6026.日本の登場・米国の退場



トランプ大統領の国連の演説で米国はグローバル化に反対し、貿易
不均衡を認めないと。対して、安倍首相は、国連で自由貿易の旗手
として主導すると。これは何を意味し、世界はどうなるかを検討し
よう。               津田より

0.米中貿易戦争から米中全面対立へ
トランプ大統領は国連で、米国第一主義とグローバル化反対と貿易
不均衡を容認しないし、この2年間でこの政策で最大の成果を得た
と演説して、会場の人たちから場違いと失笑を買った。この演説か
ら見ると、米国は世界の指導者から降りて、昔のようなモンロー主
義に戻るようだ。

また、トランプ大統領は、習近平主席とは友達であったが、北朝鮮
の非核化で米国を裏切り、通商交渉も拒否で、もう友達でないかも
知れないと。また、中間選挙に中国は干渉してきたとも話した。こ
のように、中国への態度を硬化し、攻撃的な姿勢を明確化した。

その一環として、B52爆撃機を南シナ海上空に飛ばしたり、東シ
ナ海では自衛隊との共同訓練をしたり、台湾にはF16戦闘機の性
能UP化部品を供与、最新鋭通常潜水艦の製造を助けるなど、大き
く肩入れをし始めた。また、中国のウイグル族への締め付けなども
批判している。

また、米空軍の大増強も行うとした。中国に劣勢になっている空軍
力を立て直し、海軍増強と合わせて、中国対応を強化する。しかし
、それだけでは中国軍に対抗できないので、日米の軍を一体的な運
用にする必要になっている。このため、自衛隊増強を米国は今後、
要望して来ることになろう。GDPの2%を要求されると、10兆円の
予算が必要になる。

この状況で、とうとう中東にあったパトリオット4基を中国近傍に
移すようである。中東より中国との緊張の方が大変との判断であろ
う。2正面作戦はできないので、中東を捨てて中国に対応するよう
である。

中東では、益々イスラエルは孤立無援になってきた。危機感を持っ
たネタニエフ首相は、米国の関与を継続してもらうために、イラン
が核物質を隠し持っているとトランプ大統領に訴えている。

一方、中国は、台湾は自国領土であり、米国の武器援助は内政干渉
であるとし、ロシアからSU-35を24機、最新鋭の防空システ
ムS-400を買い、米国との軍事緊張に備えるようである。ロシ
アも今までは最新鋭兵器を中国に売らなかったが、対米対抗の共同
行動ということで、最新鋭兵器も売り始めた。

このように、貿易戦争から軍事的な緊張も増して全面対立へ移行し
てきた。

1.経済面での影響
一方、中国は、関税では量的に米国と同程度にはできないが、質的
な面で同等になると宣言。事実、米国からの輸入品は税関検査の時
間がかかているという。フォードは、中国国内でのビジネスもやり
にくくなり、利益が10億ドル程度減収になると下方修正した。

ノキアも中国での販売が不調で下方修正して、中国製品を扱う米国
企業の多くが関税分を販売価格に上乗せするという。現時点で、住
宅販売戸数が減少し、耐久財受注も減ってきた。

一方、中国は景気維持のために、金融引締から金融緩和に変更し、
減税を行い、消費を増やすようである。しかし、米国債を売る行為
には出ない。持久戦に持ち込むようである。どうせ、中間選挙で共
和党が負けて、貿易戦争が変更になると見ているからであろうか?

しかし、米中ともに景気は好調・維持であるが、FOMSの利上げ
もあり、今後の米中の景気動向には注意が必要である。来年まで大
丈夫というのが評論家の見立てであるが、どうであろうか?

日本の株価も、米国の株価も上昇し、中国株価は下落から上昇に転
じている。需給的に買いが強く、ムード的に株価が上昇している。
総楽観的なので、これはバブル景気になってきたと感じるが、バブ
ルの最後に一番上がると言われているので、今がそうなのかもしれ
ない。

どちらにしても、今後、本格的な米中経済対立の影響が米国市場に
出てくることになる。それは、日本企業にも大きな影響を与えるこ
とになる。その影響が出るまで、株価は上昇するようである。

2.日本の立場
安倍首相は、米国に代わって世界の指導者になると宣言した。自由
貿易を主導するとしたが、米国も自由貿易と民主主義を主導してき
たので、米国が退場して日本が登場したと、世界の人は思ったよう
だ。このため、演説後、安倍首相に握手を求めて長蛇の列ができた。
日本への期待値は大きい。

このトランプ・安倍の演説は、歴史的な国連の演説になる可能性が
ある。覇権交代という歴史的事実として、将来の歴史家に書かれる
可能性がある。

また、米中対決で、米国にとって、中国の最前線にある日本が重要
になってきた。このため、米国も折れて、欧州と同じように自動車
関税や為替を保留にして、日米の貿易交渉に入るとした。それも日
本の付けた農産物の関税をTPP合意並みを飲んで合意した。日本は、
米国内インフラ投資や米国産兵器の購入を行うとし、これらを受け
て、トランプ大統領も「安倍首相との友情によって」と言葉を足し
ている。

また、交渉開始が来年であり、中間選挙結果を見てから、日本に対
応することになる。米国が日本を味方にする必要からそうなってき
た。その理由は、米中全面対決になってきたからである。

2.イラン制裁のすり抜け方
11月から米国のイラン制裁が始まる。米国は、イランと取引をす
る世界の企業をドル決済システムから排除するというので、イラン
核合意維持国以外の企業でも非常に困った状況になっている。

この回避として、欧州とイランが、ドル以外の通貨での国際決済シ
ステムを新しく作ることで合意した。このため、イランのロウハニ
大統領は、「イラン制裁は、米国の経済的テロであり、このため、
11月からイラン産原油の輸入を止めた国は韓国しかない」という。

安倍首相もロウハニ大統領と会談して、日本も核合意を条件にイラ
ンとの関係を維持するとした。日本も欧州の国際決済システムに乗
るようである。米国のボルトン補佐官は、禁輸に違反する企業は容
赦しないというが、特殊会社を作り、その企業がイラン原油を輸入
するようであり、ドル決済システムを使えなくてもよいようにした。
これにより、米国の制裁をすり抜けることができる。

イラン核合意を維持する欧州は、ドル基軸通貨制度を壊すので、米
国と対立することになるが、トランプ大統領は、その重大性をわか
っていないようだ。ツイッターでの音沙汰がなく、無反応。

3.通商関係交渉の状況
日欧も、その行為を緩和するために、米国を含めて3者で中国の
WTO規則すり抜けを封鎖するためのWTO改革を協議する。
事実、中国は米国に対して世界の自由貿易体制を守れというが、中
国は海外企業の中国内ビジネスに大きな制約をつけるし、輸入関税
も高い。この中国に抗議できるのは米国しかないし、その米国を側
面支援することは、日欧にとっても利益になる。

その一方で、日本は中国とRCEPの貿易協定を協議し、通貨スワ
ップ交渉もする。AIや5G通信では、日中共同研究を立ち上げる。
それと、一帯一路で協業する方向で日中は協議を開始した。日本の
立ち位置は、米国と中国の中間にいる。

カナダと米国の通商会議は、時間切れで物別れになるようだ。米国
は、対米弱腰の韓国とメキシコ以外の国との通商交渉が行き詰まる
ように感じる。徐々に各国の米国離れが進んでくる。その一方、自
由貿易圏を推進する日本に期待が集まることになる。TPPに期待
するカナダも米国の一方的な条件を飲まなかったようだ。

さあ、どうなりますか?



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