6085.英国は合意あるEU離脱ができるのか?



英国はEU離脱の条件案でEUと合意した。英国議会でこの案が承
認されると、英国は合意あるEU離脱になる。このため、株価とボン
ドが上昇した。今後の株価の動向をを検討しよう。 津田より

0.米国株価
NYダウは、利下げ期待で、7月16日27,398ドルと最高値を更新したが
、その後、製造業ISMが50割れ、かつ米欧貿易戦争も始まり、大きく
下落したがステルスQE4開始で、10月15日27,120ドルまで上昇が、10
月18日26,770ドルと前日比255ドル安になっている。

米国FRBがPOMOというステルスQE4で、月600億ドルの短期国債を買う
ということと、米中貿易摩擦が一服したこと、英国のEU離脱条件で
EUと合意で、27,000ドル台まで上昇してきた。上昇の起点は、FANG
の再始動で、中でもエヌビデアの株価が上昇し始めた。

バブル最終局面での上げのようだが、決算時期になり自社株買い禁
止時期になった上に、当局に虚偽の報告をしたボーイングとベビー
パウダーにアスベスト混入のジョンソン&ジョンソンのショックで、
下げたようである。しかし、10月30日のFOMCも利下げの確率が高く
、再度株価上昇になるかもしれない。政府のPKOが効いているので、
下値も堅い。当分、中央銀行バブルを継続させるのであろう。

しかし、9月の小売り売上高0.3%減になり、鉱工業生産0.4%減と景気
後退懸念もあるが、市場は材料視していない。量的緩和と利下げし
か見ていないで、楽観論が市場を支配しているように見えるが、NY
市場を見ると売買の少ない流動性不足となり、ウォーレン・リスク
もあり、上にも行きにくい状態でもある。その意味では、レンジ相
場の様相だ。

そして、ウォーレン候補は、CLO市場に規制を掛けるというので、も
し大統領になったら、債券バブル崩壊になり、CLO債を大量買いした
日本の地方銀行や農林中金などが大きな損を抱えることになりそう
である。

また、ウォーレン候補は、日本のCLO債の大量買いを非難しているこ
とも考量して、今後、少しづつ売ることで非難をかわすしかない。

もう1つ、ドイツ銀行の破綻を心配したが、ステルスQE4で資金のつ
なぎができて、倒産状況からは改善したようである。このステルス
QE4自体がドイツ銀行救済の処置である可能性が高い。

1.日本株価
日経平均株価は、2018年10月2日24,448円になったが、以後低調で、
12月26日18,948円と暴落し、その後はレンジ相場になり、10月から
売り残の買戻しとFRBのステルスQE4、英国のEU離脱条件でEUと合意
で、10月18日年初来高値の22,492円になっている。しかし、英国議
会の混乱で、10月21日は大きな下落になる可能性が高い。

日本も景気後退が出てきたが、市場は需給で動き、空売りに対する
踏み上げで、売り残の買戻しが出たことと108円後半までの円安にな
り、年初来高値になっている。しかし、109円台の円安になると、実
需の買いが入り、これ以上の円安にはならない。ということで、こ
れ以上の株高になることはなさそうである。

こちらもバブル最終局面での上げの状況で、バブル最後が一番おい
しいという格言の通りである。

しかし、今後、FOMCの利下げによる円高に対して、日銀は量的緩和
の緩和処置を再度元に戻す処置などを行うことになる。ドイツ銀行
破綻のショックには、日銀の国債直接買入れなどの大胆な施策も浮
上していたが、FRBのステルスQE4による救済処置で、ドイツ銀行破
綻の危険性は少し遠のいたようである。

金融ショックによりバブル崩壊という可能性も当面、起こらないよ
うである。このため、当分、うだうだした相場が続くことになる。

2.英国のEU離脱案
10月17・18日のEU首脳会議で、英国ジョンソン首相とEUトゥスク大
統領は、離脱の条件をめぐって英国との間でまとめた案で合意した。
北アイルランドとアイルランドの国境管理で、北アイルランドにつ
いてはEUの物品のルールが適用され、北アイルランドと英国の他
の地域との間では、関税チェックをする方向で、この関税ルールは、
今後2年は続けることになった。

今まで、国境の管理について根本的な解決策が見つかるまで英国全
土が事実上、EUの関税同盟にとどまることが盛り込まれていたが
、この項目は削除された。

EUが合意した理由は、11月に新体制となるEU首脳に離脱協議を
続けさせたくないこと、EU経済が低迷し強硬離脱となれば独の対
英輸出減で景気後退が一層進むこと、ジョンソン提案はEUの考え
に近いものであったことだ。

