6073.新興国対先進国の貿易戦争構図



米中通商戦争と日韓紛争は、新興国対先進国の戦いの様相であるが
、共通する基盤が存在している。そして、交渉の進展もなく、立ち
往生している。今後を検討しよう。  津田より

0.日米株価
NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで、12月26日21,712ドルと暴落
したが、利下げ期待で7月16日27,398ドルと最高値を更新したが、
GDPが2.1%増と強く、0.25%利下げ予想で7月26日には27,192ドルと
少し下げているが、水準は高い。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日
18,948円と暴落し、参議院選挙も無事終わり、日本株はNY株から出
遅れたが7月25日21,832円となり、7月26日21,658円で決算待ちの状
態である。

米国は、過去最高の株高で、かつGDPも2.1%増と鈍化したが強く、
景気後退の感じがなく、7月のFOMCで0.25%の利下げと期待値が下が
っている。今年、1%程度の下げになると市場は予想しているが、
景気が強く、そこまでいかないようである。

米トランプ大統領は、関税UPで工場が米国に戻ってくると見ていた
が、その予想は外れて、反対に工場が海外に逃げている。その原因
をドル高に求めている。このため、ドル安への政策を検討している。

トランプ大統領は、「米国経済は強くドルも力強い通貨だ。」「他国
は自国通貨安誘導してドルが高くなる。これは不公平だ。」とドル売
り介入も辞さずと思っているので、そう遠くない将来にそうなるよ
うだ。

クドローNEC委員長は、為替介入はしないと言うが、ドル売り介入を
米国が行うと、世界の各国が為替介入で通貨安競争になり、世界の
経済秩序は大きく崩れることになる。トランプ大統領の経済秩序破
壊は、世界に暗雲を呼び込むことになる。

そして、フランスのデジタル課税に対して、トランプ大統領は、フ
ランスワインに対抗関税を掛けるとした。米国以外の国は、日本も
含めてフランスと同じようなデジタル課税を検討しているが、米国
が不当な利益擁護で、対抗してきた。為替介入と不当な関税UPで
日欧が米国から離れるトリガーになりそうである。

このような米国と米同盟国の離反を見て、中国はロシアとの同盟を
強固にして、米中通商交渉の合意を引き延ばしていくことが容易に
予想できる。トランプ大統領は、いら立ち3000億ドルの関税UPを行
い、深みにはまっていくことになる。

そして、米国から日欧は離れていくしかなくなる。中露は、より強
く出てくることになる。非常にまずい世界になってきた。

1.ホルムズ海峡有志連合
米国が呼びかけるホルムズ海峡安全を守る有志連合に、欧州も日本
も、現時点で参加を表明していない。英国は複数の艦艇を出して、
自国タンカーなどを護衛する処置を行い始めている。英国の首相に
ジョンソン氏がなり合意なきEU離脱して、英国は米国との防衛経済
共同体に向かうことになる。

このため、米国の呼びかけに応じて、有志連合に参加する可能性が
あるが、他の欧州諸国は、米国の有志連合には参加せずに、独自の
連合を作り、ホルムズ海峡の安全を守る検討を開始した。

米国はイラン核合意から離脱して、イランに経済制裁をして、緊張
状態をもたらしているので、イラン核合意に参加している国は、米
国と行動を共にはできない。日本もイランとの関係は良好であり、
イランとの関係を壊したくない。このため、米国の有志連合への参
加に躊躇している。

このように、参加国が集まらないのは、米国の覇権が大きく崩れて
きた証拠でもある。誰も米国のサイドに立ったら、紛争解決はでき
ないと見ている証拠である。

このことからも、世界の構造が、米英、日欧、中露の3極構造にな
ってきたことがわかる。日本は欧州と米国をつなぐことになると思
うが、どこまで米国に付いていくかが問題である。

2.貿易戦争構図
日韓紛争と米中貿易戦争は、同じような構図になっている。日米貿
易戦争で、日本と米国は住み分けた。日本はアナログ系と素材系、
米国はデジタル系、情報系の産業と住み分けたが、デジタル系の方
がうま味が大きく、それが企業業績に表れ、日米の株価の差にもな
っている。

この日米で住み分けた産業分野に、韓国と中国が出てきた。韓国は
日本のメモリー、半導体、スマホなどの電子分野を取り、アナログ
系と素材系の工作機械や素材は、すっ飛ばしてクリームスキミング
して美味しいところを取り、基礎財を日本から補給する関係になっ
た。

