6001.ドル基軸通貨制度の衰退



米トランプ大統領は、中国との取引外交で中国に負けて、その腹い
せに同盟国をいじめ始めた。この代償は大きいことをそのうちに知
ることになる。ドル基軸通貨から人民元・ドル並立基軸通貨へと、
変化することになる。その推移を検討しよう。  津田より

0.トランプ取引外交で得する中国、損する同盟国
中国に20兆円の貿易赤字削減を要求したが、中国は3つのカード
を出してきた。
1つ目は、北朝鮮の段階的非核化を支援して置きながら、北朝鮮へ
の制裁継続を持ち出している。米朝対立が持続した方が、中国にと
って得になる。
2つ目には大豆などの農産物への25%報復関税、3つ目にはトラ
ンプ会社が計画している開発案件に資金提供と、トランプ大統領の
多方面での弱みを交渉カード化している。

このため、ZTEに対する制裁緩和、中国の20兆円貿易赤字解消策を
見てから中国への制裁へと条件緩和している。このように、中国へ
の制裁は実質なくなってしまった。トランプ大統領も中国に対して
は、違う方法で制裁を考えるしかないと、お手上げ状態であること
を告白している。

トランプ大統領は、中間選挙への準備として米朝首脳会談での非核
化合意と中国への制裁という2つの成果を元に支持を強固にする予
定が、どちらも成果が出ないことになりそうであり、一番取引外交
をし易い、同盟国への制裁へと針路を変えたのである。

米朝首脳会談の中止を発表する前日に、自動車への25%関税を指
示したのは、そのためである。中国との交渉で負けて、取引外交で
確実に勝てる日独韓を標的にしてきた。

1.米朝首脳会談の非核化で紛糾
米国と北朝鮮の非核化の方法が違うことに尽きる。米国は一括核放
棄であり、北朝鮮は段階的な非核化であるので、両方の主張には、
大きな隔たりがある。中国も北朝鮮の段階的非核化を支持したので
、米国としては準備交渉中断せざるを得ないことになった。

トランプ大統領は、金正恩氏への手紙で「戦争か一括核放棄か」の
2択を金正恩委員長に迫っている。戦争寸前の瀬戸際外交を米国が
行い、金正恩氏がビビる展開になっている。これで、金正恩氏が主
張する段階的非核化はないことになった。米朝の物別れは、核戦争
になると明示したからだ。

この手紙を受け取り、金正恩委員長は、首脳会談開催を懇願せざる
を得ないことになった。戦争を開始したら、通常兵器でも数日で北
朝鮮は崩壊するし、核攻撃を受けたら数時間で崩壊する。韓国と日
本の被害を少なくするなら、核攻撃しかない。トランプ大統領によ
ると、その費用を日韓が出すことになっているようである。核攻撃
の費用は、通常戦争に比べて非常に少ない。このため、非核化の方
法は、一括核放棄になる。

しかし、次に、北朝鮮が行うことは、核ミサイルの一部や資料を隠
し持つことである。このため、核放棄検証方法に議論が移ることに
なる。非核化をすんなり北朝鮮は、受け入れるはずがない。

そして、中国は米朝協議の長期化を目指し、少し制裁緩和して北朝
鮮経済を支えるために中朝国境での交易を開始し、中国人観光客が
北朝鮮に入国している。ということで、中国としては表面上は制裁
継続であるが、米国を出し抜こうと画策し始めている。

米朝協議が長期化すると、米中交渉上のカードが温存できるためで
ある。

2.イラン核合意離脱
米国がイラン核合意から離脱して経済制裁を開始した。しかし、欧
州は核合意維持の方向であるが、イランとの経済制裁を守らない企
業は、ドル決済システムSWIFTの使用ができないようにすると米国が
宣言した。このため、トタルなどは、イランで進めている石油開発
を中止せざるを得ないと言っている。

SWIFTは、銀行間為替交換システムであり、日本の全銀システムと同
じ様な物である。イラン経済制裁を守らない企業との取引がある銀
行のシステム接続を切ることになるので、銀行は違反企業の口座を
封鎖することになる。

欧州が核合意維持をするも、欧州企業にはドル基軸通貨が大きな障
害になっている。逆にイランも経済関係を維持しないなら、核開発
を進めると宣言している。

ということで、中国が人民元決済システムの利用をEUに推奨し始
めた。中国はすでに人民元決済をアフリカや中央アジア、南米など
で行っている。欧州企業の活動範囲と同じような地域が人民元決済
圏になっている。イランもユーロや人民元決済で原油を売っている
ので、抵抗がない。中国企業の多くは、ドル基軸通貨圏から離脱し
ているので、米国のSWIFTを使う必要がない企業が多い。中国企業は
、多くの物をEUから仕入れているので、EUが人民元決済になる
と、大きなメリットが生まれる。人民元基軸通貨と言える仕組みが
できることになる。

ということで、ドル・人民元併立基軸通貨という体制ができること
になる。米国は貿易・経済面でも中国の影響力を無視できなくなる。

3.中東情勢
イスラエルは首相と国防相で戦争を開始できるように法律を改正し
、今後の閣議を地下シェルターで行うという。イスラエルはイラン
との戦争を本気で検討しているようだ。いつ、イスラエル軍機が、
イラン核施設などを爆撃するかわからない状況になってきた。

イスラエルの動きに、ロシアは静観。ロシアは、イスラエルから軍
装備の半導体などを供給されているので、イスラエルからのミサイ
ルがロシア最新防空システムのレーダーでも捕捉できないようであ
る。ロシアは、イスラエルと戦闘を行うとは想定せずに、この問題
を放置してきた。このため、ロシアは静観するしかないようだ。

しかし、イラン軍は、中東地域で長期に渡り各地で戦闘をしてきた
ので、相当な消耗をしている。このため、ロシアをシリアに引き入
れたが、ロシアとは相互利益がないし、イスラエルからの半導体を
使用しているロシア軍装備品を使えないことになっている。

このため、イラン産原油の売買で人民元決済を認める代わりに、中
国からの軍装備支給と中国軍派遣をお願いしているようだ。中国と
イランとには原油需給という相互利益があり、中国も人民元基軸通
貨制度ができるので乗り気のような気がする。

しかし、イスラエルの動きに合わせたのか、米軍機がシリア内のイ
ラン革命防衛隊の基地に爆撃を行った。ポンペオ国務長官やボルト
ン補佐官は、イラン核合意を破棄して、新しい核合意を結ばせる必
要があると主張している。北朝鮮はすでに核とミサイルを持ってい
るが、その核・ミサイルを一括放棄させるのであるから、イランに
は、それ以上の放棄が必要であるというのだ。

しかし、米国上院は、イスラエルの暴走でイランとの戦争になって
も、米国は戦争に入らないという決議案が可決された。しかし、現
時点で、米軍がシリア内にいて、その米軍を攻撃したイラン軍を叩
くことは、制限していない。

そして、サウジのムハンマド皇太子の動静がわからなくなっている
。可能性としては、イスラエルと秘密の何かをしているか、宮廷内
での勢力変更が起きて軟禁されているかであろう。サウジの内政も
波乱が起きている可能性がある。

どちらにしても、中東の地政学リスクは高いようである。

そして、米国の同盟国への脅しは、米国の衰退を加速させることに
なる。特にドル基軸通貨制度が崩壊すると、米国債を買う人がいな
くなり、赤字財政は持たないことになる。

また、日本も米国との関係を考え直すことが必要になっている。日
本も対米交渉での強力なカードを準備する必要がある。

さあ、どうなりますか?



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