6077.米国的な資本主義の終焉



アメリカ最大規模の経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は、
数十年にわたって資本主義を推進してきた株主第一主義を廃止する
と発表。大きな時代の転換点に来ている。今後を検討しよう。
                 津田より

0.日米株価
NYダウは、利下げ期待で、7月16日27,398ドルと最高値を更新したが
、中国への追加関税UPと為替操作国認定の上に米国債の逆イールド
で、8月15日25,339ドルまで下げたが、その後は戻りで8月22日には
26,252ドルになったが、中国の対抗関税UPとパウエル議長の講演で
利下げを確約しなかったことで8月23日は25,628ドルと前日比623ド
ル安と、ダウ、ナスダックなど軒並み2%程度の株安となり、米長期
金利は1.5%に急降下。ドルは対円で105円台前半になっている。

日経平均株価は、2018年10月2日24,448円になったが、以後低調で、
12月26日18,948円と暴落し、米国で今年利下げ観測で、7月25日に、
21,823円まで戻したが、米国の追加関税UPで8月6日20,110円と大幅
な下落になり、その後は一進一退で8月23日20,710円になったが、
8月26日月曜日朝、東京市場も荒れ、2万円台を維持できるかの攻防
になりそうである。

現時点、海外投資家は、日本株を1兆円も売り越しになっていて、日
本株に魅力がないと見ている。このため、上がる感じがしない。出
遅れ感もない。日本の長期的な衰退を海外投資家は見ているようだ。
このため、日銀のETF買いで2万円を維持できるかでしょうね。日銀
が買い進むと、ほとんどの企業の筆頭株主が日銀になる。日本企業
は、国営企業となるしかなくなる。預金を株投資に回す日本人が増
えないと株は上がらない。

2008年のリーマンショック後の大胆な金融政策で、景気が戻ったよ
うに見えたが、金融緩和政策を止め正常化すると景気後退になる。
すると、トランプ大統領は、緩和方向の金融政策を求め、大幅な利
下げを要求。

しかし、23日ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演で、利下
げ方向を明確化しなかったことで、トランプ大統領は、パウエル議
長を米国の敵と呼んで習近平と同じような悪い奴だと。これで、ト
ランプ大統領は、パウエル議長を辞任させ、ブラード氏に代える。

そして、中国は、対米報復関税を発動して、750億ドル分に最大10%
の追加関税を課すと発表。一部製品に対する追加関税は9月1日、
残りは12月15日に発動する。これで米国からの輸入品すべての
関税を上げることになる。

これに対して、トランプ米大統領は、来月発動予定の制裁関税第4弾
で税率を10%から15%に、かつ、今までの2500億ドル(約26兆円)
分の制裁関税を10月1日に現在の25%から30%に引き上げる。そして、
中国でビジネスする米企業の撤退を要求。米中貿易戦争も一段とエ
スカレートしてきた。また、トランプ大統領は、米国にとって「中
国が無い方がましだ」と述べた。これで、完全なグロバリゼーショ
ンの終焉だ。米国と中国の経済圏が分離することになる。

1.米国の限界
米国の累積国家債務は、23兆ドル(約2500兆円)で、到底、
返せる金額ではなく、日本の国債金利0%とは違い、国債金利は2
%もあり、50兆円の金利支払いが必要になっている。国家予算は
、4兆7500億ドルであり、相当な金額が国債費になっている。
このため、今年の新規米国債発行高は、減税をしたこともあり、1兆
ドル(100兆円)にもなる。日本の国家予算分の国債を新規に発行す
るという。どう考えても国家を維持できない。

ということで、金利を下げろと言うトランプ大統領の要求も分かる
気がする。永久に量的緩和をする日銀と同じように、第4弾の量的緩
和(QE4)になるしかない。これをトランプ大統領は狙っていることは
確実である。QE4が始まると、株価が上昇することはアノマリーであ
る。選挙の半年前にはQE4を開始させたいようである。

トランプ大統領は、中国への貿易戦争は拡大して、その上に、欧州
とも貿易戦争を開始する。中国が米農産物を買わないので、日本に
対して、世界で唯一の味方なので大筋合意で貿易戦争はしないが、
別枠で我儘な注目として早期の農産物の大量購入を依頼している。

