6112.新型コロナウィルスの目標到達点とは



日本は緊急事態宣言を躊躇する間に新型コロナウィルスで医療崩壊
を心配する状況になった。しかし、このウィルスに勝つことは何か
の問いが必要だ。戦略的観点で検討しよう。  津田より

0.米国株価
NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。
3月23日18,591ドルまで下げて、3月27日21,636ドルになっていた。
3月30日は690ドル高の22,327ドル、31日は410ドル安の21,917ドル
4月1日は973ドル安の20,943ドル、4月2日は465ドル高の21,413ドル
、4月3日は360ドル安の21,052ドル。

ドル円は、107円台で安定的になりドル安円高になっている。30日は
、経済対策が充実したことで株価上昇、31日は感染者数の増加が止
まらず株価下落。

4月1日は米政府が最低でも10万人の死者が出ると予測したことで株
価下落。2日はサウジ・ロシアが協調減産との予測で原油価格が上昇
してことで、株価上昇。雇用者数は660万減少したが、原油価格上昇
の方が市場には響いた。

3日は、雇用統計が出て70.1万人減で予想より良く。ism非製造業指
数も52.5と予想より良く、原油価格も28ドルと上昇しているのに、
株価下落。NY州の新型コロナ感染数と死亡者数の増加に反応してい
るようである。

VIX指数は、ショック直後の87から3日の47まで落ちてきた。株式市
場も落ち着いてきた。ここからは、新型コロナウィルスによる感染
数や死亡者数が落ち着くまでは、じわじわ下がることになると見る。

米国の雇用は、2日先週の失業保険申請件数は330万件で、今週は660
万件と倍増したことで、雇用全体の10%が失業したことになる。3日
の雇用統計では70.1万人減とまだ、3月の雇用減を反映していない。
ism製造業指数も49.1と50割れであるが、非製造業指数は52.5と、こ
ちらも3月の状況を反映していない。

しかし、大量失業よりシェール企業の倒産によるCLO債の価格急落の
方が米国経済と日本経済には、大きな影響がある。このため、トラ
ンプ大統領がロシアとサウジとの仲介を行い、サウジはOPECプラス
に、1000万Bの減産を提案するとした。これにより、CLO債の価格急
落を防ぐことで金融危機は回避できるというが、まだ分からない。

6日のOPECプラスの会議は延期になった。ロシアとサウジの意見対立
があるようだと。

もし削減合意ができたら、コロナショックと逆オイルショックの2
重ショックの1つが解決したことになり、少し安心になる。

ガン・ドラック氏やポール・チューダー氏は、3月より4月の方が、
株価は安くなるという。2019年に米国上場企業の社長が1480人も辞
任し自社株を売って逃げたようだ。2019年に社債発行とCPで資金を
調達して自社株買いで、株価を上昇させ、自分の持株を高値で売り
抜けている。

このようなことで、企業業績と株価が大きく乖離していた。そのた
め、現時点は乖離を修正しているだけであり、そのため30%程度の下
げで収まっている。これから、コロナ業績悪化の下げが始まるとい
う。

リーマンショックでは50%下落したので、そこまではいく可能性があ
るという。そうすると、NYダウは14,784ドルまで落ちることになる。

1.日本株価
日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値に
なり、3月23日16,887円まで下がったが、3月27日19,389円になって
いた。3月30日は304円安の19,084円、31日は167円安の18,917円、
4月1日は851円安の18,065円、2日は246円安の17,818円、3日は1円高
の17,820円。

16,500円で底を打ち、日銀の連日の2000億円ETF買いが効いている。
30日志村けんさんが死去で、一時800円安まで行ったが、午後、日銀
のETF買いが入り、304円安まで戻した。31日-2日は緊急事態宣言を
警戒しての下げとなっている。

1日と2日は、ともに1200億円の日銀ETF買いがあるにもかかわらず株
価は下げた。海外投資家は、7週連続合計で14,219億円の売り越し
になっている。もう1つ、株価が下がっているのは、GPIFが日本株を
買っていないことだ。3日はNYダウが上昇したので前場は上昇したが
、後場は大きく下げて1円高と前日と変わらずになった。

企業の業績の下方修正が続いていて、現在までに1兆円の減益になっ
ていることで、1株当たりの利益が3Qの1630円から4Qの1507円まで
下げている。このため、PERは11倍まで減少してきていることで、
PERを見る限り割安感は無く、今後も業績下方修正は続くので、PER
で見ると割高に見えることになる。

