6084.米中通商交渉で部分合意



米中通商交渉で、このコラムで予測した部分合意した。しかし、こ
の合意では、米国の輸入の半分の関税UPを止めただけで、今までの
関税UPは維持される。これでは景気ダウンの速度を遅くするだけで
ある。今後、どうなるかを検討しよう。    津田より

0.米国株価
NYダウは、利下げ期待で、7月16日27,398ドルと最高値を更新したが
、その後下落基調で、製造業ISMが50割れや米欧貿易戦争も始まり、
大きく下落したが、ステルスQE4の開始と米中通商交渉で部分合意に
なり、10月11日に大きく上昇して26,816ドルになっている。

米中両政府は11日、貿易問題で閣僚級協議を開き、農産品や為替な
ど特定分野で部分的に暫定合意した。中国が米農産品の輸入を400億
から600億ドル増やすほか、通貨政策で透明性を高める。これに対し
て、米政権は15日に予定していた中国製品への制裁関税の引き上げ
を先送りすることで合意したが、スマートフォンやノートパソコン
など計1600億ドル分には15%の関税を上乗せする。

パウエルFRB議長は、ステルスQE4を始める。月600億ドル程度の短期
国債を買い、資金を市場に供給するPOMOを始めると宣言した。この1
ケ月間に短期レポ市場金利上昇の対策で、QE3の規模の3倍の資金を
供給したが、それを継続する。パウエル議長は、POMOはQE4ではない
としたが、市場に資金を供給する意味では同じである。

FRBは総資産を縮小したことで、景気減速から景気後退になりそうに
なり、総資産を増やさざるを得ないことになっている。どうもFRBの
総資産と株価が連動しているようにも見える。そして、景気後退を
防止するために、10月の利下げも行う可能性が高い。

景気後退の危険性があるので、パウエルERB議長は量的緩和を行い、
トランプ大統領は、米中通商交渉で部分合意をせざるを得なかった
ということのようである。しかし、今まで実施した関税UPは維持す
るので、製造業の景気後退は、続くことになる。このため、FRBは量
的緩和を強化して、政府は財政出動をして、株・債券バブルを政府
と中央銀行が協調して延命する方向であり、下値も硬いが上値も重
いことになる。

1.日本株価
日経平均株価は、2018年10月2日24,448円になったが、以後低調で、
12月26日18,948円と暴落し、8月26日20,173円になってしたが、その
後、売り残の買戻しで9月19日22,255円になった。そして、米国の景
気減速で下げ、部分合意で上がり10月11日21,798になっている。コ
ラムが予言した通り、21,500円を中心に上下している。

米中貿易摩擦緩和ということで、円安方向になり108円前半まで戻し
、日本株は上昇している。しかし、日米ともに、株価の上下の幅が
なくなり、市場参加者の儲けはなくなっている。その意味では、面
白くない相場になってきた。

政府としては、消費がGDPでの大きな部分であり、株価が維持されて
いると、消費も旺盛であり、景気後退にもなりにくいので、国民の
不満が出ないのでよいと見ている。しかし、製造業は、景気後退が
確実になっている。

安川電機は業績見通しを下方修正して、年間利益が、今までの465億
円から250億円と大幅に減額した。一方、ユニクロは利益9%増になり
、小売りと製造の業績が逆向きになっている。

今後、株式市場で、株価が上昇するのは、期待成長株しかない。と
いうことは個別株投資でしか儲からないことになる。S&P500でも、
この数年、株価が伸びているのは、GAFAしかない。S&P500の内から
GAFAを除くと、株価はほとんど伸びていない。これと同じことが、
日本株でも起きることになる。その意味では、正常な相場感覚が必
要になるということである。

2.ウォーレン・リスク
トランプ大統領へのウクライナ疑惑に対する弾劾調査が進んでいる
が、これはバイデン疑惑でもあり、民主党ではウォーレン候補がバ
イデン候補を抑えてトップに立った。

ウォーレン候補は、軍事費の削減、国民皆保険を行い、法人税減税
を元に戻し、富裕税の増強やGAFAの独占を禁止して分割するなど、
非常に厳しい再分配政策を行い、貧富の差を縮小するというので、
市場や富裕層、軍産複合体などが、ウォーレン阻止に向かうことに
なり、トランプ大統領にとっては選挙に有利である。

