6004.米中貿易戦争開始



今週は、G7、米朝首脳会談、FOMC、ECB委員会、日銀政策会合など
政治経済系の会議が終わったが、順調に消化しても株価の転換点に
ならなかった。しかし、トランプ大統領は、7月から対中輸入関税
を開始すると宣言し、その直後、中国も対抗処置を取ると宣言した
ことで、米中貿易戦争が開始した。今後の展開を検討しよう。
                       津田より

0.米朝首脳会談
首脳会談の共同声明だけでは、よくわからずに米韓合同演習の中止
など米国の譲歩しか見えなかった。しかし、次の日にポンペオ国務
長官の発言で、見方が大きく変化した。非核化の方法の議論になり
、2年半程度で検証可能な非核化が合意になったという。

一方、北朝鮮メディアによると「(金正恩)最高指導者は、(中略
)まずは相手を刺激し、敵視する軍事行動を中止する勇断から下す
べきだと語った。米大統領はこれに理解を表し、朝米間に善意の対
話が行われる間、合同軍事演習を中止し・・・」となり、米韓合同
演習の中止になったようだ。

そして、声明でも「朝鮮半島の非核化」という合意であり、在韓米
軍の撤退もその中に含まれたようだ。北朝鮮メディアの「段階別、
同時行動原則を順守」とは、北朝鮮の非核化の実行とともに米軍も
朝鮮半島から徐々に撤退することを示した。制裁解除は、非核化の
工程表ができた時点のようである。ひいては、米軍のアジアからの
撤退ということもうかがえる。

それと今回の米朝首脳会談準備と並列に拉致問題も日朝で秘密会談
が複数回行われて、8月にピョンヤンで日朝首脳会談が開催される
可能性があるという。首相も「北朝鮮と直接向き合い(拉致問題を
)解決していかなければならない」と会談実現に強い意欲を示して
いる。

日本は、非核化の初期段階に関連する費用を出すことになっている
が、全面的な北朝鮮への経済支援は、拉致問題が解決した後になる
。しかし、北朝鮮メディアは、「拉致問題は解決済」と再三述べて
いるので、日本が希望する解決になるのかどうかは難しいかもしれ
ない。

トランプ大統領も拉致問題が解決しないと、北朝鮮復興ための日本
からの巨額援助がないと再三再四述べているという。反対に、金正
恩委員長は、中国と同様な独裁国家でも自国の経済発展は可能であ
ると思い始めていて、日本の技術と金を求めていることで、この外
交取引ができている。日本の存在は大きいことになっている。非核
化と独裁体制保証付きの経済発展という外交取引である。

このように、米朝首脳会談で、ある程度は先が見通せる状態になっ
たようである。近々の第2次朝鮮戦争がなくなったことだけは確か
なようだ。そして、トランプ大統領へのノーベル平和賞受賞の審査
を開始したようである。どちらにしても、現時点ではトランプ流外
交の勝利である。

その結果、米国は、北朝鮮に対する中国の経済圧力が必要なくなり
、これで対中輸入制限ができることになった。

しかし、北朝鮮が非核化するかどうかは、まだわからない。食い逃
げの可能性もある。成功かどうかは、もう少し見ないと、まだ確定
していない。技術者たちや資料をイランやシリアに移動させること
はできるし、核ミサイルも隠すこともできる。

1.FOMC、ECB委員会
FOMCは、利上げを行い、金利1.75-2.0%にした。年内
2回の利上げを行うとパウエルFRB議長も述べた。今年、2.5
%程度になる。来年も3回程度を予定するという。パウエル議長は
、政府の介入を拒否すると発言して、トランプ大統領の利上げ阻止
の動きをけん制した。

トランプ大統領の経済論理無視の経済政策に、FRBは立ち向かう
ようだ。

事実、ジャンク債を多数組み込んだ債権がトルプリAを獲得して、
大量に売れている。ジャンク債は、倒産の危険がある債権であるが
利回りが高い。これを多数集めると倒産の確率が下がるが、高利回
りになると、多くの投資家たちが買っている。これって、サイププ
ライムの問題とよく似ている。

