6002.保護主義で米国経済、世界経済はどうなる?



米トランプ大統領は、同盟国も中国も対米貿易黒字国をすべて叩く
ようである。しかし、これで米国経済、ひいては世界経済はどうな
るのでしょうかね?大きな疑問符がある。それを検討しよう。
                     津田より

0.トランプ通商政策の収支
法人税の大幅な減税と所得税の減税などで、財政赤字が拡大してい
る。この財政赤字を埋め合わせるために、関税を引き上げて税収の
落ち込みをカバーするようである。

もし、カバーできないと、国債発行量を増加させる必要があるが、
貿易制限される中国も日本もEUも米国債を買わないので、米国債
の金利が上昇して、景気を押し下げることになる。こうしないため
には、関税を掛けて税収の落ち込みを抑えていくしかない。財政均
衡状態にすることである。

現時点、鉄鋼25%、アルミ10%の輸入関税をほとんどの国に掛
けた。その代わりに各国は報復関税を掛けるとしている。次に輸入
自動車に関税25%を掛けると言っている。

中国には、1300品目に関税25%を掛ける。スマホなどの通信
機器や電化製品などに高関税を予定しているという。反対に、中国
は、大豆などの農産物に関税を掛けるという。

このように米国の関税で消費者は、税金の減額になるがそれ以上の
物価上昇で苦しくなる。減税は富裕階層に多く、貧困層には少ない
ので、インフレ分貧困層にはつらいことになる。そして、インフレ
を抑える観点から米国債を買うなどの量的緩和もできないし、FRB
は利上げをするしかない。スタグフレーションになる可能性もある。

そして、鉄鋼業や自動車産業の労働人口は増えるが、EUは、ハー
レーやバーボンなどに25%報復関税を掛けるし、中国は農産物や
自動車に25%の報復関税を掛けることになる。日本も米農産物に
報復関税を掛けるということで、貿易摩擦で260万人の雇用が失
われると、米商工会議所は指摘した。

このことで、世界の貿易量は、大幅に縮小することになる。特に、
自動車の貿易制限処置は、日本とドイツには大きな痛手になる。

トランプ大統領の政策は、白人の中間層や貧困層の思いを実現する
ことであるが、それは世界経済の縮小を導くことになる。一番影響
を受けるのが、中国、日本、韓国とドイツでしょうね。

1930年の関税引き上げ法スムート・ホーリー関税法と同じよう
なことが起きると覚悟した方が良い。しかし、株式市場は、暢気だ
。株価が大きく下落しない。

1.米中貿易交渉・米朝首脳会談など
中国は、20兆円の貿易赤字解消策を作り米国に提示したが、長期
契約を拒んでいるために、米中交渉が頓挫している。このため、ロ
ス商務長官が北京で交渉するというが、中国はEUに鉄鋼などの制
限をしたことで、EUとの共同戦線ができることなり、米国に対し
て強気である。

逆に、米国も、北朝鮮との直接交渉で中国の影響と排除したことで
、中国に対して強気である。中朝の貿易がある程度あっても、それ
を問題視しなくて済むために、中国に対して本気で通商交渉ができ
ることになっている。

米トランプ大統領の北朝鮮金正恩委員長への書簡は、1つに瀬戸際
外交で一括核放棄か核戦争かの脅しを金正恩委員長にしたのと、も
う1つ、中国の介入を阻止したことになる。非常にうまい交渉であ
ることがわかる。

そして、米国国民の関心がない北朝鮮核問題を早期に終わらして、
中東での紛争に注力するべく、戦争回避優先の段階的な非核化で北
朝鮮に譲歩するようである。すべての核を放棄しない可能性が出て
きた。日本の希望とボルトンの構想は、無視されることになる。米
国民の関心が高い中東優先での政策になる。

シリアではクルド・米軍合同で、シリアのイラン軍を攻撃している。
ここでもロシア軍は静観である。

このように中間選挙のために中東優先ということである。戦術は確
かにうまいが、戦略的には世界の主要国すべてと喧嘩することと、
中東戦争にのめりこむことで、その代償は米国に一番押し寄せるこ
とになる。

