6014.ブータン紀行その3



ブータン紀行その3           
               平成30年(2018)7月20日(金)
                「地球に謙虚に」運動代表 
                                               仲津 英治
   去る5月11日(金)から17日(木)まで、妻の希望もあって国民総幸
福量=GNH(Gross National Happiness)の国と自称するブータン王国
へ行って参りました。ブータン国内では4泊し、国の在り方、国民
生活の過ごし方など、大いに勉強になりました。
 表面的だと思いますが、こういう世界があるということと強く認識
した次第です。今回はブータン紀行その3です。多いものとして、鉱
物資源、素朴ながら豊かな食事、豊かな植生そして自然災害に触れ
たいと思います。宜しくお付き合い下さい。

多いもの、豊富なもの 鉱物資源
  ある農家で敷石や大きな庭石で銀色に光る結晶が浮き出ている石
を見かけました。私は鹿児島県の鯛生金山跡、
島根県の石見銀山跡などを訪れたことがあり、山に鉱物が豊富であ
った場合の周辺の状況をある程度知っていますので、ガイドのプブ
ツェリンさんに伺うと、ブータンは専門家の調査により鉱物資源が
豊富であることが判っているとのことでした。しかも金銀銅、タン
グステンなどがかなり眠っているとのことですが、あまり手を付け
ていないそうです。その状態でも電力に次いで金属資源により外貨
収入を得ているとのことでした。

  ブータンは地震国ですが、ここ400年ほど安定しているそうです。
インド亜大陸がユーラシア大陸の下に潜り込むことによる造山活動
が静穏状態なのでしょうか。押し上げられた地層の中に豊富な鉱物
層があるのでしょう。ブータンの経済発展にこれら地下資源は活き
るでしょうが、しかし鉱業は公害を生みます。ヒマラヤの豊富な雪
解け水による清涼な流れが、鉱山の廃棄物で汚染される事態は避け
て欲しいものだと思いました。

 最後の日でしたか、ある農家の主婦の手料理を戴きました。外国人
向けに唐辛子辛さをかなり控えた料理でした。ブータン人は各種唐
辛子を使った飛切り辛い料理が好きです。プブツェリンさんに確認
すると、アジアでもナンバーワンの辛さとか、当初は胃腸の中のバ
イ菌の消毒のためだったそうですね。
 米・麦・粟・豆・黍(きび)の五穀を頂けたように思います。各
穀物を乾燥させ、混ぜた状態のものをスプーンで手に移して頂きま
した。蒸留酒の地酒とともに香ばしい味でした。

    主食のコメは赤米でした。赤米は客人用らしく(日本のように
小豆を混炊きした赤飯ではなく、古代から伝わる赤米です)、宿泊
地のホテル以外ではこの農家でも頂きました。赤米は稲の野生種に
近いそうですね。白米に慣れた者に取っては、舌触りにいささか抵
抗感がありました。豚肉、牛肉の干し肉を料理したものを戴きまし
た。肉類は貴重で多くは天日干しで保存食にしているものだと思わ
れます。

  食事を終えて外に出ると、日本のかつての農家を思い起こさせる
農具、農機具、一木彫の階段などが目に入りました。これらは手製
であり、加工には当然、刃物が要ったはずです。結構鉄鋼器具を作
る製鋼技術も発達し、燃料として相当木材を消費したのだろうと想
像しました。

  山火事、植生&氷河湖の崩壊による洪水
  これらは決して歓迎すべきことではありませんが、山火事は昔か
ら多く、洪水は最近地球温暖化の影響で、氷河が融解し氷河湖を形
成し、それらが決壊することが多くなって来ているそうです。

