6000.世界観の変更が必要な時代



戦後70年で米国の覇権が揺らぎ、世界のイデオロギーの考え方が
大きく変化している。今後の歴史的な見方を検討しよう。津田より

0.北朝鮮との交渉
北朝鮮の金正恩委員長が米朝首脳会談中止を仄めかして、非核化の
方法で米国の譲歩を引き出そうとしている。米国トランプ政権のジ
ョン・ボルトンは、「リビア方式」と呼ばれる核施設、ミサイル工
場の破壊とミサイルと核のすべてを米国に運び破棄し、核とミサイ
ル設計図などの文書もすべて引き渡し、核・ミサイルの技術者全員
を米国に移住させるという非核化の方法を北朝鮮に要求した。

これに対して、北朝鮮と中国は段階式非核化を提案して、米国の非
核化を拒否している。非核化方法の条件闘争に突入した。中国は、
北朝鮮の裏にいて、米中貿易交渉のカードの1つとして非核化を利
用しようとしている。安保と貿易のバーターを仕掛ける。

北朝鮮は、米国の要求を拒否すると、米国の攻撃を心配する必要に
なり、韓国を人質にする必要から、韓国にも強硬な態度になってい
る。そして、もしもの場合は中国の援軍を期待する。

米トランプ大統領は、北朝鮮の体制保護を確約し、段階的な非核化
を一部認めるなど北朝鮮に譲歩し始めた。北朝鮮の交渉上手な外交
が再度始まっている。北朝鮮を侮ってはいけない。

中国は、最先端産業への補助金を認めてもらうために、20兆円分
の対米貿易黒字削減の提案を米国にした。しかし、今までも空手形
を発行して、それを反故にしてきたことで、米国も信用しないで、
絶対的な目標数値をして20兆円削減を要求。中国は、それを拒否
している。

このため、米中貿易交渉を有利にするために、中国は北朝鮮を裏か
ら支援して、米国の攻撃に対して援軍を出す方向で調節して、この
米朝交渉を利用しようとしている。中国の仲介の労で米国の貿易交
渉での譲歩を引き出す戦術である。

米中朝の3者の駆け引きになっている。日本の要望は、ジョン・ボ
ルトンの提案する徹底的な非核化であるが、それができるかどうか
である。しかし、ボルトン方式をトランプ大統領が否定し始めて、
北朝鮮の段階的な非核化に向き始めている。これは日本としては警
戒が必要になっている。

1.原理原則の破壊
米国が世界に広めた原理原則が崩れてきた。戦後75年間、米国は
世界に民主主義・人権擁護、自由貿易を広める伝道師的な役割で、
世界の指導者として存在し、それがために世界の覇権を確立してい
た。

しかし、北朝鮮の体制保護など、社会主義で人権無視の金王朝の体
制を保護するとか、米国の安全保障のために自由貿易を制限すると
か、この戦後75年続いた世界の原理原則を米国が壊し始めている。

米国は第2次大戦に勝ち、世界最大の工業国家になり、自由貿易が
米国の国益にかなっていた。しかし、徐々にドル高になり、他国の
工業製品に負け始めた。最初に米国工業製品に勝ったのが日本であ
り、1980年代後半から1990年代に掛けて米国との貿易摩擦
が起き、米国はスーパー301条で管理貿易化し、それと同時に、
プラザ合意で円高ドル安にして、日本を抑えた。

しかし、日本の工業製品を米国が作ることはなく、日本企業が台湾
や中国で作り、米国に輸出することで、技術が中国に流れ、今度は
中国の工業製品が米国に入り込み、圧倒的な低価格で米国の市場を
席巻しているのである。

トランプ大統領は、貿易赤字に耐えられなくなり、自由貿易を捨て
、同時に人権尊重を捨て、民主主義拡大を捨て、米国の国益優先に
シフトしたのである。これは、世界の覇権を捨てたことである。

このように、米国から次の国への覇権交代期で、世界観の変更が必
要になり、当分、世界の混乱期が続くことになる。難しい時代にな
った。

これにより、自由主義国対社会主義国や国家主義国、独裁国という
イデオロギー対立による敵対関係も終焉を迎えている。これが、世
界観の変更が必要な理由でもある。

反対に、中国も資本主義の長所を取り入れて、丸でナチス・ドイツ
に似た国家資本主義とも言える体制にして、経済発展を促進してい
る。

2.外交政策の考え方
イデオロギーに捕らわれないトランプ大統領は、外交を取引として
行うことで、国益を最大化させるが、日本の政治家や保守陣営は、
今までのイデオロギー的な外交に、まだ未練がある感じだが、それ
では日本の国益を失いかけない。原理原則が通用しない臨機応変な
外交が必要になっているということを肝に銘じるべきである。

事実、メルケル首相は、中露との関係を見直し、ロシアとはパイプ
ライン建設を共同で行い、中独関係を良好にして、中国ではドイツ
車を優位にしている。逆に、メルケル首相は米トランプ大統領との
関係は良くない。ドイツは米国から離れ、中露との関係を良好にし
ている。イデオロギーの壁がない。

取引外交では、一番重要なのが自分も損するが、それ以上に相手か
ら得になることを引き出すことである。そして、取引には、カード
が必要になる。

米国は、相手に対する脅しだけをカード化して取引をしようとして
いるが、その手を防ぎ、いかに対等な取引をするかを考えることで
ある。日本の国益を最優先に考えることだ。

もう1つが、敵と味方がわからない時代になる。この時代では、八
方に注意を払い、用心深く外交を行うことである。国益にとって、
損か得かでしかない。

3.次の覇権国は
米国が復活して覇権国になるか、米国がダメでも次の国も民主主義
国になってほしいものである。独裁国が覇権を取り、世界の人権が
蔑ろにされるのは、見るに忍びない。

ということは、日本も候補ということである。日本文化が世界の多
くの国に受け入れられている。日本文化の方向に世界も向かってい
るように感じる。中国でも精日という日本ファンがいるし、若い人
で多くなっている。

覇権国に必要なのは、軍事力と文化力、それに経済力である。文化
力は、すでにある。残すは、経済力と軍事力だ。

日本の世界的貢献としては、日本の持つ物理的・生物学的な緻密な
職人的な技術を世代間で伝承できることである。このため、技術が
より洗練されることになる。

この技術的な優位性から、細密な職人的な技術が生きる燃料電池技
術などが有望な分野であり、酵母菌などの発酵技術から薬学的な製
剤を生み出す分野も有望である。

IT分野は、残念ながら、米中に負ける。しかし、エネルギー分野
と医学分野では日本は負けないはず。この2つの分野で経済力をつ
けることである。

もう1つが、人口減少対策は、移民制度を確立するしかない。

今、日本は分水嶺にある。人口減少を放置して衰退国になるのか、
人口減少を止め、新しい産業を起こして覇権国に向かうのかという
岐路にある。

早く、今までの原理原則から離れて、将来を見てほしいのもである。

さあ、どうなりますか?



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