6062.米中文明戦争に発展



中国の習近平は、文明論を持ち出して米国を非難してきた。文化戦
争の様相を帯びてきた。今後の米中関係を検討したい。 津田より

0.日米株価
NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで過去最高株価であるが、12月
26日21,712ドルと暴落したが、その後は上昇して4月23日26,695ドル
になったが、米中貿易戦争再熱で、5月13日25,222ドルまで下落して
5月17日25,764ドルで引けている。米中通商交渉の悲観、楽観の見方
が出て、株価は上下している。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日
18,948円と暴落したが、4月24日22,362円に上昇し、5月5日のトラン
プツイードで、5月7日から5日続落して5月14日20,751円になり、5月
17日21,250円で、令和に入って2回しか株価が上昇していない。

米中通商交渉は、6月下旬の首脳会談で解決するという期待値があ
り戻してきたが、トランプ大統領が対中強硬策を取り、それに中国
が対応策を取ったことで、米中通商交渉解決のめどが立たなくなっ
ている。

トランプ大統領は、EUと日本に対する自動車関税UPを180日猶予する
としたが、その代わりに数量制限をするとしたことで、東京市場は
失望した。同時に、カナダとメキシコへの鉄鋼製品の関税上乗せ分
は撤回することで、合意した。

中国は人民元を下げて、関税UPに対応する可能性があり、為替差益
と値下げをして、米国の輸出価格を抑える方向で対処すると見たが
、トランプ大統領の数段の強硬策を見て、中国の態度が硬化してき
た。

このように米中貿易戦争の今後は益々見通せなくなっている。今後
しばらくの間、株価は、トランプ大統領と中国の政策を見て上下す
るが、米中の供給ラインの分離が完成したら、日本企業の復活にな
ると見ている。

そして、成長がマイナスになる米国の鉱工業株価は落ちるが、GDPに
占める割合が小さいので、米国の景気を見るには、サービス産業な
どを見る必要がある。GDPに占める割合の大きな住宅サービスは金利
水準に影響されるが、金利は低いままであるので好調を維持し、賃
料は上昇していないし、次に大きな医療サービスは医療技術の向上
で好調であるし、価格も上昇していないので、当分、株価も維持し
て適温相場は続くことになる。鉱工業株は下がるが、それ以外は、
今の水準をキープする。

そして、FRBの今年利下げ確率が7割と上昇してきた。このように、
米国は余力がまだあるので、今年は徐々に下げるかもしれないが大
きく下げないように思う。利下げなどで上昇する局面もある。

中国製品価格が上昇しても、他国の安い製品が取って代わることに
なるだけである。インフラ整備に2兆ドルなどの予算を組むことや
、日本企業の米国工場ができてるので、景気後退にならない可能性
もある。

何遍も言うが、関税UPだけでは、米国経済には大きく影響しない。

しかし、日本の部品産業は現時点、中国企業への輸出が大きく、こ
の供給網の変更期間、取引量が減ることで景気後退になる。日本は
、鉱工業のGDPに占める割合が大きいので、日銀のサポートあっても
一時的な株価の下落があるかもしれない。EUは中国の関係が大きい
ので景気後退になる。世界経済も後退になる。

これを止めれるのは、米国が大きく譲歩して6月末の米中首脳会談
での合意しかない。しかし、これに失敗すると、当分株価の上昇は
なく、今後株価の上昇局面は2つある。1つが、2020年11月の大統
領選挙で親中派バイデン大統領が誕生することである。

もう1つが、違う国や日本企業が米国へ製品供給して、早期に元に
戻ることで、その間だけ、少し景気後退になる。もしこうなると、
日本に製造業が戻り、日本の復活になる可能性も出る。

1.米中貿易摩擦から米中文明競争に
トランプ大統領は、米中通商交渉の決裂を受けて、第4弾の中国輸
入品全てに対して関税25%UPにすることと、安全保障を理由にファー
ウェイなど中国最先端企業との取引禁止をして、米中貿易摩擦は、
米中ハイテク戦争に変化している。

これに対して、中国の習近平国家主席は、「アジア文明対話大会」
の開幕式で演説し、「自らの人種や文明が優れているとしてほかの
文明を改造し、果ては取って代わろうとするやり方は愚かで破滅を
招く」と述べ、「文明間の交流は対等で平等、多元的であるべきで
、強制的で一方的なものであってはならない」と米国の強引な取引
に文明論を持って対抗するとした。理屈ではなく、文明の問題とし
たことで、米中関係は文明戦争に発展したようである。

事実、人民日報は米国製品不買運動を呼び掛け始めている。今後、
米国企業の製品は、中国市場では売れないことになったようである
。中国人旅行者も米国に行かないことになり、一方、米国は、中国
人留学生や研究者を追い出し、中国語や中国文化を教えていた孔子
学園を強制的に閉鎖するという。

2.米国圏と中国圏の分離と日EU圏
次に、米中の市場や移動圏が分離して、米国企業製品が中国には入
れないし、中国企業製品は、米国と同盟国には入れないことになる。
どこで作っても中国と米国企業製品は、違う市場では売れない。製
品に使用する部品についても同様なことになる。

このため、中国企業の安い製品が、米国と同盟諸国には供給されな
くなり、価格が安定することになる。米国圏と中国圏の分離が起き
て、その勢力圏争いが起きるはずである。最後には、米中戦争(熱
戦)に発展する可能性が出てきた。

しかし、米国は、日本やEUを米国勢力圏から除外する可能性がある
。米国圏は、北米のみの可能性が出てきた。関税UP除外範囲を見る
と北米しかない。米国の偏狭な考えに失望する。