中国にとっても、親中的なバイデン氏は懐柔ができるが、ウォーレ
ン候補は、対中では強硬派であり、中国にとってもトランプの方が
ましとなっている。

ということで、トランプ大統領にとっても、非常に都合がよいこと
で、中国も、トランプ再選のために農産物の輸入を行うことにした
のであろう。

3.トルコのシリア侵攻
シリアのクルド人地域に、トルコは、制圧を目指して侵攻した。し
かし、この地域にはクルド人部隊と米軍が共同してISを駆逐するた
めに米軍が今も展開している。この米軍撤退を待って、トルコ部隊
は攻撃に移っているが、この攻撃をトランプ大統領は、トルコのエ
ルドアン大統領との電話会談で、了承したという。

トランプ大統領は、クルド人が、過去米国を助けていないから、攻
撃されてもよいと発言した。この発言に対して、共和党・民主党の
多くの議員から非難を浴びている。米軍は、共同作戦をした同盟の
人たちを、簡単に裏切ることが分かり、米軍との共同的な作戦をす
る国や民族はいなくなる可能性もある。軍産複合体にとっては、米
国覇権の自殺行為としか見れない。

それと、クルド人地域にまだ米軍がいるので、その地域に攻撃した
ら、米軍は自衛のためにトルコ軍を攻撃すると地元駐留米軍は述べ
ている。エルドアン大統領もシリア国境から30キロ以上の地域には
トルコ軍はいかないとしたが、砲撃をした場合でも米軍は反撃する
とした。

また、ムニューシン財務長官は、トランプ大統領が独自経済制裁の
大統領令に署名するとした。ホワイトハウスでの記者会見で「現時
点で制裁を発動はしない」と強調。トルコに攻撃自制を促すことが
目的だが、制裁が歯止めとなるかは不透明。とちらにしても、軍産
複合体から批判があり、トランプ政権は譲歩したようで、撤退して
いたクルド地域駐留米軍は元の基地に戻り、トルコ軍に対峙するこ
とになったようだ。それでもトルコのエルドアン大統領は、攻撃を
続行すると宣言している。米国の経済制裁が待っている。

一方、サウジには、米軍2000人を派遣して、石油施設へのドローン
攻撃を防衛することにして、サウジが米国武器を優先的に購入する
ように要求している。ロシアはS400防空システムでドローン攻撃を
防衛できると、サウジに売り込みを掛けている。

サウジは、自国空域の防衛ができたので、イランのタンカーに対し
てミサイル攻撃したようである。イランとサウジの報復合戦になる
可能性もある。

しかし、米国製兵器は性能的にロシア製兵器、中国製兵器に負け始
めているように感じる。米国はレーザー兵器にシフトしたために、
今までの兵器性能を上げる方向ではなく、中国とロシアは既存兵器
の性能を上げていることで、現時点では、中露が優位になっている
ように見える。ボーイングの欠陥航空機問題は、軍事産業でも起き
ているように感じる。

最近、イスラエルの戦闘機がシリアに入れなくなっているようで、
その理由がロシアの戦闘機がシリア上空の防衛を担うようになり、
イスラエルのF-35では、su-34、47との戦闘になり、迎撃される可能
性があるので入らないようだ。よって、シリア国内のイラン革命防
衛隊への空爆ができなくなり、イラン革命防衛隊の増強が図られて
いる。

このため、イスラエルは、イラクのイラン革命防衛隊を空爆し始め
た。まだ、イラクはロシアの戦闘機が防空していないので、入れる
からのようだ。

このような状況から、米製戦闘機もロシア製戦闘機に負ける可能性
があることが分かる。トルコは、防空システムをロシア製S400にし
たが、戦闘機もSU34、su47にすると言っている。徐々に同盟国でも
ロシア製兵器に乗り換えている。

このため、トランプ政権は、中東からの撤退を促進するようである
が、米国の軍産複合体は反発している。米国内問題でもあるが、今
は、来年の再選に向けて、トランプ大統領も軍産複合体との敵対関
係は望まないようで、妥協している。

トランプ再選後、軍事費削減したいので、軍産複合体との紛争が起
きる可能性がある。もし、トランプ氏が負けて、ウォーレン候補が
大統領になっても軍事費削減になり、米国の軍事優位は無くなり、
世界から米軍は、総撤退になりそうである。米国の覇権も終わりに
なる。その準備が日本も必要になっている。

