6065.目覚ましい成果が必要に



米トランプ大統領は、大統領選挙前に成果が欲しく米中貿易戦争で
の成果がないので、メキシコからの移民問題での成果獲得を目指し
て、関税UPの圧力を使用した。メキシコは、米側の要求も了承して
協議は成立したが、そこに目覚ましい成果を望むトランプ大統領が
いる。今後を検討しよう。  津田より

0.日米株価
NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで過去最高株価であるが、12月
26日21,712ドルと暴落したが、その後は上昇して4月23日26,695ドル
になったが、米中貿易戦争激化とメキシコ移民問題が出て6月3日
24,680ドルまで下げた。その後、雇用統計が悪くパウエル議長発言
で利下げ観測が出て、6月7日25,983ドルまで戻している。FRBの今年
3回利上げ確率が上昇して、市場はそれを織り込みに行っている。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日
18,948円と暴落し、4月24日22,362円に上昇したが、米中米墨貿易戦
争で6月4日20,289円まで下落した。米国で利下げ観測が出たことと
、PBRが1倍割れ寸前で自律反発が出たこと、選挙前であり積極的な
日銀のETF買いなどで6月7日20,884円になっている。しかし、米国ほ
どには、戻していない。

トランプ大統領は、再選の選挙に向けて成果が必要であり、特に中
西部の激戦区でバイデン候補の方が支持率が高いことで、激戦区の
労働者の支持が必要になっている。

前回の選挙で公約した保護貿易化や移民の排斥、ドル安などで、職
を増やし賃金を上げることが、支持増には必要とトランプ大統領は
、思っているが、まだ十分で具体的成果が出ていない。バイデン候
補は、そこを突いてきている。

このため、早く具体的な成果が必要になってきたようである。中国
との貿易戦争は、全面対決ムードになり、解決には長期間が必要で
あり、日本、ドイツなどの自動車輸入減の成果が必要になっている
。心配していた方向に来ている。

それと、突然のトランプ大統領のツイードで、市場は大きく動かさ
れている。このことで、市場は安定的に推移できないことになる。
メキシコの不法移民対応に不満で関税UPとのツイードで、世界は知
ることになるなど、今後も大きく振らされることになる。

しかし、どうも、トランプ大統領は、株価が26,500ドル以上になる
と、対外的な強硬策が出てきて株価を下げ、株価が25,200ドル以下
になると、株価を上げる方向に動くようである。今回は、大統領配
下のPPT(緊急経済対策会議)が動き、雇用統計が悪いことでパウエ
ルFRB議長を説得して、年内複数回の利下げ方向に向け、株価を上げ
たようだ。株価をよく制御しているようだが、そんなにうまくいく
のか疑問である。

日本でも、参院選挙が迫り2万円割れにしないように安倍首相に忖度
して、日銀も積極的な市場介入している。日米通商交渉も参院選挙
前には決着しないで、その後にトランプ大統領が望む成果を出す方
向で、協議を開くようである。どちらにしてもトランプ大統領は、
具体的な目覚ましい成果が必要であり、日本に対しても、自動車の
輸出制限などの目覚ましい成果を求めてくることは確かである。

1.FRBの利上げの意味すること
米中貿易摩擦により需要増が期待できないので、企業は設備投資を
控えてISM鉱工業指数が低下してきていたが、とうとう5月の雇用統
計7.5万人増となり、予想18.5万人増から見ると非常に低いことにな
ってしまった。

9年ぶりの低水準であり、一時的な現象の可能性もあるが、6月雇用
統計も同様なら景気後退が明確になり、パウエルFRB議長も、7月の
利下げを考えざるを得ないし、年後半にはQE4についても検討するこ
とになる。

この雇用統計により、ドル金利2.01%に急落し、ドル安円高で107円
台に突入し、反対にNY株価を2.6万ドルまで上げた。と同時に、トラ
ンプ・ツイードで米国とメキシコが移民問題で合意すると言う。

