6013.米トランプ戦略とは?



米トランプ大統領は広範囲に貿易戦争を仕掛けていたが、目標を収
斂させ始めたように見える。それを検討しよう。   津田より

0.中東戦争近し
米国のトランプ大統領の戦略が見えてきた。というより、いろいろ
と広範囲に攻撃してきたが、相手が折れてきたことで、攻撃する相
手が少なくなり、その相手を打ち負かすために、米国の攻撃目標が
収斂した結果である。最初から戦略を立てて、そうしたわけではな
いが、結果的にポイントが絞られてきて、戦略的な行動になってき
たようだ。もう1つが、共和党内からの批判をある程度は取り入れ
ないと、身の危険を察知したことによる。

1つが、欧州との貿易戦争を終結させて中国だけに対する貿易戦争
にすることと、もう1つが米国が優位にあるエネルギー輸出を進め
ることの2つであり、対中貿易戦争で打撃を受けた農業支援も、そ
れに加わる。

ここでは、エネルギー輸出戦略を見てみたい。ヘルシンキでのプー
チンとの米ロ首脳会議とその後の展開を見ると、1つには中東地域
の破壊を起こして、米ロで石油LNGを輸出独占することが主要な
議題ではなかったかと疑う展開になっている。

イランの核合意を破棄して、イラン石油禁輸を世界に米国が行い、
これに対して、イランはホルムズ海峡封鎖、マンダブ海峡封鎖で中
東の石油の積み出しができない事態にすると脅しを掛けている。

トランプ大統領は、イランのロウハニ大統領が米国を非難したこと
に対して、イランとの戦争も辞さないと述べ、それに対してイラン
軍幹部は、戦争に応じる用意があると述べて、米・イランの摩擦が
増大している。

その結果として、サウジは、イランの支援を受けるイエメンのフー
シ派からのタンカー攻撃で、マンダブ海峡を経由する石油積み出し
を一時停止した。中国も反対するホルムズ海峡封鎖は影響が大きい
ので、まずは欧州への航路であるマンダブ海峡のタンカー攻撃を行
ったとも見える。

トランプ大統領は、首脳会議でプーチンにシリアでのイラン軍追い
出しとロシアの石油の増産を依頼したようである。ロシアはOPE
Cとの取り決めを破棄して、石油の増産を実行し始めた。米国とし
て石油価格の上昇は、米国民経済にも負担になるので、中東の石油
が積み出されなくても、価格が暴騰しないようにするためである。

しかし、今後、中東地域での戦争になれば、当然のように石油価格
は上昇することになる。また、イスラエルとイランの支援を受けた
ハマスとの関係も非常に殺気立っている。ロシアがイランを説得し
ているが、その説得に応じないようで、イラン軍がゴラン高原付近
から離れない。シリアでロシアとイランは覇権競争になっているよ
うな感じでもある。中東戦争近しとみるしかない。

この中東戦争をトランプ大統領は想定しているのか、第2次朝鮮戦
争を言い出しかねないはずの北朝鮮の核増産を問題視しないようだ
。2正面作戦ができないからだが、この状況からも中東が危ないと
見える。

1.EUとの貿易戦争回避へ
EUユンケル欧州委員長と米国トランプ大統領の首脳会談では、米
国産の大豆とともにLNGのEUへの輸出を拡大することで合意し
た。そして、米国とEUは中国が引き起こしている市場や体制の問
題にともに対応していくという。

米欧の共同戦線が成立した可能性がある。欧州は貿易戦争で米国に
折れ、米国の要求をある程度実現する農産物の輸入拡大もするとし
た。米国は広範囲に貿易戦争を仕掛けてきたが、とうとう、中国に
狙いを定めたようである。

このため、ロシアのプーチン大統領との首脳会談を再度、ワシント
ンで行うために、招待状をプーチンさんに出して、中間選挙後に行
うとした。また、米国の影の政府への説得に米ロ協調を主張してい
るキッシンジャーを差し向けた。

