6118.米中対決で中国の経済崩壊か



新型コロナウィルス感染症を中国で阻止しなかったと、米トランプ
大統領は再選戦略上、中国バッシングを行うことで米中対決モード
になってきた。今後を検討する。      津田より

0.米国および世界の状況
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
3月23日18,591ドルまで下げて、先先週5月8日は24,331ドル、11日は
109ドル安の24,221ドル、12日は457ドル安の23,764ドル、13日は516
ドル安の23,247ドル、14日は377ドル高の23,625ドル、15日は60ドル
高の23,685ドルになった。

今週は、米国の経済活動の再開をしたが、第2波の警戒感が強く、株
価は値下がりした。マイナス金利をトランプ大統領は要求したが、
パウエル議長は否定的である。9日週の新規失業保険申請件数は298
万1000件となり、3月中旬以降の失業保険申請件数は3650万件に達
し、5人に1人以上が失業した計算になる。

ソロスファンドを管理していた有名なヘッジファンド運用者のスタ
ン・ドラッケンミラー氏は、米経済のV字回復見通しで、「市場で
は『心配ない。米金融当局の支援がある』というのがコンセンサス
のようだ」が「空想」だと述べ、株式のリスク・リターン計算は、
これまでの職業人生で見た中で最悪だと語った。そして、パウエル
議長も景気低迷が長期化すると警戒して、追加的な金融緩和を行う
と言及。

現実、値上がりしているのは、GAFA+Mの5銘柄だけである。FB、AMZN
、AAPL、MSFT、GOOGLである。バフェット氏は、航空株の次に米大手
地銀株、ゴールドマン・サックス株の8割も売って、現金ポジション
を増やしている。大暴落を見越しているような感じである。事実、
1Qでの決算でもGAFA+M以外の企業は悪く、株価は下落し始めた。

景気が後退して株価が下げると、最終的にはFRBが、株ETFを買い始
めることになると、ファンドは期待している。このため、株価が落
ちたら買い場とトランプ大統領の再選が決まる11月までは、行け行
けドンドンの様子だ。

1.日本の状況
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、3月23日18,591ドルまで下げて、先々週の5月8日は20,179円、
11日は211円高の20,390円、12日は24円安の20,366円、13日は99円安
の20,267円、14日は352円安の19,914円、15日は122円高の20,037円
となった。

緊急事態宣言が39県で解除されたが、企業決算での収益激減で、株
価は大幅下落となり2万円割れたが、15日に日銀ETF買いで辛くも、
2万円台とした。EPSは年初めに1642円で、4月末1256円であったが、
5/13で853円まで下げている。

5/13時点でPERは、23.74倍で割高であるが、今後EPSは500円以下ま
で落ちるので、PERは30倍以上になることが予想できる。非常に割高
な水準になる。現在、株価が高いのは、個人投資家が、大挙して株
投資をし始めたことが原因であろう。

しかし、PBRは0.9倍台であり、割安とも言える。この2つの指標で
評価が割れているのが現在である。当分、コロナからの脱却もなく
V字回復もなく、今後の企業業績がどうなるのかがキーになる。

2.中国の膨張の必要性
中国海警局の船が尖閣諸島周辺の日本漁船を追尾した問題に関し、
中国外務省は、日本漁船が「中国の領海内で違法な操業をした」と
批判し、「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国固有の領土だ」と強
調、日本側に外交ルートを通じて主権侵害をやめるよう申し入れた
と説明した。

施政権を確立した南シナ海の領有権を確保して、次に尖閣列島と台
湾領である東沙諸島の侵略を開始したようである。

中国は国内不平分子を黙らせるためには、中国が強大であり世界に
認められた世界帝国であるとして、独裁を国民に納得させる必要が
ある。方法としては、内部の不満を外に向けさせるという独裁国の
伝統的な政策を取ることになる。

