6048.株価を見たトランプ政治



NY株価が上昇して、25,500ドル回復した。その途端にトランプ大統
領は、株価を下振れさせる米中貿易戦争の激化方向の発言をして、
株価を抑え始めた。今後を検討しよう。   津田より

0.NY株価
NYダウは、12月26日21,712ドルまで下がり、PKOなどで2月6日25,439
ドルまで上昇した。2月6日夜に3月1日までには米中首脳会談を行わ
ないとトランプ大統領が発言して、2月8日24,883ドルまで下がるが
、企業業績が良いので買い戻されて25,106ドルで終わる。

このように株価が上昇してきたことで、強気の見方も出てきている。
いくら景気が良くなっても、労働参加率が上昇して、労働者不足は
起きず、よって単純労働者の賃金も上昇しないし、労働分配率も下
がり続けるので、インフレが起こらないというのである。FRBが利上
げをしないと、インフレが起こるという心配は必要がないと。

もう1つの条件が、長期金利が上昇しないことであるが、景気悪化
が起きないように、米中貿易戦争を適度に管理して米国の景気を後
退させないことであるが、この条件はトランプ大統領はよく心得て
いると。

壁建設問題で、再度の政府閉鎖も心配であったが、議会の超党派委
員会で合意案ができ、2月15日からの政府閉鎖が回避できたようであ
る。トランプ大統領も署名するという。

最近の決算でも、米国企業は、日本企業やドイツ企業が業績悪化で
下方修正を出しているが、予想値には届かないが下方修正をしてい
ない。業績拡大が小さくなったが続いている。このため、ハイテク
株の買い戻しが目立っている。

このため、2018年10月3日の最高値26,951ドルを抜き上昇する可能性
があるという。弱気に傾いたジェレミー・シーゲル博士、ロバート
・シラー博士やJPモルガンも、「2019年のアメリカ株式市場は10%
から20%の上昇をするだろう」と上方修正し始めている。

このような予想が出て、ジャンク債市場も活気を取り戻してきてい
る。長期金利も下がり、全体的に上昇相場のような雰囲気にもなっ
てきている。

1.株価を見た政治
そして、トランプ政治は、株価を見て政治を行っているように見え
る。株価が25,500ドルになりそうになると、米中貿易戦争を激化さ
せて、ブレーキを踏み、24,000ドル以下になると米中貿易戦争を緩
和して、株価を上げている。

しかし、現時点でのバフェット指数は、リーマンショック前の148や
1989年12月の日経平均最高値の時145と同じ程度の146と株価が割高
になっている。このため、トランプ大統領も株価を大きく上昇させ
ることは難しいので、2020年の大統領選挙で再選をするために、当
面株価を維持して、そして株価を上昇させるのは、2020年の選挙直
前にしたいようだ。そのために、2020年にインフラ投資170兆円で、
一気に株価を上昇させようとしている。

そして、株価維持・上昇のためのカンフル剤が尽きるのは、言い換
えると株価が調整局面になるのは、2021年であろうという。これに
も一理ある。

トランプ大統領は株価政治を行い、株価の過度な上昇も抑え、下落
には景気維持策を取る、優秀な経営者的政治家だと思いたいようだ。

しかし、金融機関の自己売買部門は、株価が動かないので、大きな
利益が出ない相場になり、自己売買部門を中心にリストラを行って
いる。

そして、ハーバード大学教授で著名なケネス・ロゴフ氏も「金融危
機は、皆が考えるよりすぐに来る」と強く警告している。

2.日経平均株価
日経平均は、12月26日18,948円になり、12月27日にPKOを行い20,211
円まで戻して、その後も上昇して2月5日20,981円まで上昇したが、
その後、一転下落して2月8日20,333円まで下げた。

今週の下落の大きな要因は、やはり米中首脳会談を行わないとした
トランプ発言であり、その上に日本企業の決算発表で、下方修正が
多発して、1株当たり利益が、1月時点では1790円が、2月6日現在で
は1733円になってしまっている。このため、米国よりも下落が厳し
い。日本企業の中国依存度が高いために、中国の景気減速が大きく
影響している。また、雇用統計などの不正で日本の政治などに不信
感を持ったのか、海外投資家の売りも大きい。

FRBが利上げを行わないことで、円高になるかと思いきや110円程度
の円安水準になっている。日米の金利差が縮小したが、日米の景況
感が影響している。米国企業の業績拡大と日本企業の下方修正では
、景況感が随分違う。

個人も海外投資家も売り越しであり、日経ETF買いとGPIFしか買い手
がいないようである。このため、米中貿易戦争激化と企業業績悪化
で、2月後半は下落方向になる可能性が高い。

3.ロシアの攻勢
米国は4月までにシリアから撤退して、アフガンからも撤退すること
が決まり、中東から撤退してロシアが中東の地域覇権を取ったよう
だ。

これに味を占めたロシアは、世界的に攻勢に出始めている。日本と
の平和条約交渉でも、北方領土返還を拒否してロシアの領土を一ミ
リとも渡さないというし、ベネズエラ・マドゥロ大統領の護衛兵と
して、ロシア雇用兵80名ほどを派遣した。

一方、米国は、暫定大統領を名乗り始めた野党指導者フアン・グア
イド氏を強力に支援して、隣国コロンビアにいつでも軍事介入でき
るように米軍5000人を派遣した。ベネズエラ国営石油会社に、ドル
決済ができない経済制裁を加えて輸出できないようにしている。

マドゥロ大統領は、中央銀行にある金塊をUAEに移送して、米国の軍
事介入に備えるようである。この裏にロシア顧問団がいることは確
実である。ロシアの狙いは、ベネズエラの石油である。

