6097.2019年を振り返る



2019年初めに、予測したことを検証するとともに、2019年
の最後に日本で起きた出来事を検討しよう。   津田より

0.米国株価
NYダウは、連日の高値更新継続で、12月27日に史上最高値28,645ド
ルとなった。FRBが年末年初に短期レポ市場安定のために53兆円もの
資金供給をするということで、リスクオンになっている。PERは20倍
以上で、割高な水準である。

米国産の大豆を大量に中国が買い始めて、米国の農家は一息ついた
状態であり、またクリスマス商戦も順調であり、この面からも株価
は上昇しているようである。

江戸時代、日本のコメ相場は、今あるオプション取引などの最先端
な手法を開発し、それを明治維新後、欧米は真似をしたが、その中
で相場の神様といわれる存在もいた。

その中で、牛田権三郎と言う人がいるが、格言「万人があきれはて
る値が出れば、それが高下の界なりけり」と言っている。米国の株
式市場は、「あきれる値」まで行きそうであるが、どこが「あきれ
る値」なのかはわからないので、まだドンドン上がっている。

今の政府や中央銀行は相場介入をしているが、「将軍が買い上げる
なら、いつにても、米にむかうて買の種蒔」と政府が買いなら、自
分も買いに回れと言う。そして、「将軍の金づまりは、いつにても
、米に随ひ売の種撒」と政府が買いを止めたら、自分は売りに回れ
と言う。

ということで、米国は、皆が買いに回っているので、株価の上昇が
止まらない。皆が「あきれる値」になるまで行くしかないようであ
る。そして、米政府の株価対策チーム(PPT)もそこまで買いに回るよ
うである。

しかし、皆が「あきれる値」になったら、大暴落になることも、こ
の格言は言っている。

1.日本の株価
日経平均株価は、12月17日に年初来高値24,091円になったが、以後
消費税増税などで景気後退から横ばいで、1週間で見ると、12月27日
23,837円とほとんど動かない状態である。

海外投資家の買いが優勢で、市場は楽観的な見方であるのは変わら
ない。PER14.5倍とNYダウに比べても低いが、高値警戒感も強い。

景気後退で、1月の企業決算は悪いことになるはずで、日本経済の弱
さは、そう簡単に解決できない。しかし、経済状況と相反した形で
、株価が上がっている。ファンダメンタルズと株の相関がなくなっ
ている。

金価格も債権も株も不動産価格も上がるというすべての資産価値が
上昇しているが、給与などは上がっていない。非常に歪な状態にな
っている。リスクオンと同時に、リスクオフの行動も皆が行ってい
る。このため、全資産価格が上昇することになる。

しかし、なぜ、2019年の日本の量的緩和では日本の株価が上昇しな
かったのでしょうか?
これは、2019年分の緩和資金は多くなく、かつ日本国内に投資され
ずに、米国株に投資されてしまい、日本株は買われずで、米国株を
上げたようですが、年末の米FRBの巨大な量的緩和資金は、米国だけ
では使いきれずに、日本株にも回ってきたことによるからでしょう
ね。

2.2019年を振り返る
2019年1月に「p0536.2019年以降を予測する」で予測したこと
を検証したい。
T:米政府や日銀などの意図的な株価操作も増えくるとし、FRBも利上
 げできずに、利下げということにもなりかねない。
 米国は、景気後退になり、景気を上げる政策を取る必要になる。
 貿易戦争で中国経済を壊すことで、米国の景気も悪くなるので、
 どこかで、折り合うことになる。米中ハイテク冷戦にはなる可能
 性はあるが、貿易を完全に止めることはないと予測しました。

F:ここまでは、正解でしたね。しかし、金融資本主義を駆逐するこ
 とになる。金融資本主義は、多くの国民の所得を上げない。一部
 の金持ちだけが得をすることになり、貧富の差が拡大したの部分
 は、まだ実現していない。株価暴落後、金融資本主義を駆逐した
 後、製造業を育成するしかない。この製造業育成を日本企業が米
 国企業に資本参加して行うことになる。今の日本企業は内部留保
 が膨大にあり、米企業を買収できると予言したが、まだ、株価暴
 落が起きていないので、その後の予測もまだ実現していない。

T:米IT企業もハイテク技術が中国企業に抜かれて、今後の方向が難
 しくなっている。世界的なデジタル課税や個人情報保護などの潮
 流で、利益が減少することになる。この分野は米国政府も守ると
 は思うが、企業収益を増すことは難しくなると予想しました。