中国は共産党に資本家の参加を許し、かつ、政治家の息子たちを国
営など大企業のトップに付けて、資本主義国家となっている。この
政治家の息子の経営者たちが利益優先で運営するために、低賃金の
農民工が必要になっている。低価格で製品を作るには、どうしても
労働の低賃金化が必要であるからだが、農民工たちは搾取されてい
る。

この農民工たちの不満が爆発することを、中国政府も共産党も、恐
れている。このため、監視社会を作るとともに、貧困層の不満を外
に向ける必要があるのだ。特に、貧困層にコロナで失業が多数出て
いるから、なおさらである。

そして、外部へ目を向けさせる方法として、中国がお得意の遠交近
攻の外交戦略である。内政のための外圧であり、止めることができ
ない。

このための、遠交の一帯一路と、近攻の海洋権の確保がある。この
ため、力を付けた中国に対応することになる中国近傍の国は、大変
である。

中国近傍の国は、中央アジア諸国、フィリピンや韓国のように中国
に妥協するか、台湾と日本、ベトナムのように中国と対決するかの
選択が必要になる。今年中に、習近平国家主席が韓国訪問する方向
で調整している。中国の味方にするべく韓国を固めるようである。

このため、米国と米同盟国と中国敵対近傍の国は、共同で中国に対
抗するしかない。世界的な反中国陣営を作り、対抗することになる。

3.コロナでの対立
米国や米同盟国も、中国への感染症の世界的な流行の賠償請求と、
このウィルスの発生源調査を要求している。もう1つが、台湾のWHO
への加盟を要求している。しかし、WHOを味方にして、中国はコロナ
発生源調査を拒否して、かつ台湾の加盟を阻止している。

台湾加盟や発生源調査を要求するオーストラリアやニュージーラン
ドに対して、制裁的な輸入制限をし始めた。しかし、米同盟国であ
る2ケ国は、中国へ妥協をしないようである。ファイブ・アイ諸国
は、この件では結束している。

このような中国の外交政策に怒って、カナダはパンダを返すことに
して、中国との関係を見直す方向だ。英国も中国への賠償請求に参
加したし、フランスやドイツも中国へコロナ発生源調査を要求して
いる。

中国は、台湾への武器輸出をするフランスに止めるよう要求したが
、フランスは、中国の警告を無視、反対に中国に新型コロナ発生源
の調査をしろと迫った。

今後の新しい感染症の発生を阻止するためにも、コロナ発生源調査
は必要であるが、中国は拒否している。この拒否の姿勢で、武漢ウ
ィルス研究所からウィルスが漏れたのではないかと言う疑いを欧米
諸国に持たれている。武漢ウィルス研究所を閉鎖したとも伝わり、
疑惑を一層強めている。

このため、中国はイタリアやスペインを味方にすべく、医療支援や
医師の派遣を行い、中国の味方として勢力圏とする考えである。こ
れに対して、ドイツの国内重視派は、ドイツ憲法裁判所を使って、
イタリアとスペインを利する欧州中央銀行の量的緩和を不当として
、ECBから権限を奪うか、ドイツのEU脱退を推進することになる。

これに対して、ドイツ国際派(EU推進派)のフォン・デア・ライエ
ンEU委員長は、不当とドイツ憲法裁判所の判決内容をEU裁判所に提
訴して否定している。どちらにしても、欧州が、中国派と反中国派
に分裂することになる。

4.米国の中国バッシング
トランプ大統領は、再選を果たすためには、中国に対して強く出て
、国民の支持を強固にする必要があり、バイデン候補のあやふやな
対中政策が間違いであると強力に言う必要がある。この主張が国民
に受け入れられたら勝つ可能性もあると考えているようだ。

このため、米公務員年金基金の中国企業への投資を中止しろと命令
して、基金は投資の無期延期を決め、ファーウェイ製品調達禁止の
大統領令を1年延長し、米半導体企業へのアクセスも制限した。ま
た、NY証券取引所に上場している中国企業への監視を強めるとも述
べている。米国の先端技術や資金が中国に流れないようにするよう
である。