景気の悪化は、貿易赤字の縮小にも繋がり、4月の貿易赤字は前月
比2.1%減の507億9100万ドルになった。モノの輸入が15カ月ぶりの低
水準となり、民間航空機を中心とした輸出の落ち込みを相殺した。
それと、5月米企業の人員削減計画の数が、前月比46%増と人員削減
に向き始めている。米国もリセッションの方向になっている。

パウエル議長は、景気後退に直面して、金融緩和や量的緩和QEが、
今や伝統的な金融政策になったと言い、金融緩和なしの政策に戻れ
ないことを暗示した。流動性相場が永遠に続くことになり、実績相
場に戻れないことがハッキリしたようである。景気維持のために、
金融緩和政策を永久に行うという。

この発言で市場の雰囲気が変化した。利下げ催促相場になってきた
。現時点は、利下げ期待から株価は上昇している。しかし、利下げ
が実施されると、次の利下げを催促する株価下落を起こすことにな
る。

米国は今後、利下げを複数回、繰り返した後、QE4になるが、利下げ
での株価上昇は一時であり、その後催促相場で下落するので、QE4が
始まるまでは、株を買ってはいけないようだ。米国株をしている人
は注意が必要である。

日本で30年間金融緩和をしても、インフレが起きていないので、米
国でも大丈夫であると見なしているが、日本は経常収支が黒字で、
日本国債のほとんどを自国で消化できている。移民を入れて、労働
賃金の上昇も緩やかにしている。観光客を増やして、景気を維持さ
せている。

しかし、米国は経常収支が赤字であり、その上に米国債は、海外勢
が消化している。その上に移民を止めて、労働賃金も上がっている
。中国政府は米国への旅行を控えるように国民に勧告して、観光客
も減少する。この違いで、どうなるのかが今後の見物である。

金利が下がりドル安になり、輸入物価が上がりインフレになる確率
が高いように思う。ドル安ということは、円高になり1ドル=105円
になる可能性もある。そして、もし、インフレになると、利下げは
できず、ドル高にするために、逆に利上げが必要になる。

経常収支が赤字であるのに、減税をやりすぎているので、国債発行
量を増やす壁建設やインフラ整備など財政出動もできないことにな
る。景気後退時のインフレ(スタグフレーション)になる確率も高
い。

深刻なスタグフレーションになると、戦争経済で供給力を上回る消
費を起こして、解消するしかなくなる。米国経済が戦争を志向する
ような悪い方向に向かうのでないかと心配である。戦争が開始する
と株価は上がることが知られている。

そして、豪州は金利1.5%から1.25%に下げたし、インドも下げ、ECB
も利上げを来年から2020年まで先延ばしにした。このように世界的
に利下げが始まった。

2.日銀の方策
しかし、日銀は世界的な利下げ方向でも、金利は-0.1%であり、これ
以上の金利低下ができずに、金融緩和ができない状態であり、円高
になりやすくなっている。それでも金融緩和をすると、日銀ETF買い
の増額や国債買入れの増額しかない。国債はマイナス金利であり、
それほどには買えない。

そして、日銀は、FRBより大胆で市場に日銀ETF買い介入しているた
めに、株価が経済の体温計として機能せず、適正株価がわからなく
なり、よって、市場参加者が減り取引量が減ってきている。この状
態で買い増しても、市場参加者が居なくなるだけである。

市場参加者を増やそうと、金融庁は株による資産形成を促すが、国
民はそっぽを向いている。

日銀は、市場を制御しようとして、株の買いしかしないことで、株
の適正価格形成に失敗している。市場参加者がいなくなり、市場と
しての価値がなくなる方向である。事実、市場取引の7割を行う海外
投資家は、持ち株を売却して魅力がないと市場から出て行っている。

どちらにしても、株価は景気後退なるので、下落トレンドになる。
しかし、日銀ETF買いで株価は、あまり落ちないかもしれないが、逆
に上がりもしない。過度な日銀介入で、株価が動かず、東京市場の
緩やかな死の道に入ったかもしれない。

