6039.日米株価暴落



FOMCで、利上げ決定して日米株価が一段と下がり、今年の最安値に
なってきた。今後を検討しよう。  津田より

0.NY株価
NYダウは、12月12日24,828ドルまで戻り、その後、12月19日23,162
ドルまで下げ、4月2日の23,344.52より安く年初来安値になり、さら
に、12月21日22,445ドルと下げた。

日経平均は12月14日21,871円から下がり、NY株に連動したのと円高
111円台に入り、12月20日20,282円まで下げ、3月26日の20,347円よ
り安く年初来安値になり、12月21日20,166円と一段安になった。一
時20,006円まで下がり、2万円割れ寸前まで行った。今後、2万円割
れは確実である。

ハイイールド債よりリスクが少し低い「レバレッジローン債」のス
プレッドが急上昇し大暴落している。この債権を日本は7割も持っ
ている。そして、その債権を大量に買ているのが、日本の地方銀行
であり、今後、この損も地方銀行は被ることになる。ゆうちょ銀行
の貯蓄限度額の引き上げなどの要因もあり、地方銀行の倒産や救済
合併が増えることになりそうである。

再三注意をしてきたが、日銀のマイナス金利継続は、金利での収益
を見込めないことで、リスクの高い海外債権を持ち、その損も膨ら
み、日本の地方銀行を潰すことになっている。早く金利を上げない
と地方銀行の存立危機になっていく。

1.株暴落の原因
市場の期待を裏切りFOMCが、利上げを行ない、来年も2回程度の利上
げを見込むことで、失望売りになったようだ。その上に米国政府閉
鎖のリスクも出て、しかもトランプ大統領が長期閉鎖を示唆したの
で株価は下がった。米国の景気は、資産価格に連動しているが、そ
の株が値下がりすると、景気は落ちることになる。法律家のパウエ
ル議長の限界で、トランプ大統領はFRB議長解任を検討したと報道さ
れる事態である。

一方、日本も日銀や財務省などは、株価が下がる方向を認識しなが
ら、こちらも何も手当てをしなかった。このため、日銀失望売りの
側面もある。日経平均ETFを買入れ増を行うとして、株価を維持する
べきでだった。金融資産は、どこかでハイ・インフレして価値を減
価させるしかないから、資産を株などに移すべきであるが、それを
促進しないのは、おかしい。

老人層の金融資産価値は減価しても、若い層の資産を株に移すよう
な誘導が、絶対必要である。現時点の日経平均は、PER10.5倍程度と
非常に安価な水準である。ここで株から金融資産に移動したら、将
来、若い将来ある人たちに大きな禍根を残すことになる。

2.今後の見通し
そして、日米株価共に、2018年は陰線で終わることが確実になった
。3月、4月の安値を抜けて値下がったことで、トレンドも下げ方向
が確定。来年前半も大荒れの相場になるだろう。

日米ともに景気指標はまだ悪くないが、株価が下がり、今後逆資産
効果が出て景気は下降することが確実である。株価下落の先行指標
である住宅指数は、2017年11月にピークをつけている。約1年後に
株価が下がり始めると言われているが、今回も同様な様相になって
きた。まだ下がるが、どこまで下がるかが次の問題になる。そして
、いつ底値になり、上がり始めるのかでしょうね。

日銀が日経平均ETFを買い増すと、早期に現物株が少なくなり、空売
り比率50%以上を行うと、買戻し時現物が少ないので、値上がりの速
度が高まり、簡単に空売りができなくなる。そうすれば、底値を付
ける時期が早まるし、株価の下落も少なくできる。国債買取は少な
くして、その分、日経平均を買い増すことだ。特に2万円割れ時が
狙い目である。

3.トランプ大統領の政策期待に
FRBの利上げでパウエル議長が、市場との対話に失敗して、大幅な株
価下落になり、これを受けて、NY連銀ウィリアムズ総裁が、FRBとし
て政策を再考する用意あり、市場が示すシグナルを注視していくと
したが、それでも株価は400ドル下落。株価の維持・上昇にはトラン
プ大統領の政策に期待するしかない。トランプ大統領は、事前にFRB
に対して利上げをするなとのツイードで、利上げで株価暴落とFRBに
責任押付けに成功したが、その後、政府の閉鎖が長期になるとして
、株価を下げている。

しかし、今後の任期中にグレート・リセンションになったら、再選
がないことを、トランプ大統領は良くわかっている。

このため、今後、株価を上げる政策を打つことで、2年後の再選に
向けて有利な立場を作ると見る。

現時点の米国経済は、7月ー9月米国GDP成長率で前期比 +3.4%であり
、失業率が3.6%と史上初めての水準にあり、完全雇用状態でもある。
米国経済は絶好調な状態であり、リスク・プレミアムの原因は、米
中貿易摩擦による景気減速を見ているからである。このリスクを軽
減すれば、株価は上昇することになる。

ということは、3月までに米中貿易戦争を一時休戦に持っていくこ
とが必要になる。市場も流動性相場から実績相場への転換ができず
、株価上昇には、FRBが利上げをしない流動性相場の継続と貿易戦争
の一時的な緩和しかないと見ている。

