6050.地産地消経済と直接取引経済



日本の将来が心配である。人口減少と景気後退などで金融緩和政策
の限界に来ている。今後を検討しよう。   津田より

0.日米株価
NYダウは、12月26日21,712ドルまで下がり、PKOなどで2月6日25,439
ドルまで戻した後、2月22日26,031ドルになる。最高値26,951ドルに
迫る上昇であり、適温相場に戻ったような雰囲気である。NYダウの
PERは16倍になり、バフェット指数は142にもなっている。完全に割
高な株価になっている。

NYダウと連動して動く日経平均も、12月26日18,948円になり、12月
27日にPKOを行い20,211円まで戻して、その後も上昇して2月22日に
21,425円まで上昇した。こちらも22,000円に迫る上昇であり、上昇
が止まらない。日経平均のPERも12倍台になってきた。ドル円が110
円と円高にならないことも影響している。両市場ともに上昇が止ま
らない。

1.壁建設と米中通商交渉
メキシコ国境の壁建設では、非常事態宣言をして建設費用を軍の経
費から流用して建設するとしたが、民主党を中心に憲法違反と提訴
されている。しかし、大統領選挙で保守層からの支持を取るために
必要なことであったようだ。だが、今後3月1日には米国債の発行
額上限になり、10月までは節約すれば済むが、それ以降は予算執行
ができなくなる。デフォルトの可能性も出てくる。下院を抑える民
主党の協力なしには国債上限見直し法案は通らない。不安な状況に
なっているが、市場は影響なしと無視の姿勢である。

また、米中通商協議では、6つの合意した項目の覚書を作成し、交
渉をより具体化させているとして、トランプ大統領も進展して合意
に向かっていると言う。事実、中国は、米国から最大1兆2000
億ドル相当の物品を輸入することで合意している。

この合意で、中国は豪州からの石炭輸入を止めて、米国からの石炭
を輸入するようであり、中国へ輸出していた米国以外の国からの輸
入を止め、輸出は米国以外の国に行うことになるようだ。日本から
の電子部品輸入もなくなり、米国から輸入になる可能性が高い。こ
のため、日本企業は工場を米国に作り、そこからの中国へ輸出にす
るしかないことになる。

しかし、中国は「中国製造2025」破棄の米国要求などに譲歩をして
いないし、2030年までに社会主義の中国が米国を追い抜くと言う目
標も堅持している。

中国の譲歩がなく通商交渉での合意には至らないことで、途中経緯
で合意した内容を覚書で確認することになり、両国の相違点がある
ことは明確であるが、市場は米中貿易戦争が解決すると期待して、
株価は上昇している。しかし、交渉継続で60日~90日程度の延期に
して、トランプ大統領は、3月中にも米中首脳会談で最終合意を目
指すと表明した。

どちらにしても、3月1日に2000億ドル分への中国対象の関税強化に
なると、株価は大暴落するから、トランプ大統領も決裂にはできな
い。

2.中央銀行が形成した巨大バブルの維持
FRBも利上げを様子見としているのに、利上げは終了したと市場は捉
えている。株価上昇が続き、今までの最高値26,951ドルなったなら、
トランプ大統領の2020年再選まで株価維持の観点から、FRBは再度利
上げに動くはずであり、26,500ドル位で利上げ再開のアナウンスに
なるように思う。後500ドルである。

その上、景気後退を示す指標が多く出てきているし、EUの景気後
退の方向であるが、その上に英国が合意なきEU離脱の方向である。
今後3月後半に向けて英国議会がEU離脱延期などの処置を取らない
と、英国は勿論のこと、EUもリセッションになるかもしれない。

というように3月の後半に大きな景気の下押しの可能性があるが、市
場は無視である。今の市場は、景気や企業業績などの実績相場では
なく、流動性相場であると認識していて、ECB、FRBや日銀が十分な
流動性の確保をすると読んでいるのであろう。

事実、日本の地方銀行や農協はジャンク債、サブプライム債などの
リスクの高い金利指向の債権を米国で大量に買っている。これによ
り、お金が市場にあふれて、すべての資産価格が上昇している。金
価格、債券価格、株価、不動産、嗜好品価格が上昇している。完全
な流動性相場になっている。

この状況を見て、米国のファンドなどは、高値つかみになるので長
期投資を一時中止している。短期投資で値上がり期待の個人客や数
秒で取引をする超短期AI投資のみが参加している市場のようである。
そのため、取扱高が非常に低い。

