6058.日本経済の脆弱化で



とうとう日経平均も上昇してきた。NY株価が最高株価に近づき、出
遅れ株への投資に向き始めたことによる。しかし、日本経済は一層
脆弱化してきている。今後を検討しよう。     津田より

0.日米株価
NYダウは、26,951ドルで過去最高株価であるが、12月26日21,712ド
ルと暴落したが、その後は上昇して4月5日26,487ドルになり年初来
高値になったが、4月12日26,412ドルになっている。数日、利益確定
売りが出て、出遅れ株を探る展開になっていたが、JPモルガンの決
算がよかったことで買戻しも出た。そして、全体的に強気相場継続
である。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日
18,948円と暴落したが、3月4日21,860円で、4月12日21,870円と年初
来高値になった。安川電気の決算内容は悪かったが、株価は上昇し
ている。これは、海外投資家が、出遅れている東証株を買い始めて
、日本株を2週連続で買い越し、買越額は1兆4637億円にもなってい
るからである。

NY株式市場はFRBが金融緩和方向であると安心感に包まれて総楽観で
上昇相場になっていたが、株価が高いので利益確定売りが出て、安
い出遅れ株を探し日本株を買い始めている。このため、日本株も上
昇し始めている。ジャンク債の金利も低く売れている。バブル最盛
期という感じになってきた。悪いニュースを無視して、よいニュー
スだけに反応する相場になっている。当面、バブル拡大と見る。

しかし、取引額は減っているし、ここまで株価を押し上げたのは、
自社株買いであり、この規制を民主党や共和党議員が言い始めてい
る。将来は禁止になる可能性が出てきた。今後、NY株も試練がある
かもしれない。

日本株が上がる条件は、1つに海外投資家が日本株を買うことであ
る。日本人で株投資をしている人は高々1600万人しかいないからで
あり、投資家の数が少ない。2つに円安になることが必要である。
3つに企業業績が良くなることである。
現在株価が上がり始めたのは、海外投資家が買うからである。その
他の条件は、むしろ悪くなる方向である。

1.米国の手本は日本
NY株式市場が高値安定期にあるので、トランプ大統領は、110億ドル
分の欧州からの輸入品にも追加関税を掛けると言い始めたが、それ
にも市場は反応しない。EUも米国からの輸入品に対抗措置を検討し
ている。トランプ大統領は、欧州との貿易戦争も始めるようである。

一方、トランプ大統領は、株価の下落がないので、自分の宣伝のた
めに、貿易戦争を拡大していくようである。メキシコに対しても移
民を止めない場合は、自動車関税を上げると脅している。国土安全
保障省の長官も交代させて、国境管理を厳重にするようである。そ
して、中南米人や中国人だけではなく、インド人、日本人などすべ
ての移民を止める方向である。技術者H1Bビザの発行も制限している。

移民を止め、金融緩和を行い、しかし、経常収支を黒字にして日本
と同じ環境にして財政赤字を拡大させて、米国はMMTを行うようであ
る。日本で成功した財政赤字拡大でも金融緩和して長期金利をゼロ
にすることで国家破綻しないのを見て、米国は同じ方法を取るよう
だ。

しかし、米国で一番難しいのが、経常収支の黒字化であるが、貿易
収支の赤字国に対して、厳しい制限をすることで、それを達成しよ
うとしている。日本が米国の手本になっている。というように、米
国の経済的な弱さが出始めている。

2020年の大統領選挙まで、トランプ政権は、FRBを金融緩和方向に維
持させて、株価を高値で安定する意向のようである。このため、2020
年11月までは、NY株価を高値維持する可能性もある。

2.米中通商交渉
米中通商交渉でも米国は強気であり、中国がある程度折れると、次
の要求を突き付けてくるので、中国は、米国との交渉に限界を感じ
始めている。その上に交渉責任者の劉鶴副首相は中央政治局委員で
あり、党内順位は低い。

総書記(習近平)、政治局常務委員7名、その下の政治局委員18名の
中で、劉鶴副首相は党内序列10位程度あり、政治的判断を単独では
下せないために、上へ上申する必要があり、米国の一方的な要求を
即断することができない。上申しても通らないために、時間だけが
経っている。交渉開始から1年もたっているのに、数歩の譲歩をし
ただけである。

中国の外交専門家の地位が低いので、外交交渉が難しい。交渉現場
に首相や国家主席が出ないし、首相や国家主席が甘い妥協をして決
めてきたことでも、交渉現場担当者が条件を付けて、潰すことも多
々あり、中国との交渉はどの国でも、うまくいかない。多くの国で
約束した工事が開始もしない。

このため、とうとう、欧州でも東南アジア諸国でも中国との関係を
見直し始めたのである。このため、米国も中国との交渉では、相当
に厳しい条件を付けて、逃げられないようにする必要がある。