トランプ大統領は、続けて「私たちは多くの措置をとることができ
る。中国との関係を遮断することもできる。もし関係を途絶えさせ
たら、5000億ドル(約54兆円)を節約できる」と述べた。このよう
な断交とも受け取れる強い表現で中国を威嚇した。しかし、中国手
持ちの米国債は、1.1兆ドルあり、米国債の無効化は排除されている
ようだ。その上に、米国議会は両党一致して、ウイグル人権法案な
どの中国制裁法案を多数可決している。

それに対抗して、中国は、アップル、シスコシステムズ、クアルコ
ム、ボーイングを「信用できない企業リスト」に登録して、中国国
内活動を制限する構えであるが、中国側は、国交断絶を心配し始め
ている。

この理由は、この米国の対応で、中国から投資を引き揚げ、貿易を
止められたら、新型コロナで痛めつけられた中国経済が持つのかと
いう疑問が出てからだ。また、中国企業の多くがNY市場で上場し
ているし、それが信用になっている。NY市場から追い出されると
、中国企業に投資していた日本企業にも大きな影響が出る。

また、今、中国は新型コロナの影響で失業率は20%以上になってい
るとも言われている。企業倒産も多く出ているはず。中国企業は、
今までも借金が多く、何とか政府、人民銀行が企業の赤字を穴埋め
していたことで成り立っていた。NY市場で投資された資金や海外
企業の税金が頼りなはずが、海外企業の撤退で、それもなくなる。

中国の経済崩壊でミンスキー・モーメントが来ると、世界的な経済
金融崩壊になる。中国が倒れると世界的な金融崩壊になる可能性も
出てくる。日本も例外ではない。多くの企業が中国に進出している
が、その企業にも、大きな影響が出る。それはアップルなど世界的
な企業群にも出る。

このため、トランプ大統領の中国バッシングは金融経済的に危険で
あるが、中国も必死なのであろう。失業者が多く、不満がたまり爆
発寸前なのかもしれない。このため、軍事的な脅威を周辺国に与え
ている。もし、中国が金融経済崩壊になると、他国を軍事力で攻め
てくることもあると身構えることだ。

そこを見越して、トランプ大統領は、中国にブラフを掛けていると
も見える。しかし、中国がコロナ発生源調査を受けることもできな
い。武漢の研究所から漏れたことが判明してしまい、膨大な賠償金
請求になる事は避けたいのであろう。

しかし、コロナ・ショックの上に中国経済崩壊が重なると世界的な
金融経済恐慌は一層ひどくなる。日米欧の中央銀行の量的緩和では
、そのショックを吸収できなくなる。世界の大破局になり、株価大
暴落にもなる。今まで見たことがないような大底になる可能性もあ
る。

トランプ大統領は、株価が大暴落したら、再選もないと見ているか
ら、ブラフだけであると祈りたいが、どうであろうか?

5.新型コロナウィルスの世界の状況
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の17日午前3時時点の集計に
よると、世界全体で新型コロナウイルスの感染が確認された人は、
459万6304人となり、亡くなった人は、30万9685人となった。

感染者の多い国は、アメリカで145万4504人、ロシアで27万2043人
イギリスで24万1455人、スペインで23万698人、イタリアで22万4760
人、ブラジルで22万2877人などとなっています。ロシアとブラジル
の増加が著しい。先進国から新興国に流行が移動している。

死者の多い国は、アメリカで8万7991人、イギリスで3万4546人、
イタリアで3万1763人、スペインで2万7563人、フランスで2万7532
人、ブラジルで1万5046人。ブラジルの増加が著しいし、ロシアは
死者数を胡麻化していると英国の新聞は言う。

米トランプ大統領は、感染者数、死者数ともに増大しているが、経
済再開を急いでいる。国民がそれを望んでいるからだが、民主党や
感染症専門家が経済再開を躊躇しているので、再選に有利との判断
がある。トランプ劇場が11月まで続くことになる。