F:ここまでは、正解でしたね。イノベーションの時代から技術を積
 み上げる時代に戻る。IT技術から製造技術の時代になるは、まだ
 、実現していない。量子コンピューターなどが出てくると、製造
 業が重要になると思う。経済的な混乱が起きて、世界的な転換期
 に差し掛かることになる。重商的な新自由主義から重工的な新孤
 立保護主義にシフトしてくるもまだ、実現していない。

T:FRBは利下げや量的緩和を行う可能性があり、流動性相場に戻り、
 米国は一息つくかもしれない。日本も米国の株価に連動して動く
 ので、そこで一息つくかもしれない。景気の底は2020年になると
 予測しましたがどうでしょうか?

F:ここまでは、正解でしたね。しかし、米国の株価がここまで上昇
 するとは見ていなかったので、当たらなかった部分もありますね。
 景気は、2020年も11月までは、トランプ大統領は再選のために維
 持すると見る。2020年6月まではFRBの量的緩和を行うというので
 ここまでは株価上昇の可能性が高い。

T:不動産価格や株価は下がり、円高になり訪日観光客は減り、輸出
 も減り、経常収支は大幅な赤字になる。このため、一転して円安
 になり、輸入価格が上昇してインフレになる。景気後退局面での
 インフレとなり、スタグフレーションとなる。法人税も減り、税
 収も大幅に減ることで、予算の赤字幅は拡大して、国債の発行量
 が増えることになる。

F:この部分は当たらなかったですね。米国の量的緩和がここまで巨
 大に行われるとは思わなかったので、その影響で日本の株価も上
 昇したことで、資産効果が持続したことが大きい。

 日銀のマイナス金利で「地方銀行の経営が危機的になる」は、正
 解したが、日本の統制経済化が必要になるし、アクロバット的な
 金融政策や財政政策が必要になる。しかし、はっきり言って、政
 府の経済運営で景気が好転することはない。はまだ実現していな
 い。しかし、徐々にそうなるしかないと思っている。

 消費税増税は無理だと思うは、増税を実施して、不景気になって
 いるが、株価の暴落がない限り、私は必要であったと思っている
 が、今後は人口の大幅な減少が続くので、景気が良くなる気がし
 ないので、消費税増税は、今後できなくなる。

T:ロシアや中国の勢力範囲が拡大するので、世界は中露優勢のよう
 に見えると予測しましたがどうでしょうか。

F:これは、正解でしたね。今後も、この状態が続くと見ている。
 2020年の予測は、1月6日に行う予定です。

3.現職国会議員の汚職でどうなるか
2019年末のあわただしい時期に大きな2つの事件が起きた。
1つに、統合型リゾート事業をめぐり、参入を目指した中国企業
「500ドットコム」から現金300万円と家族旅行費70万円相当の賄賂
を受領したとして、東京地検特捜部は、収賄容疑でIR担当の内閣
府副大臣だった自民党の衆院議員、秋元司容疑者を逮捕し、現職国
会議員の汚職事件となった。

この秋山議員の他に、特捜部は自民党の白須賀貴樹衆院議員、勝沼
栄明前衆院議員の事務所も家宅捜索。贈賄容疑で逮捕された紺野昌
彦容疑者は多くの同党若手議員と交流があったとされ、政治家12人
リストも出回り、自民党議員が多数関与していると見られていて、
大きな事件になることが確実である。未確認情報では、安倍首相の
出身派閥である細田派所属の議員が白須賀議員を含め4人、岸田派の
議員が5人、竹下派2人、石破派1人。閣僚経験者も1人いるが、基本
的には当選3回の議員が中心のようである。

また、贈賄容疑で逮捕された500ドットコム顧問の紺野昌彦容疑者が
日本維新の会の室井邦彦参院議員の息子であることもわかり、この
事件には日本維新の会の議員も関係しているのではないか、という
見方も強まっているようだ。

「桜を見る会」の野党の追及は、やり過ぎと見ていたが、この汚職
事件は、野党が徹底的に追及することを求められる。今までの野党
は、追及する事が違うと思ったが、安倍政権の利権汚職で、私利私
欲で政治をする自民党議員が出たことで、状況は大きく変化したこ
とになる。

