6093.日銀のETF買い継続で社会が変わる



今後、日本の景気後退で、日銀はETF買いを継続することになる。そ
うすると、当然資本の半分を日銀が占めることになる。この結果を
検討しよう。               津田より

0.香港人権法と米国株価
NYダウは、11月27日に史上最高値28,174ドルとなったが、11月29日
28,051ドルと下落している。PERは19倍台でまだ、割高な水準である
。そして、米中通商交渉の合意が近いとしていたが、香港人権法を
トランプ大統領が署名したことで、少し警戒感が出て、11月29日に
下落した。中国は報復を行うと明言しているが、まだ具体的な処置
は発表されていない。このため、中国は合意を破棄するような処置
はしないという楽観的な見方が出ている。

この香港人権法が米上下院で可決され、前回のコラムで述べた通り
トランプ大統領も署名をせざるを得ない状況であり、かつ株価の上
昇が早く、速度調整の意味もあるような気がする。

中国は香港人権法が成立したら、米国に報復的処置を行うと明言し
ているので、12月2日市場が始まる前か市場が開いた後に報復処置が
出てくることになると見る。

中国も香港人権法の成立により、香港の「1国2制度」の維持をする
しかないことになる。香港が世界と中国の金融接点であり、その香
港の「1国2制度」を破壊すると中国の金融バブル崩壊になる危険性
もあり、現時点では、動けないことになる。

しかし、危険がなくなった時点で。三権分立の基本法を止めて、香
港の「1国2制度」を廃止して、中国に取り込むようである。

また、大きな報復処置をすると、12月15日に、1500億ドル分への対
中関税UPがあり、電子製品などに課税されることになる。

このため、米中通商交渉協議中でも、香港人権法への署名後の対応
処置を話している可能性が高いが、さて、どのような報復になるの
かが問題である。アップル製品への課税や12月15日分の課税が行わ
れると米中経済への影響は大きい。これを回避すると期待したいが
、中国は原則重視、メンツ重視の国であり、どうなるのであろうか?

トランプ大統領は、米中通商交渉合意ができないときのために、株
価維持で、量的緩和のステルスQE4(POMO)を2月末までから第2四半
期までと延長させ、パウエルFRB議長にさらにマイナス金利を要求し
ている。これは米中交渉がうまくいかない時の対応政策でもある。

また、米中交渉がうまくいかない時を考え、米国が石油輸出国にな
ったことで中東からの米軍撤退方向で、その手始めとして、アフガ
ンの米軍撤退を行うために、タリバンと和平交渉を行うと、アフガ
ンにトランプ大統領が飛んで行き、兵士の前で宣言した。米中交渉
とは違う成果を出そうとし始めている。

というように、米中交渉が上手くいかずに、12月上旬は、下落する
危険性が高いと見る。しかも、感謝祭後の休みに入って市場参加者
が少なく、ヘッジファンドが暴落を狙った掛けに出てくる可能性も
ある。しかし、その場合、暴落にならないように、FRBは株を買い始
めるという噂も出ているので、暴落するかどうかは、わからない。

FRBは金利コントロールと株価維持という日本化を一層進める可能性
が高いようだ。スーパーチューズデイである3月3日までは、株価を
維持するとトランプ大統領は決めているので、それに対応した政策
をFRBや財務省と金融機関が行うことになるようである。当分、株価
維持の可能性が高いようだ。量的緩和や株の買い上げなどを行うこ
とで、株価は維持できる。

1.日本の株価
日経平均株価は、11月26日に年初来高値23,608円になったが、以後
米中合意疑念、景気後退などから横ばいで、かつ上海市場と香港市
場の下落を見て、11月29日に23,293円と前日に比べて115円下落した
が、依然強い相場が続いている。

しかし、香港人権法のトランプ大統領署名で変化したようである。
上海市場、香港市場が下落したことでも、中国の報復処置は大きな
ものの可能性があるようだ。もう1つが、中国企業経営者がロック
アップ解除後、大量に自社株を売っているという。

