6010.円独歩安で円変調か?



円独歩安で、日米ともに株高になり、バブルが大きく成長している
。米国消費者物価2%になり、米経済は、過熱で今以上の物価上昇も
視野。FRBは年内利上げ4回という。今後を検討しよう。
                        津田より

0.米経済過熱
米国経済が順調である。米国消費者物価2%以上上昇して、FRBは年4
回の利上げを行うとしている。この金利上昇でドルの還流が起きて
ドル高になり、企業決算も利益幅が上昇し、実質的な失業率も下が
り、経済は絶好調である。還流したドルで10年国債を買っている
ために、10年米国債の金利も低下してきた。

このため、10年国債と2年国債の金利差が縮小している。イール
ドカーブの平坦化が起きている。しかし、この現状は心配ないとい
う意見が出てきた。

ジャレッド・バーンスタインなどが景気後退の前触れとされるイー
ルドカーブの平坦化ないし逆イールドカーブは、今回は心配するに
及ばないという。今回は今までとは違い景気が良いからであるとい
う。現時点の米国景気は絶好調であることは間違いないが、現時点
が最高点を示しているともいえるわけである。そして、野村證券の
見解も同じ様だ。

またもや、今回も心配がないが出てきた。今までのすべてで逆イー
ルドになって1・2年程度で、景気後退して株価が下がっていた。
強い相関がある。しかし、毎回、今回は心配がないという株アナリ
ストや学者が出てくる。

1.円変調
しかし、今回は何かが違う。イールドカーブの平坦化や米中貿易戦
争へのリスク回避で円買いになるところが、逆イールドは心配なく
、中国の負けで中国が妥協するはずで貿易戦争は心配がないと、リ
スクオンではなくリスクオフになり、米株価のナスダックは最高値
を更新し、ダウも25000ドルを回復している。リスクオンなの
で、円安になって、日経平均も400円も上昇している。このよう
に、日米でヘッジファンドは、バブルを作り始めた。

このため、貿易戦争で世界経済に変調をきたすというファンダメン
タルではなく、当面の企業収益を期待したテクニカル的な取引が中
心になっているようである。このため、円が急落したことで、コン
ピューター取引で売りが売りを呼んでいる。ヘッジファンドも円持
ちを解消したという。

今まで成り立っていた、いろいろな相関関係はトランプツイードで
破壊されているが、とうとうリスクオンの考え方も変化して、円は
多くの通貨に対して安くなり、円独歩安ということになっている。
ドル円だけで円安というわけではない。これには理由がある。

世界の投資家たちの円の見え方が変化したように感じる。日本の将
来は、人口減少で経済規模が縮小して、2019年にも衰退が始まり、
将来が暗いと見られ始めている。アベノミクスで経済発展すると、
安倍首相は数年前に宣言したが、そうなっていないと気が付いて、
日本投資を引き揚げている。海外投資家の日本売りが始まっている
からだ。5月のGDPはマイナスで、やはりという感じになっている。

2.新規日本国債の売却できず
それと同時に、新規日本国債が売れない。0.1%の日本国債を日
本の金融機関は買えない。今までは米金融機関が日本国債を買って
いたが、その買いが出ない。ドルプレミアムを取り、日本の金融機
関にドル・円交換の際、年利2.5%乗せていたので、金利0.1
%程度の日本国債でも買えたのであるが、交換したドルで日本の金
融機関は米国債を買っていたが金利が下がり、10年米国債でも、
金利2.8%になり、実質年利0.3%しかないので米国債を買え
なくなり、ドルプレミアムを介した取引をしなくなっている。
しかも、株価には反映していないが、現時点で10年米国債は最高
値で売れるので、日本金融機関は売って、円安になり円に戻し巨額
の儲けを出ている。
このため、米金融機関も円を持てなくなり、日本国債を買えないこ
とになってしまった。

このため、日本国債が売れない事態になっている。今後、日銀が直
接、新規国債を買うことになりそうである。もちろん、それができ
ないので、日銀が依頼して、手数料を払って日本の銀行に買っても
らい、そのまま日銀へ転売となる。

この事態が発生すると、海外投資家も、円に対する信頼がなくなり
、円安になり始める。その事態が起きていると見た方が良い。

心配していた事態が、とうとう来たようだ。日銀もこの事態を知っ
て対処を考えているが、財政支出を拡大し国家予算の赤字幅が増や
して、このため新規国債を大量に売るしかなく、そのままにすると
金利が上昇してしまうので、日銀は新規国債を買うしかない。日銀
の金融緩和により円安が起きている。日銀が予算ファイナンスをや
りすぎた結果が、このようなことになったのだ。

このため、円独歩安は気を付けてみる必要がある。ハイパーインフ
レへの道に入り始めているように感じる。安倍首相の経済政策の失
敗が明らかになる日が近い。総裁選挙までは持つと思うが、参議院
選挙まで、円が持つのであろうか?