そのため、株価下落は、まだ続くことになる。特に両建て経営をし
ていた会社の業績は、大きく下がる可能性が高いし、下手をすると
倒産や身売りになる可能性もあると思う。

為替相場は、先週の111円から今週の107円になり安定した。しかし
、上場企業の採算円レートは99.8円であり、まだ余裕がある。金利
差が1%以下であり、本来ならもう少し円高になるはずが、ドル不足
と日本経済への警戒感が出ている。

しかし、ドル不足が解消すると、円高になり90円程度になる可能性
もある。海外投資家は、売り越した資金をドルに変えているので、
現在はドル高円安になっている。

まだ、新型コロナ不況は始まったばかりであり、治療法と簡易検査
の体制が揃わないと、株価の混乱も収まらない。収まると、逆に通
貨供給量が大きく、ハイインフレを招く可能性も出て、株価は上昇
を取り戻すことになる。いつ、円通貨から株に移すかが問題でしょ
うね。

2.新型コロナウィルスの世界の状況
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、米国の感染者数は4日
4時時点で26万1438人となった。死者も6699人と急増している。世界
全体の感染者数も100万人を超え、死者数も6万人以上となっている。

世界の感染の中心地は、世界の25%を占める米国になっている。

2位はイタリアの11万9827人で順に、スペインが11万7710人、中国が
8万1620人、ドイツが7万9696人、フランスが6万4338人となっている
。死者数では、1位はイタリアの1万4681人、スペインが1万935人
になっている。

欧米諸国の多くの国では、外出禁止令が出て、非常事態宣言が出て
いる。また、検査数も非常に多くして、感染者を隔離している。

まずは、感染拡大を止めることに世界は血眼になっている。NY州知
事のクオモ氏は、マスクの手配から、人工呼吸器の調達を行ってい
るが、それでも足りないと声明している。トランプ大統領も中国の
習近平国家主席に医薬品や人工呼吸器の支援を要請し、ロシアのプ
ーチン大統領にも支援要請をして、ロシアの大型の輸送機で大量の
マスクや人工呼吸器を送ってもらった。

米国は、世界からマスク、医薬品や人工呼吸器を調達しているので
、他国が必要とする医療品が手に入らなくなっているという。

3.日本の状況
4日10時現在、感染者数3142人、死亡者数77人で、特に東京の感染者
数は773人と多くなっている。大阪が346人、神奈川が217人、千葉が
211人、愛知201人である。1日に300人も感染者が見つかっている。

感染拡大が止まらなくなってきて、小池都知事は、緊急事態宣言を
出してほしいと要請しているようである。飲食店の閉鎖指示を出す
ことから、飲食店への補償処置が必要になることから、安倍首相は
躊躇している。予算処置が必要になることが大きい。

しかし、日本の感染症対策の数理モデルを担う西浦教授は、このま
まにすると感染爆発が起こり、東京もニューヨークと同じ状態にな
ると述べている。ノーベル賞受賞した本庶先生も、緊急事態宣言を
早く出す必要があると言明している。しかし、1日の東京の感染者
数が100人を超えてきた。このため、この数日で緊急事態宣言を出す
ことになると見る。

日本方式の感染ルートを追い感染者を探す方式は、クラスターが少
ない時には医療資源を節約できて、非常に有効であるが、感染者数
が多くなり、クラスターが多数できるとそれを追いかけることがで
きず、感染拡大を引き起こすことになる。

もう1つ、このウィルスは、ある密度以上になると感染することが
分かり始めている。1人が感染して、電車に乗っていても換気をして
いれば、他者に感染しないが、複数人が感染していて、電車に乗っ
ていると、ウィルスの密度が高くなり、多くの人を感染させること
になる。

というように、感染者数が少ない時は、感染が広がらないが、ある
程度感染が広がると、感染スピードが速くなるようである。このた
め、感染ルート不明が多くなり、これを放置すると、感染が級数的
な増加になる。

この状態では、感染の可能性がある人を全て検査して、隔離して、
社会的な空間での感染者数を少なくする必要が出る。

ということで、疑いのある人全員を検査することにするしかない。
そのためには、医療負担が大きくなるので、看護師OBや自衛隊の力
を借りることである。医療関係の学生たちにも応援を求める必要も
ある。