3.米中が冷戦状態に
米国は、台湾に戦車など武器を20億ドル超売却すると発表したが、
これに対して、中国が強く反発している。このような米国の行動に
対して、人民日報が「勿謂言之不預」(警告しなかったとは言わせな
い)と中国は、「開戦警告」を発表して、米国と戦う姿勢を明確にし
た。冷戦の開始を中国は宣言したことになる。少なくとも、持久戦
に持ち込んで、トランプ後での解決を目指すようである。

そして、この宣言は、中国国内向けでもあり、米国への渡航の注意
勧告などの指示に逆らう人は、非国民であるということになる。締
め付けが厳しくなる。強力に習近平の独裁体制を確立するようであ
る。大学の学問の自由も制限して、大学教授の共産党批判、政策批
判でも拘束する事態になっている。

そして、中国はロシアとの関係を強固にするために、習近平国家主
席がモスクワに飛んで、「中ロは世界の大国として、国連を中心と
する国際体制を断固として守る」と連携強化を訴えた。プーチン大
統領は「主な国際問題で両国の立場はほぼ一致している」と述べて
、中国と中露同盟を確実にるようである。中国はロシアから地対空
ミサイルや戦闘機などを積極的に購入しているが、より一層、安全
保障面での結びつきを深めるようだ。

これに対して、トランプ米大統領は、G20後に対中関税を残り3000億
ドル分にもすると述べた。これに対して、中国はレアアースの対米
輸出を制限する事やボーイング機100機購入キャンセルを検討してい
る。また、米国の輸出制限をするココム的な仕組みを作り、そのリ
ストに最先端の中国企業を入れたが、それに対して中国も「信頼で
きない」とみなす最先端米国企業のリストを作成するとした。この
ように、相手の制裁に対して、それと同等な制裁を行う状態になっ
ている。ピンポン制裁とでもいうのであろうか?

このことを受けて、ベンチャーキャピタルも米中の先端企業に投資
できなくなったようだ。先端企業投資が終わったことと、独占禁止
法の適用も検討されて、FANG株の上昇も終わったようである。

同時に、世界的な景気後退になり、中国でも金融不安が出てきたよ
うである。内モンゴル自治区の金融機関である包商銀行を政府の管
理下においた。不良債権の回収ができずに倒産の可能性がありと判
断したのであろう。この管理下に入る銀行が増えると、中国も金融
恐慌の危険になり、米国との交渉を進めざるを得ないことになるか
もしれない。しかし、反対に対米強硬策で国民をまとめて乗り切ろ
うとすると、より反米にシフトすることになる。現時点では、後者
の可能性が高いと見る。

ということで、軍事的な面でも同様な対応になってきている。今後
、米中間での冷戦が熱戦にならないように注意が必要になってきた
。熱戦になったら、日本は米国側について、米国と中露との核戦争
に巻き込まれることになる。それだけは避けるべきである。

2008年リーマン危機を乗り越えるための金融緩和が、永久化するこ
とになり、1929年の大恐慌ののち、1930年ストーム・ホーレー法が
トランプ関税になり、1933年にルーズベルト大統領で社会主義化し
て、1941年第2次世界大戦に突入する歴史を繰り返していると見た
方が良い。

ということで長期にわたる米中の冷戦というシナリオが「ニュー・
ノーマル」になり、この冷戦で台湾、韓国、そして日本が負け組に
なる。米中に跨る世界的なサプライチェーンに深く組み込まれてい
たが、その崩壊で、再構築が必要になる。このため、一時的に3ケ国
の企業収益が大きく減益になる。

4.メキシコと米国の関係
北米を米国の同盟国として、優遇すると思いきや、メキシコに対し
ても、関税を掛けて物流を止めるようであり、米国は、3000億ドル
輸入で、2000億ドル輸出ということで、米国からメキシコへの輸出
も多く、相互依存性の高い貿易関係であり、中国などより影響が大
きい。

しかし、メキシコは大きく譲歩して、グアテマラ国境に軍隊を派遣
して、不法移民を排除するとしたが、米国は合意しなかった。米側
は協議で、グアテマラからメキシコを経て米国に入国した不法移民
らの亡命申請を米政府が拒否し、メキシコに送還できるよう要求。
メキシコは、米国の要求を受け入れて、6月10日からの関税の発動
はなくなった。

