6035.歴史的な覇権移動の時代



米国の景気後退が迫っている。しかし、この景気後退で米国の時代
は終わる。次の時代は中露欧日が争うが、中国が有利であり、漁夫
の利を日本が狙うことになる。その検討をしよう。  津田より

0.日米中の株価
NYダウは、11月20日24,368ドルから11月23日24,285ドルと下落で推
移している。アップルのiPHONEの先行きの販売懸念から、アップル
株などハイテク株の調整が続いている。当分、米国の金利上昇と景
気などを見た神経質な相場になる可能性が高い。

このような株の下落を見て、FRBも12月の利上げは行うが、来年度の
利上げ回数は少なくなるか、止める方向にシフトするようだ。PERが
15倍以上のNY株価は、今後もダラダラとした下げのような気がする。
米国金利上昇で、株への投資を控える可能性が高いからである。

一方、日経平均は11月21日21,243円を底に、11月22日21,646円まで
戻して終わっている。ハイテク株の調整がない分、下がり方も大き
くなく、PERが11倍台と安い水準になっているし、ゴーン会長逮捕で
、日産などは下げて配当利回りが6%にもなっている。その上に、日
銀はETF買いを少しの下げでも買ってくるので、これ以上の下げはな
く、米中貿易戦争の鎮静化が起これば、株価は上昇する可能性も出
てくる。年間6兆円を超しても日銀はETF買いを止めないようである。

というように、日米の株価は上げ下げが逆向きになって来たような
感じがする。

中国の上海市場も2600ポイントを前後して、これ以下に下げる感じ
はしない。これは国家投資機関が買い支えているからのようである。
しかし、中国国内の消費は衰えていない。伸びは少なくなってもプ
ラス圏である。その証拠に独身日の1日のアリババの売り上げが3兆
円以上になっている。

ということで、中国は株価維持ということになる。

1.米国の破産が間近
米国の来年度の国債償還が大きくなり、長期金利上昇が起きやすく
なる。米国の公的債務は日本円にして2200兆円で、2020年には年間
4兆ドル(440兆円)にもなる。その上に減税などで赤字を増やして
いる。

来年以降、金利3%のままにすると、発行する国債も増えてしまい、
国債費が国防費より多くなる。トランプ大統領は、その国債を買っ
てくれている中国や日本に貿易戦争を仕掛け、激化させて中国の持
つ米国債も売る方向になっている。

このままにすると、金利上昇と株価下落で景気後退になり、それを
防ぐには、FRBが量的緩和をするしかなく、量的緩和するとドルが下
落して、悪性インフレなる危険性が出てくる。そして、財政支出を
抑えるなどの方策を取らないと、米国債償還ができずに、国家破綻
になる危険性もある。どちらにしても今までの放漫財政のツケを米
国は払うことになる。もちろん、軍事費も激減させるしかなくなる
。ということで、覇権終焉が迫っている。

日本も1000兆円あるが、金利が0.5%近辺であり、日米の金利差など
で、償還金額が12倍も違うことになる。しかし、日本でも日銀の量
的緩和がないと財政破綻しかねない状態ではある。それでも国債費
は30兆円にもなっている。社会保障費と同じ程度だ。

というように、日本もひどいが、米国の国家財政は危機的な状態に
なっている。しかし、トランプ大統領は、インフラ投資、国境の壁
投資と放漫財政を一層拡大する方向である。

2.歴史的な覇権移行の時代へ
水野和夫先生の見解によると、1970年代に米製造業の利潤が減り、
米国は金融経済にシフトさせて資金をばら撒いて、日本や中国など
のアジア経済を上昇させ、その代わりに米国の製造業を衰退させて
現時点、軍事産業でも技術がなくなり、ここで、株の暴落を引き起
こすと、覇権交代となる可能性が出てくる。

このようなことは、歴史的に何回も起こり、そして覇権が交代して
いったという。

ということで、無意識のうちに放漫財政による国家破綻の可能性が
出て、覇権を譲るために、トランプ大統領が出て孤立主義を取り始
めたことになる。

現時点、ペンス副大統領やマティス国防長官など米国の共和党政治
家の多くも国際的な役割を維持し覇権維持の政治を目指しているが
、それができなくなる時代が、すぐそこに来ている。しかし、この
ことを、まだ理解していないように感じる。

勿論、トランプ大統領も分かていない可能性が高い。そのため、イ
ラン核合意を破棄したり、TPPから離脱したり、温暖化防止のパ
リ協定を破棄したり、傲慢な対応を世界に対して行っている。

しかし、覇権の基礎であるドル基軸通貨制度の維持には、世界の多
くの国の合意が必要である。しかし、傲慢な対応で、その合意も破
壊している。知らず知らずの内に覇権放棄をしているのが、現在の
米国外交であろうと思っている。というより、米国にとって、政治
的な制約から、ドル基軸通貨制度が重荷になっているようにも感じ
る。

しかし、米国が捨てる覇権を誰が獲得するのかは、決まっていない。

このため、これから米国の代わりになる覇権獲得競争になる。候補
は中露欧日の各国であるが、現時点で一番近いのは中国である。

今までの覇権の確立では、陸と海の覇権争いであり、それまでの陸
の覇権争いからイギリスは、海の覇権を確立して世界の覇権を確保
し、米国は空の覇権を確立して世界の覇権を確立した。