6.ニューノーマルでの産業構造は
東京の新型コロナ抗体陽性率が0.6%と、ほとんど人が新型コロナウ
ィルスに感染していない。このため、免疫獲得と言う正常化は、と
ても無理である。新型コロナへの感染を防止する対応策しかないこ
とになる。

このため、当分、ウイズ・コロナの時代が続き、人の移動が制限さ
れることになる。インバウンド需要がなくなるか、非常に少なくな
る。鎖国状態のままでいるか、台湾などの低感染率国との交流を少
し開くしかない。

また、社会的距離を取って行動するなど、社会経済活動に大きな制
限が当分続くことになる。これに伴い、産業構造も変化する。

今の8兆円規模の観光産業は、今後当分半分以下の規模になる。飲食
店も収容人数を少なくする必要があり、これも収入が激減して難し
いことになる。今は休眠会社化して、雇用調整助成金などで繋いで
いるが、緊急事態宣言が解除されると、廃業になる可能性が高い。

今まで、サービス産業を中心に日本は経済成長をさせてきたが、そ
れができなくなる。アベノミクスの経済成長シナリオの中心的な部
分を大きく変更しないといけない。どう変えるかを検討する必要に
なっている。

ウイズコロナの時代は、サービス産業から製造業・農業などを中心
に据えた経済成長シナリオに戻すしかない。

これから当分は、生活医療の安全保障と言う考え方をする必要にな
る。N95マスク、医療用防護服、医療機器、医薬品、衛生用品などの
原材料から自国生産する必要がある。

いつ生産国が第2波到来で、封鎖されてもいいように、自動車産業は
、生産国を制限して、最終生産国に部品から完成までのサプライチ
ェーンを揃えることが必要である。日本企業は日本の労働賃金も低
くなってきたので、日本に戻すことも考えることである。自国での
サプライチェーン構築のためにも企業利益を考えて、保護主義政策
を取るしかない。

日本が遅れていたが、人の接触を少なくできるIT産業やオンライ
ン化産業も進めていくことが必要になっている。足りない人材は、
海外から日本に呼び寄せることである。

各国が食料不足の心配で輸出禁止になる可能性があるので、農業も
大規模農業で自国生産分を増やすことが必要になる。ここでも保護
主義が必要になる。安全保障のために、保護主義となり、地産地消
経済になるしかなくなる。日本も、安全安心が必要な物は、自国生
産することである。物価が上がるが、安全の方を優先するべきであ
る。

この面からウイズ・コロナのニューノーマルで日本の成長戦略を見
直すことである。

また、社会的制約が大きくなるので、当分、経済規模は大幅な縮小
になり、国民の困窮を和らげるために統制経済を引くしかない。
企業への資本投入で、一部国営企業化することも必要になる。企業
の優先株を取得し、該当株が高くなったら売ると考えれば、国家投
資であると見える。儲けが発生するようにして、財政負担をなるべ
く小さくすることである。国家は、最後の投資家であり、儲けを意
識することである。

同じように、効率的な統制経済にするためには、日銀も株と債券の
逆相関性を利用して、制御するべきなのである。株が上がると債券
は下がるし、株が下がると債券が上がることになる。株が下がった
ら買い債券を売り、株が上がったら売り債券を買う行動で、市中の
資金量を高めないで制御するのである。日銀は、最後の金融バラン
サーでもある。そして、危機の時に社債やCPを買い、企業を助け
ることである。この部分は最後の銀行である。

経済運営に国家が出るのは良くないが、ウイズ・コロナ時代は経済
的な縮小が続く特殊な時代であり、ワクチンができて完全に経済が
正常化できるまでは、国家が前面に出るしかない。

そして、国家統制をきつくして、政府は経済縮小での国民全員が困
窮しない経済体制を作ることである。それと、リスクとしてある中
国経済金融崩壊に対応する仕組みを考えることである。軍事的な側
面も忘れてはいけない。

さあ、どうなりますか?



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