6020.「拡大と発散」するトランプ外交



トランプ大統領の政策に国内と国外から大きな不満が出ている。と
うとう、共和党主流派も我慢が出来なくなっている。それを検討し
よう。                津田より

0.米中通商協議の結果
中国の王受文商務次官・廖岷財政次官と米国のマルパス財務次官が
8月22日、23日の2日間協議したが、物別れになってしまった。
次回協議の予定もない。

トランプ政権の高官は別の会見で、米企業の知的財産権侵害や中国
政府の産業への補助金という米国側の懸念に中国がまだ対処してい
ないと指摘した。もう1つ、中国が北朝鮮へ経済支援して、非核化
をさせていないことも問題視している。

そして、米政府は23日、予定通り、160億ドル相当の中国から
の輸入品に対する25%の追加関税を発動。中国も同時に米製品に
対する同規模の追加関税を発動させた。

24日、中国商務省は、貿易問題を巡る米中の事務レベル協議につ
いて「建設的で率直な交流ができた。双方は次の協議に向けて接触
を続ける」とした。米国の要求順位がわかったようである。第2の
プラザ合意ともいわれる人民元の切上げが落し所だと、1ドル=3
人民元か、どちらにしても中国の大幅な譲歩が必要である。

そして、北朝鮮対応では、習近平が来月訪問するがどうするのであ
ろうか?北朝鮮近海での瀬取りが問題視されているので、日米で海
上封鎖もありえる。

しかし、現時点では、当分休戦という予想は外れて、米中貿易戦争
は継続して、次の2000億ドル分の追加関税を9月に実施するか
と次回の米中通商事務レベル協議で中国が譲歩をするかに焦点が移
っている。

どちらにしても、米国の中間選挙を中国は見ながら、対応策を検討
することになる。トランプ大統領は11月6日中間選挙後に習近平
国家主席との会談を予定しているが、トランプ大統領としては、中
国だけではなく世界全体に対しての貿易強硬策の方が中間選挙に有
利と見ているようだ。

1.米国の難癖
そうしないと、常人とは違うトランプ大統領の外交政策が説明でき
ない。欧州、日本、カナダ、メキシコなどの友好国はもちろんのこ
と、非友好国である中国、ロシア、トルコなどにも難癖を着けてい
るし、南ア共和国の土地解放問題でもクレームをつけているし、全
世界を相手に難癖を着けている。

シリア軍のイドリブ攻撃には、ヒズボラが参加しないでロシア海兵
隊が参加するが、米国はロシアに対して化学兵器使用時には、大規
模攻撃を行うと通告したが、これに対して、有力ロシア国会議員が
ロシア海兵隊は核兵器を持っていくべきと発言した。中東も戦争真
近の状況である。しかも、米軍はクルド人地域に今もいる。

白人至上主義者、キリスト教福音派、白人労働者層などの絶大な支
持を得ているが、その人たちの個々の主張を全部実施しているよう
である。

しかし、大豆や小麦などの米国農家の不満が解消しないで、より一
層、LNGなどの企業関係者などの不満な層が増えている。

世界も米国の対応の異常性を認識して、米国離れを引き起こしてい
る。日本も自動車輸入に25%の関税が掛けられたら、米国から引
くしかない。しかし、中間選挙に勝つために、自動車輸入に25%
関税を掛ける可能性が、劣勢挽回のためにまだある。

2.中間選挙のためか?
勝つ戦略とは、「選択と集中」であるが、トランプ大統領がしてい
ることは、「拡大と発散」であり、そのような戦略を取ると、普通
、破滅すると言われる。

普通は、1つ1つの課題を「選択と集中」で解決していく。その都
度、多くの味方を集めて、少ない敵に譲歩を求める方法を取る。そ
れを複数回実施して、全体の解決を図る。それがマネージメントの
基本だ。政治も同じ。

「拡大と発散」の原因は、中間選挙に勝つ必要からであり、そこに
「選択と集中」したことで、政策全体では「拡大と発散」している
と見えるが、これは滅亡する論理のような気がする。

3.裁判とアカウント削除
トランプ大統領の元個人弁護士マイケル・コーエン氏は、ニューヨ
ークの連邦裁判所で証言し、トランプ氏から2016年の選挙運動中に
2人の女性へ口止め料を支払うよう指示があったことを明らかにし
た。トランプ大統領は、選挙資金から口止め料を支払っていないか
ら問題がないと言うが、今までは、2人の女性との関係はないとし
ていた。この件で、また1つ疑惑が事実になった。

また、フェイスブック、APPLE、ツイッターなどが、ヘイトサ
イト、ウソニュース元などのアカウントを削除したが、その多くが
、強烈なトランプ支持である。現在メインのニュースで、トランプ
を支持するのはFOXしかない。そのFOXでさえ、ロシア・プー
チン大統領の大統領選挙介入はないという意見にトランプ大統領が
同意したことには、批判した。