上海市場は、3,000ポイント近くから11月29日2,871ポイントまで下落して
きている。米中通商交渉決裂になったら、上海市場は2,500ポイントま
で下落すると、中国のアナリストは言う。2,500ポイントで、政府の株
価維持の買いが入ると見ているようである。

香港市場も、11月始めの28,000ポイントから11月29日26,346ポイントまで
下落している。中国政府としては、株価維持政策として、11月26日
にアリババを香港市場に上場させて、香港市場の下落を止めたいよ
うである。

それと、自国経済維持からも中国も米中通商交渉決裂させることは
できないし、やっても引き延ばしを行うことしかない。しかし、そ
れをすると12月15日の関税UPを回避できなくなる。どのような報復
処置になるかが、見どころである。もう1つ、12月2日の米国株価下
落を見て、東京市場も波乱するかもしれない。

東京市場は、米中通商交渉と自国経済減速という2つの試練を抱え
ている。現時点の大幅な上昇を支えているのは、海外投資家の買い
であるが、現物は売りに転換している。しかし、先物はまだ買いが
続いている。先物が売りになり下落する可能性は、自国経済の好調
な米国より大きいかもしれない。

2.今回の景気後退は
米国が、本格的な量的緩和を行い始めたことで、完全な金融相場に
なってきた。PERが米国では19倍、日本は14倍程度になっているので
、株価は高過ぎなレベルになっている。金余りで、金の持っていく
先がないために、配当利回りが期待できる株式市場に金が入ってき
ている。

しかし、これ以上の中央銀行の金融緩和処置は、あまり景気維持に
は役立たなくなってきている。このため、再度、政府主導の財政出
動を行う必要が出ている。

そして、この現状は、1929年から1930年代の金融政策・財政政策と
よく似ている。1929年10月29日、ニューヨーク株式市場で株価が大
暴落して、1930年ストーム・ホーレー法を施行し、輸入品に対して
平均53%以上の関税を課した。1931年9月、ポンドと金の兌換を停
止、いわゆる金本位制を放棄して、お札の発行を無限大にして金融
緩和をした。

しかし、その後、景気が良くなったとして、利上げを行ったら、再
度、景気後退になり、1933年2月にはとうとう全銀行が業務を停止す
る事態になったのである。1933年にフランクリン・ルーズベルトが
大統領になり、テネシー川流域開発を行い、財政出動に舵を切る。

しかし、ニューディール政策は1930年代後半の景気回復を前に規模
が縮小されて、1930年代後半には再び危機的な状況になる。という
ように、中央銀行の金融緩和が効かなくなり、財政出動を行うこと
になるが、それを長期に行う必要になる。第2次大戦の戦争後にしか
景気は回復していない。

ということで、今回の景気後退は、2008年9月リーマンショックの大
恐慌から始まっている。最初に量的緩和という金融緩和政策を行い
、次にトランプ大統領が多くの輸入品を送り出す中国への関税UPを
して、今は金融緩和政策が効かなくなり、再度、財政出動に戻して
景気を支える必要になったのである。これは日本も同じである。

そして、ルーズベルトが行ったような新ニューディール政策が必要
になっている。パッチを継ぎあてたようなチマチマした政策の積み
上げではなく、次世代に残る産業を作るような大胆な政策が必要で
ある。どうせ、当分、本格的には景気は戻らないからだ。恐慌の歴
史が証明している。どぶに金を捨てるようなものであるが、次の時
代を作るような産業政策に金を使ってほしいものである。

3.日銀が企業の筆頭株主に
日銀は、今後の株価下落でもETF株を買うなら、その内、日本の大中
企業のほとんどの筆頭株主になることは間違いない。日銀も政府も
意図せざる社会経済体系の変更を起こしていることになる。

日銀が株を買うなら、売る仕組みも構築しないと持続性がなくなる
と何遍も、このコラムで指摘したが、それをまともに聞いていない
ので、このような事態になってしまった。このままだと、日銀は会
社を支配することになる。しかし、下手にETFを売ると、株価は大暴
落になる。

