6051.非核化と日米通商のバーターか



米朝首脳会議は決裂し、次の話題は米中首脳会議と日米通商交渉に
移っている。日米株価は上昇しているが、今後はどうなるのであろ
うか検討しよう。   津田より

0.日米株価
NYダウは、12月26日21,712ドルまで下がり、PKOなどで2月6日25,439
ドルまで戻した後、2月25日26,241ドルまで上昇し、3月01日26,026
ドルになる。

ライトハイザー通商代表が、中国との交渉で構造改革部分でまだ交
渉が難航していると発言して、今までの米中通商交渉楽観論が少し
遠のいた。しかし、パウエルFRB議長の利上げを当分しないという議
会証言で、適温相場に戻ったような雰囲気が一層濃厚になっている。
まるで、FRBの政策目標が、株価安定のためであるかのようだ。FRB
は、雇用安定、物価安定が2大目標としていたので、3大目標に変
更したような感じにもなっている。

NYダウと連動して動く日経平均も、12月26日18,948円になり、12月
27日にPKOを行い20,211円まで戻して、その後も上昇して3月01日に
21,625円まで上昇した。こちらも22,000円に迫る上昇であり、上昇
が止まらない。

日米ともに、景気後退の方向であるのに、株価だけは上昇というこ
とになっている。円ドルの為替相場は、レンジ・ブレイク・アウト
して円安ドル高になった。このため、3月1日の日経平均が上昇した
のは、円安になったからである。ドルベースでは株価が下がり、買
いが入ったようである。

株価上昇に伴ない、先行き下落と見る人が多いので、インバース系
の持ち高が極端に増えていることで、ある投資銀行は、逆に積極的
に買いに走り、買いの半数を占め、株価を踏み上げてインバース系
持ち株の投げ売りを狙っているように見える。この状態で投げ売り
が出ると、極端な株高になる。

また、ゴールドマン・サックスは、1月が底であり景気は持ち直し
たとも述べている。そして、投げ売りが出た時点で、ピーク株価に
なると見る。この動きから、最高値26,951ドルを越える可能性も出
てきたように感じる。

米国も日本も国債などの債務残高が大きく、米国は今後も赤字幅が
拡大していくが、国債などの債務残高を増やす方向である。米国の
債務残高は2200兆円であり、日本は1100兆円である。どちらも債務
残高が大きいが、金利を抑えることでデフォルトしないようにする
。今、米国は先行きの景気が落ちると見て、国債の長期金利が下が
り、金利負担が少ないので国債依存を高めるようである。しかし、
金利上昇したら、FRBは量的緩和政策を即座に取り、金利上昇を抑え
る必要がある。

そして、大規模な財政出動を行い、景気を維持して株価を高値安定
にしたいようである。日本は30年もこの政策を続けているが、デフ
ォルトしていない事が証拠と、米経済学者は言っている。今の所、
成功しているが、大丈夫なのであろうか?

ジム・ロジャーズ氏はもし、このバブルが崩壊したら、2008年
のリーマンショックより相当に大きな世界的な経済崩壊になると言
って警告している。ガンドラック氏も、遅くても2020年から2021年
に、債務危機が来ると言っている。

1.米朝首脳会議
ハノイの米朝首脳会談は、コーエン氏の議会証言と同時になり、米
国の全テレビ局の中継が、コーエン議会証言になってしまい、トラ
ンプ大統領が望んだ首脳会談に注目が行かなかった。その上、コー
エン氏の証言で少なくとも選挙資金の不正利用が濃厚となってしま
った。

それかどうかは知らないが、北朝鮮が希望した寧辺(ニョンビョン
)の核施設を完全解体するという部分的非核化に対して、韓国も望
む開城の工場団地再開などの一部の経済制裁解除を行う方向で、米
国担当者は、北朝鮮担当者に話をしていたが、首脳会談で北朝鮮は
、トランプ大統領が弱気であると見て、実質すべての経済制裁解除
に引き上げた。北朝鮮には、寧辺の他に秘密の核濃縮施設があり、
少なくともその解体をトランプ大統領は要求したが、金正恩委員長
は拒否した。このため、トランプ大統領は署名せずに合意を先送り
した。

米トランプ大統領は、完全な非核化の道筋の提出がない限り、経済
制裁解除もないと金正恩委員長に明確な形に言ったようだ。この条
件を持ち出したのは、安倍首相とトランプ大統領の電話会議で、安
倍首相が強く主張したからのようである。

このため、ボルトン補佐官は、米国担当者ベースの合意内容で韓国
と調整するはずが、急遽、韓国訪問を中止した。何かあると思った
が、最終局面で、日本の安倍首相との電話会談でトランプ大統領が
意見を変え、電話会談に出席していたボルトン補佐官もトランプ大
統領の意見が変わったと知ったので、急遽、韓国行きを止めたので
ある。ボルトン補佐官は、当初首脳会談に出席予定ではなかったが
、韓国との調整にために出席になった。

米朝首脳会談の記者会見でもトランプ大統領は、アジアの同盟国と
の関係から合意文章に署名しなかったと発言している。このため、
トランプ大統領は、日本に見返りを要求してくる。

そして、NY株価は、合意見送りでも下げずに上昇している。米朝首
脳会談を材料視もしていないようである。ノーベル平和賞狙いの首
脳会議をしても、何も得るものがなかったようだ。