このため、今までの関税UPは持続させるかもしれないし、ネット問
題などの交渉も持続させるが、新たな関税UPは当分しないような気
がする。

しかし、トランプ大統領は、劇的な合意を演出するために、中国が
妥協の方向であるにもかかわらず、中国に妥協できないような強烈
な要求をしている。これもシナリオで、事前には希望なしと国民に
思わせるようだ。そして、株価を大幅に下げておき、びっくりさせ
て、株価上昇を大きくしたいようである。

このため、ウィリアムズ総裁の発言で300ドル株価を上げた時点で、
トランプ大統領は、政府の長期閉鎖という発言で株価を400ドルも下
げさせた。都合700ドル分も下げたことになる。

トランプ大統領の優先項目は、支持層を維持して再選を果たすこと
と、米国の財政破綻を防ぐことであり、遠隔地の安全保障などは、
それより優先順位が低いし、金食い虫の覇権維持の順位はもっと低
い。

4.トランプ大統領が中東から撤退へ
トルコのエルドアン大統領は、シリアのクルド人地域で攻勢に出る
としたことで、クルド人地域にいた米軍を完全撤退するとトランプ
大統領は命令し、それに対して同盟を重視して反対するマティス国
防長官は2月に辞任することになった。そして、シリアには完全不
介入政策にシフトするという。

シリアのクルド人は、米軍の支援なく、トルコ軍との戦闘に入るこ
とになるし、イスラエルもシリアに米地上軍が居なくなることで、
イラン軍の攻撃を受けやすくなる。中東の米国同盟国は慌てている。
サウジは、事前にロシアにすり寄ったが、イスラエルはロシアと問
題を起こしている。

アフガニスタンからも米軍を徐々に撤退する方向であり、米国は今
後、中東から撤退することになる。そして、この地域覇権をロシア
に渡す。

ペンス副大統領が信仰する福音派は、聖書に書かれているようにす
るために、ここで米軍を中東から撤退して、ハルマゲドンを期待し
ているように感じる。聖書に記述されているように歴史を作る義務
があると思っているのが、福音派である。

そして、トランプ大統領は、今後、軍事予算を削減して、日本以外
のアジアからも撤退と言い出すことが想定できる。しかし、日本に
駐留する米軍は増えている。これは、軍人の給与以外の駐留経費を
日本が負担しているので、米軍経費削減のためには、日本に米軍を
置くことは米国にとって有利だからである。しかし、それでも物足
りないと、駐留経費の全て(軍人の給与)も出せと日本に要求して
いる。

しかし、韓国は日本ほどには米軍駐留経費を出さないので、米軍は
韓国からは撤退することになる。米軍は欧州からも撤退しているし
、世界各地から撤退している。

自国の安全保障のために、米軍は太平洋と大西洋を守るが、ユーラ
シア大陸からは撤退で、日本から英国までを守り、それ以外は不介
入政策にシフトすると見ている。マティス国防長官を切ったことで
、トランプ大統領は自分の世界観、他国の思惑を無視した米国第一
主義を実現できることになった。

5.トランプ大統領が目指す方向
トランプ政権の高官離職率は6割にもなり、トランプ大統領と違う
意見の高官たちは次々に辞任している。結局、トランプ大統領が、
すべてを決めて、各省の長官はトランプ大統領の命令に従うしかな
いようである。今までのエリートたちが作った米国を潰して、庶民
の白人たちが安心して暮らせる社会にすることを目指している。

エリートが好きな理念とか人権保護という観点はない。米国の国益
しか目にないのが、トランプ大統領であることを確認した方が良い。

このためには、世界の覇権やグローバル化などの今まで正義だとし
てきた世界観を潰すしかないようだ。貿易赤字もゼロにして、米国
に製造業を戻すようだ。反グローバルが正義に変わったと見る。

日米貿易協議でも、今までのような自動車の輸出ができるかどうか
分からないと思う。今後もトランプ大統領に相場も社会も大きく影
響されることになる。

米国第一主義のために、世界の中心ではなくなった米国に対して、
ラガルドIMF専務理事は、ドル基軸通貨制度に代わる通貨制度の構築
が必要と述べているし、米国中心の体系からの脱却を急ぐことにな
る。

もう1つには、グローバルを促進したのは、インターネットである
が、そのネット空間でも中国が優位になり、空間を流れる情報を盗
めることで、中国のインターネットと米国のインターネットは接続
しない可能性が出てきた。ハイテク分野を死守するのが米国経済に
は必要であるからだ。このため、2つのネット・ブロック経済圏が
できることになる。この準備で、中国は「デジタル・シルクロード
」計画で中国のインターネット範囲をユーラシア大陸全体で拡大し
ている。

また、米国は「チベット相互入国法」を成立させたことで、政府機
関の中国人が米国入国できなくなる。人の移動も制限する方向であ
る。しかし、トランプ大統領は、これも取引(ディール)材料とし
か見ていない。

次の世界秩序を確立するまで、時間が必要になるが、今までの理念
やグローバル化が正義ではなくなる。そして、人、物や情報が自由
に移動できた今までの社会とは違う世界が待っているかもしれない。

さあ、どうなりますか?



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