しかし、中国の電子製品の部品の多くが、日本企業から供給されて
いるので、米中貿易戦争が起きると、日本企業の部品需要は一時的
に落ちることになる。米国企業が生産開始すると、部品は米国企業
に売れると思うが、一時的に落ち込むし米製品価格は高いので、米
製品は、それほどには売れない。そして、米製品は高いので世界に
も売れない。全体的な貿易が少なくなるので、部品も今より売れな
いことになる。世界的な貿易縮小は、世界全体で企業の利益を落と
すことになる。

2.米国企業の没落
世界の市場が二分される。米国市場とその他世界市場である。米国
の市場だけのための工場ができることになる。

それと、米国市場は中間層の没落で消費が増えていない。高い価格
の製品が売れない原因は、この中間層の没落も関係している。それ
と、米企業は世界展開で利益を出していたが、それができなくなる。

特に、日欧が同等の製品を持つために、報復関税等の貿易制限で建
設用機械のキャタピラーや航空機のボーイング、産業用機械のGE
などが大きな影響を受けるし、農産物などで世界的な貿易制限を受
けることになる。すべての米企業が米国向けだけになり、利益がで
なくなる。米国企業の没落になる。

グーグルやFB、アマゾンなどのIT系サービスも世界的に制限を
受けることになり、最先端技術でも米国は劣化してくることになる。
米国得意なITサービスも制限される。

3.自国第一主義が世界展開
米国が自国優先の政策をすると、まず、先進国ではあるが経済が弱
いイタリア、スペイン、ポーランドなど南欧、東欧諸国でポピュリ
ズム政党が優勢になり、自国優先政策にシフトしてくる。

自国経済を制限するEUやユーロからの離脱を志向し始めることに
なる。現時点はドラギECB総裁が、量的緩和政策で、イタリアや
スペインの国債を買い入れているので、問題が緩和されているが、
来年以降にドイツ人がECB総裁になると引き締めになり、離脱の
方向にシフトしやすくなる。

米国の没落と同時にEUも分裂して市場規模が小さくなることで、
影響力が小さくなる可能性がある。益々、市場規模が大きい中国が
優勢になる。

また、新興国のトルコ、ブラジルや途上国エジプトなども同様に国
内情勢が不安定になる。経済的に落ち込み、生活レベルを下げざる
を得なくなる。

全体的に自国優先主義が蔓延ると、世界経済は縮小するし暗い時代
になる。

4.日本の今後の進路
このような時代が、今迫ってきている。日本は人口減少で労働力不
足になり、経済規模も縮小に向かい始めている。その上に日銀の金
融緩和で銀行の倒産などの可能性も出てきている。早くマイナス金
利政策を止めないと、金融恐慌を起こすことになりそうである。

石油や人件費などの高騰で、インフレが起こり、給与が増えないの
に物価が上がることになる。

しかし、この苦難を乗り越えれば、非常に幸運なことになるのかも
しれない。ピンチがチャンスなのかもしれない。

人口減少で移民を入れるしかないが、保護貿易で世界的な経済縮小
になり、移民が日本に来てくれる可能性が高い。日本企業のイノベ
ーション力は強いが、今までは製品を売る営業力が不足していた。

その原因が、世界の多くの国の現状を知らずに、日本の製品を持っ
て行って売るだけであり、製品がその国の生活に適合しなかったこ
とで、うまくいかなかった。

今後、いろいろな国からの移民を受け入れることで、日本の技術を
その国に適合した製品にして、売ることができるようになる。

それと、世界の自由貿易を維持するのは経済力がまだある日本しか
できないし、今後もTPP11のような自由貿易擁護政策を取れば
、米国や中国などを除く国々は、日本をリーダーとして受け入れる
可能性がある。

移民により、日本のシステムを世界の人にわかりやすいようにオー
プンに変える必要があり、このオープン化で優秀な人たちにも魅力
的な日本に作り替えることができる。

もう1つ、財政再建などという数値や後ろ向きな目標ではなく、明
るい前向きな目標を作り、国民が一致団結して実行できる目標が必
要である。そうすれば、日本の魅力が一層増すことになるし、目標
ができると、日本人はその方向でアイデアを出し頑張る。

やっと、米国覇権の世界は終わり、次の時代が来ることになる。
日本にもチャンスがある。中国の強引な外交は、周辺諸国から嫌わ
れている。その対比で日本が引き立てられているような気もする。

さあ、どうなりますか?



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