6059.日本の衰退をどう食い止めるのか?



日本の産業力が低下している。中韓の半導体産業に負けて、日本の
半導体は競争力を失っている。残念ながら、パソコンもAVも日本
のメーカーは撤退している。次の産業を育てなかったことが、この
ような状態にしている。さあ、どうするのか?    津田より

0.日米株価
NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで過去最高株価であるが、12月
26日21,712ドルと暴落したが、その後は上昇して4月26日26,543ドル
になっている。S&Pやナスダックは過去最高値を抜けている。NYダ
ウは、ここ一週間停滞しているがGDPが3.2%増などと景気が回復
して、強気相場継続である。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日
18,948円と暴落したが、4月24日22,362円に上昇し、4月26日22,258
円と上昇したが、鉱工業生産高がマイナス0.9%と景気後退方向にあ
り、今後の動向に注意が必要になっている。

自社株買いとPKOの2本立てで株価は上昇維持しているが、ファナッ
クやパナソニックなどの今期業績見込みは大幅な減益になり、日本
株買いの海外勢がいるのに、それほどには上がらないようである。
しかし、54%減益予想でもファナックがあまり下落しないのは、不思
議である。

1.米国の現状
米国のGDP3.2%UPでNYダウは過去最高値を抜けるかというと、
FRBの年内利上げ確率が66%と上がり、こちらも警戒感が出ている。
FRBが利上げしたら、適温相場ではなくなるので、暴落の可能性が出
る。しかし、景気を上げ過ぎると、いつかバブル崩壊になり、2度
もバブル崩壊になると、米国経済自体の崩壊になる可能性が高い。

現時点での米国の負債は、総額72兆ドル(約8033兆円)で、米国民
一人当たり22万ドル(2455万円)の負債があることになる。米国に
はドル基軸通貨制度があり、世界のお金が米国に向かっているので
ドルは高いが、バブル崩壊するとドル安になり米国債売りが出て、
ドル基軸通貨制度自体の崩壊と米国経済の崩壊になる。FRBは、米国
経済の崩壊を予防するためには、バブル拡大をある程度は容認する
が、急拡大は止め巡航速度に戻す必要がある。

トランプ大統領は、米国製造業の脆弱化を意識していて、日本の助
けを必要としている。製造業の技術力が大きく落ちている。米国経
済を支えているのは、バブルを拡大する金融業と中国に負けそうな
IT産業である。そして、経済規模ではサービス産業だ。

しかし、それ以外の製造業は競争力を失い、ボーイングも機器の誤
動作を想定しない基礎的な設計思想上の問題で、信用を失っている。
基礎的な機器製造を米国で行っていないので、誤動作の可能性を想
定しないことによる。しかし、製造業が少ないので、中国への輸出
依存度がほとんどなく、バブル拡大で恩恵を受けるサービス産業で
GDPは拡大するが、そこが問題になっている。

これは防衛産業でも起きていて、製造業の立て直しをしないと防衛
力自体も崩壊する事態が想定されることになっている。F-35墜落事
故の原因も、パイロットの失神でF-35の致命的な欠陥である可能性
も指摘されている。そして、部品不足で3割が飛行できないという
状態である。

米国トランプ大統領の非常識で度肝を抜くような政策が、良いのか
悪いのか、減ってきている。トランプ流政治に慣れてきたのか、常
識的な政治運営になり、部下たちが交渉中に、ツイッターで違うこ
とを言うこともなくなっている。というより、今までのトランプ流
政治運営の負の面が出てきて、それを修正しているとも見える。

2.中東情勢
米空軍はUFO情報を集めるという。UFOの目撃情報が多数あり、予言
書にもUFOが出現するようになると、中東での戦争が起きるというこ
とを述べる注釈家もいる。

イスラエルでタカ派のネタニエフ首相が再選されて、パレスチナと
の和平は実現しないし、シリアに駐留するイラン革命防衛隊にイス
ラエルは空爆を行っている。米国は、イラン革命防衛隊をテロ組織
と認定した。この米国やイスラエルの政治軍事行動に、サウジなど
のスンニ派諸国は、非難しないために、米国とイスラエルは、強気
で行動している。

しかし、スンニ派のスーダンは、シーア派イランに寝返っている。
イスラエルの行動に我慢ができないことによると見る。スーダンが
イスラエルの敵になるというのは、ヨハネの黙示録にも出ている。

