6007.米中欧の貿易戦争へ



米国と中国との貿易戦争は、北朝鮮核廃棄や南シナ海、台湾問題を
含んだ武器を使用しない全面戦争になり始めている。そして、米欧
も貿易戦争に発展してきた。さあ、どうなるのか検討しよう。
                       津田より

0.北朝鮮非核化の進展か後退か
シンガポールでの米朝首脳会談で、2年半で後戻りができない段階
まで非核化をすることと、その工程表ができるまでは経済制裁を解
除しないことが決まった。

そして、今週にポンぺオ国務長官とジョン・ボルトン補佐官が、ピ
ョンヤンに行き、北朝鮮国内にあるすべての核施設と各関係資料な
どのリストを受け取りに行くことになっている。ここで、北朝鮮が
すべての核施設のリストを提出するかどうかが見ものである。

もし、提出がないと、シンガポールで約束した米韓合同演習中止も
米軍の韓国撤退もなくなるし、一層の経済制裁になる。米国の無慈
悲な制裁や戦争の危機に舞い戻ることになる。

このため、金正恩委員長は、中国に行って核施設全体を提出してよ
いかどうかを確認している。半分以上は中国の核技術の提供を受け
ているので、確認が必要になっているのと、段階的な非核化を正当
化したいので、その都度、経済制裁を緩めることを中朝間で確認し
た。米国の一括非核化とは違う。事実、中国は、現時点でも密輸を
認め始めている。

中国は、中国の経済制裁がないと北朝鮮は言うことを聞かないこと
を再度、トランプ大統領に示し、米国主導の非核化はさせないと中
国が示したことになる。そして、習近平国家主席は、金正恩委員長
に米国の言うとおりにするなとはっぱをかけたようである。

しかし、これを聞いて、トランプ大統領は、中国の介入を怒り中国
に本気になり始めている。

1.米国の対中政策
外交問題評議会は、先の報告書で、中国を世界秩序を変更する勢力
と位置付けて、米国は中国の民主化を期待しないで、潰す必要を説
いている。日本やこのコラムが、「中国は危ない」という指摘を、
やっと米国も認めた。

トランプ大統領は、その報告書を受けて中国対抗政策を作り、貿易
戦争を仕掛けているので、11月の中間選挙のためもあるが、それ
より長期戦略に基づいているようである。そして、本気である。

貿易摩擦より先に台湾旅行法を作り、両国の政府高官の相互を自由
化して、米兵器の台湾引き渡しも始めた。これに対して、中国は台
湾は中国の一部であり、2年以内に台湾を武力で解放すると脅し始
めている。同様に、南シナ海に造成した島にミサイルを配備して、
中国領土を守るのは、正当な行為と言い始めている。このように、
米中は、昔なら戦争になってもおかしくない状態になっている。

貿易戦争では、500億ドル相当の中国からの輸入品に25%関税
を掛けたが、それに対抗して、中国も7月6日から500億ドルの
米国輸入品に25%の掛けるとした。それを聞いて、即座にトラン
プ大統領は2000億ドルの中国からの輸入品に10%の関税を掛
けるとした。

米国から中国への輸入総額は1500億ドルしかないので、この処
置に中国は追従できずに、現段階では対抗処置を発表できていない。

当初は、2000億ドルの貿易赤字を半減させろという主張であっ
たが、現在は「中国製造2025」で取り組む最先端分野の補助金
を止めろと言う主張に代わっている。最初の500億ドル分の関税
UPは最先端分野の装置などで、消費財には関税UPをしていない。

消費財に関税を掛けるとインフレになる心配があるので、しなかっ
たと解釈できるが、2000億ドルの関税UPでは消費財も対象にな
る。

世界の覇権を取りに来た中国の経済成長を止めるために、米国は輸
入制限をしているし、米国の外交問題協議会も関係しているので、
本気度が違う。トランプ大統領が、日本の安倍首相の言うことを聞
くのも、日本がずーっと言ってきた「中国は危ない」が正しく、今
までの米国の見方が間違っていたからである。

しかし、株式相場は楽観的な見方をしている。中国経済は一度、大
きな減速になる。日本の部品産業の多くが中国企業向けである。こ
のため、大暴落してもいいのに、東京市場は、それほどには下げな
い。押し目買いのチャンスと評論家も言っているのは、あまりにも
楽観的でおかしい感じがする。ボラティリティも低いままである。

