6122.米中対決から熱戦の可能性



トランプ大統領の再選に赤信号が灯り、その巻き返しを行う必要が
出てきた。米国民に対中強硬の政策を打つことで、バイデン候補の
親中的な政策に対抗して国民の支持を得ようとしている。その真意
を探る。          津田より

0.米国および世界の状況
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
3月2日は26,703ドル、その後急落して3月23日18,591ドルまで下げて
、先先週6月5日は27,110ドルと下落前の株価になった。8日は461ド
ル高の27,572ドル、9日は300ドル安の27,272ドル、10日は282ドル安
の26,989ドル、11日は1861ドル安の25,128ドル、12日は477ドル高の
25,605ドル。

今週は、景気のV字回復期待が崩れた。政府機関も2月に123ケ月の長
い景気回復期は終わり、3月はリセッションになったと言う。

そして、FOMCでパウエル議長は「景気は当分回復しない」というし
、新規失業申請件数も100万件もあり、失業者数は3000万人を多く、
新型コロナ感染第2波の可能性が出て、黒人差別撤退のデモ隊がシア
トル市庁舎を占拠、自治区を作るなどと発展したことが影響してい
る。

このため、株価も大幅な下落になっている。11日の暴落幅は史上4番
目の大きさになった。

この暴落で給付金を貰った個人投資家が大きな痛手を負ったようで
ある。狙いすましてヘッジファンドが、空売りを仕掛けたような感
じもする。それで怖くなり、個人投資家が投げたことで、ここまで
大きな下げになったようだ。

そして、トランプ大統領は、大幅な下げに激怒したことで、ムニュ
ーシン財務長官は、コロナ第2波でも経済活動を止めないと宣言した。

このためかどうか、押し目買いが入り、12日、株価は上昇した。

しかし、まだ、株価は高い水準にあり、今後も不安定な状態になっ
ていく。個人投資家も暴落を意識することになり、高値では買わな
いことになる。

また、シアトル自治区をトランプ大統領は、軍を派遣して鎮圧する
というが、シアトル市長は反対している。しかし、シアトルは、マ
イクロソフト、ボーイングなどの超優良企業の集積地でもある。こ
のままにはできないが、米国崩壊の次のフェーズに来たようだ。

その上、FRBは、資金供給を続けていくので、ドルの価値が下がり、
ドルが基軸通貨ではなくなる危険性も出てきた。このため、中国な
ど各国中央銀行は、デジタル通貨を促進することになる。ドルに代
わる基軸通貨は、デジタル通貨になる可能性が高い。

世界は、米国覇権崩壊後の準備をする必要になっている。

また、新型コロナは、ブラジルなど南米、イランなど中東で感染拡
大が続いている。米国も第2波の感染拡大が起きようとしている。

1.日本の状況
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、3月19日16,358円まで下げて、先々週の6月5日は22,863円で、
8日は314円高の23,178円、9日は87円安の23,091円、10日は33円高
の23,124円、11日は652円安の22,472円、12日は167円安の22,305円。

11日の暴落のNYダウを受けて、12日はメジャーSQで日経平均は、
朝700円安で始まったが、終値は167円安と戻して終わった。PBRが1
倍の21,700円付近で上昇になった。

日本は米国とは違い、東京アラートの解除などで、経済もウイズコ
ロナの状態で正常化し始めている。しかし、景気回復には時間がか
かる。日本企業は、新常態でのビジネスの在り方を模索し始めてい
る。

ウイズコロナの状態で第2波の可能性もあり、政府も、デジタル化を
促進して給付を素早くできるようにする。やっと、日本も遅れてい
た電子政府が動き始めるようである。

2.グローバル化とは何だったのか?
グローバル化とは、米国などの国際的な企業が、中国の農民工の労
働力を安く使い、コストを下げて利益を拡大するために、中国など
で工場を建てて、または下請けに発注した行為である。

この裏にはインターネットという安価な通信手段があり、ジェット
機という速い速度の移動手段があったことで、可能にした。

東南アジアより中国の教育制度が完備していて、中国国民の知的能
力も高く、かつ安い労働力であり、世界は中国で、製造した製品を
売ることで大きな利益を得ていた。世界は、それの影響でデフレを
起こしていた。

中国は、海外企業の利益に税金を掛けて、その金を農民工に還元せ
ずに、世界の鉱山を持つ貧困国や、一帯一路沿いの貧困国にばら撒
いて、中国圏を形成しようとした。

この世界企業の利益と中国の海外投資の財源は、農民工に正当な賃
金を払わないで得た資金なのである。農民工を搾取して得た資金と
言うことができる。

このため、農民工は、貧困のままになっている。しかし、この新型
コロナで、農民工が失業して復帰できずに、不満が出ている。

1960年代の日本の政策と同じように、中国政府も世界にばら撒かず
に、農民工の田舎に資金を投入して、農民工の生活レベルを上げれ
ば、内需で経済が活性化できたはずである。この農民工は、実に6億
人もいる。中国の人口の半分の人たちだ。この人たちに金を渡せば
、内需拡大になる。

しかし、しなかったことで、今後も外需に頼るしかないことになっ
ている。そして、世界にばら撒いた投資資金は、貧困国であり、返
済されないことになる。

この揺り戻しが起きていると読んだ方が良い。はじめに農民工の搾
取ありき。搾取した資金の配分を米中と企業で行ったのである。

このため、米国企業は、中国の安い農民工が必要であり、米中対決
を嫌っている。しかし、米国の貧困層は、中国の農民工に仕事を奪
われたと、怒っている。

中国も農民工を今後も当分利用して国力を上げようとしている。そ
のためには外需が必要であり、米国への輸出が必要になっている。

米中が共に内部の多数を占める貧困層の不満を背景に、対外的には
強硬な対応をするが、経済的な観点からは、対立ができない。米中
対決には、そのような矛盾を抱えている。