しかし、アンチワシントンという雰囲気がトランプ支持をサポート
している。そして、支持率は依然40%を維持している。批判が強
い方が、トランプ大統領は有利と思っている。

だが、中国の米企業製品不買運動や世界的な嫌米的な雰囲気から多
くの国の庶民は、米企業製品を買わなくなっている。このため、そ
のような企業の業績は下降してきている。米国株価を維持している
のは、アマゾン、APPLE、グーグル、NVIDIA、Netflixなどのハイテ
ク株である。

今は、米国経済は絶好調であるが、今後の関税UPは米国経済にも
悪影響が出てくるはずである。まだ、半年程度、この好調は続くと
いうが、いつかはダメになる。トランプ大統領もこの事実を知って
いるので、中間選挙に向けて経済好調を言わない。11月前に景気
後退が起きると見ているからだ。

4.米企業経営者の反乱
米企業の経営者などは共和党支持者であるが、特にコーク兄弟は、
非上場のコークグループのトップであり、共和党へ巨額献金してい
ることで知られている。しかし、11月中間選挙では、反トランプ
の民主党、共和党の候補に献金すると方針を変えている。

多くの大企業経営者もトランプ大統領の政策に反対している。特に
世界全体への難癖には、経営的にも非常な重荷になっている。

また、軍産学などの影の政府にも危機感が出ている。全世界を敵に
しているので、米軍の孤立化が起きて、世界にいる米軍が危機的な
状態になるからだ。特にトルコと問題を起こして、シリアにいる米
軍の退路を遮断している。

しかし、トランプ大統領からすると、世界展開する米軍はすべて撤
退するべきであり、撤退すると軍事費が大きく減額出来て、減税が
一層できるとみている。

そして、米国は孤立でも生きられる。ユーラシア大陸とは離れてい
るので、米国に戦争を仕掛ける国もない。米国企業も米国に戻り、
米国だけでビジネスをすればよいのであると。

ということで、トランプ大統領は、共和党主流派の軍産学と企業な
ども敵にし始めている。そして、とうとう民主党だけではなく、共
和党主流派も弾劾裁判に賛成する可能性が高くなってきた。そうし
ないと、共和党は上院でも過半数割れを起こす可能性がある。下院
は、既に民主党が勝利の方向のようである。

このような状況であるために、トランプ大統領の威光が低下して、
FRBのパウエル議長も、トランプ大統領が利上げをするなと言っても
、ジャクソンホールで利上げを9月に行うと宣言した。12月の利
上げは、新興国経済の状況を見る必要があると利上げ中止もありえ
るとして、トランプ大統領にも配慮している。

5.世界システムの変更
中国、イラン、トルコ、ロシアに上海協力機構参加国でもあるイン
ドまでもが、結束し始めている。欧州、特にドイツは、イラン核合
意を維持するために、ドル基軸通貨制度を変革して、ユーロ、人民
元、ルーブルなどを使った国際決済制度を作るべきであると言い始
めている。

米国はイランと経済関係がある世界の企業に対して、ドル基軸通貨
制度の根幹であるドル決済システムを使わせないとした。ドイツな
どのイラン核合意維持国は、欧州企業がイラン制裁に参加させない
ためにも、このことの対応策を構築する必要になっているのだ。

このような動きで出て、米国のドル基軸通貨制度崩壊にもつながる
か、少なくても、ドル基軸通貨制度の弱体化にはなる。そして、外
貨準備をドルで持つ国が少なくなる。

日本も現時点では、対中、対北朝鮮で米国の味方であるが、米国の
自動車輸入への関税で立場を変える必要が出てくる。米国の孤立化
が明確化するからだ。

5.普遍的な思想へ
米国の孤立化は、自由貿易を維持・発展させたい世界と日本に大き
な変革を起こすことになる。米国中心の世界システムから米国抜き
の世界システムに再構築せざるを得ない。

自由民主主義国で、自由市場経済の推進者として日本は、立ち位置
を明確化していく必要がある。そのための明確な思想や主義を打ち
立てることも重要だ。

もちろん、中国のような中国の夢という排他的な主義は、世界が受
け入れないので、世界に受け入れられる普遍的な主義を構築するこ
とが必要になっている。

このためには、日本の神道を普遍化することが必要である。言上げ
しないことが神道であるというが、それでは世界に伝わらない。

日本の精神でもある「利他」や「相見互い」「わびさび」「和」「
労働の価値」などの考え方を思想化することである。クールジャパ
ンの根幹の思想を明らかにするとも言える。

しかし、トランプ大統領が中間選挙で負け弾劾裁判になり、米国も
再度、正気に戻る可能性もあるが、日本精神の思想化の試みをする
べき時に来たように思う。

さあ、どうなりますか?



コラム目次に戻る
トップページに戻る