6100.米中第1次合意で米株価上昇



米中通商第1次合意で、米ダウ株価は、市場最高値更新しつづけて
いる。どこまでいくのか検討しよう。     津田より

0.米国株価
NYダウは、米中1次合意で史上最高値更新で1月17日29,348ドルとな
った。ドル円は110円台になっている。金価格は1,557ドルで依然高
い水準にある。

金価格が元に戻らないということは、トランプリスクをまだ見てい
ることになるが、株式市場は総楽観である。

このため、PEGレシオ(PERを利益成長率で割った値)が1.8と過去最
高値に達しているし、S&P500の株価売上高倍率も過去最高値24005
を突き抜けているが、この意味は企業収益や売上高と株価が違いす
ぎることである。株が異常な高値になっていることである。

バフット指数(GDP÷株の時価総額)も150%以上と過去最高の割高水
準になっている。よって、バフットは、現金ポジションを過去最高
まで膨らましている。どんどん株を売っている。近い将来に起こる
であろうバブル崩壊時に株を買う資金を貯めている。

この原因は、FRBの資産買入高が過去最高に達していることで、ドル
札を400BNドル以上も市場に供給しているからであるのと同時に、
米国の景気が良いことである。2019年12月の米住宅着工件数は急増
し、16.9%増の161万戸と13年ぶり高水準となっている。金利が安く
、景気も良く、失業率も3%と低く、皆がこぞって住宅を買っている。

もう1つが、米中1次合意、日米FTA、新NAFTAなどの通商交渉
で、米国の需要を他国に奪われていたが、それを取り返している。
この期待値が株価を異常に押し上げているようにも見える。

しかし、基本は、トランプ大統領が行う再選に向けた株価上昇政策
で、作られた株価上昇で、再選されたら、次には株価を正常に戻す
政策をしないと、永久に株価を上昇させることはできないので、賞
味期限は11ケ月ということになる。そして、そこまで、持つかどう
かということでしょうね。

1.日本株価
日経平均株価は、米中1次合意で1月17日に24,041円になった。1月17
日9時には24,115円と1月14日9時半の24,054円を抜いて年初来高値に
なっている。12月17日24,091円より高くなっている。

日本の株価は、米国ほどには上がらない。その理由が、景気が良く
ないからだ。11 月のCI先行指数は、90.9前月差▲0.7 ポイントと
4ヵ月連続の低下している。11月の現金給与総額は、前年比▲0.2%
と3ヵ月ぶりの減少になり、消費もこのため落ちている。

しかし、景気が悪いのに、株価は上昇して24,000円を回復している。
米国株価上昇の影響で、日本の株価も上昇していることが大きい。
このため、12月末決算発表が始まると、多くの企業の業績が落ちて
いるので、株価は下落する可能性がある。しかし、海外投資家は強
気であり、どうなるのかわからない。株価が下がると押目買いとな
るので読めない。

この時期、消費税増税をして、景気悪化させたことで日本はバブル
崩壊時に、下落幅が小さくできることで、ショックが小さくて済む
ことになる。米国のバブル崩壊時の経済ショックは、非常に大きい
と心配である。

2.米中1次合意で中国国内闘争に
米中通商協議の1次合意は、トランプ大統領の勝利である。2年間で
米国から中国は2,000億ドル以上の米農産物と製品を買うことになっ
たし、知的財産権保護、金融市場の開放を打ち出した。この内、金
融市場の開放は、中国も望んでいたことである。

これに対して、米国は、第4弾の実施分の関税を15%から半分の7.5%
にしただけである。ほとんど譲歩していない。あまりにも不釣り合
いである。

焦点の農産物について、中国は、2020年に125億ドルの米農産品を購
入し、21年は195億ドル以上を追加購入すると確約したことになって
いる。しかし、中国の劉鶴副首相は、中国企業は米農産物を「市場
状況に基づき」購入すると発言したことで、シカゴの先物市場で米
大豆価格が急落した。

ブラジル産大豆との競合があり、市場価格は上がらないと見たこと
で、合意との報道で上がっていた大豆価格が下落したのである。

農産物以外では、2年間に自動車と航空機を800億ドル、サービス関
連を300億ドル、LNGなどエネルギー関連を600億ドル買うとした。

しかし、米国の勝利が確実であり、中国国内での反発が心配されて
いる。環球時報は、第2次合意への交渉は1年以上、行われないとい
うのは、国内闘争が決着しないと始められないということである。

習近平国家主席は、台湾の総統選挙で中国の味方である国民党韓候
補が民進党蔡英文候補に大差で破れ、香港問題は片付かず、中国GDP
成長率も6%とこの10年で最低のレベルになり、その上に米国との通
商交渉でも一方的に譲歩したような状態になっている。

総統になった蔡英文氏は、台湾の脱中国化を進めて、米国との関係
を強固にする方向である。日本にも支援を要請してくる。

このような状態であり、中国の軍部を中心とした国内強硬派は、習
近平国家主席に反撃する可能性もあるようだ。もし、強硬派が実権
を握ると、軍事的な圧力が台湾と香港に迫ることになる。中国の主
権を主張して、それに対抗する米国との対立が危ぶまれるが、どち
らにしてもきな臭くなる。

そうなると、台湾と香港から逃げる人たちが多数出てくると心配に
なる。嫌な感じを受ける。

こうならないように、トランプ大統領は、習近平国家主席を心配し
て、訪中すると言っているが、訪中して何をするのであろうか?