それと、輸出を促進したいのでドル安を志向している。しかし、FRB
がゼロ金利にしないので、他国債よりお買い得な状態にあり、ドル
買いが増えてドル安にできない。このためドル売りの為替介入も準
備している。ECBが量的緩和拡大などの処置をしたら、実行する可能
性が高い。

また、国家財政が厳しいので、金食い虫の米軍は、世界から引き上
げる方向であり、日本や韓国には、駐留費を5倍にしろと要求してい
る。そして、アフガニスタンのタリバンと交渉して、中東から早期
に引き上げたいようである。ドイツの米軍は完全撤退で、一部を駐
留経費を全額出すポーランドに移す。

米軍の引き上げを予見して、韓国は日本との軍事情報協定を破棄し
て、米国から中国に乗り換える方向であり、その第一歩である。韓
国は北朝鮮と統一して、統一朝鮮となると宣言。中国と米国の境界
線が朝鮮半島の38度線から対馬に下がり、アチソンラインまで後退
するようだ。東アジアも大きな歴史的な転換点を迎えている。

香港デモでも明らかなように、香港の民主主義が中国の国家独裁主
義に押しつぶされそうになっているのも、米国の力の限界を中国が
見ているからである。台湾も同様に中国が手を伸ばしている。1国
2制度は形骸化してきた。ロシアも核推進ロケットなど兵器開発に
余念がない。

イランはロシアとアラビア海で海軍の共同演習を行い、米国をけん
制している。米国が主導するホルムズ海峡船舶防護の有志連合には、
英国と韓国しか参加をしていない。米軍の能力が大きく低下してき
て、世界が米国を頼りにしなくなっている。その分、相対的に、中
露の軍事能力が向上している。インド洋や西太平洋では、米海軍よ
り中国海軍の方が優位にあると豪州シンクタンクは発表している。

このように米国の限界で、大きな歴史の転換点が訪れ、今私たちは
それを見ている。今はわからないが、将来の歴史家は、現時点が歴
史の大転換点であったと言うに決まっている。

2.株主優先資本主義の転換
米国の中間層が没落して、貧富の差が拡大して正常な民主主義が破
壊され、トランプ大統領みたいな常識外れの大統領を選んでしまっ
た。この国民の不満を移民や中国などの海外に向けるために、貿易
戦争を始めた。そのため、世界経済は下降している。

しかし、一番、問題なのが、企業トップと一般社員の給与差が250倍
にもなっていることである。トランプ大統領の海外への不満転嫁政
策が失敗すると、次には、所得分配の問題が起きて、社会主義革命
が浮上してくる。現に、その社会主義を掲げるバーニー・サンダー
ス氏や庶民の味方を掲げるエリザベス・ウォーレン氏の民主党候補
が出てきている。

そうなると、企業存続の問題にもなるから、米国企業トップも自己
改革をしないと企業の存続ができなくなったのである。江戸期の日
本の商人と同様な位置に立たされたようである。

このため、ビジネス・ラウンドテーブルの会長を務めるJPモルガン
・チェースのジェイミー・ダイモン会長は、「アメリカン・ドリー
ムは生きているが、ぼろぼろだ」と述べ、「大企業は従業員や地域
社会への投資を始めている。それが唯一、長期的に成功する道だか
らだ。こうした現代的な信条は、全てのアメリカ国民の助けとなる
経済を追求する。」と反省した。株主優先を止め、従業員の給与を
上げて、地域社会にも貢献するとした。利益率は、当然落ちること
になり、株主への配当金は減ることになる。

これは、江戸時代の近江商人の家訓である『売り手によし、買い手
によし、世間によし』を示す『三方よし』である。「商売において
売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそ
よい商売といえる」という考え方だ。日本企業は社員、社会、取引
先の3者の利益を追求することが鉄則である。株主の力は弱かった。

