6033.米中間選挙後でどうなるか?



11月第2週は、中間選挙の結果も予想通りで、FOMCの結果は12
月利上げ確定となり、円安の割に株が高くない状態で引けた。それ
と「ねじれ」議会でどうなるか予想しよう?  津田より

0.中間選挙結果
中間選挙は、民主党が下院で多数、共和党は上院で多数になり、予
想ほど民主党が強くなくブルーウエーブとはいかなかったが、予想
通りの結果になり、それほどには株価の波乱はなかった。

トランプ大統領の再選を考えると、40%程度の支持率でフロリダ
、アイオワなど州知事が取れ良い結果だし、下院過半数を取られた
ことで、景気が悪化した場合でも下院のせいにできると考えたのか
、トランプ大統領は「勝利宣言」をしている。

しかし、これで議会が「ねじれ」になり、不法移民への対策強化や
中間層への減税は無くなるが、しかし、インフラ整備は民主党も推
進であるし、対中強硬は民主党も賛成であり、トランプ大統領は進
めることができる。また、外交・通商問題は大統領権限が大きく、
議会の力は限定的であるので、トランプ大統領は大いに自分の考え
を推し進めて、2020年の大統領選挙での実績としたいようであ
る。

民主党も共和党も大きな政府の政策となり、少し昔の共和党茶会派
などの赤字予算を止める勢力がいなくなり、大きな政府の方向に米
国は行くことになる。中間層への減税がなくなるので、少し赤字幅
は少なくなるが、国債の発行量が増えて、10年国債の金利は上昇
することになる。金利が3.26%を越えると株価下落は10月に証明さ
れている。

その上、当分、FRBが短期金利を上げるとそれにつれて長期金利も上
がる可能性あるので、早期に金利が3.26%になる可能性もある。

FRBは12月の利上げは行うとしたが、中間層向け減税がなくなり、景
気過熱感が少し薄れて、景気の腰折れが少し先に延びた可能性もあ
る。景気過熱でのインフレがないなら利上げも急いでする必要がな
くなり、来年の利上げ間隔が広がるか停止すると見る。これにより
景気後退は、来年後半かもしれない。

1.株
NY株は、10月3日に26,651ドルと過去最高値を付けて、10月26日に、
24,688ドルまで下がったが、11月8日26,277ドルまで戻したが、11月
9日25,989ドルと下げた。中間選挙を終えて、不安定要因がなくなっ
たことで上げたが、FRBが12月利上げを決めたことで金利上昇を意識
されて下げている。

しかし、適温相場の継続なら、ウォール街は強気継続のようだ。バ
ブル終盤、株価が一番上がることが過去の歴史から明らかであり、
まだ上がると見ているようである。それと11月買い4月売りという
アノマリーもあり、それも強気の根拠の様だ。

このため、押し目買いでFANG株も再度上昇している。ウォール街は
大暴落まで強気を継続するようである。ということでNYダウ株は10
月3日の26,651ドルを上抜けする可能性が出てきた。FRBが利上げし
て、金利上昇で3.26%になるまで適温相場と見なすのであろうか。

一方、日経平均も10月2日に24,448円と6年ぶりの高値を付けたが、
10月26日に20,971円と3,000円以上も下落したが、11月8日に22,583
円まで戻って来た。日本には、FANG株のような優良銘柄がないので
、米国とは違う動きになる。このため、10月2日の24,448円上抜けは
ないと見ている。

しかし、11月29日に行われる米中首脳会談で、予想とは違い米中で
の通商問題で劇的な合意が来たら、これは25,000円以上になっても
おかしくない。日本企業の売り上げに占める中国企業の割合が大き
くなっているからだ。

現時点で、決算発表をみると、実績は増収増益なのに、決算見通し
では、中国との貿易での減額修正が多く、日本企業の中国とのビジ
ネス規模が大きくなっていることがわかる。中国と米国の貿易戦争
は、その意味で日本企業にも大きな重しになっている。このため、
上海株が下落すると、日経平均株価も下がる。

まあ、米中での基本合意は難しいので、11月29日の首脳会談では、
交渉開始するレベルの合意になると思う。それでも、株価は上昇す
ることになる。

米FRBの利上げが12月にあり、金利差が広がり、114円以上の円安に
なると、そこでも株高になる。ということで、11月末から12月には
23,000円に乗せる場面もあるかもしれない。米FRBが利上げを継続す
ると円安になり、日本は円安での悪性インフレになる可能性が出て
くる。しかし、来年FRBが利上げを止めると円高株安になる。という
意味では、11月買い4月売りというアノマリーは本当かもしれない。

2.中東情勢
米国はイランに対して、国際決済システム(SWIFT)へのアク
セスを停止させて、ドルでの決済ができなくなった。イランと貿易
する企業もこのシステムから排除すると言っていた。しかし、イラ
ン原油を輸入している国でも9ケ国に対しては、当面制裁をしない
としたが、米国のイランへの制裁はかなり厳しい。

EU、日本、中国などのイラン原油輸入国は、当初米国のSWIFTとは違
う国際決済システムを作る方向であったが、制裁を緩和したことで
、当面は別システムの構築をしないようだ。このことを交渉材料に
して米国に譲歩を迫ったようである。

米国はトルコとの関係を回復し、サウジの反政府記者殺害で、サウ
ジにカタールへの制裁を緩和させ、サウジとトルコの関係を修復す
る仲介をしているようだ。トルコはカタールを支援していて、この
関係から対立している。