トランプ大統領は、台湾を交渉カードとして使い、カードが必要な
くなると切り捨てるので、危ない。そうならないことを願うが。

3.韓国情勢
日本から韓国に提供したフッ化水素の内、3000トンが行方不明にな
り、日本は、韓国をホワイト国から除外した。この3千トンは、今
まで北朝鮮に渡ったと見ていたが、海上自衛隊は、そのフッ化水素
を、イランに不法譲渡した現場を押さえたことで、韓国艦艇からレ
ーダー照射されたという。

イランのウラン濃縮に必要なフッ化水素は、韓国が提供したようで
ある。イラン産原油とのバーター取引であり、しかし、その後、瀬
取りの取り締まりにNATO軍やイスラエル軍も参加して、韓国の違法
を取り締まっているので、イランへフッ化水素を渡せなくなった。

この結果、イランは原油代金として7兆ウォンを請求することになる
。韓国が日本に対して、ホワイト国への復帰を要請したり、自国企
業での純度の高いフッ化水素製造を目指すのは、イランとの現物取
引のためのようである。

中東情勢の緊迫化に韓国が関係している。同様に、北朝鮮はイラン
にミサイルの部品を供給していることが、知られている。韓国と北
朝鮮が組んでイランとのビジネスを行っていることが判明した。

このため、日本との関係を修復できないのであれば、自由陣営にい
ることはないと見たような気がする。

韓国は、北朝鮮との関係改善を米朝会談を待たずに行うと康京和外
相が表明した。

これに対して、米国の在韓ハリス大使は、韓国が北朝鮮との関係を
構築したいという政策を米韓作業部会で、米韓調整の上で実施して
ほしいと述べたが、それに韓国が反発した。

このため、マイケル・ポンペオ国務長官と、マーク・エスパー国防
長官は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に「米国と韓国は現
在、極めて大きな戦略的課題に直面しており、両国とも現状維持の
状態を続けることはできなくなっている。」と述べて、韓国は同盟
国ではないと表明した。米韓関係は、とうとう政府間関係を調整す
る段階になっている。在韓米軍経費の増額ができないなら、米軍は
撤退する可能性が高いようだ。

韓国は、米国と袂を分かれ、北朝鮮との国交を回復して、朝鮮統一
に向かうようである。この状況を見ると、韓国は中国や北朝鮮との
友好を最優先にすることになり、かつ民主主義を捨てることになる。

韓国がこの状況では、EUや米国とのビジネスができなくなるので、
逃げ出す韓国企業も個人も出てくる可能性がある。

4.日本の進むべき資本主義とは
今年中には、衆議院選挙があり、今の所、自民党が有利であるが、
野党が統一候補を擁立できれば、自民党が今の議席を確保できなく
なる。IR疑獄や「桜を見る会」や日本衰退などの追及しだいでは、
国民は野党に向く可能性もある。

しかし、野党に必要なのは、経済政策である。自民党の批判しかし
なく、アベノミクス以上の経済政策が出てこない。もし、自民党以
上の経済政策が出れば、野党にも政権担当のチャンスが出てくるは
ずである。野党でなくとも自民党内の安倍対抗馬の人でもアベノミ
クスとは違う経済政策が必要である。

時代相から見ると、1929年10月29日のNY市場の大暴落から大恐慌に
行った時代とその後の時代と現在、同じ経路を通っている。このNY
市場大暴落は、2008年9月15日のリーマンショックと相似形であり、
その後、金融緩和として、1930年代では金本位制を止めて、自由に
ドル札を発行できるようにしたし、現在は量的緩和としてドル札を
大量に供給している。

そして、1930年代では、その後ルーズベルト大統領のような国家主
導の社会主義的な資本主義や日本が行った国家統制が強い資本主義
が必要になっている。そして、今、米国では、民主党候補としてサ
ンダースやウォーレン候補がいて、2人は社会主義的な資本主義を
提唱している。トランプ大統領が再選されると、次にはこの2人の
ような社会主義的資本主義者が米国の大統領になると見る。

トランプ大統領は、フーバー大統領と相似形の関税UP政策を行って
いる。将来、トランプ大統領は、世界を混乱に陥れた大統領として
、フーバー大統領と同じで悪役として歴史に載ると見ている。