このため、日本とEUは両方の勢力範囲に入らずに、日EU圏を作
る必要になってきたようだ。ドイツのメルケル首相は「米国を同盟
国とは認めない」と言ったが、しかし、中国とも同盟国ではないの
で、中立的な立場になる。そして、この中立的な立場で、米中が戦
争になることを防止する立場になると見る。日本はTPPという環
太平洋圏も作り、この中立的な立場の範囲を広げている。今後も広
げていくことである。

3.中国の軍部の暴走
一番心配なのが、中国の体制である。体制的に党の下に軍部と政府
が割れていて、政府の言うことを軍は聞く必要がない。党の組織は
弱く、軍部を抑えられないので、軍部の強硬な行動を誘発してしま
いがちである。

もう1つの問題が、中国経済は今後大きく落ち込んでしまい、軍予
算を減らそうとすることになる。このため、軍部は予算を獲得する
ために、戦前の日本と同じように、対米戦争準備に突き進んでしま
う可能性がある。

特に台湾武力統一を習近平国家主席が言ったことは大きい。その発
言後、台湾への締め付けが大きくなり、尖閣諸島への締め付けも大
きくなっている。軍事費増加率は経済成長率より大きくなり、軍部
の権限を拡大させている。戦前の日本を見ているような感じになっ
てきた。

その上に、米国との文明戦争となり、対米戦争の準備をし始めてい
る。対して、米国は台湾への援助を強化している。これは大変なこ
とになると、心配になる。

4.英国の選択
このように、世界が分離し始めている。この状況を見て、英国は迷
い始めている。米国陣営に入るのか、EU陣営のままになるのかとい
う選択肢になる。EU陣営は、日EU陣営に再編することになり、英国
の英連邦陣営という括りは難しいことになる。

そして、英国国民は米国陣営には入りたくないと思い、EU陣営でよ
いと思い始めているようである。徐々に、EU離脱賛成が減っている。

離脱方法を話し合う与野党協議も打ち切りになり、6月のEU議員選
挙も英国で行うし、メイ首相も6月には退任するというし、総選挙
では自由党など離脱反対党が議席を伸ばすようである。英国のEU離
脱は、「夏の夜の夢」になる可能性が高くなってきた。

今回のことで英国は、覇権国米国を引き回す隠れた国家から単なる
小国になったようである。EU内でもドイツとフランスが中心であ
り、英国の存在は小さいことになる。英国の没落が明らかになった。

5.中東戦争準備
イラン系の武装勢力が、サウジのタンカーを攻撃したり、サウジを
横断するパイプラインを攻撃したりと報道されている。この報道か
ら見るとイラン・サウジ戦争になるようである。そして、イスラエ
ルのネタニエフ首相は、サウジ・米国とイランの対立に中立でいる
ことを軍に指示したという。これは少し変。

イラン・イスラエル戦争になったときには、サウジは中立になり、
米国とイスラエル軍対イラン・イラク・シリア軍との戦いになるが
、米国はサウジも戦争に引き込みたいと思っている。

そして、米ボルトン補佐官はネオコンであり、イラク戦争の仕掛け
人でもあり、イラク戦争前夜で駆使した情報操作、陰謀などを使い
、イランとの戦争に持ち込みたいようである。そして、その戦争に
サウジを引き込みたいと思っている。このため、陰謀や情報操作を
行う可能性が大いにあり、気を付けていないと、またイラク戦争と
同様なことになる。

現時点、米外交官をシーア派が主導するイラクから全員退去させて
いるし、米軍12万人を中東に派遣するというし、戦争前夜の状況に
なっている。

トランプ大統領も、ボルトン補佐官の強硬姿勢に不満であり、イラ
ンと交渉したいだけで、戦争をしたいと思っていないとツイードし
ている。ボルトン補佐官が一人で戦争に持ち込みようである。

ボルトン補佐官は、今後の中国との戦争準備をしないようである。
イラン戦になれば、10年間は、中東戦争にかかわり、中国との戦争
ができないことになる。このように、中国より中東の方が重要と見
ているが、トランプ大統領は対中重視である。このため、ボルトン
補佐官をいつ切るかが問題であろう。

一方、イランのザリフ外相は、米国と対立する中国に飛び、中国は、
米国による一方的なイラン制裁への反対を表明し、国益を守るイラ
ンの取り組みに支援を約束した。事実、中国は、米国のイラン原油
禁輸制裁を掻い潜り、元決済でイラン産原油を輸入し続けるようで
ある。ドル基軸体制でのドル決済崩壊の予兆がでてきた。人民元の
国際通貨化を推し進めることができることになっている。中国のチ
ャンスである。

このように、中東戦争は、米中代理戦争化する可能性も大きい。

6.日本はどうするか?
日本は、このコラムでも再三述べているのように、米中戦争など第
3次世界大戦を防止する役割があり、そのために努力することであ
る。しかし、日本の位置は、米中戦争での戦場になる可能性が高い
位置にある。戦争時には米国サイドで戦うしかない。その準備もす
るしかないことである。

防止のために、日EU同盟を作り、米中に中立的な位置に立ち、戦争
を防止するべきであり、そのためには、皇室外交が非常に重要にな
る。皇后陛下は元外交官であり、日本の今の位置には最適な人が皇
室に存在していることになる。上皇陛下の譲位判断は、適時適切な
ことであったと感銘する。千年の時を生きる皇室の知恵のような気
がする。

欧州の王室と日本の天皇家が、親密な関係を築いて、それ上に日EU
同盟ができることで安定性が出ることになる。

日本とEUの役割は、中国と米国の2大経済軍事大国の戦争の防止
と中国軍部の暴走を抑止することである。それと、世界貿易のルー
ルを確立することである。

どうか、第3次世界大戦を防止して、人間を含めて地球の生命を守
りたいものである。

さあ、どうなりますか?


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