しかし、一度バブル崩壊になると、日本の農協や地方銀行は、倒産
する可能性が高い。この危ない投資の理由は、日本の金利がマイナ
スで、かつ国内の不動産への貸し付けを制限したので、仕方なく米
国の劣後債を買っているからである。そろそろ、このコラムで再三
指摘したように、日本の金融政策は限界に達しているように感じる。

米国の巨大なバブル崩壊の影響が、今度は日本にも大きく響くこと
になる。地銀の多くが倒産して、大手のメガバンクに吸収するしか
なくなる。しかし、巨大バブル崩壊時、メガバンクの体力も失くし
ているので、公的資金投入なくしては吸収もできない。黒田総裁と
安倍首相の6年に渡る金融政策の失敗が明らかになる。

中央銀行バブルで形成された巨大なバブルが崩壊したら、世界的に
大恐慌になる心配から、米FRBも世界の中央銀行もバブル崩壊を阻止
する必要にあり、景気回復したからと利上げして実績相場に移行し
ようとすると、巨大バブル崩壊の危険になり、流動相場を続けるし
かないようだ。

よって、この巨大バブルを維持するために、政府は財政出動を継続
し、中央銀行は量的緩和をし続け、国債などの負担が重くなるので
長期金利をゼロにして、割高な株価は変動がなくなり、徐々に下降
させるしかないようである。日米欧は金融緩和という蟻地獄から抜
け出せない可能性が出てきた。

3.日本のバブル崩壊後の歴史
1989年の大納会(12月29日)に終値の最高値38,915円を付けたが、
1990年3月に大蔵省から「土地関連融資の抑制について」(総量規制
)が出され、同時に日本銀行による金融引き締めが急激なもので、
バブルを崩壊させた。このため、1990年10月1日には20,000円割れと
、わずか9か月あまりの間に半値近い水準にまで暴落した。

1988年に公表されたBIS規制は日本では移行措置のあと、1992年の末
から本格適用されることになり、この規制の適用に際して、金融機
関はそれまで大きく広げていた貸し出し枠を自己資本比率を満たす
よう縮小する必要に迫られた。

このためとアジア通貨危機とも重なった1997年から1998年にかけ、
北海道拓殖銀行(拓銀)、日本長期信用銀行(長銀)、日本債券信
用銀行(日債銀)、山一證券、三洋証券など大手金融機関が、不良
債権の増加や株価低迷のあおりを受けて倒産し、事態は金融危機の
様相を呈した。また、担保としていた土地も値下がりして融資の回
収が見込めない不良債権が増加し、住専7社のうち6社も破綻した。
住専に多額の資金を融資していた農協や銀行を保護するために公的
資金が注入された。

2003年頃からようやく景気が回復基調に転じた。しかし、2008年に
リーマンショックになり、景気は後退していく。2008年10月28日に
は、バブル後の最安値となる6,994円まで下落した。最高値から実に
6分の1までになった。

2012年に第2次安倍政権が発足して、金融緩和を行い危機から脱出
したが、長期の金融緩和に胡坐をかき、日本の構造改革を怠ったこ
とで、再度問題が起き始めている。

2019年からBIS規制強化の本格的な適用になり、再度金融機関の投資
に規制がかかることになる。当初入っていた国債保有規定がなくな
ったことで、日本のメガバンクを救っているが、金利ゼロの国債を
持つ意味がなくなっている。歴史的に見ると、日本は金融政策の失
敗が続いているように感じる。

4.日本の近未来
そして、とうとう日本は、衰退国家になる寸前に来ている。人口減
少時代を見越した構造改革をしなかったことで、1100兆円の国債を
抱えるのに、今後も長期に財政赤字が膨んでいくと予想でき、ゼロ
長期金利の金融緩和をしないと、国債の利子も払えないことで、こ
のままいくと国家破綻になる可能性もある。

経済成長もゼロ、もしくはマイナスに推移する。金利はゼロ、日本
の経済規模も縮小し、輸出も減り貿易赤字国になってきた。しかし
、日本企業は内部保留が多く、世界の企業を買って、世界に出てい
く。世界展開している企業の株価は問題を起こさない限り維持する
と思う。もう1つが、海外からの観光客が増えていることで、イン
バウンドの消費が増えている。