よって、米中通商交渉は、一歩一歩しか進展しないが、株価が心配
で今まで、トランプ大統領はうまくいっているとリップサービスを
して交渉継続をしてきている。しかし、ここに来て相場が楽観的に
なり、中国との合意がまだまだと米中首脳会談の日程も提示しなく
なっている。合意は、まだ遠いことを示している。

中国も減税や金融緩和により、景気は持ち直しているし、輸出数量
の落ち込みが少なくなってきた。輸入が少なくなり、貿易黒字は、
むしろ増加している。しかし、本格的な景気回復ではない。習近平
国家主席は欧州への輸出拡大を狙い、フランスやイタリアに行き、
李克強首相も欧州に行っている。輸出を米国から欧州に向けている。

部品などの技術を持つ日本や欧州の会社を買収して、生産を中国に
移して輸入を減らした効果が出ているので、米国との通商合意を急
ぐ必要がない。中国は米国なしでもやっていける体制を構築し始め
ている。

この面からも米中通商交渉は、転換点に来ていると思える。米国の
経済覇権が揺らぐことになる。ドル為替SWIFTシステムなしでも送金
できるブロックチェイン技術のシステムを中国は構築しているし、
経済力でも米国を上回る可能性が高まっている。世界的にその国の
一番の貿易相手国は、中国になっている。

しかし、米中両国は、通商交渉決裂にもできない。中国は米国への
輸出が大きいので、これ以上の関税UPは避けたいし、米国は世界経
済縮小で米国製造企業の輸出に影響があり、また株価を維持からも
交渉継続するしかない。

3.日米通商交渉と日本株
米国は、2020年の大統領選挙で目に見える成果が必要になり、交渉
上、一番容易な日本との交渉を先にして、成果を上げようとし始め
ている。円高にシフトさせて、米国内に工場を建てさせ、農産品を
買わせて、貿易赤字をなくせと要求してくる。

しかし、米中通商交渉を続けながらの日本との交渉になり、日米交
渉は進まない可能性大があり、とりあえず、農業産品の日本の輸入
関税引下げだけを個別に審議することになる。農務省が前面に出て
、USTRは側面となるはず。

4月15日から始まるので注意が必要であるが、今の米国投資家は、実
際に悪い結果が出ないと反応しないようであり、そのような予測が
あっても関係ないようで、積極的に日本株を買いあさっている。

特にソフトバンクGなどは、借金して投資をする両建て経営で大きく
なってきたが、リスクオフの総楽観相場では、評価が高くなる。こ
のため、大幅な株価上昇になっている。

どちらにしても、安倍首相のトランプ大統領への接待外交で、日本
への要求を下げてもらうしかない。米国から石油や安いLNGを輸入し
て、カタールからの高いLNGを止めることである。中東からの石油も
止めることで米国への貿易黒字は無くなる。

3.中露の時代に
北朝鮮は、米国との非核化交渉を打ち切り、再度瀬戸際戦略に戻る
ようである。米国も交渉継続を打診するが、完全な非核化の条件を
下げることはしないので、このままの状態が継続することになる。
北朝鮮の金正恩委員長は、米国の譲歩を条件に再交渉を進めるとい
うが、それは無理である。

問題は、韓国文大統領で、4月11日にトランプ大統領との首脳会談を
開いたが、会談時間は2分と短く、その前にボルトン補佐官などと
の会談時間が長く、北朝鮮との融和政策を中止して非核化に協力し
ろと強い調子で要求されたようである。トランプ大統領も韓国が期
待する南北経済協力の推進には「今は適切ではない」と述べ、容認
しない考えを示した。首脳会談後のコメントも、非核化に取り組む
と簡単なものであった。トランプ大統領は、韓国の人道上の支援を
認めるとしたが、完全非核化を強く要求であったようである。

米国と北朝鮮の仲介役として、再度取り持つと文大統領はワシント
ンに向かったが、結果は逆になったようである。国境線の監視所な
どを取り除いたり、鉄道線路を繋げたりしたが、これを元に戻すこ
とになりそうである。

一方、中国は北朝鮮との関係を強化している。北朝鮮との新しい橋
ができて、物資を送り込むことができている。経済制裁を解除はし
ないが、米国との貿易関係が疎遠になると、ロシア・北朝鮮との関
係を強化してくる可能性がある。

ロシアは、シリアを手に入れて、次はベネズエラに介入して、リビ
アを手に入れて、米国の代わりに各地で覇権を取っている。ハイブ
リッド戦術で、1つづつ米国の地域覇権を取っている。そして、北
朝鮮との関係を強化していくようである。