合意内容はイギリスとEU、それぞれの議会の承認が必要で、英国
では19日に採決予定。しかし、過半数の支持が必要で320票の賛成が
必要であるが、与党保守党は259票しかない。閣外協力するDUP10票
は反対になり、野党労働党も反対であり、61票足りない状況になっ
ていたが、19日英議会は、新EU離脱案の採決先送り修正動議を賛成
322票、反対306票で可決した。

政府は離脱延期法により、19日までに議会が離脱案を承認しなけれ
ば、2020年1月末へ3カ月延ばす申請を同日中に行うことが義務付け
られている。だがジョンソン氏は「EUは延期を歓迎しないだろう。
10月末の離脱を実現するためにできる限りを尽くす」と訴え、月内
の離脱を諦めない姿勢を強調した。週明けにも、離脱法案を通すた
めの議会手続きに着手する。

しかし、それでも議会で否決された場合は、ジョンソン首相は、延
期をEUに要請するが、EUがその要請を全会一致で受け入れれば
離脱が延期される。しかし、仏マクロン大統領は、「新たな延期が
認められるべきだとは思わない」と述べ、英議会に対しジョンソン
英首相と欧州連合(EU)が合意した離脱協定案を承認するよう強
く求めている。このようにEUが延期を拒否することもある。そうす
ると、合意なきEU離脱になる。

延期が認められた場合、ジョンソン首相はイギリス議会を解散し、
自身が率いる与党・保守党の議席の上積みをはかる。そして改めて
採決に持ち込み、法律を成立させて離脱するというシナリオのよう
だ。

合意なきEU離脱になっても準備をしたので、前ほどの混乱はない可
能性も浮上している。

というように、EU離脱までには、まだ紆余曲折がありそうである。
株価やポンドなども、状況を反映して揺れ動くことになる。このた
め、円高になる可能性もある。

3.米軍シリア撤退
トルコ軍がシリアのクルド人地域に進軍するというので、クルド人
地域のシリア駐留の米軍1000人に撤退をトランプ大統領は、命令し
た。それに対して、共和党・民主党の多くの議員が反対して、米下
院で、シリア撤収に反対する決議案を354対60の大差で可決した。
民主党は上院共和党トップのマコネル院内総務に同じ決議案を本会
議で採決するよう求めた。上院でも採決されれば共和党議員が造反
し、可決する公算が大きい。

米軍幹部は、同盟した人を裏切ることが、中東や世界で米国の覇権
を大きく失うことになると心配している。議員への働きかけもして
いる。米国の覇権は恐らく、中東では失われたようである。

クルド人は、米国の見捨てられて、シリア政府軍・ロシア軍と連合
して、トルコ軍に対峙する道を選んだ。シリア政府軍・ロシア軍は
、マンビシの米軍基地に入った。

この基地にある兵器を使われないように、米国はF-15戦闘爆撃機で
元の米軍基地弾薬庫を破壊している。

サウジは、ロシアのプーチン大統領と会談して、今後、ロシアとの
関係を重視して、兵器などもロシア製で揃えることになる。サウジ
は、クルド人への裏切りで米国を信用できないとみたようだ。そし
て、米国の同盟国UAEもプーチン大統領と会談して、今後関係を深め
ることになった。

米国は、同盟したクルド人の切り捨てで、中東のサウジなどで信用
を無くしたことになっている。

このため、中東でのロシアの影響力が拡大している。ロシアの警告
でトルコ軍のシリア侵攻が停止して、ロシアとトルコは、10月22日
にソチで首脳会談を行うとした。エルドアン大統領は米国とも5日間
の攻撃停止の約束をしたが、クルド人が戦闘を継続しているので攻
撃再開と言うが、シリア・ロシア軍との戦闘を避けている。

イスラエルは、今まで米軍がシリアとイラクの国境を監視していた
が、いなくなることでイラン軍がイラクからシリアに入ってくると
みている。このため、イスラエルのオルメルト前首相はネタニヤフ
首相に対して、米軍撤退したことで、イランに対する戦略的失敗だ
と非難している。

在シリア米軍の撤退で、イスラエルも窮地に追い込んでいる。

トランプ大統領は、同盟国を裏切るという暴挙で、米軍の活動基盤
を破壊して、早期に中東全体から全軍を撤退させようとしていると
しか考えられない。

4.米軍撤退での他国への影響
しかし、米軍が中東撤退になると、日本は石油ルートの確保が必要
であり、中東の不安定化に備えて、特にホルムズ海峡の安定化のた
めに、日本も自衛隊を出さざるを得ないことになってきた。

中東の米軍撤退で、日本の死活問題でもある石油ルート確保のため
に、自衛隊をこの地域に海外派遣して権益を守ることが必要で、そ
の方向の改憲も必要になって来た。油断になると、日本の生活は、
大きく制限されることになる。そのため、油断が起きてから、改憲
することになる可能性も高いような気がする。