米中が貿易戦争に入いる7月6日に暴落するのであろうか?すでに
、中国上海や香港株式市場、そしてドイツDAXは大暴落している。

もう1つ、ジョン・ボルトン補佐官がロシアを訪問する。日本はロ
シアとの関係を修復しているが、米国はロシアとの関係を修復でき
ていない。メイン・ターゲットが中国であるなら、ロシアと米国は
関係を修復する必要があると思っていたが、とうとう、ロシア疑惑
があるのに、関係修復の方向に向かう可能性が出てきた。

2.米欧の貿易戦争
欧州が鉄鋼・アルミへの関税25%に対して、報復関税を発動した
。それに対して、欧州からの自動車に20%の関税を掛けるとトラ
ンプ大統領は即座に反応した。

当初、米国へのすべての輸入車に25%の関税を掛けるとしていた
が、欧州の自動車のみに関税を掛けるとしたようだ。しかし、ドイ
ツ高級車は価格競争力があり、放置した方が良いはず。ここで、報
復関税を欧州が発動すると、本格的な貿易戦争になる。

米欧間の貿易戦争になると、NATOの軍事同盟が難しくなり、ロ
シアへの備えが手薄になると、ドイツは心配している。米軍が欧州
から撤退になると、経済と軍事は一体であることを思い知ることに
なる。

この難しい米欧間の仲介ができるには、関税UP競争という貿易戦争
に参加しない日本しかないことになる。

3.日本の行動
米国鉄鋼メーカーが製造していない鉄鋼・アルミ製品が関税免除に
なり、日本製の鉄鋼の2/3が対象外になるようだ。そして、今後
も免除の範囲を増やすように交渉するという。日本は、報復関税を
しない。米国と戦っても損害が大きくなるだけであり、お互いに不
幸になるだけだから。

しかし、1980年代の日米貿易摩擦で日本だけが損をしたと思っ
ている欧州や中国は、報復関税で米国も損させようとしているが、
両方の損害をより大きくするだけである。その意味では前回日米摩
擦時の日本の行動は最良とはいかないが、良かったと評価できる。
負けるが勝ちということもある。今回もそのようになりそうだ。

日本は、自由貿易を守ることを明確化して、米国との貿易戦争に参
加しないで、漁夫の利を得ることだ。それと、米トランプ大統領の
孤立化を日本は、ある程度止める必要があり、欧州と米国の間に入
り調整することである。

4.日独防共協定
このため、ドイツにも変化が起こっている。ドイツ議会で、日本嫌
いなメルケル首相が、日本と協力して自由貿易体制と自由民主主義
を守ると演説した。今までは、メルケル首相は親中国であり、南京
大虐殺など日本の非人道的な行為を非難して、日本を非人道国家と
こき下ろしていた。ドイツは、独裁国家中国の味方であると、この
コラムでも指摘していたが、やっと、日本の考えた方を認めた。

ドイツも中国寄りから修正せざるを得ないことになっている。ここ
でも最先端のドイツ企業を買収して中国が根こそぎ技術を奪う事例
が出てきて、中国との関係を見直さざるを得なくなってきたことに
よる。そして、米中貿易戦争で一番影響を受けるのもドイツ自動車
メーカーであることも分かってきた。ドイツDAX市場が暴落した
のも、この理由による。

ということで、覇権を放棄して米国が傍若無人な国家になり、次の
覇権国が独裁国家の中国になるのを防ぐためにも、自由貿易を守る
ためにも、ドイツと日本が組むしかない状態になってきたようだ。
この状態をヒットラーは予見していたのか、75年を経て日独防共
協定が復活する可能性が出てきた。

そして、ドイツのメルケル首相と安倍首相が、G7参加年数が長い
ので影響力もあるし、日本の見通した世界観が、やっと米国やドイ
ツなど世界に認められたことで、日本の位置づけは上昇している。

日本人は、知らぬ間に他者の立場で考えることを教育されている。
この考え方が、次の世界を作る礎になると見ている。利他の思想を
やっと、世界が認め始めているようだ。

5.日本の政局
モリ・カケ問題は、安倍首相と昭恵夫人の仕業と見るが、世界の動
乱時に、日本の指導者を代えられるかというと、それも難しい感じ
がする。

もし、代えるにしても安倍副総理兼外相という位置づけは必要にな
るはず。岸田総裁で、安倍副総裁ということもあり得るとは思うが
どうであろうか?

さあ、どうなりますか?




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