時代相から見て、日本は、国家統制的な資本主義になるとみている。
日本は、経済成長がない江戸時代的な社会秩序体系になると見るか
らである。

ということで、1930年代と相似形で、需要は増えないことで、投資
も増えないので、国が投資を行う必要になって、貧富の差も拡大し
て、1929年から始める恐慌と同じような状況になってきたのである。

金融緩和政策だけでは、人口減少での経済衰退を止めることができ
なくなり、財政政策で経済衰退を止める必要になり、インフレもジ
ワリと押し寄せ、賃金は上がらず、そのため消費も伸びず、経済敗
戦に向けて進んでいる。

企業は社内留保を上積みして、次の景気後退に備えているというが
、社員への給与を削り、株主への配当金と社内留保に回している。
国民は所得が減り、消費を減らして生活することになる。

自由放任的資本主義で、企業は従業員より株価を気にして株主の方
を向き、それを進めているが、それでは日本全体を見ると衰退の方
向に向かってしまうことになる。

現在、社会保障費関連の費用が増えて、年収1000万円の額面給与の
社員は、手取りで680万円程度しかならないという。このように、高
給取りからの税金も限界に来ている。というように、日本人全体の
所得が大きく棄損してきた。

このため、消費が落ちるのは、どうしようもないようである。ここ
当分は、衰退することになりそうである。安全な円への信頼もなく
なり、円安に振れている。今は、太平洋戦争末期の日本と同じよう
になってきたようだ。

今回の消費税にこりて、消費税を上げることは、当分できないので
、政府は、炭素税を取る方向で検討を開始しているという。所得が
減り、経済衰退はドンドン進行するようである。

しかし、この根本は、資本主義の問題点にある。企業が社員より経
営者や株主を優先にすると、国民全体では貧富の差を埋めることが
できないことになる。

しかし、すでに日銀は多くの企業の大株主であり、このような資本
主義を変えることができる立場にある。

それをするかしないかは、日銀・政府の意向だけである。

もう1つ、必要なことは、経済成長を目指す国家から、経済成長が
できない社会になったことで、社会を定常状態にして、それでも皆
が平穏に暮らす国家に方針を変えることである。このためには、江
戸時代の精神復興が必要であり、国民の規範を再度、強固にするこ
とである。新しい江戸時代の秩序体系を作ることである。

5.統制的な資本主義
自民党安倍政権は自由放任的資本主義を止めることはできないであ
ろうが、野党や自民党内野党は、今まで言ってきたことと整合性が
ある国家統制的な資本主義を行うことができる。その舞台も揃って
いる。

資本主義の根本を変えてはいけないし、民主主義も変えてはいけな
い。するべきことは、抑制的な国家統制である。

すでに、金利と株価の統制は日銀が行っている。追加するのは、大
株主として、株主を優先にする社長を交代させることや、企業が、
日本全体として不利益になることをさせないことである。

社長に、官僚や政治家をさせないことも重要である。部内昇格を優
先することである。経営が傾いた時には、外部からの社長も必要で
あるが、統制違反では、外部からの社長にはしないことである。

もう1つ、行うことは、守るべき絶対生活防衛圏を決めることであ
る。当分、日本の衰退は続くことになるので、その時に優先して、
守ることを決めておくことだ。

今、絶対生活防衛圏で考えられるのは、年金支給と国民皆保険と都
市部の安全・安心と日本人の品位を確保することであろうと見る。

人口減少になる地方への投資を控えて、都市部の安全・安心を拡充
して、そこに住んでもらうしかない。インフラも幹線と都市しか整
備できない。昭和40年頃に戻る感覚なのかもしれない。なるべく、
守る範囲を小さくして、必要な支出を抑えることが必要である。
地方都市では、都市部をなるべく小さくする努力が必要になる。

日本人の品位は、論語の義務教育である。皆が平穏に暮らすには、
強固な規範が必要である。日本人としての規範は、基礎に論語があ
る。それと品位を保てるホームレスの根絶などのセーフティ・ネッ
トの拡充であろう。

安心・安全の基本は、日本を守ることと、災害から守ることになる
が、災害から守ることは日本全体では難しい。都市を優先にするし
かない。中流域には遊水地を設けて、下流の都市部への過剰な水量
を中流部で調整することが必要だ。農家の人口は、今後も減少する
ので、中流域の遊水地には農地利用は良いが、人を住まわせないこ
とも重要である。

そして最後に、復活するためには、最先端の研究を行い、産業化す
ることと、企業は日本の衰退を見越して、世界に向けてビジネスを
行い、日本に多くの収益を落す仕組みを作ることであろう。日銀が
大株主であるから、法人税増税より配当金をUPした方が収益金の配
分率を上げることができると思う。

そして、前回話した移民増加やベンチャー・ラッシュなどの日本復
活劇が起きるまでに日本を改造することである。世界の資本主義も
成長の限界を迎えているので、日本の改造は、世界に必要になる。

さあ、どうなりますか?



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