徐々に黙示録の世界が進行しているように感じる。米国のバブルが
崩壊したら、経済崩壊させないためにも需要を喚起する戦争経済に
するしかないが、その戦争経済の準備を中東で行っているとも見え
る。

そして、イラン原油の輸出特例も5月2日で止めるという。イラン国
内では、イスラエルへの攻撃をいつでもできると革命防衛隊のトッ
プは言っている。反対に、イランの暴発を米国とイスラエルが待っ
ているとも見えてしまう。

黙示録の戦争は、人類の滅亡を意味していると欧米庶民は見ている
が、それを米国は、米中露で回避して、中東限定の戦争にする気か
もしれないし、米空軍のユダヤ人パイロットは、イスラエル軍とし
て参戦する可能性が高い。米国は、ロシアがウクライナ等で行う自
国軍隊を志願兵として派遣する方法を取り、参戦する可能性もある。

米国とイスラエルの中東戦争準備も米国のバブル崩壊を考えた次の
シナリオと見る。このシナリオを強く求めているのが、キリスト教
福音派でもある。トランプ大統領を強く支持しているので、再選に
は、この支持を強固にする必要がある。

3.日本の現状
そういう日本も、IT産業は米国に譲り、PCや電子機器でも中国企業
に負け、電子産業全体の競争力は失われている。最終電子製品を作
っていないのに、部品産業に競争力があるのは、過去の遺産でしか
なく、中国の部品産業育成で、徐々に競争力を失っていくことにな
る。特に半導体製造装置では、今後中国企業の台頭が予想できる。

このように日本の産業力が徐々に失われている。この立て直しをし
ないと、人口減少・高齢化などと合わせて、急激な日本の衰退を起
こすことになる。この6年間新しい産業を育成する取り組みは、IPS
再生医療などのバイオ以外にはなく、日本の産業の競争力を大きく
失う原因になっている。使えて動くロボットやドローン、AIなどで
も劣後している。

IPS再生医療以外の次の産業の芽をほとんど育成していない。規制緩
和で育成している分野は、バイオ医療分野しかない。サンバイオ、
アンジェス、ナノキャリア、タカラバイオ、窪田製薬などがある。
しかし、バイオ医薬品分野の産業規模10兆円と、石油などのエネル
ギーや電気製品分野より非常に小さい。

中国は、インフラ投資を増やして、GDPを3月6.4%まで回復させて、
安心感が出ているが、電気自動車の補助金を減らすなど、産業育成
策を見直している。米国の国家補助金政策の撤廃要求のためではな
く、優先順位を米国の半導体が買えない事態に、半導体産業の育成
にシフトさせたことによる。

このため、日本の日本電産など電気モーター販売が中国で急減する
などの影響が出ている。トヨタもHV技術やFCV技術を中国企業に提供
して、販売拡大で普及させ収益性を高めたいようであるが、国家方
針で動く中国企業との取引は難しい。しかし、大国の中で中国以外
では、野心的な産業育成政策を取っていないので、中国での普及な
しでは、後れを取ることになる。

4.米中通商交渉と日米通商交渉
米中通商交渉は、5月末日本で米中首脳会談が行われるという。トラ
ンプ大統領も習近平国家主席も合意できると思ったようである。国
家補助金の禁止などの体制絡みの問題を先送りして、貿易赤字解消
と知財権保護と金融サービスなどの参入などを得て、一応ここで部
分合意をするようだ。4月末に劉鶴副首相が訪米して、その後5月に
ライトハイザー通商代表などが北京に行くという。

米中通商協議が一先ず終わり、次に日米通商交渉が行われているが
、安倍首相とトランプ大統領の関係は親密であり、想定通りの結果
になるようだ。

農産物と自動車の2つを優先的に交渉し、貿易赤字の大部分を占める
自動車では、米国に工場を建て貿易量を減らし、農産物の関税をTPP
諸国と同じにする。そして、米国産石油とLNGを大量に買うことで赤
字解消をするようである。想定通りのことになる。

為替条項も盛り込まれる可能性が高い。自動車業界の要望を聞き入
れないと、2020年大統領選挙で労働者の支持を得られないからであ
り、為替操作をしないとなるのか、ドル円の幅になるのかで大きく
違うことになるが、今の所、安倍首相のトランプ接待外交は成功し
そうである。