松下幸之助が、国が大事業をして税金なしに国家運営をするべきで
あると提言していたが、別の意味で、日本は自由資本主義から、国
家主導の資本主義になることを意味している。

ETF買いで、企業の持ち株比率が半分程度になってしまうと、配当金
の約半分を日銀が受け取ることになる。現時点、半期に配当金4000
億円を日銀が受け取っているが、半期の配当金総額は4兆円であるの
で、その半分が日銀となると2兆円になり、年間では4兆円になる。
企業の配当性向は20%であるので、これを50%にさせると、9兆円にも
なる。増税せずに、9兆円の収入があることになる。

消費税1%で、2兆円であるから、5%程度の効果があることになる。
今後、消費税UPより配当金UPの方が、何の抵抗もなく税収を上げる
ことができる。

それより、もし、株価の安い時に買い、株価の高い今売れば、簡単
に数十兆円の儲けが出るし、バブルを抑えることができ、一石二鳥
であるが、ここでも日銀は、提案を拒否している。株価の安定を日
銀が目指しているなら、ETFを売ることが日本社会のためになるし、
日銀のETF買い政策の持続性を高めると思うが、やらないようであ
る。無暗に株価を上げて、バブル崩壊したらどうするのであろうか?

日銀のETF買いは、筆頭株主になることであり、当然、企業へ増配の
要求をするべきである。健全な企業経営は日本社会のためになるか
らだ。ということで、日本を国家資本主義社会へと日銀は向かわせ
ている。株を売らないことによる日本の変質を日銀は、意図しない
で行っている。

4.社会主義経済になる
というように、現時点で長短金利をコントロールし、株価を統制し
て、企業の筆頭株主になり、国家統制経済へ日本を向かわせている
ことになっている。

人口減少から景気後退になりやすいのでETF買いを続けると、50%以
上を持つ株主になり、当然、経営陣を選ぶことも行うことになる。
経営に口出すことになる。これは、企業の国有化でもあるから、日
本にある大・中企業を国有化させることになる。

保守党という自民党政権が、そのような政策を行っているのである
が、疑問を感じないのであろうか?日銀がETFを売る仕組みを作らず
に、今後も永遠的にETFを買い続けていくことになるが、これでは、
企業の国有化を止めることができない。

しかし、逆の意味で、企業の国有化を何の抵抗もなく行っているの
は、すごいことではある。賃金も休日も国が決めて、企業が従う仕
組みが完成することになるのであろう。

資本主義から社会主義に発展的に変革するというマルクスの言葉が
日本のことをいっていたのかしらと思ってしまう展開である。安倍
首相は、何もしないから長期政権を維持できると評論家は言うが、
安倍首相は、日本社会を社会主義社会に大変革しているので、とん
でもないことをしているとも言える。ということで、安倍首相と黒
田総裁は、隠れマルクス主義者ということになる。

そして、今後もETF買いを日銀は止めることができないことは、人口
減少などで景気後退しやすいので、株価を維持させるためにはETF買
いを続ける必要があるからだ。日本は衰退途上国であるが、衰退し
ても国民平等の観点から社会主義にするのは、仕方がないのであろ
うか?

5.AI化・ロボット化と社会主義
このように、近い将来に資本の半分以上が政府が握る民主社会主義
国家に日本はなるのであろう。このような社会でAI化、ロボット化
が起きることになる。

企業の儲けは人件費がなくなる分大きくなる。しかし、政府に大き
な支配権があるから、企業の人件費が少なくなった分を税金か配当
金で社会に還元することができる。バーシック・インカムなどで、
国民に還元するなど、今後、企業の国有化は日本の優位性を確保す
る有効な方法かもしれない。

逆に、AI化やロボット化を政府が押しとどめたら、それは企業の衰
退になり、国家衰退に直結するので、イノベーションは確実に行い
、その上で、国民をどう食わしていくかを考えるのが政府の役割に
なるのであろう。その時に、企業の国有化は良い手段になる可能性
もある。勿論、弊害もあるが、今のままに推移するとそうなると思
うので、真剣に議論をする必要がある。

さあ、どうなりますか?


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