ロシアは、中距離核戦力(INF)廃棄条約破棄で、超音速の中距離ミ
サイルを開発して配備し始めた。しかし、プーチン大統領は、核軍
拡競争には否定的である。過去のソ連崩壊の原因が軍拡競争である
ことを知っているので、金のかからない軍事優位を目指している。
米国の核ミサイル軍拡でも、ロシア対抗の軍拡ではなく、中国対応
の軍拡であることを、プーチンは知っているからでもある。

また、ロシア中央銀行は、外貨準備をドルから金塊に換えて、米国
債を全て売却した。米国はロシアに経済制裁をしているので、経済
的な結びつきも少なく、米国の嫌がることをしても、今以上の経済
的な損害を受けない。このため、米国の嫌がることを十分できるこ
とになっている。

シリアのS300防空システムがイスラエルのステルス戦闘機F35に破壊
されたが、そのレーダーは中国製であり、ロシア製ではなかった。
シリアにS400防空システムを提供していない。このため、在シリア
のイラン軍は、イスラエルの攻撃を防げていない。

しかし、イスラエル軍がいない中国やイラン本土にはS400を提供し
ているので、ステルス戦闘機F35の攻撃を防御できるという。

ロシアは、イスラエルの電子技術を吸収し、自国の推進技術と組み
合わせてミサイルや通常兵器技術では、米国を抜かした可能性が高
い。米国の技術力が大きく出遅れたようである。このため、イスラ
エルの防空システムであるアイアンドームを米軍が採用するようで
ある。

通常兵器技術が米国より優位になり、ロシアは米軍が抜けた地域や
米国の敵対国支援など、正面からぶつからない様に攻勢に出ている。

ハイブリッド戦術と通常兵器技術の2本柱で、米国に部分的に勝ち
を積み重ねるようである。

一方、中国は経済力とハイテク技術で米国に真っ向勝負で勝とうと
している。このため、米国も中国を当面の打倒目標としている。

しかし、中国とロシアは力を合わせて、米国の覇権を徐々に奪う方
向で協力していくので、米国の勢力範囲が徐々に狭まれていくこと
になる。

日月神示の中で、「ロシアに気を付けろ」というが、中国の間違い
かと思ったが、この頃のロシアを見ていると、その頭の良い軍事戦
略・戦術で日月神示のいうことの方が正しいようだ。最後に世界を
破綻させるのは、ロシアかもしれない。

4.英国のEU離脱
EU離脱で、英国はEUに再交渉を要求したが、EU側は拒否の姿
勢を変えていない。このため、現時点では、合意なきEU離脱の方
が可能性が高いことになっている。

メイ首相は、EU離脱の延期をしないと英国経済は大きな落ち込み
になる。延期が嫌なら、辞任するべきである。とうとう、最後に来
た。英国王室は、合意なきEU離脱なら、英国から一時退避すると
いう。

英国は、EU離脱後、どうするのであろうか?
英国のEU離脱後の国家戦略も見えない。

5.北朝鮮と米国の首脳会談
2月27日と28日にベトナムのハノイで行われることになった。制裁
解除と非核化のバーターになることは確かであるが、そのレベルは
分からない。しかし、朝鮮戦争終結になる可能性は高いと思う。

トランプ大統領は、朝鮮戦争終結にして、在韓米軍を撤退させるこ
とになると思う。米韓日の同盟関係は、現時点でも破綻している。

これを円満に離別させるためには、朝鮮戦争終結しかない。

米軍がいないことで、韓国は、大手を振って北朝鮮と連邦国家を組
めるし、経済協力もできる。反日の世論も鼓舞できる。

日本も中途半端な状態を解消できる。米国の連携維持を強いられて
いたが、その必要もなくなり、韓国の横暴に対して反撃ができるよ
うになる。徴用工賠償要求での資産没収に対抗の経済処置もできる。

北朝鮮に対しても、拉致被害者の帰国がない限り、援助をしないと
して、横暴に向き合えることになる。

しかし、2年前に経済制裁と同時に日朝交渉をするべきとしたが、
安倍首相は制裁しかしなかったことで、以後の日本の立場は非常に
弱いものになってしまった。悔やまれる。

6.日本の現状認識を正確に
雇用統計などの統計を意図的に政権に都合の良いようにいじること
は、日本の現状を認識できなくなることである。

アベノミクスの第1の矢(金融緩和)は一時的な政策であり、FRBの
金融緩和で円高になるのを抑えることに絞り、本当に必要なことは
第3の矢のイノベーションを起こすことであると言ってきたが、そ
の第3の矢が全然できていない。

ドローンも大きく規制して、産業として育成する方向ではなく、水
素社会を作るのに必要な水素ステーション建設費も各種規制でバカ
高い状態である。イノベーションを起こす規制緩和をしようとして
いない。

イノベーションは、インターネットが成熟化して若い人が起こすベ
ンチャーから大企業の高度な技術を使った事業へとシフトしている。

この大企業の技術を使ったイノベーションが進んでいない。トヨタ
が進める水素技術をどうして、バックアップしないのか不思議であ
る。安倍首相は、胡麻化すことしかしていないように見えている。

その胡麻化しが効く間はいいかもしれないが、それができなくなっ
たとき、日本経済は悲惨な状態になると見ている。現時点でもGDPは
伸びていないが、今後は人口減少で市場規模が縮小し、企業活力も
なくなり、GDPも減少してくることが予想できる。その上に金融危機
が迫ってくる。このコラムで予想してきたことが、政府の不作為で
不幸にもドンドン当たってしまっている。

どうか、早く経済の将来状況を正確に予測して、頑固な保守層や野
党の反対があっても、移民も消費税も社会保障改革も産業政策も女
性・子供支援なども、早く行ってほしいものである。

遅れると、その分、日本経済は、将来を失くしてくる。

さあ、どうなりますか?


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