それにようやく、米国企業も気が付いたようである。

この状態は英国でも同じであり、新自由主義で、富裕層がより豊か
になれば、社会もよくなるとした英米で、貧富の差が拡大して、ト
ップに常識外れの人を選び、社会や経済を壊すことになっている。
英国のジョンソン首相は、ハード・ブレクジットにまっしぐらであ
る。その上に、イタリアの同盟党首サルビーニ氏も総選挙をすると
首相になるが、EUとの対決姿勢になる。EUが破壊される可能性も出
ている。

このような中、25日にフランスでG7サミットが行われるが、世界
経済の後退懸念が強まる中、各国が政策協調へ一致できるかである
が、仏マクロン大統領は共同声明を諦めている。世界経済の破壊を
米英首脳が行っているので、無理がある。

貧富の差を拡大すると、江戸時代には民衆の一揆が起こり、大儲け
している商店が襲われて、破綻している。幕府も見て見ぬふりをす
るので、保護されなかった。このため、日頃から大商店は、近隣の
住民の面倒を見た。店の裏にある長屋の住民からは賃借料も取らな
いなどの優遇をしている。一揆が来ると、近隣住民が一揆の首謀者
に、この店は襲わないでと嘆願したことで、救われたのである。

貧富の差拡大を国家が容認すると、ろくなことが起きないという日
本の歴史の教訓が証明されたようである。

どちらにしても、江戸時代の日本企業の英知が世界的に必要になっ
ているが、日本では逆に株主の力が強くなってきているし、従業員
の給与を上げずに、正規社員を非正規社員に置き換えて、給与を浮
かして、株主還元を優先する風潮になってきている。米国のような
株主優先資本主義にするべく、今、改革している。しかし、方向が
逆である。

日本企業の寿命は長い。100年以上の企業は多数あるが、欧米では数
えるほどしかない。江戸時代の日本企業は、大きな儲けより長く存
続する方向で経営をしてきた。このため、社会貢献をして、その上
で製品の改良と用途変更など、時代と共に商品を変えてきたのが、
日本企業である。

米国企業は、存続より利益重視であり、改良や改善にかける費用を
出さないので、新しい企業のより良い製品に駆逐されてしまう。存
続より利益重視であり、その上に新しく企業を起こして、革新的な
製品を作る方向である。一方、改良に力を注ぐ日本企業は、イノベ
ーションには弱い。

このため、インターネットのような技術革新が有ればよいが、米国
発の大企業になれそうな有望なベンチャーがなくなってきたように
思う。AIなどは中国の方が進んでいる。このような時代になると、
よりよい製品に改良する日本企業の方が優位になる。

そして、日本企業と似ているのが、中国や韓国企業である。改善、
改良などを中心に日夜研究している。このため、日本企業が中国・
韓国企業に負けることもある。日本企業もうかうかしていられない
。そして、この3ケ国に共通の思想が儒教であるが、その儒教でも
日本と中国や韓国では違う。日本の特徴は、神道的な感覚で、神道
的な儒教になっている。この神道的な考え方を今後、世界展開する
必要になっている。

3.神道の世界展開を
日本人は、世界のどこの民族とも違うような気がしている。感性が
違う。他の民族より、日本人の方が原始人に近いようである。

猿は、17%の猿が新しいことを始めると、皆がその行動をするよ
うだ。芋を海水で洗う行動は、幼い猿が始めたが、17%の猿が実
行した時点で、皆が行っている。これと同じような行動パターンを
日本人はする。倫理性でも論理性でもなく、付和雷同型である。欧
米人は個人主義であり、自分の価値観で周りを気にしない。中国人
は政府の方針を見ている。韓国人は、自分の行動を韓国儒教の倫理
に合うかどうかを気にしている。と言うように違う。

原始人は、一人では生きていけないので、周りの人と協調するよう
にしていた。そして、困っている人を見ると助けた。このため、縄
文時代には、戦争もなかった。自然が豊かであり、自然と共生して
いれば、豊かな生活ができた。このため、旬なものを好み、いつも
自然を観察して、よりよい食料を求めた。森の神に感謝したのであ
る。他人から奪うより、自然を観察し森の神様にお願いした方が、
よりごちそうにありつけたからだ。豊な自然の裏には神がいると思
ったのである。