同様に東京市場の株価も、日銀のETF買いにより、株価が上昇してい
るように見えるが、海外投資家は徐々に売り主体になっている。そ
れが、空売り比率が50%以上になっている理由でもある。しかし
、日銀が介入しているので売り崩せないでいるので、一度、株を上
昇させてバブル化させ、バブル崩壊の売り崩しに来る可能性がある
。要注意である。

3.ドル高をいつまで我慢するのか?
トランプ大統領は、製造業を取り戻して、賃金水準が高い白人労働
者の職を確保したいはずである。そのために、貿易戦争をして自動
車や鉄鋼・アルミなどに関税を掛けると騒いでいる。

製造業の製品輸出には、ドル安の方が良いはずであり、ドル高は製
造業にとっては良くない。また、米国債の償還でもドル安の方がよ
いに決まっている。

しかし、今はドル高になっている。これは、いつかトランプツイー
ド攻撃が出てくる。その時、逆回転が起きて円高ドル安になる。
その途端、バブル崩壊で株暴落に一気になってしまう可能性がある
。どうか気を付けて下さいと言うしかない。最後まで株高について
いかない方が良い。どこかで降りることである。

4.中国経済
米国は、中国が関税を掛ける農産物に補助金を出すようだが、中国
は米国の関税に対して、輸出品目が多いので人民元を安くして対応
するが、そのために中国企業のドル債務返済が難しくなる。

このため、人民元安ドル高状況下、中国経済は大変なことになりそ
うだ。ドル建ての貿易量は増えているが、今年の上半期の経常収支
は300億ドルの赤字になり、資金繰りがつかない会社が多数、存
在しているようだ。事実、中国企業がNECの半導体会社を買収するは
ずが、資金繰りがつかず断念している。

このままであると、中国は、米中貿易戦争の敗者になる可能性が高
いが、「中国製造2025」を撤回できないので、中国は米国への
対抗処置を取らないだけの可能性も出てきた。しかし、米国製品の
不買運動は、中国国民の中で出てくることになる。

5.中国の強国論が早すぎた
鄧小平は、「爪を隠して、身をかがめて米国に追従し、実力が出た
ら、その時に中国は出るべき」と言っていた。習近平は国内での権
力を強固にするために、中国の強大化と覇権を取ることを目指して
、「一帯一路」と次に「中国製造2025」を提唱して、米国に戦
いを挑み覇権を取りに来た。

しかし、結果的には早すぎたようである。このままでは、米国が中
国経済を潰し、中国経済はメチャクチャにされてしまう。
もう一度、鄧小平の教えに戻るべきであるが、それが習近平国家主
席にはできない。

とすると、中国国内でのリーダー交代が起きる可能性も出てくる。
団派が太子党から権力を奪い返す可能性である。そして、もう一度
、米国との関係を元に戻し、米国をはじめ世界各国と公平で互恵的
経済関係を中国が構築することである。

知財権を侵害するような商品を作る企業を撲滅するために、社長以
下重役たちを重罪にするほどの強い政策が必要である。また、中国
政府は、軍事秘密情報を盗むためのハッカー攻撃を止めることであ
る。先端技術でも政府の補助金などをしないで、公平な競争条件を
確保することが必要になる。

そうしないと、米国は中国経済を潰すまで、貿易戦争の戦いを止め
ない。

米中貿易戦争を日本は見ているだけであるが、中国経済破壊の影響
は大きい。中国の指導者が変わった段階で、日本は米中の仲介する
べきである。

さあ、どうなりますか?


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円は貿易戦争からの逃避先にはならず、伝統的な相関崩れる
Adam Haigh
2018年7月12日 21:07 JST
貿易摩擦悪化の中でトレーダーらは条件反射的に安全な逃避先を円
に求めがちだが、今回はそれは間違いだ。  
  7月に入ってからの円の動きは主要10通貨の中で最も弱い。
TDセキュリティーズは質への逃避という論理に基づく円上昇予想
を撤回し、ポジションをクローズして損失を受け入れざるを得なか
った。円は1ドル=112円10銭の水準を割り込み1月上旬以来の安値
に沈んだ。
  外為ストラテジストのメイゼン・イッサ氏は12日の顧客向けリ
ポートで、「貿易摩擦が悪化しリスク意欲が後退、10年物米国債利
回りの低下につながるとの予想に基づきこの取引を開始した」とし
、「このシナリオはおおむね実現したものの、ドル・円相場は伝統
的な相関を離れ逆に上昇した」と説明した。
原題:Searching for Trade-War Haven Assets? Stay Clear 
of the Yen(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ


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