6037.米中ハイテク戦争に拡大



米中貿易戦争は一時休戦と思いきや、ファーウェイの副社長を逮捕
して、本格的な米中ハイテク戦争に突入した。ファーウェイのルー
タを使用するソフトバンク携帯会社は全ルーターの入れ替えが必要
になる。今後を検討しよう。  津田より

0.NY株価
NYダウは、11月23日24,268ドルから米中貿易摩擦が一時休戦との市
場予想により、12月3日25,980ドルまで上昇したが、「逆イールド」
やファーウェイ副社長逮捕、原油急落などのニュースで、一気に下
げている。12月7日24,388ドルと下げて終わっている。FRBは12月の
利上げを行うと見るが、次の利上げは当分できないのではないかと
いう観測も出ている。やっても来年は1回であろうと。

日経平均も日経平均は11月21日21,243円から順調に12月3日22,689
円まで上昇後、一転して値下がりして12月6日21,307円になり、12
月7日21,678円まで戻したが、レンジ相場になっている。

弱気相場入りとコメントする評論家が多くなってきた。大きなニュ
ースで暴落するが、下がると買う人がいるので、当分、株価は徐々
に切り下がってくると思う。まだ、景気後退の指標が出ているわけ
ではなく、リスク・プレミアムのために株価が安いようである。し
かし、株価が下がると逆資産効果で、確実に景気は下がってくる。

このため、日銀は今後もETF買入を続けるとしているので、下値も切
り下がらない。しかし、上値になると空売りが出てくる。

米2年国債と米5年国債金利の「逆イールド」が発生したが、意図的に
仕掛けたファンドがあったようである。「逆イールド」が発生した後、
1年から2年後で景気後退になる可能性があるが現時点ではない。
このため、悲観しすぎと市場は上昇した。しかし、その後、ファー
ウェイ副社長逮捕で、市場には米中貿易戦争が本格的なハイテク戦
争に拡大することと、原油急落の背景に世界経済の減速があるとし
て株価が暴落した。

FRBは、株価の暴落とインフレという2つの要因を見て、今後の
利上げを考える必要になっている。利上げ、据え置きのどちらにし
ても株価は下がる方向であり、上がる要素はない。

ネットフレックス株は、ピークから半値まで下落して、FANG株
もさえない。アップルは米中ハイテク戦争に巻き込まれると株価も
下がり、時価総額はマイクロソフトに抜かれている。

1.ハイテク戦争
米国政府機関でのZTE、ファーウェイ製品の使用を禁じ、ファーウェ
イ製品を使用する企業との取引もしないとなった。この米国の使用
禁止を英国、豪州、ニュジーランド政府も行うとした。日本政府も
政府機関でのZTE、ファーウェイ製品の使用を禁じた。しかし、ドイ
ツは禁止しない。独中同盟ができつつある。

中国も今後、アップルやシスコなどの米国製品の使用が禁止になる。
相互主義を取る中国は、やられたらやり返す。米国企業の幹部を逮
捕する危険があると、訪中を控える米企業も多い。

そして、このファーウェイのルーターを全面的に使用しているのが
ソフトバンクであり、今後、ソフトバンクが米国で事業を継続した
いなら、ルーターをシスコなどの中国以外の製品に置き換える必要
になる。5G以外に既存ネットへの投資も必要になる。もしくは、
米国の事業をすべてやめることである。このため、米国の携帯会社
の経営から退いたのかもしれない。

この情報を事前に知って、孫さんは儲けを確定して逃げるために、
ソフトバンク携帯の株を上場するような気がする。その意味では、
すごい先見性があるが、残念ながら米中のハイテク戦争の方が先に
来てしまった。

米中経済戦争は、貿易関税戦争から拡大してハイテク戦争になり、
米中の壁を厚くして、昔の米ソ冷戦と同じようになる危険性が出て
きた。経済の断絶になる危険性で、世界経済の大幅な縮小が確実に
なる。

トランプ大統領の戦略を明確化しないで「あいまい戦術」で国家財
政を破綻しないようにする試みが、意図とは違い、米国の対中タカ
派を元気づけて、対中の本格的な対決にしてしまった。事実、トラ
ンプ大統領は、事前にファーウェイ副社長逮捕を知らされていない
という。そして、今まで鳴りを潜めていたCIAが元気である。

思いもよらない世界に米国の対中タカ派は連れていく可能性が高い。
米中の本格的な経済・技術戦争になれば、ココムが復活して、日本
は米国陣営に着くしかないので、貿易の半分以上を止めることにな
る。日本も一時的に大不況になる。勿論、米国も不況になり財政破
綻させないためには、ハイインフレにするしかない。

2.戦争の時代へ
米中ハイテク戦争で、経済問題だけであれば、世界の大不況で済む
が、本当の戦争に突入する可能性も出てきた。

中東では、ヒズボラは前回述べたように防空システムの完備で、戦
争に勝利できると見込み、イスラエルが侵攻時に使用するレバノン
への攻撃用トンネル封鎖して、かつ、イスラエルへの攻撃準備をし
始めているし、イランは、原油の輸出ができなくなったら、ホルム
ズ海峡を封鎖すると脅している。米国は180日の猶予を9ケ国に
しているが、その後は輸入禁止である。