現時点では、経常収支は黒字を確保して、円高になってもこれ以上
の円安になりにくい。しかし、益々、人口減少して、この均衡点を
突破することは予想できる。経常収支が赤字になると、円安に拍車
がかかり、コストアップインフレが起きてくることになる。その先
にハイインフレが待ち受けている。

ハイインフレが予想範囲内になってきたことで、ハイインフレの準
備を行う時代になってきた。日本国民の生命を守るためには、国内
でエネルギーと食料を自給する体制に持っていくことが重要になる。
海外のエネルギーや食料は高くなり、一般庶民には手が出なくなる。

5.将来のネット流通業と食料
このように、日本の構造改革がなかったこととハイインフレで、必
然的に消費構造が変わる。人口減少で田舎の住民は少なくなり、東
北や山陰なども、北海道のようになり、鹿やクマ、イノシシなどが
多くなり、太陽光エネルギーを得る場所や農業の場所の問題も解決
するし、豚や牛肉の代わりに、ジビエを食べればよいことになる。

餌代がかからないので安いし、イノシシ、鹿は生息数が多くなり、
捕らえるのに時間がかからない。よって、捕まえて野原に一時GP
Sを付けて放ち、必要な分だけ捕獲することもできる。その上に、
大豆ベースの肉も出てくる。食文化の大変革期になる。

それとネットが普及して、「食べる通信」などのように、消費者と
生産者が直接取引して、卸を介さない消費スタイルが主流になる。
これにより、農協や豊洲市場の価値は激減する。卸が末端価格の半
分以上も取っている現状はおかしいが、ネット経由では、最大でも
30%程度になり、生産者の取り分が多くなるし、消費者の価格は
安くなる。

ということで、ネット直接取引で生産者の所得が上がり、若者が農
業やジビエ業に集まることになる。その分、普通のスーパーや仲介
業者は経営が成り立たなくなる。製造業も同様であり、アマゾンや
モノタロウ、ゾゾなどが製造業と消費者を直接結ぶことになる。

もう1つ、ネット業者は品ぞろえが重要であり、このため、寡占化
する傾向にある。ゾゾを脱退したレナウンやユナイテッドアローズ
などは自社専用のネットで買えるので、心配がないというが、品ぞ
ろえが重要であることを無視している。高級品としてのブランドを
守るなら、ゾゾ向けの第2ブランド商品を作り、差別化した方が良
いと思う。

メルカリも同様で売りたい人と買いたい人を結ぶ直接取引が重要に
なってくる。売った代金をメルペイで使えることで、利便性がアッ
プさせている。このように、生産者、ネット取引業と宅配業が今後
の日本の流通業を作ることになる。その意味では、一歩先を行く中
国や米国に近くなる。ネット取引業者が決済サービスを行うので、
ここでも金融業やカード会社は限界が来る。

日経平均など総合的な株価は変動しないか下落するが、時代を先読
みした銘柄は株価を上昇させるので、ネット取引業、バイオ、5G
、AIや自動運転など、将来有望な企業に投資した方が良いと思う。

6.地産地消経済と直接取引経済に
円安になると、相対的に日本の労働賃金は安くなり、海外での生産
より、日本の生産の方が製造コストが低くなる。このため、日本で
消費する消費財は、日本で生産した方が良くなる。ということで、
地産地消経済と直接取引経済が完成することになる。このため、人
口が減少するのに、自動化した生産拠点を日本に戻す企業が増えて
いる。

このように流通業が衰退して、生産者の復権が起こり、製造業も含
めて、品質や革新的な物を生み出す力が重要になる。ここで重要な
のが技術であり、技術者と研究者である。1つのことに人生を掛け
ることができるかどうかであるが、お金より生き甲斐を技術に見出
す人が多くいた方が、良いことになる。この傾向を持つ民族は日本
や中国、韓国、ドイツに多いと見ている。ということで、製造業に
向くのが、この4ケ国であり、ドイツとアジアの時代になったとい
うことになる。

アジア・ドイツの時代の原因は、人の性格にある。一歩一歩着実に
行う農耕民族の時代になったようである。このため、中国でも南部
の広州、深セン、香港地域の発展が大きい理由である。

逆に言うと、商業民族たちの没落であり、ドイツを除く英国や米国
など欧米人やアラブ人などである。交渉力のある商業民族は、農耕
民族から利益を奪うことで成り立ってきたが、ネットの普及で生産
者と消費者が直接取引できるようになり、出番がなくなってしまっ
たようである。

さあ、どうなりますか?


コラム目次に戻る
トップページに戻る