  山火事は、世界一の乾燥大陸オーストラリアでもよく見聞しまし
た。ブータンの気候は、標高差によってかなり違いますが、雨季と
乾季がはっきりしています。年間雨量は首都テインプーのある内陸
中央峡谷地帯では500~1,000ミリ程度のようです。大阪や東京の
1,200~1,800ミリより相当少ないですね。その辺りは乾燥気候と言
えましょうし、山火事が多く発生することは頷けます。雨季は日本
の梅雨の始まる6月頃から8月まで、一応の雨量(降雪もあり)のよ
うです。9月から5月までが乾期で、これまた逆にほとんど雨や雪が
降りません。
従って秋から春に掛けて、自然火災が多く、今回の旅行でも車窓か
ら、黒焦げになった木々の残るはげ山も見かけました。もっとも人
災的山火事もあるとか。

  当然、防火と延焼防止&緑化は、国家的&国民的事業とのことで
した。
  最近のある山火事の際には、国王まで火災現場に入って火消しに
努めたとのことです。ところがその時、国民的スポーツになってい
るアーチェリーに興じて、消火活動に加わらない輩がいたそうです
ね。40人ほどが留置場にぶち込まれたとのことです。そして翌日、
彼等はまだ消えていない山火事現場へ動員されたそうです。

 豊かな植生
  自然の植生は、日本と似ているとの印象を持ちました。山中には
シャクナゲの赤い花を見掛けました。シャクナゲと名乗っている男
性もいました。日本好きの方なのでしょうね。
 野草の例としてヨモギ=蓬生があります。ヨモギを摘んで籠に入れ
ている女性を観掛けましたので、手を口にそして次いで腰に当てて
用途を聞きましたところ、腰に手を当てた時、頷いておりました。
日本でもヨモギは腰痛の治療薬になり、父母が使っていたのを覚え
ています。他にも色々効能のある薬草のようですね。他にタンポポ
も見かけました。
 幼少の頃、母の実家などからヨモギ餅を頂き、正月などに頬張っ
たのを覚えておりますが、今や古(いにしえ)の味となりましたが。 
 
 地球温暖化と氷河湖の形成そして災害
 続いて深刻な話です。今回、プブツェリンさんから地球温暖化の
進行により、ヒマラヤの氷河が融け出し、そして大量の水が氷河湖
を形成し、それらが決壊して、大きな災害をもたらしているとの話
を伺いました。帰国後、宇宙航空研究開発機構   地球観測研究セン
ターの次のURLで、状況を確かめることが出来ました。

「だいち」(ALOS)データを用いた「ブータン氷河湖台帳」の公開について
   http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/bhutan_gli/index_j.htm

 ブータンやネパールといったヒマラヤ地方では、氷河から融け出
した水分によって湖 (氷河湖) を形成していますが、近年この拡大
が急速に進んでいると言われます。氷河湖は自然の岩や瓦礫 (モレ
ーン) によって堰き止められているため、いつ決壊するか分からな
い状況で、下流で生活する人々の安全を脅かしています。この氷河
湖の決壊にともなう洪水は「氷河湖決壊洪水」(GLOF; グロフ) と呼
ばれ、現地で深刻な問題となっています。
 実際に1994年、ブータンのルナナ地方で発生した氷河湖決壊洪水
では、旧首都プナカで押し寄せた洪水により21名が亡くなり、川沿
いの家屋や歴史的建造物であるゾン (寺院兼役所) が破壊され、農
作物や家畜なども被害を受けるという大災害が起きました。

 地球温暖化は、先進国(今や中国&インドも)が、その産業文明
の維持・発展のため、炭酸ガスなど温暖化ガスを大量発生させるこ
とにより、進行しています。ツバルなど島嶼国は、北極&南極の氷
が融けだす事により、海水面が上昇し、水没の危機に瀕しています。
ブータンなど高山国は、氷河融解に伴う洪水の危機に直面している
のです。このことを今回改めて認識しました。 
 
 6月28日から7月8日に掛けて、岡山県、広島県&愛媛県等で多数の
犠牲者と大被害をもたらした西日本豪雨も、地球温暖化がもたらし
ている自然現象に一環でしょう。皆様いかが思われますか?

 長文にお付き合い、有難うございました。次回は、国民生活、宗
教、生命尊重、国王制度などについて触れたいと思っています。
               ブータン紀行 その3 終わり



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