トランプ大統領は、この合意見送りで中国に対しても、簡単には合
意しない信号を送り、中国も身構えている。新華社の記事では、重
大な局面を向かえるかもしれないと評論している。ライトハイザー
通商代表が中国との交渉で厳しいので、トランプ大統領はもう少し
緩くしろと注文したようであるが、最後はライトハイザー代表の意
見を聞き入れる可能性も出ている。

トランプ大統領は、株価安定には、FRBの利上げ見送りと資産縮小停
止でよくて、米中通商協議で少しぐらいもめても大丈夫と見たよう
である。FRBの緩和方向の姿勢が重要と思っている。

合意見送りで一番、影響が大きいのが韓国で、開城の工場団地再開
により賃金の安い北朝鮮労働者を使えるので、コスト的に中国より
断然優位になると見ていたが、それができなくなってしまった。経
済の悪化を乗り越える切り札と見ていたので、文大統領には、大き
な誤算になっている。

2.今後の展開
トランプ大統領も金正恩委員長も、再度米朝首脳会談を行い、合意
に達するというが、北朝鮮は核濃縮施設をすべて解体する必要があ
り、国内タカ派の反対を抑える必要がある。一方、金正恩委員長も
対米交渉を諦めて、中国と韓国に対して実質的な経済制裁緩和を、
行うよう交渉する可能性もある。

米国は、北朝鮮がミサイル実験や核実験を行わない限り待てるし、
テレビ局が首脳会談を中継しなかったように、米国内の関心は大き
くないので、トランプ大統領は、北朝鮮への非核化要求を日本との
取引カードに使うようである。

韓国は、事前調整を行い、一部非核化と一部制裁解除の筋道をつけ
ていたが、北朝鮮が要求を引き上げたことで、うまくいかなかった
と見て、米朝の仲介を今後も行い、北朝鮮への一部制裁解除を模索
する。

米国と北朝鮮が合意しない場合でも、韓国は自国経済復活からも開
城の工場団地再開を行う必要があり、国連に特例を要求するようだ
。

3.日米通商交渉
トランプ大統領は、合意見送りの見返りとして日本との通商交渉で
は、日本が折れるべきと述べている。非核化と日米通商交渉のバー
ター取引になってしまったようだ。そのため、日米首脳電話会議後
、すぐにライトハイザー代表は3月から日本との交渉を開始すると
した。為替も議論に入ることになり、自動車の輸入台数制限も入れ
ることになったようである。

安倍首相も為替が議論になるので、日銀の黒田総裁を官邸に呼んで
、円安にしないための金融緩和縮小の政策策定、または、円・ドル
リンク体制移行の実行手順作成を要請した可能性がある。日銀も、
長期国債の買い入れを控えるようである。

日米通商交渉が3月から始まることで、日本も身構える必要が出て
きたようである。日経平均株価上昇がいつまで続くか、この意味か
らも疑問である。相当に厳しい要求が来ることを覚悟した方が良い。

4.インド・パキスタン紛争
インド治安部隊の隊員が多数、待ち伏せされて、パキスタンのイス
ラム勢力に殺された。その報復のために2月26日に、インド空軍機が
イスラム勢力の根城であるパキスタン北東部を空爆し、この時パキ
スタンは迎撃しなかったことで、批判され報復のために、27日パキ
スタン空軍機が、インド側カシミール地方を空爆した。インド側は
MIG21で迎撃し、パキスタン側の攻撃機はFー16であり、インド側MIG
21が2機撃墜された。F-16を1機撃墜したとインド側は発表している
が、パキスタン側は否定している。

国際社会は、核保有国である印パ両国が軍事的な緊張を高めないよ
う、自制を求める声明を相次ぎ公表。ポンペオ米国務長官は「印パ
両国は自制を発揮し、いかなる代償を払っても事態をエスカレート
させないよう求める」とする声明を出した。

パキスタン側は、MIG21のパイロットを捕虜にしたが、釈放をすると
述べ、パキスタンのカーン首相は「この状況が悪化すれば、私自身
やナレンドラ・モディ(印首相)の統制が利かなくなる。インドに
は再び、対話を呼びかけたい。我々の準備は整っている」と強調し
た。しかし、現時点ではカシミール地域での砲撃が合戦が続いてい
るようである。

核保有国同士の報復合戦に発展すると、いつか核戦争に行く着くの
で、報復の連鎖は怖いことになる。最初の原因であるパキスタンに
いるイスラム原理主義者は、いろいろな紛争をパキスタン国内と周
辺諸国にまき散らしているが、その取り締まりをパキスタンが原理
主義擁護のサウジとの関係から行わないことが根本原因である。
というより、パキスタン情報機関は、この原理主義者を利用してい
ることで、インドや周辺諸国は不満を持っている。

このイスラム教原理主義者をパキスタンが駆逐しない限り、報復の
応酬が起きる可能性が高いと見る。原理主義者がいるので、アルカ
イダやISなども、パキスタンを根城にする可能性がある。

パキスタン政府の対応が、問題になると見る。イスラム教圏との境
の地域は、イスラム教原理主義者によるテロや紛争で大変なことに
なっているが、今回の件も同様な事案と見える。

イスラム教を甘く見てはいけない。イスラム教スンニ派を移民させ
ると、原理主義者も入ってきて、日本の中でもテロ活動を行う可能
性があり、移民としてイスラム教スンニ派を入れてはいけない。

それを、この件でも強く教えている。

さあ、どうなりますか?


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