6121.トランプ再選不可で日本は?



米国内の抗議デモを、トランプ大統領が軍で制圧しようとしたため
、マティス元国防長官にまで「国を分断させる」と非難された。こ
れでトランプ再選は、ほとんど不可能になったようだ。その時の日
本はどうするかの検討。          津田より

0.米国および世界の状況
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
3月23日18,591ドルまで下げて、先先週5月29日は25,383ドルで、6月
1日は91ドル高の25,475ドル、2日は267ドル高の25,742ドル、3日は
527ドル高の26,269ドル、4日は11ドル高の26,281ドル、5日は829ド
ル高の27,110ドル

黒人暴動やコロナなどの問題点があるが、経済活動再開期待で連日
の大幅高になっている。自宅でのリモートワークで、株取引を個人
投資家が盛んに取引して、株価を上げている。実体経済とは関係な
いような雰囲気になっている。

給付金で米国の個人所得は10%も増えているが、消費支出は14%も減
っている。結果、貯蓄が33%も増えた。この貯蓄で株投資をしている
ようである。

その上に、5月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数は250万人増で
、失業率は13.3%と大幅な改善となり、大幅高になった。

ナスダックは、2月19日の最高値9838ポイントに迫る9814ポイントに
なった。場中に9845ポイントになり、史上最高値を抜ける場面もあ
った。

欧州では、欧州復興基金をドイツのメルケル首相が賛成して、かつ
ECBは1兆3千ユーロの金融緩和策を実施するなどで、欧州経済の落ち
込みが限定的になったと、ユーロが上昇している。

メルケル首相は、EUの一体感を保持して、次の世界秩序の中心に
なることを目指しているように感じる。米国の衰退がハッキリして
きたので、次に世界を支えるのはドイツであると見ているようだ。

しかし、「倹約4カ国」と呼ばれるオーストリア、オランダ、スウ
ェーデン、デンマークは、欧州復興基金に反対している。

1.日本の状況
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、3月23日18,591ドルまで下げて、先々週の5月29日は21,877円
、6月1日は184円高の22,062円、2日は263円高の22,325円、3日は288
円高の22,613円、4日は81円高の22,695円、5日は167円高の22,863円。

15週売り越していた海外投資家が、大量な買いに回り、日経平均株
価が連騰に沸いている。その上に、日本も自宅でのリモートワーク
で、個人投資家が増えて、株価を押し上げている。2万3千円台に乗
せると、コロナ下落前の水準になる。実体経済は悪いが、株価は高
い状態になっている。

それと同時に、1ドル109円台と円安に向かっている。米国長期金利
の上昇で金利差が拡大したことで、円安株高のリスクオン相場の形
になってきた。

1次と2次補正予算で60兆円と大幅な財政出動をするが、年間予算は
100兆円であり、大幅な増額になっている。3次補正予算の可能性も
ある。しかし、この補正の税収はないので、すべて国債であり、そ
の国債を日銀が無限大に買うという。政府と日銀が一体で資金を作
るということは、実質的に財政ファイナンスである。市中の通貨量
が増えることになる。この面からも円安になる。

FRBの無限大の金融緩和で、日銀が何もしないと円高になるが、財政
ファイナンスを行うことで、円高を止めて円安にしている。日米が
協調的な金融緩和を行っているとも見える。

しかし、現在、このコラムで提案した大幅な財政出動を実行するこ
とで、大恐慌を止めるしかない。

というように、想定した円安である。ハイインフレになる可能性も
あるので、国民の皆さまは、株投資や海外投資をして、円で持たな
い方が良いことになる。このためがどうか、日経平均株価も上がり
、2万3千円台直前となったのでしょうね。

2.米国の抗議デモを武力で鎮圧か
ミネソタ州でのフロイドさんを窒息死させた警官に対する抗議のデ
モが米国全土に広がっている。一部暴徒化して、裏にアンティファ
という中国の組織があるとして、このデモに対して、トランプ大統
領は、「民生・軍隊など連邦政府の資源で利用できるものをすべて
動員する」と警告した。