ロシアと米国の第3次世界大戦が始まっているとも見える。今まで
の戦争とは様相が違うが、広い意味では緩い戦争である。地球の地
面の取り合いと見ると、現時点では、圧倒的にロシアが勝っている
。東欧を失った代償を世界的に求めているとも見える。

徐々にロシアが武力で米国に勝ち、中国が経済で米国に勝ち、反米
勢力が世界の主流になる可能性が高いし、米国は自国優先であるの
で、武力や経済力を使ってそれを排除しない。このため、結果は見
えている。当分、中露の時代になる。

そして、最初に米国を離れるのが、韓国のような気がする。その韓
国の動きが世界に衝撃を与えて、世界的な雪崩現象を起こすことに
なるような気がする。嫌な感じがする。

4.紙幣刷新と金融資産への課税
令和の時代、紙幣も刷新するようである。これにより1.数兆円程
度の経済効果が出るというが、銀行などの経営が圧迫されることに
なる。銀行は支店を減らし、ATMの台数を減らし、行員を減らして、
金利ゼロ時代で利益が出ずに経営のスリム化をする必要になってい
る。この時に新札を出すと、この改修費などの負担により、一層の
スリムが必要になる。

もう1つが、銀行預金に利子がないので、高齢者はタンス預金をし
ている。このタンス預金を銀行にシフトさせて、金融資産への課税
準備と見ることもできる。これ以上、消費税増税を続けることはで
きず、次の増税は金融資産への課税しかない。

所得に課税しても銀行預金の金融資産には利子がないので、課税で
きないことになっている。このため、金融資産に直接課税すること
になる。結果、銀行預金をすると、マイナス金利になる可能性が出
てきている。

日本政府は、1100兆円もの債務を抱えて、1%の金利とすると11
兆円の負担になっているが、この金利が3%になると、33兆円に
もなる。国家予算の社会保障費より大きいことになる。国家破綻の
可能性が高まっている。日銀の量的緩和は、財政破綻を防ぐために
長期金利を上げないことに尽きる。

しかし、経常収支が赤字になると円安になり輸入物価高騰でインフ
レになり、量的緩和を止めてインフレ防止に舵を切る必要になる。
日本の技術力が低下して部品などの輸出額が減り、大企業の工場が
海外展開して、石油や食料の輸入は減らないと、いつか経常収支が
赤字に転換する可能性があり、この時点で日本は財政破綻の危険性
が高くなる。

事実、この数か月、貿易収支は赤字になり、インバウンドでの黒字
で経常収支は黒字を維持したが、徐々に日本の経済基盤が脆弱化し
てきている。

その準備をするためにタンス預金を追い出して、金融資産を把握し
ておくことが必要になっている。勿論、金融資産への課税の準備の
ためである。そして、財政赤字を無くして、財政黒字にして累積債
務を解消しないと、財政破綻になるからである。日本はMMTから脱し
ないと国家破綻になる危機を迎えている。30年以上も金融緩和政策
をすれば、累積債務が膨らみ身動きができないことになる。当然だ。

5.日本株価の今後
米中通商交渉も合意に至らず、米欧貿易戦争も起きて、日米通商交
渉も始まり、中国の景気は良くなったわけではないのに、米国の株
価は最高値近くにあり、総楽観的な市場になり、この浮かれた状況
は、いつまで続くのか疑問視する必要がある。

どうも量的緩和というモルヒネを使い、景気を上げたが、モルヒネ
中毒にかかり、モルヒネがなくなると、中毒症状になり、モルヒネ
を要求して、その要求にFRBは応えている状態になっている。企業業
績とは関係ない流動性相場に戻した。

しかし、この環境も企業業績が一層悪くなると、突然反応すること
があり、その時は大暴落することになる。その切欠は何かというこ
とになる。

4月15日から始まる日米通商交渉が切欠になるか、企業の決算発表で
、今年度見通しが低くなることが切欠になるか、いつ、突然反応す
るのか、それが問題になってきたように感じる。NY株も今年度第1四
半期報告が出るので、その結果で状態が変わる可能性もある。日本
は、NY株とは違い、有効な追加の緩和策は限られていることで、株
価維持が難しい。

日本の銀行手持ちの多くの株を4月前半に売っているが、その株を海
外勢が買い、株価は安定しているが、後半には銀行の益出しの手持
ち株がなくなるので、日本株は上がることになる。しかし、海外投
資家が買うのは、将来性のある株か出遅れの優良銘柄であり、ソフ
トバンクGなどの少数に集中するはずである。海外投資家の買い以外
は、全体資金は少なく、それが循環しているだけのようにも見える。
このため、日経平均は上がっているが、TOPIXは上がらない。長期投
資家は、このような高値圏では買わないようだ。

さあ、どうなりますか?


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