もうやむや
にされてしまった。WHOの脱退もうやむやで、言うこととやることが
別である。感覚外交の限界に来ている。

この指摘を受け、ポンペイオ国務長官は香港への国家安全法適用に
かかわった中国共産党当局者に対して、ビザの発給停止の制裁を行
うとしたが、中国政府は、一線を越えたら、第1弾合意の米農産物
輸入を止めると言い、これもうやむやになる確率が高い。言うだけ
で、実行しない政権になっている。

覇権国になってからの米国の指導者で、このような人はいなかった
ように感じる。マティス元国防長官と同じ感想を持つ。

タルサでの演説で、PCR検査を少なくすると言ったが、ファウチ所長
は聞いていないと、否定した。その場の雰囲気で大統領は発言して
いるので、発言の実現性は低いことになる。対外政策でも、このよ
うなことが多く、トランプ大統領の発言を真に受けない方が良い。
トランプ大統領がその政策を実行してから考えることだ。

次の米国民の期待をつなぐ策として、技術者の入国制限策に舵を切
った。しかし、大手IT企業のエンジニアの多くがインド人や中国人
であり、インド・中国から技術者を止めると、米国の優位にあるIT
企業の技術力は、失われることになる。よって、これもしないはず
と見る。

対中強硬政策もダメ、技術者入国制限も限定的であり、次に、EU
からの輸入品に対する関税を上げると言い、日本に対しても貿易協
議第2弾を行うとした。ドイツから9000人の米軍を撤退するとも言
い、手あたり次第に、同盟国に対して、強硬政策を出している。
しかし、交渉を開始だけであり、11月までに結論が出るとは思えな
い。

それと、新型コロナ感染対策でトランプ大統領は経済を制限するの
を嫌い、それに同調した共和党知事の州の感染者数が大幅に増加し
て、トランプ大統領の支持率が低下してきた。

米感染症研究所のファウチ所長が危険性を指摘していたタルサでの
トランプ大統領の選挙集会では、当初10万人が来ると言っていたが
、6000人程度の参加となった。空席が目立っていた。というように
、コロナ対応の失敗で、トランプ大統領の勢いがなくなってきてい
る。

フロリダ州では、バイデン候補がトランプ大統領を抑えて、支持率
を逆転したし、テキサス州でも支持率が拮抗している。共和党が強
い南部州でもバイデン候補が勝つと、トランプ大統領の勝つ州は、
非常に少ないことになる。勿論、ラストベルトの6つの激戦州も今
の所は、バイデン候補が優勢になっている。

このままいくと、トランプ大統領の歴史的な敗北になりそうである。
勝つためには、絶対に経済復活が必要であり、かつ国民が望む政策
を口だけではなく実行することが必要になっている。

そして、大統領選挙後は、米中冷戦時代になる。分断の時代になる。
バイデンが勝てば、軍産学複合体の時代に戻り、トランプが勝てば
、経済を気にしないで対中強硬策を打ち、国民の期待をつなぎとめ
るはずである。

そして、ここで共和党保守本流陣営は、リンカーン・プロジェクト
と称して、バイデン候補を応援することにしたようである。

米国の政治は、長らく軍産学複合体が共和党も民主党も支配して成
り立っていたが、トランプ大統領は軍産学複合体の言うことを聞か
ない。このため、軍産学複合体は一本化して反トランプになり、バ
イデン候補を応援することにしたようである。

米国の大統領選挙後は、覇権移行期になり、米中対決に世界は巻き
込まれることになる。100年に1回の激動の時代が始まる。

2.中印紛争
ヒマラヤ山脈西部カシミールのガルワン渓谷で起きた軍事紛争では
、死傷者が両軍に出たが、中国が両国の停戦合意した線より、イン
ド側に新しい施設を作ったことで、起きたことが衛星写真で確認で
きた。

中国は、国境紛争地域の全体で、自国の主張を押し通す方向のよう
である。南シナ海での成功で、強引な軍事侵略がどこでも通じると
見ているようである。

日本の尖閣列島、台湾本土、南シナ海の端のインドネシア領である
ナトナ諸島にも手を出し始めている。中国国内での不満がたまり、
愛国心を喚起するために、紛争全地域で攻勢に出ているようにも見
える。

しかし、それは、中国の孤立化を引き起こすことになる。ロシアの
軍事産業の最大のお得意先はインドであり、インドとロシアは、最
新兵器の共同開発も行うほどで、印露の友好関係は固い。そのイン
ドと中国が戦争を起こすことになったら、ロシアはインドに味方す
ることになる。

インドは、ロシア兵器体系で軍備が整備されているので、米国兵器
体系にはすぐにはできない。その点、中国は自国兵器体系にして、
ロシア兵器体系ではない。ロシアはインド軍とは共同作戦が簡単に
取れるが、中国とは密接的な共同作戦は難しい。

日本は米国兵器体系であり、米軍との共同作戦を前提にしている。

中国は、コロナ感染と揚子江の洪水、バッタの農業被害で国内に不
満を溜まっているので、領土拡張で民衆の目を海外に持っていきた
いのであろう。また、中国はパキスタンとの友好関係からインドと
は上海機構加盟国ではあるが、それほどには重要視していないし、
パキスタンとインドの紛争ではパキスタンを支援することになる。

しかし、それでもインドとの不仲は、戦略的な損害が大き過ぎるよ
うに感じる。インドもコロナ感染拡大で、国内での不満があり、中
国軍の侵略を放置できない。

ロシアだけではなく、米国や豪州、日本などともインドは手を結び
、中国に対峙するしかない。インド一国で中国に対応はできないし
、ロシアは、中国の味方のような感じであり、ロシアにも頼れない
からである。

一方、ロシアもインドがロシアから離れられて、米国兵器体系にな
ったら、最大の兵器の売り先がなくなる。

米国は、インドがロシア兵器体系であったので、パキスタンとの関
係を構築して、アルカイダを駆逐するために援助していた。しかし
、パキスタンは、中国との関係を重要視してからは、援助をしなく
なっている。

結果、米国とインドの友好関係と、パキスタンと中国の同盟関係と
なっている。この2つのペアが対立関係になってきた。ロシアは、
インドに着くか、中国に着くかの選択になる。

このため、ロシアも中国との関係を見直すことになると見る。ロシ
アは中立ではなく、インドとの関係優先から、中国との関係を悪化
させても仕方がないとなる。

このため、米国、日本、ロシア、インド、豪州、ヨーロッパ諸国の
中国包囲網が完成できることになる。

しかし、この包囲網は、中国にとっては脅威になるはず。インドと
の関係悪化は、中国にとって、最大の戦略的なミスとなるような気
がするが、どうであろうか?

日本は、中印紛争が「繁栄と自由の弧」戦略にとって、完成を促進
させることになる。

さあ、どうなりますか?


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