5.日銀の金融政策
今の金融政策を2020年春までは少なくとも続くが、10月消費税増税
の影響が収まるまでは、量的緩和を行うということである。これは
想定範囲内であるが、ETF貸付けを開始するというのが目新しいこと
である。今後のETF買い継続では、日銀のETF株持ち分が大きくなり
、流動性を失う可能性が出るので、移転・譲渡する可能性を述べた
ように感じる。

譲渡先は、年金基金GPIFであろう。GPIFは18年7兆円の損失が出て
いるので、ETF簿価の18,000円でGPIFに譲渡すれば、年金基金として
は、損失を埋め合わせられることになる。2018年9月末時点で日銀ETF
含み益7兆円程度であり、相殺する。

このように年金基金と日銀が組んで金融政策を行うことは有益であ
る。しかし、日銀は、いつまでETF買いをするのであろうか?東証の
株価は、割高の可能性が高い。ETF買い中止のときに暴落する可能性
があり、ETF買いをした年金基金が含み損を抱える可能性が出てしま
う。

このように、ETF買いでも日銀は、縮小戦略の構築を始めた可能性も
ある。

6.生産性の高い産業の育成が必要である。
2で述べたように輸出できる自国産業が弱くなることは確実である
。インバウンドの観光業以外ので新しい投資もなくなる。このため
、自国での農業生産やエネルギー生産を強化して、経常収支を赤字
にしない政策を今から行う必要がある。経常収支が赤字になると国
債の債務が多く、円安になりハイパーインフレの可能性を高めるか
らである。

それと、観光業は、労働生産性が低く、国民所得を上げない産業で
ある。一番、国民所得を上げるのは、労働生産性が高い製造業やIT
産業であるが、そこに現時点、将来期待ができない。

農業でも中山間部は労働生産性が低いので、それを打ち消す果実な
どの高付加価値品の生産しかできないが、人口減少で若い人たちの
大農場経営が可能になる。平地で大規模農業ができれば、北海道と
同じような高年収が確保できるので、就業者が増えるような気がす
る。これを促進するように、政府は支援することであるが、就労で
きる人は少ない。

このため、米中が力を掛ける分野とは違う製造業分野で、新分野を
構築して生き残りを図るしかない。それがエネルギー分野であると
思う。「必要は発明の母」で、日本ではエネルギーが足りない現実
がある。

しかし、エネルギー産業は、地域独自の地産地消が最適で、太陽光
、水力、風力、木材などの適地適量の発電を行うことである。大都
市などの大量発電が必要な地域は、大電力を生めるコストの安い地
域の風力や太陽光で生成された水素での発電で供給するしかない。
この自然エネルギーでの発電は、年々発電コストが低減化している
。低減化するまでは火力発電所での電力も必要になると思う。

水素をエネルギー中間媒体として使い、自動車や列車などのエネル
ギー源にも使えることで、この技術を確立することが必要である。
日本がぐずぐずしている間に、中国が追い付いてきている。この技
術を開発サポートする政府の取り組みが急務になっている。少しの
危険があっても規制緩和もすることだ。

規制緩和とは、新分野を生み出すために危険を冒すことで、研究開
発費を抑えられるために行うことである。危険だから規制緩和をし
ないというのは、既得権益者を優遇して、新分野の開発をさせない
ことになる。

規制緩和や研究開発援助など多方面でサポートして、中国に技術面
で追い付かれないようにしてほしいものである。

IT分野では、優秀なITやAI技術者を日本では、多くは集められない
ことで、開発速度で米中に追い付けない。そのため、そこでトップ
になることは難しい。しかし、この分野はトップしか生き残れない
世界であり、日本が大きく力を掛ける分野ではない。日本でも、唯
一のユニコーン企業であるプリフォード・ネットワークスがあるが
、技術者の量と質で負ける可能性が多分にある。

その点、機械分野とエネルギー分野、化学分野のミックスしている
水素・燃料電池分野は、多くの企業群が必要であり、過去の蓄積も
必要であり日本がトップでいられる分野である。トップになれる分
野に力を掛けることである。

新しい産業を作るために、政府は特定分野を決めて、そこに集中し
て力を掛けることが必要である。

さあ、どうなりますか?



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