そして、今後、欧州でもアジアでも、米軍撤退になるのでしょうね。
軍事費の削減をして、財政赤字を減らすことが必要になっているか
らである。米国の防衛範囲は、どこまでかという検討が必要になる
が、おそらく、太平洋から米国、大西洋までということになる。英
国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、日本までが防衛
範囲で、あとの地域はロシアと中国の範囲になる。

トランプ大統領が意識しているかどうかはわからないが、米国の戦
略の大転換が起きている。米国は、自由な民主主義を世界に広める
こともない。香港人権法も米国議会が推進しているだけで、トラン
プ政権は、関与していない。米国の戦略変更で、日本の戦略も大き
く変更しないといけなくなっている。

そして、米国の戦略変更を見て、中国は太平洋に進出して、西太平
洋への南下作戦を開始している。3年以内には、台湾を統一すると
しているので、太平洋の守る日米豪と太平洋に出る中国の激突が起
きる可能性が出てきた。

5.米中通商交渉
10月11日に部分合意したはずが、ナバロ米大統領補佐官は、11月の
APECの場で米中首脳会議を行い、「第1段階」の米中通商合意
の達成を目指すとした。

トランプ大統領は、500億ドルの米農産物を中国が買うとしたが、中
国は、米国の関税をすべて止めないと、それはできないと表明して
いる。現時点では、米国は10月15日から始まる予定であった関税引
き上げを中止しただけで、合意のバランスがあまりにも悪すぎる。

トランプ大統領の部分合意のツイードは、期待値であり合意ではな
いことが判明した。フェイクをトランプ大統領は言うので、注意が
必要である。しかし、このツイードで株価は大きく動くので、トラ
ンプ大統領にとっては、有効な武器である。

しかし、市場もトランプ・ツイードに徐々に慣れてきて、株価の上
下幅は縮小してきている。徐々にステルスQE4やPKOの威力の方が大
きくなってきている。11月までは、交渉上で動きがないので棚上げ
状態になり、株価は、この米中通商交渉では動かないようだ。

しかし、12月15日のスマートフォンやノートパソコンなど計1600億
ドル分への15%の関税を上乗せするとしている。このため、11月の米
中首脳会談で部分合意ができないと、実行することになる。このた
め、11月までの短期の棚上げでしかない。

部分合意では、中国製造2025や国家の産業育成補助金への言及がな
くなっている。トランプ大統領は、2020年再選のために、成果が必
要になり、国家体制変更より貿易不均衡解消の部分合意を目指し始
めた。

6.防災の考え方
台風19号では、東日本の各地で大きな被害が出た。今後も温暖化で
台風の威力は高まり、災害は拡大する可能性が高い。しかし、日本
の状況としては、財政均衡が必要であり、防災予算を大きく増やす
こともできない。その中で、効果的な防災のあるべき姿が必要にな
っている。

今回の台風19号でも効果的であったのが、埼玉県にある彩湖の遊水
地である。大量の水を逃がすことで、下流地域の水害を防いだ。
人口減少で大都市の中流地域には空き地があるので、これを遊水地
として再整備して、水の逃がし場とすることが有効である。

平常時は、畑や田として利用可能にして、洪水時に最初に水を逃が
す遊水地として、農家に了解を得ておくことである。その場所には
家や資産を置かないことが必要となる。被害補償も農家にするとす
れば、了解してもらえるし、それの方が大規模堤防を作り保全する
より安価である。

もう1つが、ハザードマップでの危険地域でも、地方の地域では、
堤防などを作るより、その地域から安全な地域に住民を移動させた
方が、効果的であるように感じる。家だけを安全地帯に置くことで
、人命と資産を守れるので、効果的である。田畑はそのままにして
、耕作可能にして了解を得ることである。

今後、地方の人口減少が一層進むことになるので、堤防を整備して
も危険地域からは人がいなくなるので、その地を遊水地としてしま
った方が効果的だ。特に氾濫する川の合流地点などは、遊水地化し
て水を逃がして、下流の広範囲な洪水を防止した方が、費用対効果
は高いように感じる。

守るべきは、人口密度の高い大都市で、そこには大規模堤防を作る
ことである。今回も東京は大した被害が出ていないのに、地方で大
きな災害になっている。多摩川の堤防なし区域から洪水になったこ
と、田園調布の丸子川の氾濫や武蔵小杉のタワーマンションなど東
京でも災害対策が不十分だと、災害になるという良い教訓になった
ようだ。大都市では防災の観点から整備や堤防を見直すことである。
こちらには、金を掛けることである。

さあ、どうなりますか?


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