3.トランプ取引外交の限界
バイデン候補は、IT企業が資金提供者であり、国際企業論理により
中国への融和的な政策になる可能性が高い。

トランプ大統領も、金融企業などの東海岸の企業が資金提供者であ
り、中国への経済的な関係悪化はできない。このため、対中強硬策
は、言葉上の問題になる。または、金融機関の抜け道のある強硬策
を取ることになっている。しかし、バイデン候補に勝つために、対
中強硬政策を行うしかない。

中国企業をNY市場から締め出すというが、政権内部に多数いるゴー
ルドマン・サックス出身者からの情報で、ゴールドマン・サックス
は、中国上海市場の海外開放に合わせて、中国での取引を拡大して
いる。香港への優遇処置廃止も検討するというだけで、現実的な政
策にはなっていない。

言葉上の米中対決を演出していると見た方が良い。米国の白人貧困
層にアピールするだけの対中強硬策である。事実、中国から米国に
戻る米国企業は、ほとんどない。

米国の言葉上の対決と、情報統制を行い始めた。そして、中国も、
対抗上、情報拡大をして、米国の中国批判に対抗としている。

ツイッター社は、17万の中国代弁者のアカウントを削除したし、
ZOOM社は、天安門事件の会議を削除、関係者のアカウントも一時停
止するなど、米中の情報戦争になってきている。

しかし、米中の経済関係を停止していない。中国は第1段階合意の
米国農産物を買っている。米国も中国からの輸入を制限していない。
米国のライトハイザーUSTR代表、ムニューシン財務長官と劉鶴副首
相の間で話して、米国の真意を確かめたはずである。

一方、トランプ米大統領は、11月大統領選挙で「確かに私が勝てな
ければ敗北する。つまり、他のことをするということだ」と語り、
負けを受け入れるとした。支持率でバイデン候補と10ポイント以上
も引き離されている。差を埋める必要がある。

しかし、NY株価を上昇させるためには、対中強硬策も打てなくなり
、バイデン候補の中国融和政策を非難できない状態で、その上、経
済活動を再開したがコロナ感染拡大が起き、再選のための支持者集
会を開こうとすると、米感染症研究所のファウチ所長から感染する
リスクがあり「危険だ」と言われるなど、散々な目にあっている。
このようなことで、負けると確信した感じを受ける。

中国は、トランプ大統領の本音を知ったことで、チャンスと見てい
る。軍幹部が台湾侵攻を言い、そのための準備をし始めた。台湾海
峡で空母2隻を含めた訓練を行い、厦門では、短距離ミサイルの射撃
訓練を連日、行っている。中国のスポイ32が、台湾上空を飛び、
領海侵犯で、F-16が緊急発進するなど緊張が続いている。

また、南シナ海では、行政権を確立して、次の行動の準備をしてい
る。台湾領である東沙諸島の侵攻であり、この訓練もしている。

中国は、トランプ大統領と米軍との間に溝があり、米国家安全保障
会議のシニア・リーダーの半分が女性であり、米国は戦争ができな
いと見て、次の行動に移ると、米中冷戦ではなく、一気に熱戦にな
ってしまわないかと心配になってくる。

そして、中国が一歩踏み出すと、米国としても容認できなくなる。
11月に米大統領選挙で勝つためには、中国が台湾侵攻をしたら米国
も戦うしかない。そして、これがトランプ大統領が勝てる唯一の方
法でもある。

どちらにしても、トランプ取引外交では、同盟国も安心して米国の
後についていけない。いつ、裏切られるかわからないからである。
中国が米国に有利な条件を出すと、中国と合意する融和政策になっ
てしまうために、米国が行うという中国との対決に踏み出せない。

4.日本はどうするか?
英国は、米国に代わって、覇権移行期に音頭を取る意向のようであ
る。G7の代わりにD10を提唱している。G7+豪州、韓国、インドを
含めた10ケ国で首脳会議を行うとした。

トランプ大統領は、D10にロシアとブラジルを読んで12ケ国で会議を
するというが、ロシアは中国がいない会議は無効と拒否、ドイツも
参加見合わせという。トランプ大統領は、ドイツにいら立ち、ドイ
ツから1万人の米軍を引き上げると発表した。しかし、裏切る可能
性がある信頼感がない米国の提案を聞く国は少なくなっている。

このような状態になり、日欧が中心で世界の自由・人権・民主主義
を守るという価値観外交を進めていくことが重要であり、トランプ
氏やメルケル氏のような取引外交をしてはいけないと思う。

メルケル首相は中国との関係を重要視していて、中国に不利になる
宣言には参加しないようである。EUは中国の人権無視な対応を批判
するが、メルケル首相はそれをしない。

このドイツを説得して、宣言をすることが重要である。豪州は、対
中的には強硬になってきた。豪州は価値観外交をしている。中国は
豪州からの輸入をなくし、中国人の観光をさせないという制裁を加
えても、豪州はコロナ発生源調査を主張し、香港への国家安全法の
適用を非難している。

日本は、中国との関係を維持するが、価値観外交を進めることも重
要であり、D10での会議では、価値観外交を進めていくことだ。

日英欧同盟で、英国や豪州が提案して、日本が同調するような形が
良いのかもしれない。

さあ、どうなりますか?

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