今までは、目標到達点がよくわからずに、医療崩壊を防止するとい
う観点が強調されて、何を目指すのか、皆目見当がつかなかった。

4.戦略的な計画が必要
生物戦争の戦場に日本もなっている。この戦いを戦略的に考えるこ
とだ。この戦争に勝つためには、どういう状態になったら、勝ちと
なるかを定める必要がある。目標到達点を定めることである。

目標到達点は、2つの考え方がある。1つは、このウィルスを絶滅す
ること、もう1つがこのウィルスと共存することの2つであるが、
医療関係者は、このウィルスを風邪の強い奴で、絶滅することはで
きないという。ということで、このウィルスと共存するしかない。

次に、その目標点に必要なことが何かを知ることである。このウィ
ルスに感染して死なないこと、重症化しないで治せることと、この
ウィルスに感染していることを簡単な検査でわかることである。

このウィルスはRNAウィルスであり、ワクチンができるかどうか分か
らないので、移らないようにするワクチンは条件としない。勿論、
できたらよいが、それを目標にすると長い時間がかかる。

ということで、簡単な検査と重症化するまでに治せるの2つが必要
になる。次に、この目標到達点に行く目標時間を設定することで、
緊急時であるから候補治療薬の治験期間として1ケ月程度で済ます必
要がある。

もう、すでに中国で治験されているので、その情報ももらい、かつ
、米国や欧州諸国と共同で治験をして早くする。日本の感染者の多
くに治療薬を与える。特に重症に行きそうな患者には与えて、その
結果を集める。このためには、仮承認を数種類の薬に与える。この
薬で多くの人が重症化しないで治るはず。日本の死亡者数を抑える
ことにもなる。

そして、重症化した時点の薬と軽症時の薬の2種類の薬を同時に治
験することである。症例がある程度でき結果が良ければ、直ちに承
認する。基本的な条件等は、他の治療で使用しているのでわかって
いるから、効果の確認だけのはずで、早く承認を与えるべきだ。

それと、阪大発ベンチャーの簡易検査キットで、地域の診療所でも
約15分で感染検査ができるという。これが開発されると、一般の病
院で検査出来て、治療薬ができていれば、それを持って治療できる
ことになる。検体を運ぶ必要もない。デング熱の簡易検査キットを
開発した実績もあり、同じ方法であるので、開発も簡単とのこと。

この検査キット開発も1ケ月程度とすると、5月始めには認可して、
5月半ばには2つが揃ったことで、一応の目標到達点に来ることに
なる。6月始めまでに、一般の病院でも簡単に検査と治療できるよう
な仕組みと内科医の訓練をしていくことが必要になる。

6月にはできるとすると、緊急事態宣言は、多く見ても4月、5月、6
月の3ケ月であり、飲食店などの閉鎖指示で被害を保障する費用、検
査キットの費用、必要な病院設備、必要な病院以外の費用、医療用
機器、用品などの関連費用を積み上げて、予算処置の規模が見える。

この生物戦争の費用全体見積が終わると、今後は、計画の工程管理
を毎週行い、計画通りでないときに、追加の処置などを考えること
になる。このための予備費も見積には入れておくことが必要である
。また、工程管理で期間の遅れを管理する。

このような工程管理は、大きな建物やシステム構築時のやり方と、
一緒である。工程管理のプロを読んで行えばよいことである。

この計画を国民にも説明して、その過程も説明して安心感を持って
もらい、個人の行動を抑制してもらう必要がある。一番の心配は、
いつまで続くのかわからないことである。国民への説明が必要であ
る。

このウィルスとの戦争は、国家プロジェクト化して、専門家を広範
に集めて行う必要がある。5月前半には目途をつけて、6月には本格
実施してほしいものである。

半年以上も緊急事態宣言で経済自粛を続いたら、日本経済も国家予
算も持たないので、事後にハイパーインフレになる可能性が出てし
まう。それだけは避けてほしいものである。

日銀の積み増した量的緩和をどうするのか、これからも国債を買う
必要があるが、どう正常化させるのかも計画しないと、中央銀行の
信任がなくなり、通貨価値が下落してのハイパーインフレになる危
険性が出る。

どちらにしても、新型コロナウィルス流行の早い終息が必要なので
ある。

さあ、どうなりますか?



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