もう1つが、ファンドや銀行がレバレッジを利かせたリスクパリテ
ィ戦略やインデックス投資に偏っている。この偏りが間違いとなる
と一斉に売りが出て、大暴落の危険がある。これも、2008年の
ような雰囲気で、バブル景気になっている証拠である。

それをパウエルFRB議長などFRB理事たちも心配し始めている
ようで、金融機関の利益保護団体であるFRBは、経済持続性を優
先する。

しかし、利上げにより、10年国債と2年国債の利回り差は、縮小
して、来年には逆イールドになると心配されている。現時点、10
年国債は2.9%で、2年国債は2.5%である。

それと、米国金利上昇で、新興国から資金が米国に逆流して、新興
国通貨が暴落している。トルコなど新興国経済が破綻しかねない。

そして、もし、米国がバブル崩壊になったら、米軍を世界から撤退
させ、自国の経済立て直しを優先するしかない状態に陥ると思う。

この米国のバブル状況を見て、ECB委員会も12月に量的緩和を
終了して、2019年夏以降に利上げを開始するとした。引き締め
方向にシフトしたことになる。

日銀のみ、まだ金融緩和方向を維持するというが、景気後退期には
何もできないことになる。FRBもECBもバブル崩壊後の金融政
策の余地を作ろうとしているのに、日銀は大丈夫なのであろうか?

2.トランプ流貿易戦争へ
米国は、北朝鮮非核化に中国が必要なくなり、対中国への5兆ドル
規模商品に25%の輸入関税を掛けるとした。7月からは、3.5
兆ドル相当から始めるという。

これに対抗して、中国も対米への同規模の輸入制限を行うとした。
これで貿易戦争は開始したようである。

G7でも米独の対立が鮮明になり、トランプ大統領は、米国への輸
入自動車にも関税を掛けると、6ケ国対米国の対立になってしまっ
た。トランプ大統領は本気で、全方位に貿易制限処置を取るようで
ある。全面貿易戦争に突入するということである。

この保護主義に対して、共和党の一部が反対しているようであるが
、今まで米国議会が保護主義を主張して、米政府が国際的な立場か
ら自由貿易を推進していたので、米政府の保護主義を議会が止める
ことは不可能だ。共和党の下院議員の多くは、自分の選挙区に有利
な保護貿易を主張することになる。トランプ大統領と同じ考え方で
ある。他国政府が、米国議会に保護貿易反対を期待することはでき
ない。

3.覇権交代期
国際政治が、大きく世界の常識を変えるトランプ大統領になってか
ら荒っぽくなってきた。今までの西側諸国の常識が通用しないこと
になっている。丸で、米国が中露と同じ独裁国家的になっている。
そのため、米国への西側諸国での支持も失くし孤立化が明白になり
、世界の覇権の変更期になったことが明確化した。

米国は、世界の覇権を放り投げ孤立する方向である。中国は独善的
な拡大志向であり、このままでは世界から支持がなく覇権を取るこ
とは無理である。ロシアも経済規模や世界からの支持などなく無理
である。というように次の覇権がどこに行くのか見えない状態だ。

覇権のスムーズな交代は、英国から米国に移動したときである。反
対に英国は、スペインから軍事力で奪還した。どちらを選択するか
は難しいが、米国から日本またはEUに移行した方が民主主義の継
承という意味では、大きな価値がある。

このよう流れから、日本も覇権交代の戦略を作り、覇権を確立する
ことに向けた努力と戦略を考えることであると思う。明治維新の混
乱と同じような動乱時代が明確になってきた。日本にもチャンス到
来である。

動乱のワクワクする時代がとうとう来たようだ。激動の時代が幕を
開けた。

さあ、どうなりますか?


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