次の覇権には、ネット空間での覇権確立が必要であり、その先頭に
中国が出てきた。少し前では、米国のシスコがネット製品を抑えて
いたが、現時点、華為(ファーウェイ)が、この分野を抑えている
し、ネット技術でも中国の方が上になって来ている。世界の技術を
ハッキングで中国は得ている。昔、英国が海賊で海を制したのに、
似ている。このため、米国は同盟国に華為(ファーウェイ)製品の
使用を禁止するように求めるのである。

米国も復活する可能性はある。しかし、トランプ大統領のように世
界を敵にする大統領では無理で、世界から尊敬される大統領が必要
になる。現状では、ほぼ無理だとは思う。

そして、中国は、覇権獲得のためにネット空間のほかに、陸と海を
制する一帯一路政策で、世界覇権を確実にする方向である。

3.中国の覇権獲得手段
中国は、製造業で得た貿易黒字を投資に回して、経済成長をけん引
してきた。製造業各社は、設備投資を行い拡大再生産してきたが、
突然、米国が中国産製品の輸入を制限し始めたので、投資経済から
転換が必要になっている。

国内投資は限界に来たために、一帯一路の海外投資にはけ口と求め
たが、途上国への「債務の罠」と批判があり、あまり広げることも
できなくなっている。日本の信用力を使い、継続したいようである
が、日本企業もメリットがあるプロジェクトしか参加しないはず。

このため、国内消費経済にシフトさせ始めている。また、保護貿易
で批判があり、中国としても自由貿易にシフトさせる必要があり、
また知財権保護も求められているので、それも行い、かつ中国とし
ても有利な国際秩序を模索する展開になっている。

その一環として、国際機関のトップを取り、中国流のルールを確立
して、覇権を目指すと思われる。

消費経済拡大の裏にいるのが、世界にネッタワークを確立している
日本企業の存在がある。中国の消費経済拡大で、日本企業が潤うと
いう関係にあり、日本は中国との友好を必要としている。中国も自
由貿易を行う上で日本を必要としている。

もう1つ、一党独裁体制維持のためと国民のレベル向上のために、
中国社会は超管理社会になり、国民は信頼ポイントで管理されるこ
とになるので、犯罪が少なくなるようだ。これも覇権確立の一環と
も見える。覇権国に相応しい内外の環境を整える方向のようだ。

4.ロシアの対抗手段
ロシアは歴史的に東に勢力を伸ばして、敵が東西にいる二正面作戦
をする運命が有り、どちらかとは同盟関係して、一方向に攻めてい
くしかない国家である。太平洋戦争直前に日本と不可侵条約を結ん
だのも、西に兵を向けるためであった。

しかし、このままでいると、中国が覇権を取り、ロシアの勢力範囲
をどんどん、中国の一帯一路で崩されていくことになる。

現時点、ロシアは軍事力を西に向け中東を支配下にして、その統治
を確保することを優先している。しかし、同時に中央アジアを中国
の影響力増大から、どう守るかがテーマになっている。このため、
東への軍事力を下げて、西や中央に軍事力を回したい状態である。
また、経済的にも強化しないといけない。

もう1つ、ロシアは、中国包囲網を形成してきた。ベトナムやイン
ドと友好国になり、ロシア製武器を供給して、中国に対抗してきた
が、中国の経済力が増大してきて、ロシアだけでは対抗できない。

そこに日本がインドとベトナムとの関係を緊密化してきている。目
的は、中国の脅威の緩和であり、その意味では同じ目的を持ってい
る。

このことを安倍首相もプーチン大統領も分かっているので、日露平
和条約締結交渉になったのだ。日本の外交評論家は、目線を広く世
界情勢を見ないので、日露交渉の意図が見えていないように感じる。
両国の目的は、中国の覇権獲得阻止である。

5.複雑な国際情勢に
中国がロシアと組んでいるのは、米国の覇権を放棄させるためであ
り、次の覇権獲得では敵になることがわかっている。ロシアは単独
では、覇権を獲得できない。日本も覇権獲得は無理であり、日露で
協力しないと、中国に覇権が行くことになる。日露は米国後の時代
を見据えて、同盟関係を築くしかないと見る。というように、複雑
な同盟関係になり、複雑化した国際情勢になってきた。

自由主義対社会主義というイデオロギーの時代は過ぎ去り、自国の
国益を重視する新帝国主義の時代になっている。日露関係をイデオ
ロギー的や歴史的におかしいなどという意見が評論家に出ているが
、今の時代を見る目がないとしか思えない。覇権移行期であること
を分かっていない。

欧州は、EU維持で手いっぱいになっている。ドイツのメルケル政
権も終わり、フランスのマクロン大統領も日産を奪い取り、国力を
向上させたいが、日産の反発でできなくなった。イタリアはEU離
脱の方向に行く。ドイツや東欧と中国の関係は良好である。ドイツ
や東欧と中国で、ロシアを二正面作戦で、挟み撃ちできるからで、
ドイツと東欧の敵は、ロシアであるからだ。

中東もロシアの影響力が増大して、米国の影響力が衰退している。
しかし、イスラエル支援のために、米軍はシリアから撤退できない。

海洋国家の英国、日本、米国、豪州などは、協力して中国対抗を打
ち出せる。海の自由を確保することで、利害が一致している。フラ
ンスも日産の莫大な利益を受けているので、日本の味方になる。と
いうことで、海の覇権を維持したい海洋国家連合もできる。

日本は2正面作戦にはならない。太平洋をバックしているので、中
国以外では、だれとも組めることになる。それが日本の強みになっ
ている。

その強みを生かすかどうかで、日本の立ち位置は決まるような気が
する。

さあ、どうなりますか?



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