この時、韓国が日本の素材の買い手になり、韓国企業は、日本企業
より上位になり偉いと勘違いをした。このように、日本を下に見て
しまったのである。

中国は、韓国や日本から部品を買いスマホを低価格で作り、クリー
ムスキミングした。その上に、米国の強いデジタル系を狙い、米企
業の進出を阻止して、自国企業を育成しようとして、基礎部分を抑
えている米国企業にスパイを送り込み、技術を盗んだ。しかし、ま
だ、OSやデジタル処理ツールは米国の方が上にある。

このように、中国が上で、中間に韓国で、素材を作る日本は下請け
ということで一番下となっている。このため、中韓は、日本を下に
見下すようになったようだ。

工作機械や素材は、目立たないし最先端という宣伝もしないので、
技術的な優位性を持つので、世界的に追いかけてくる企業も少ない。

しかし、精度を上げるためには、人間のカンと経験が必要であり、
ノウハウも多重に積み上げた結果であり、そう簡単には追い付けな
いし、大変なので後回しにされていたのである。

日本企業も素材は一度工場が完成すると、量を売ることが必要であ
り、韓国企業に買いたたかれても、それに対応してきた。逆に韓国
企業は、買いたたけばよく、自国企業での生産を志向してこなかっ
た。

今回の日韓紛争で、自国企業の生産を志向することになると見るが
、精度を上げるためには、いろいろなノウハウが必要であり、日本
企業の技術退職者を雇えるかどうかにかかっている。逆に、日本企
業は技術退職者を韓国企業が雇えないようにガードする必要がある。

日本は、電子産業の失敗を2度と繰り返してはいけない。

3.日韓関係
韓国は、日本の「ホワイト国」解除をWTOに持ち込んだが、成果が
無かった。そして、日本は、8月2日に韓国のホワイト国解除を閣議
決定し、8月末までには実施の方向である。素材、工作機械など3千
品目が対象になる。

韓国は協議を日本に求めているが、日本はホワイト国解除では協議
に応じないとしている。

韓国は、徴用工賠償請求で、日本資産を売却して8月末までに現金化
する方向である。再三、日本が協議を要請したが、韓国は拒否して
いた。しかし、現時点では、韓国としては、売却中止とホワイト国
解除の中止を仲裁してほしいようである。

このため、韓国は米国の仲裁を待っている状態であるが、米国はホ
ワイト国解除を日本に要請した手前、仲裁には消極的である。

どうして、仲裁が必要かというと、文政権が単独で日本に折れるこ
とは、支持者層の反発が起きて、政権が崩壊する可能性があり、で
きないからである。

若者は、反日教育で日本敵視の感覚が強く、文政権が日本に折れる
ことは、許しがたいことである。その上に日本企業を買いたたいて
いるので、日本の方が下という感覚もある。

韓国の日本資産売却後、次の日本の経済制裁になり、その後米国が
仲裁に動くと見る。米国の要請で日本はホワイト国解除になってい
るので、現時点での仲裁はないからである。

それと、日本に対して、韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相は「予
期せぬ事態」と言って警告している。日本人に対するテロの可能性
があるので、少なくとも韓国への観光は自粛した方が良いが、外務
省は日本国民に警告もしないという職務怠慢な状態である。

4.韓国の素材系への進出で
韓国は、日本の素材輸出管理の強化で、自国産業として素材系を育
成してくることになる。それだけ、日本企業の売り上げに影響して
くる。短期には韓国が困るが、長期に考えると日本も困る事態が想
定できる。GDPの減少も想定できる。

産業競争力は、国家が育成すると急速に伸びるものである。中国製
造2025を見ればわかる。日本は、1980年代に半導体など国家育成を
したが、途中で米国に潰されて、以後できなくなってしまった。

次の産業育成を行わないと、徐々に新興国が日本の得意分野に国家
補助で進出して、奪い取られることになる。日本も、より先進国の
欧州と米国の産業を奪ってきたが、鉄道車両や飛行機産業など残さ
れているものは少なく、それも手掛けている。

そして、AIやロボットなども重要であるが、米国や中国の大企業の
研究費にはかなわない。ロボットの基礎研究は日本が行ってきたが
、応用研究や製品で、米国に負けてしまった感じである。このため、
自動車業界は、海外企業と連携してAIや自動運転技術を確立しよう
としている。

しかし、それでは、日本の新産業の育成にはなっていない。論理で
は解決できない日本の得意な地道な物性研究の成果を積み上げる形
の産業が、必要になっている。今までに手掛けたバイオや燃料電池
などの研究を継続して確立してほしいが、その他、ナノテクノロジ
ー分野、特にナノチューブやナノファイバーなどの応用研究なども
有望な分野である。早く、次の有望な産業を生み出さないと、人口
減少社会が迫っている。生産性の良い産業を生み、GDPを維持して、
社会全体の豊かさを維持していかないと、衰退国になってしまう危
険がある。

さあ、どうなりますか?


コラム目次に戻る
トップページに戻る