サウジはワハーフ原理主義のスンニ派でイランに対して厳しいが、
トルコは穏健なムスリム同胞団のスンニ派でイランに対して寛容で
ある。スンニ派と言いながら大きく違う。

しかし、この2つのスンニ派が対立していては、シーア派のイラン
に対抗できないので、トランプ政権のクシュナー上級顧問がイスラ
エル、トルコ、サウジを大同団結させるように動いているようであ
る。

サウジがイエメン紛争に肩入れしているが、それも止めさせて、イ
ラン打倒に向けたいようである。また、サウジは、米国の要請を受
けて、OPECを解散して原油調整を廃止する方向に動き、原油価格を
引き下げるようだ。この予測が出て、原油は1バーレル60ドル以
下になっている。原油価格の引き下げをするのは、軍事費捻出に苦
労するロシアに対するものである。米国はサウジをロシアから引き
離したいようだ。

しかし、ロシアが中東地域に強力に軍事介入していて、誰もロシア
には逆らえない。イランはシーア派地域を一体化して強力な軍事力
を持っている。そして、ロシア主導のアフガン和平会議を開催して
、中東での主導権を米国に見せつけている。勿論、この和平会談に
米国は参加していない。

一方、米国は中東に空母を派遣できない。地中海にはロシア艦隊が
いるし、ペルシャ湾はホルムズ海峡封鎖の可能性があり、紅海はマ
ンダブ海峡封鎖の可能性があり、空母が近づけない。空母はアラビ
ア海までであり、それならカタールの米空軍基地の方が近いし、効
率が高い。

もう1つが、ロシアとの対決になる可能性があり、マティス国防長
官は慎重である。

その慎重なマティス国防長官とケリー主席補佐官をクシュナー上級
顧問やボルトン補佐官は辞任させようとしているようだ。中東政策
が大きく違うことが原因であろう。そして、トランプ大統領は安全
保障問題に興味がない。

3.米国の通商政策
通商交渉では、日本に対して、20%の自動車関税で脅して、農産
物の自由化を勝ち取ることを優先している。米国の大豆農家、牧畜
農家の支持を得ることを優先する。自動車については米国での生産
をするように求めるか、米国産日本車の輸入を求めてくる。

中国の次は日本とドイツに狙いを定めている。その中心的なテーマ
が自動車の輸入関税で脅して、農産物輸出を有利にすることである。

中国は、自由貿易を推し進め、知財権保護や自由化、関税ゼロ化な
どを推進していくことで、米国の関税UPを止めようとするが、その
スピードが問題になる。中国国内企業の保護はできなくなるが、中
国企業の実力は相当に上がってきているので、自由化しても、中国
の経済力が減衰することはない。

米国の要求を実行する方向で、中国の指導層も覚悟を決めていると
思う。このため、11月29日にトランプ大統領と合意する可能性もあ
り、両国ともに相手に対して強硬と思っている世界の政治家を驚か
せる可能性もゼロではない。少なくとも交渉開始を合意するはず。

トランプ大統領の関心は通商問題だけであり、安全保障問題には興
味がない。米国にとって経済分野で得か損かしか考えない。政治思
想などはないからである。

トランプ政権で安全保障を考えているのはクシュナー上級顧問やボ
ルトン補佐官とマティス国防長官などであり、その対立が先鋭化し
ているように見える。マティス国防長官は対中国を重視し、クシュ
ナー上級顧問とボルトン補佐官は中東を重要視している。

米中通商問題で合意すると、世界景気は再度上昇してくる。株価も
上昇して、民主党に下院を握られて穏健化するとトランプ人気は確
実になるかもしれない。中国市場も開放されて、日本やEUにとって
もよいことになる。

そして、確実に米国の時代から中国の時代になる。将来の歴史家は
米国の対中貿易戦争によって、中国を強くしたということになるか
もしれない。

しかし、ナバロNTC委員長は「中国との通商交渉に口出すな」と
ウォール街に警告したように、このストーリーを先に出すと中国の
譲歩が少なくなると見ているようである。

4.北朝鮮代理人の韓国
韓国は、北朝鮮との統一を目指して、2ケ国が一番心理的に同意で
きる反日化の共同戦線を取り始めた。その上に、韓国の徴用工賠償
問題で国際ルール無視という暴挙で、日米韓の3ケ国による北朝鮮
への制裁は、実質的になくなり、韓国は日本が賠償しないなら、制
裁を解除するとなる。

トランプ大統領も北朝鮮の非核化を急がないと発言して、徐々に当
初の非核化はあいまいになっている。それと、制裁継続を望んでい
るのは、日本だけになってきたようだ。このため、日本は中国に制
裁継続を求めているが、日本を排除した5ケ国会議では、非核化の
スケジュール化をしたことで、制裁解除、終戦宣言などになるよう
である。

終戦宣言で米韓同盟を失効させるので、朝鮮半島は中ロの勢力範囲
になりそうである。韓国と北朝鮮はロシアに近づき、中国をけん制
することになる。

というように、北朝鮮の思惑通りになっている。韓国は北朝鮮の代
理人を務めているように見える。

日本の評論家は、韓国の徴用工賠償と慰安婦問題だけを見て、朝鮮
半島全体の動きを見失っているよな気がする。大きな物語があり、
その一部としての徴用工賠償と慰安婦問題と見ないと解決の糸口を
失いかねない。

これにより、自由主義国の日本が、中露の全体主義国への最前線に
なる。その覚悟が日本には必要で、それを見据えた国内体制を議論
して欲しいものである。

さあ、どうなりますか?



コラム目次に戻る
トップページに戻る