しかし、抗議デモに対して人種差別反対の見解もなく、人権擁護の
言葉もなく、テロ組織の行為であり、軍を使った鎮圧をするとした。
その上、州兵を使わない州知事を非難した。

そして、平和的なデモを行っていたワシントンのデモ隊に対して、
州兵が催涙ガス弾を発射しデモ隊を制圧している。一部の過激な暴
動に対する州兵の行為はまだ、許されるが、平和的なデモを力で制
圧した。

これに対して、マティス元国防長官が「ドナルド・トランプ氏は、
米国人を結束させようとしないばかりか、そのふりさえしない。こ
んな大統領は私の人生で初めてだ」「それどころか、私たち米国人
を分断しようとしている」と批判した。

これに続いて、マーク・エスパー米国防長官も反乱法を発動して連
邦軍武隊を派遣し、デモを鎮圧することに反対すると表明。
エスパー氏は記者団に対し、「このような状況下で行政当局に対す
る支援を行うには、州兵が最も適しているとこれまで常に考えてき
たし、今後も変わらない」と表明。「現役部隊の動員という選択肢
は、最終手段としてのみ使われるべきで、最も緊急かつ差し迫った
状況に限られるべきだ」とし、「われわれは現在、そのような状況
にない」とした。

6月4日は、31年前に天安門事件があった日であり、平和的なデモ隊
に中国人民軍が出て弾圧したが、これと同じようなことを民主主義
国家の米国でも行うことになりそうになった。

トランプ大統領は、「人権」より「法と秩序」を優先したことで、
香港での国家安全法を施行する上で、香港市民のデモを軍事力と警
察力で完全に抑え込む習近平国家主席の「人権」より「法と秩序」
と変わりがないことにもなる。

このような情勢で、政治的な発言を控えていた前・元米大統領4人が
、記者会見を行い、暗にトランプ大統領の軍によるデモ鎮圧を非難
した。

エスパー米国防長官も多くの米軍幹部から抗議を受けて、軍隊の派
遣を停止したようであるし、軍隊の構成員に黒人が多く、抗議デモ
の鎮圧は、軍の中にいる黒人たちが反乱を起こす可能性もあった。

事実、州兵が抗議集会に同調して参加していた州もあるし、警察官
が抗議集会で片膝を立てて座り、同調する姿もあった。

これと同じことが米軍でもおきる可能性が高いのは、米軍のトップ
層まで黒人がいるからであるが、そうすると軍の反乱となり、米国
の崩壊になる危険性も、歴史家で人格者のマティス元国防長官は見
ていたように感じる。軍隊はあくまで外の敵に使うものであり、国
内のある勢力に使うときは、慎重に行う必要がある。

事実、ミリー統合参謀本部議長、マッカーシー陸軍長官、ギルデイ
海軍作戦部長、ゴールドファイン空軍参謀総長などが「軍は米国民
とともに」と表明して、トランプ大統領、総司令官の命令に従わな
いとした。普通なら、エスパー国防長官と米軍幹部を大量に解雇す
ればよいが、それもできない。軍を敵にすると、クーデターやトラ
ンプ暗殺の可能性も出てくる。

というように世論が分裂した状態で、軍を使うことは難しい。その
ような基本的なことも知らないトランプ大統領は、大きな反発を受
けることになったようである。

軍出動は、ローマ帝国の最後と同じになる。ローマ軍の主力がゲル
マン民族になっていたが、ゲルマンの反乱にローマ軍が出動したが
、逆に反乱軍になって、ローマ帝国は滅亡する。

このため、バイデン候補の支持率が急上昇している。トランプ大統
領の支持率はコアな人たちであるので支持率40%と変わらない。黒人
層が大挙して、バイデン候補を支持し始めた。福音派の一部や共和
党保守本流もトランプ大統領から離れたようである。

批判が大きくなり、やっと、トランプ大統領は、フロイドさんが受
けたような暴力は許されないと発言。「法の下の平等な正義は、人
種、肌の色、性別、信条に関係なく、全ての米国人が法執行機関か
ら平等な扱いを受けることを意味しなければならない」と語った。
やっとである。