4.香港問題
中国は、香港での抗議活動が収まらなく、緊急条例で覆面禁止法を
出したが、それに反発してデモが激しくなっている。デモ隊は、普
通選挙を要求しているので、中国としては認めることができない。
このため、最終的には、第2の天安門事件になる可能性が高くなっ
ている。

もし、第2の天安門事件になると、香港の人口700万人の内、300万
人以上が逃げることになり、その多くが台湾、シンガポールに行く
ことになる。中国としても、深センの方が、香港より経済規模が大
きくなり、金融機能では上海が世界の金融センターの1つになるの
で、香港デモ隊の要求を認めるぐらいなら、逃げてもらった方が良
いということのようだ。

しかし、香港の平和的な統治ができないと、台湾は、中国の「1国2
制度」に反発して、独立方向になるので、そちらの方が大きな問題
になる。来年の台湾総統選挙で、親中の国民党が負けて、民進党の
蔡総統の再選が確実になる。そして、米台の同盟が強くなり、米国
との関係が今よりも悪くなる。そのため、中国は2022年までには、
台湾を統一すると習近平主席は言っているが、それは難しくなる。

もう1つとして、米国上下院議会で香港人権法が通り、香港に対し
て、軍事力を使うと、中国の経済に、米国の制裁が加わることにな
る。どちらにしても、米中の経済は分離してくる。米中貿易戦争は
、益々厳しくなる。

中国経済も米国との関係を分離方向で考え、ユーラシア大陸、アジ
アの市場に目を向けて、徐々に米国依存から抜け出している。この
シフトができて、中国は景気の底を打ったようである。中国は今後
、米国に強気で望めることになる。中国は、ゆとりを取り戻して、
米国から必要な農畜産の輸入品に関税を掛けない。米中経済分離が
完成したように感じる。

日中製品を売るアリババがアジアでも米製品などを売るアマゾンを
抜かしている。

このため、必要ない米国の工業製品は、中国では売れなくなる。そ
して、徐々にIT基幹技術であるグーグルのソフトやエヌビディアの
CPUも必要なくなる。米中の技術的な分離も起こってくる。米国の衰
退が技術分野でも起きている。

5.地方活性化の方向
人口減少の日本は、益々江戸時代に似てきた。地方の藩は、新興産
業を起こした地域と、コメ経済から抜け出ない地域では、大きな差
が出たが、地方自治体の首長の手腕で、新興地域にも衰退地域にも
なる時代になってきた。

地域の人口が増加するためには、地域産業を興す必要がある。江戸
時代の金持ち藩は、商品作物を植え、それを加工してニッチな商品
の開発して、それを売る仕組みを作った。

江戸時代で一番成功したのが、備中松山藩で、砂鉄からブランド品
にした備中鍬を生産して、藩所有の艦船で江戸で持っていき、直接
販売した。これにより大きな利益を得て、岡山の山の中の貧乏藩を
、大金持ち藩にして幕末には、藩主を筆頭老中にするのである。こ
の立役者が家老の山田方谷である。その他では、米沢藩主の上杉鷹
山は、蚕を育て絹織物を特産品にして藩の経済を立て直した。

日本は、今後、2割の上流階級と8割の大衆階級の2つの階級に分離
する。このため、高級品市場と大衆市場の2つの市場になる。この
内で、地方自治体の商品を高級品市場でどう売るかが問題になる。
それと、直接販売としてはネット販売をすることで実現できる。高
級品市場は、世界市場とも連携するので、世界に売れることが必要
になる。

というように、どのような地方自治体がどのような商品を出してく
るのか、見ものである。それぞれの地域での特産物を作り、それを
使った高付加価値品を作ることである。観光資源がある自治体が今
は注目されているが、それ以外にも出てくると見る。

ふるさと納税での返礼品として、地方の特産物を送ることにシフト
したが、この政策は非常に良いと思う。後は、地方自治体のトップ
の手腕にかかることになる。

人口減少日本では、人が集まる1つ地域ができれば、人が去る多く
の地域が必要になる。大都市に来ても、貧困生活になるだけで、新
興地方の給与の方が良くなるので、都市から新興地域に移る人も出
てくる。地方の方が環境もよいので、都市より住み易い。地産地消
の自給自足経済になるので、地方の方が大衆階級にとっては、住み
やすいことになる。

さあ、どうなりますか?


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