このような習慣が神道に定着したのである。原始人集団は、新しい
ことを発見した人を英雄とたたえていたことで、個人は集団をより
豊かにすることが、個人の生きがいとなり、集団は個人を褒めたこ
とで定着した。特に功績がある個人を集団の神にもしていた。

このため、日本人は、集団をよりよくする使命を持って生まれてき
たという感覚を持っている。個人の幸福も重要であるが、地域や企
業の幸福に寄与したいという気持ちがより大きいことになる。

もう1つ、中国からいろいろなものを取り入れたことで、外来の物
を取り込むのに、あまり抵抗感がない。日本自体が海で囲まれてい
るので、外敵に侵入されないことで、外国人に抵抗感がない。

幕末、明治以後、外敵という感覚ができて、外国人を入れないとし
たが、精進料理や書院造りなど五山文化は、滅亡する宋の貴族たち
が日本に大量に渡来して、起こした文化であり、外国人を日本は歓
迎していた。その前も高句麗や百済、呉などからも大量に日本に渡
来してきた。この人たちが新しい文化をもたらしたのである。

今この神道的な感覚を世界が求め始めている。日本の神道が世界に
出ていく時代になってきた。そして、神道的には、自然を観察して
いれば、地域地域で自立できるはずなのだ。地産地消の時代は、神
道的な感覚が必要になっているのである。

砂漠地帯では太陽光の恵みがあり、それを電気にして、植物工場で
野菜などの食料を自給できるようになる。地域地域に恵みがあるこ
とを知る。そして、それが地域間格差や貧富の差を少なくする方策
でもある。その先頭に日本が立つ時代がやってくると見ている。

さあ、どうなりますか?

ーーー参考資料
米経済団体、「株主第一」を廃止 福利厚生や地域に注力へ
2019年08月20日BBC
アメリカ最大規模の経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は18
日、数十年にわたって資本主義を推進してきた株主第一主義を廃止
すると発表した。株主利益の追求はもはやアメリカの実業界の主目
的ではなく、今後は利益を生むこととともに、社会的責任を果たす
ことにも注力すべきだとしている。
18日に発表された声明は「『アメリカ全国民を助ける経済』を推進
するため企業の目的を再定義する」と銘打たれ、180人以上の企業ト
ップが署名した。これにはアマゾンやアメリカン航空、JPモルガン
・チェースなどの最高経営責任者(CEO)も名を連ねている。
新たに5つの優先課題
50年近い歴史を持つビジネス・ラウンドテーブルが、株主利益を最
優先としなかったのは今回が初めてだという。株主第一主義は、ノ
ーベル賞を受賞した経済学者ミルトン・フリードマン氏が提唱し、
企業活動の基礎とされてきた。
声明では、従業員に公正な給与や「重要な手当」を提供すること、
地域社会の支援、サプライヤーに対する倫理的態度など5項目を、新
たな優先課題としている。
企業は近年、ソーシャルメディアで高まった活動家の声や従業員か
らの要望など、実業界の外からもたらされた問題提起への対応を迫
られている。
ビジネス・ラウンドテーブルの会長を務めるJPモルガン・チェース
のジェイミー・ダイモン会長兼CEOは、「アメリカン・ドリームは生
きているが、ぼろぼろだ」と述べた。
「大企業は従業員や地域社会への投資を始めている。それが唯一、
長期的に成功する道だからだ。こうした現代的な信条は、全てのア
メリカ国民の助けとなる経済を追求する、実業界の飽くなき取り組
みを反映している」
ジョンソン・エンド・ジョンソンのアレックス・ゴースキーCEOは、
「この新しい声明は、今日の企業が運営されるべき形をより反映し
ている。経営陣が全てのステークホルダーの要望に応えようと努力
した際に、企業が社会の改善で果たすことができる重要な役割を示
している」
声明にはこのほか、ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バー
ラ会長兼CEO、フォードのジム・ハケットCEO、アップルのティム・
クックCEOも署名した。
(英語記事 Corporate leaders scrap shareholder-first ideology)


コラム目次に戻る
トップページに戻る