5.米国の韓国離れ
米韓連合軍司令部がソウルから70km南の平沢(ピョンテク)に移転
し、ソウル近郊には最後まで残っていた米陸軍とその家族が居なく
なる。しかも、6月3日のシャナハン国防長官代行と鄭景斗国防部長
官の会談で、米韓連合司令官を韓国軍大将が務めることになった。

戦時の作戦統制権が韓国側に渡された。しかし、韓国人の連合司令
官の誕生は、在韓米陸軍の撤収に直結する。米国は一定以上の規模
の部隊の指揮を外国人に任せない。THAADの高性能レーダーの韓国配
備を韓国は、先延ばしして配備を認めなかった。このため、北朝鮮
からのミサイル攻撃を回避できない。

それと、戦時でも日本の自衛隊を韓国領内に入れないことで、戦時
での物資補給や米軍家族移動などがスムーズにできなくなり、この
ため、米陸軍の撤退は急務になっていた。それと、韓国は米軍駐留
経費の負担もしないので、トランプ大統領も韓国からの米軍撤退を
指示していた。これが、やっと実現する。

このため、在韓米陸軍がいなくなるので、米韓合同演習も今後必要
がないとシャナハン国防長官代行は明言している。米国の韓国離れ
が起きている。勿論、反日国家韓国は、日本との関係も良くない。

これで、韓国に駐留するのは、米空軍しかないことになる。しかし
、空軍はすぐに日本の基地に退避できる。この結果として、米国は
北朝鮮への奇襲攻撃ができることになる。韓国のソウルに米軍と家
族がいないので、即応反撃の被害がほとんどなく、事後でも撤退で
きることから、空軍と海兵隊の連携で奇襲が可能になる。

一方、中国の習近平国家主席は、この情報を得て訪韓を決めた。韓
国に米国離れを催促しに行くことになる。勿論、THAADの高性能レー
ダーを撤去して、F-35の機体を譲り受け、韓国との連携を深めるこ
とになるが、韓国企業は、米陣営市場には参入できなくなる。

よって、サンソンやLGの携帯がファーウェイや中国企業携帯の代わ
り売れると見ることができなくなる。韓国は、中露独裁国家の陣営
になり、資本主義国家群ではなくなることから、資金流出でウォン
が大幅に下がっている。韓国から投資家が逃げ出している。という
ことで、韓国の米国離脱の代償は大きい。

日米が韓国を切り捨てて、仕方なく中国の陣営に参加することにな
るようである。北朝鮮の報道官化した文大統領の政策の結果でもあ
るし、それを望んでいたともいえる。当然の帰結ですが、傍目から
見ると「亡国の危機」と見えるがどうであろうか?

岩屋毅防衛相が、韓国の国防相と会談した際に握手し、「未来志向
の関係を作っていくために一歩踏み出したい」などと融和的な姿勢
を示したことで、自民党内からの突き上げが激しくなっているが、
米国が切り捨てる韓国を、米陣営に引き留めるようシャナハン国防
長官代行は、岩屋毅防衛相に頼んだ可能性がある。しかし、損な役
回りを引き受けたものである。

これで、日本も韓国に反日的な処置の代償を求めやすくなったよう
である。韓国企業の資産凍結もできることになる。将来は、日米が
韓国を敵として認定することになりそうである。

このコラムで何遍も言っているが、日中韓台の民族は、持ってきた
技術を改良して自分の技術にできる、他民族に比べて非常に勤勉で
優秀であり、産業発展しやすい民族であると言ってきたが、その内
、中国と韓国が米陣営から離脱して、米陣営では、台湾と日本しか
いなくなる。しかし、台湾も来年の総統選挙で中国陣営になる可能
性があり、台湾自体も米国にとって、不安定な国である。

ということで、日本は、米陣営の工業化を一手に引き受ける存在に
なることが、確定したようだ。帰結的に、日本の時代が来そうな感
じになってきた。日米の役割分担も日米貿易摩擦の経緯で確立して
いるから、日米間では、大きくは揉めない。

さあ、どうなりますか?


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