というように、ローマ帝国崩壊と同じような米国の崩壊を目の前で
見ている。米国の破壊者トランプ氏の破壊力はすごいことになって
いる。米国の理念も潰し、米国の時代は過ぎ去った。

3.日本の外交はどうするか?
トランプ大統領の「人権」より「法と秩序」の考え方に、ドイツの
メルケル首相、カナダのトルドー首相も唖然としている。このため
、メルケル首相は6月に計画したG7首脳会議への出席を辞退した。
また、イギリスのジョンソン首相も、ロシアをG7に復帰させるとい
うトランプの提案を拒絶した。

このようなことは、欧州の同盟国や友好国が、いかに米国に幻滅し
ているかを表している。特にトランプ大統領の抗議デモに対する人
権無視のデモ弾圧で、ダメ押しになったようだ。

ホワイトハウス周辺の平和的なデモ隊が「強制排除」されたことに
、メルケル首相をはじめヨーロッパの複数のトップ層から非難の声
が上がった。トルドー首相は、悲痛な顔をして「見たくないものを
見た」とコメントしている。

逆に、いつも人権問題で米国から批判されてきた中国は、米国内の
人種問題や人権抑圧を嬉々として取り上げ、イラン外務省の報道官
は「国家による弾圧」に立ち上がった米国国民に同情の意を表した。

米国のデモ弾圧で、中国は香港デモ弾圧を正当化できることになり
、天安門事件も正当化できることになってしまった。

また、中国は、米中貿易協議の第1段階合意の米国からの輸入を止め
ている。合意を破棄はしないで、米国の出方を見ている。トランプ
大統領も景気浮揚のためには、中国への輸出が必要であり、中国へ
の非難をどうするのか、米中は腹の探り合いをしている。

米国の対中政策は、言葉上では非難しているが、まだどうなるのか
わからない。トランプ外交は、取引外交であり、主義主張がなく、
成果があれば簡単に変わることが多い。

国内のデモ制圧や対中関係などで、トランプ大統領の支持率が少し
下がり、バイデン候補の支持率が上がり、差は10%以上になっている
。このままであると、11月の大統領選挙で再選されないことになる
。勿論、まだ5ケ月もあり、わからないが、トランプ氏が大統領では
無くなることも視野にいれる必要が出てきた。

ということで、米民主党バイデン候補の対中政策がどうなるのかが
、重要な外交政策決定のキーになってきた。

しかし、バイデン候補の対中政策が誰にも分らない。中国はハッカ
ー集団を使い、バイデン候補のサイトに侵入して政策を探ったよう
である。というように、中国にも分らないのであろう。

もう1つ、心配なのが米国の大統領が変わると、今まで進めてきた
米国との約束がすべて反故にされてしまうことである。トランプ大
統領と進めてきた日米同盟の枠組みが反故になることもありえる。

しかし、同盟国や友好国から信頼されない、予測できない米国と日
本が同盟しても、何も解決できない。中国に対抗することもできな
い。中国対抗の効果的な国際秩序や規範も構築できない。

日本は、単純に米国との同盟関係を維持すればよいという事態では
無くなってきた。人権を旗印にできない米国の世界覇権は、失われ
ようとしている。

日本は、ドイツなどの欧州や英国と緊密に連絡を取り合い、米国抜
きでも国際秩序や規範を共同で決めていくしかない。米国は当分、
主義主張がない予測できない、取引での外交と割り切り、そのよう
に見て、距離を置いた友好な関係を構築するしかない。

そして、バイデン候補の対中政策を見て、次の日本の外交政策に出
るしかない。そこまでは、中国に対する政策もあいまいにするしか
ないのかもしれない。

中国と米国が「人権」より「秩序優先」という同じムジナになった
ことで、正義の理念は消えた感じになった。今までの世界正義の人
権外交を日欧で引継ぐしかないようだ。

さあ、どうなりますか?


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