イランの脅しに対して、米国はアラビア海に空母を送った。ファー
ウェイ副社長逮捕の理由もイランとの取引での不正行為であるから
、イランが絡んでいる。イラン国内にはS-300防空システムが
配備されているので、米軍の戦闘機は危険な飛行になる。米空軍の
威力が大きく損なわれている。シリアでのF-35の撃墜は、イランと
ヒズボラにイスラエル攻撃にゴーサインを出したようなものである。

一方、イスラエルでは、ネタニエフ首相が起訴されるようであり、
タカ派のネタニエフ首相よりタカ派の人物が首相になる可能性が出
てきた。

ロシアは、キエフにあるロシア大使館警護のために、ロシア軍を派
遣するとしている。ウクライナのポロシェンコ大統領は、ロシアと
の平和条約を破棄するとしているので、ここでも戦争の危険が出て
いる。

3.ロシアが中東を狙っている理由
サウジは米国からロシアに乗り換えたようである。防空システムを
ロシアのS-400導入に確定したようである。このため、米国は
慌てて、記者暗殺を不問にして、米国製兵器の購入を要求している
が、遅かった。

なぜ、ロシアが中東に出ていくのかという疑問が出てくる。プーチ
ン大統領は、常々ルーブルを基軸通貨の1つにすると宣言している。
しかし、ロシアのGDPは、世界11位と韓国と同程度の経済規模
で小さい。このため、普通に考えると間違っても基軸通貨の1つに
はなれない。

ロシアは、国内の石油・ガス資源を欧州や中国、日本に送るパイプ
ラインが張り巡らされている。それと、軍事力がすごいので、その
利用で、基軸通貨を獲得することを目指している。このため、まず
、シリアを助けたのである。

中東の石油取引をルーブルで行えば、基軸通貨になり、パイプライ
ンがユーラシア大陸をすべてカバーしているので、米国など米国大
陸以外には、どこにでも安価に石油と天然ガスを運べる。このため
、米国に代わって、中東の石油を支配したいのである。ロシア経由
の方がタンカーより輸送コスト安いので、欧州はロシア産か経由の
天然ガスの輸入が多い。

このため、サウジとの協調が必要である。イランともよい関係であ
る。中東から米軍を追い出す方向で活躍して、中東の石油の仕切り
をロシアが行いたいのである。

トルクメニスタンの天然ガスは、今までは全量中国に送っていたが
、ロシアにも送る契約ができた。中国の価格が安くて、ロシアの価
格が高いことによる。ロシアは、欧州や日本という顧客がいるので
、少し高くても買えるのである。その点、中国はロシアに依存して
いない。自分でパイプラインを引いて、なるべく安く買い付けてい
る。

というように、ルーブルが石油取引に必要になる時代が来るかもし
れない。その時は、ドル基軸通貨の終わりで、世界的な混乱が起き
ることになる。ユーロとルーブル、人民元が次の基軸通貨というこ
とになる可能性もある。

4.日米両国の財政破綻の防止は
日本も米国も長年の放漫財政で、その上景気後退局面では、国民が
無傷では済まされない。経常収支が赤字である米国は、財政破綻さ
せないために、ハイインフレを容認するしかない。米国は壁を作り
輸入関税を高くして物不足にし、ハイインフレにする。同時にドル
も半分程度に下げる。国外の投資家が米国債を持っているので、そ
うするしかない。

このため、日本とのFTA交渉でも為替の上限を決めたいというが、こ
れは幅にすることである。1ドルを105円プラス・マイナス5円
程度にして、ドル安が起きた時、同時に円安も起こるようにしてし
まえば、日本もハイインフレになる。

厳密な為替管理を日米で行えば、今のままでは財政破綻になってし
まうのが、お互いに助け合ってハイインフレにする。そして、ハイ
パーインフレにはしないことである。ハイパーインフレでは国民が
生活できなくなる。

ハイインフレであれば、経常収支が黒字であれば、コストアップイ
ンフレに追従して、賃金も上がり、企業価値も上がり、株価も上が
り、1年遅れて年金も上昇するので、問題がハイパーインフレに比
べて少ない。一番減るのは、国民の金融資産と、それと同時に累積
国債の価値である。できるかどうかはわからないが、インフレを関
税率と為替の両方で管理することである。というより、するしかな
い。統制経済化は、仕方がないことである。

もうこれしか、景気後退局面では、放漫財政を長年放置してきた両
国が財政破綻を防止する方法はない。

それと、日本は日銀にある国債を永久国債にするという手があるが
、ハイインフレと同時にすると、現在の累積国債の価値を4分の1に
できる。世界的混乱のどさくさに紛れて、日米ともに行うことであ
る。連携プレーにすると、日本政府の意図を国民から隠せることに
なる。よって、国民にも説明可能である。これしかない。

フランスでも財政破綻しないように増税すると、国民が不満で暴れ
ている。イタリアでは赤字予算を執行するかどうかで与党内が分裂
している。景気後退になると、この混乱が世界に波及することは、
確実である。

80~100年程度に1回程度の世界混乱とハイインフレは、国民の満足
を支える必要がある民主国家として仕方がないのかもしれない。

さあ、どうなりますか?



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