完全に米ロが組んで世界秩序を再編するようである。中国対米国の
覇権技術貿易戦争になり、欧州とロシアがキーとなる展開になって
きた。日本は最初から米国の同盟国であり、貿易戦争に参加してい
ない。米国のやられるままであったが、欧州も、やっと貿易戦争か
ら降りた。

一方、米中貿易戦争で中国は、BRICSや上海協力機構などを味
方につける作戦のようである。国内では資金供給量を増やして、景
気を維持し、あくまでも米国に反撃するつもりである。そして、中
東戦争でも米中の代理戦争になる。中国はイラン産原油の輸入量を
増大させ、イランと中国は共同戦線が組む方向のようである。

2.米国経済は絶好調
米欧の貿易戦争が下火になり、もう1つ、米国のGDP成長率が4
%になり、株式市場は再度リスクオン状態になっているが、フェイ
スブックとツイッターの株価が20%も下落してきている。また、
アマゾン以外のNET企業も株価が下落してきた。NY市場上昇の
75%は、FAANGと呼ばれるNET企業株価が支えているので
、その下落は大きな壁になりそうである。NET株バブルの崩壊が
近い可能性もあるので要注意だ。

また、米国で住宅価格の上昇が止まり、住宅販売件数が減少してき
た。どうも、4月~6月の経済成長率4%がピークであったような
感じになっている。絶好調な米国の景気をどう持続させるかが、
FRBと米政権の課題になっているようである。

このためには、ドル安で利上げ阻止とトランプ大統領は、主張して
いるが、FRBは年内2回の利上げを予定している。

そして、農家の消費が落ちないようにするためには、貿易摩擦で傷
付く農家への1.3兆円の補助金が必要になることと、中国に代わ
る輸出先を米国政府は探すことになる。このターゲットは、欧州と
日本であるが、欧州は先に米国の要求を入れてしまった。というこ
とは次には日本となる。8月に日米通商協議があり、大豆・牛肉な
どへの輸入関税引き下げの要求が出てくる。その準備が必要だ。

そして、当面の貿易戦争を米中間のみに限定した方が良い。

3.日銀の金融政策
貿易戦争と中東戦争への対応で必要なのが、景気後退でも国内経済
を支える金融機関の堅牢性である。日銀のマイナス金利と人口減少
の影響を受けて、地方銀行の多くが、収益を上げられず、その上に
公正取引委員会が県レベルでの独占性を問題にして、地方銀行の統
合を差し止めている。

このコラムでは最初からマイナス金利を問題視したが、その危険性
を日銀も政府も気がつかない状態であった。しかし、とうとう地方
銀行の倒産が起きる可能性が出てきて、気づいたようだ。

このため、日銀はマイナス金利を止めるべきであるが、金利上昇と
いうことで、円高になる副作用を気にして、マイナス金利をゼロ金
利にできないでいる。どこかの地方銀行が倒産するまで放置する気
なのであろうか。

日銀のETF買い入れもおかしいし、国債買い入れもおかしい。日
経225ETFの買い上げで、指数寄与度の高い企業の流動的な株
を日銀は全部買取り、価格形成がいびつになっているし、流動的な
国債は市場に無くなって市場が成り立たなくなっている。もう、新
規国債しかない。

限界まで緩和をしてしまったが、一向に物価が上がるようには見え
ない。この状態で中東戦争が起き、石油価格が上昇して経常収支が
赤字で円安になりインフレが起きると、日銀と政府は何もできなく
なる。

緊急処置としては、人口減少対策は移民を入れることであり、大規
模農家を育成して食料を国内で供給できる体制にすることであるが
、今一番問題なのが円札の信頼性確保である。この問題には、江戸
時代に藩札の価値を維持した藩があり、その歴史的な事実を日本は
持っているので参考になる。

参考とする藩は、備中松山藩の山田方谷や福井藩の橋本佐内などで
あり、藩札の価値が維持できた危機時の方策を政府は真剣に見るべ
きである。このコラムが水素エネルギー確立しか、日本の生きる道
はないと騒いでいる理由が、わかるはずである。同じ思いを、豊田
社長もお持ちのようである。

さあ、どうなりますか?



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