長期政権で利権汚職が出たら、その政権は終わるべきである。安倍
首相の4選も、この事件で潰えた。2017年3月の党大会で「連続3
期9年」までできるようにした。そして、2019年7月に二階幹事長
は「(4選出馬の意向が)あった場合には、当然支持していく。国
民の支持があるからだ」と言い、麻生財務相も「安倍総理が本気で
憲法改正をやるなら、もう1期、つまり総裁4選も辞さない覚悟が
求められるでしょうね」と語った。

しかし、残念ながら、国民の支持を失うことになったようだ。共同
通信社の世論調査(15日付)では、安倍首相の自民党総裁4選に
「反対」が61・5%に達し、「賛成」は28・7%と支持がない
ことを証明した。

そして、1月の衆議院選挙が噂されているが、それも無理である。
今後、汚職事件の広がりで、自民への支持率は、益々減少すること
になる。逮捕から一夜明けた26日、自民党幹部は「解散は当分ない
」と明言した。今回の事件を受け、「解散なんてできっこない。も
う安倍晋三首相の時にやるとは思わない」(党関係者)との見方も
出ている。

反対に、野党が一本化すれば、自民党に勝つ可能性も出てくる。こ
のような時期に自民党関係者でなくとも選挙などはできないことは
分かる。

また、自民党内野党の石破さんへの政権移譲も必要になるかもしれ
ない。次期政権を安倍首相の子飼いにすることも、国民が納得しな
い。石破政権にして、自民党への支持率を上げてからしか選挙が、
できないことになる予感がする。

事実、自民党の閣僚経験者の1人は「安倍さんは、東京五輪、東京
パラリンピック後に勇退するのではないか」と見ているという。そ
うなれば衆院解散総選挙は新総理総裁の下で行われる可能性が高い。

官邸主導政治は、利害調整の時間を掛けずに即決力があるが、問題
は利権が集中するので、それに群がる政治家や業者をどうコントロ
ールが一番の肝であるが、それが崩れると、官邸主導政治ができな
くなる。国民の理解が得られないことになるからである。

日本政治の根幹を揺るがす事件になる可能性がある。官邸主導政治
が日本でできなくなると、日本の没落は、急速に進行しそうである。

4.日本郵便の問題点
もう1つが、かんぽ生命保険と日本郵便の保険商品の不適切販売を
受け、40万人超の従業員を抱える日本郵政グループの3社長が一斉に
交代することになった。長門正貢・日本郵政社長、横山邦男・日本
郵便社長、植平光彦・かんぽ生命社長、鈴木康雄・日本郵政上級副
社長(元総務次官)が引責辞任する。

これの真の原因は、郵政省を民営化した時点での制度設計で、ゆう
ちょ銀行とかんぽ生命の黒字で、日本郵便と日本郵政の赤字をカバ
ーすることになっていた。郵政グループの純利益の8割前後を、か
んぽ生命とゆうちょ銀行の金融2社が稼いでいる。

しかし、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の黒字は、日銀のマイナス金利
政策で大幅な減少になり、大きな黒字を維持できなくなっている。
このため、簡保の営業にノルマを課したり、年賀はがきにもノルマ
を課したのであろう。

制度設計時には、地方の人口減少と日銀のマイナス金利政策を見通
すことはできなかったはずであり、もう一度、郵政グループ全体の
制度の見直しが、必要になっている。

大きいのは、地方の人口減少と日銀のマイナス金利政策であり、郵
政と同じような環境にある地銀も赤字が増えて苦境になっている。
このため、郵政グループの売上高も07年の民営化以降、減る傾向に
ある。電子メールなどの普及で郵便事業も赤字の上に収入の大幅減
の状態である。

地銀は、広域連合やSBIなどの他業種連合で、切り抜ける方向のよう
であるが、郵政Gは、ユニバーサルサービスであり、地方の郵便局を
廃止してしまえない縛りがあるので苦しい。

もう一回、日本郵便だけに国家補助金支給なども視野に検討しない
と、郵便サービスのユニバーサルサービス化ができなくなると見る。
郵便サービスは、おいしいところをヤマト運輸などにクリームスキ
ミングされているので、黒字化は難しいからである。

日銀のマイナス金利は、日本の銀行業に大きな負荷を掛けているし
、それと共にインターネットでの電子メールやSNS普及やフィンテッ
クやQRコード決済などの大きな流れが起きて、郵政G全体でも改革を
急激に進めないと持たない。

一番難しいのが、非上場で“金食い虫”の日本郵便を、どのように
稼ぐ組織にするかが日本郵政グループの最優先課題である。いくら
、増田さんが社長になっても状況は同じであり、苦しいことには変
わりない。

さあ、どうなりますか?


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