5998.日本の防衛環境が変化する



米トランプ大統領は、在韓米軍撤退か大幅な削減と引き換えに北朝
鮮の核放棄を迫るようである。中国とは本格的な貿易戦争になり、
世界の貿易に多大な影響を与えることが確実になっている。今後、
どうなるのかを検討しよう。 津田より

0.米朝首脳会談の取引
心配していたように、トランプ大統領は、金正恩委員長と朝鮮半島
の非核化で在韓米軍撤退と核放棄の取引を行うことが確実になって
いる。日本と韓国は、在韓米軍の基地だけを残して有事には駆けつ
けてほしいと交渉している。そして、特に韓国には、基地維持経費
を全額出せと交渉するようである。

しかし、中国は朝鮮半島から米軍が居なくなることを条件として、
北朝鮮への貿易を止めたので、一部残留となると取引条件が違うと
して、中朝間貿易を再開したようである。米国は、それなら貿易赤
字削減要求額を倍の22兆円に引き上げるとした。

このため、米中貿易交渉は暗礁に乗り上げている。10兆円分の中
国からの輸入品に25%の制裁関税を掛けることになる。また、中
国製スマホなど最先端分野の製品の輸入を完全に止める。

トランプ大統領の取引外交の結果が物別れになると、大変なことに
なる例になりそうである。この場合は、中国も米国も譲歩できない
からである。取引が成立しない。

このため、米中間貿易減少で、日本の機械産業の受注量は大幅な減
少になるなど、中国への輸出量が減ることが確実だ。どちらにして
も、中間選挙までは米中貿易戦争は続くことになる。

しかし、北朝鮮は中国から離れたいので、一部米軍残留を受け入れ
る可能性がある。韓国も米軍が居なくなることで、中国の影響圏に
なることは欲していないようだ。

逆に、在韓米軍完全撤退を目指していた中国は、面白くない。この
ため、平和条約締結を韓国、北朝鮮、米国の3ケ国で行おうとした
が、中国の王外相が北朝鮮に入り、北朝鮮を脅したようだ。北朝鮮
は4ケ国会談に戻した。

1.日本防衛の前提が崩れる
今までは、朝鮮半島が、日本と中国の激突を緩和する緩衝材であっ
たが、それがなくなる。日中の最前線が対馬になる可能性が出てく
る。「元寇の役」の再来になる心配が出る。

もう1つが、韓国と北朝鮮が統一する方向に行くことも考慮するこ
とが重要になってきた。朝鮮半島は、人口が1億人程度であり、日
本の人口と同じで、北朝鮮開発で経済発展も持続することになる。
日本と朝鮮は同格の経済規模になる可能性がある。

それも中国の影響圏になっている朝鮮半島である。北朝鮮の核ミサ
イルの完全破棄の検証は難しいので、隠して残置される可能性が高
い。2年後にはトランプ政権ではなくなる可能性がある。すると、
この核ミサイルを使い日本を脅すことも十分考えられることである。

それと、東アジアから米陸軍が撤退すると、米中の兵力差が中国優
位になり、アジアの覇権が米国から中国に移ることになる。そうし
ないためには、韓国から撤退する米陸軍をグアムか日本に置く必要
があるが、トランプ大統領は米国本土に置き、完全撤退か有事の駆
けつけになるはず。もし有事の駆けつけにしたいなら、韓国に対し
て基地維持費を全額出せと米韓首脳会談で迫るようである。

もし韓国が維持費をださないなら、米国に完全撤退した方が国防予
算が米国に落ち、地元の景気刺激策になり中間選挙対策になる。

このように日本の防衛環境は、一遍に厳しくなる。これを心配して
、日米首脳会談には、貿易黒字削減案を持っていく必要を説いたが
、受け入れてもらえなかった。その結果だ。

日本のマスコミも評論家も政府も予測精度を上げないと、これから
益々世界は「黙示録の世界」になり、混迷することが確実である。
今のような予測精度では、日本の国益を守ることができない。
希望的観測をしないで、冷静な目で見るこのコラムの予測を信用し
た方が良いのでないか?

2.憲法論議
このように防衛環境が厳しくなるので、9条2項の見直しは必要に
なるが、現時点では国民の気持ちを変えることはできない。大きな
事件・事変が起きないと無理である。平和惚けの状態が続いている
し、世界情勢の急激な変化の時に、野党の国会審議拒否の対応も、
あまりにもおかしい。

しかし、官邸もおかしい。官邸の関与を否定すればするほど、国民
は不信感を持つ。安倍首相の関与がなくても、官邸の今井補佐官な
ど取り巻きの忖度で不正が行われたので、今井氏などが責任を取る
形で収拾するか、安倍首相が辞任するかが必要である。安倍首相が
頑張れば頑張るほど、事態が悪くなる。

安倍首相が辞任した上で憲法改正をしないと、改正なんかできるは
ずがない。国民投票があるので、国民の支持がない政権に憲法改正
なんかできるはずがないからだ。

後、5年先には朝鮮統一して、日本とは体制が違う国になっている。
北朝鮮の金正恩委員長が国家元首になって、一国2制度で始めるの
であろう。

どちらにしても、憲法改正は必要になっているが、安倍政権ではで
きないことは確実である。早く、政権を刷新して新しい政権で、憲
法改正を行うべきである。

3.トランプ政権の今後
トランプ大統領も、大変になっている。もし、中間選挙でトランプ
大統領の共和党が下院で負ければ、その後は弾劾裁判が待っている
からだ。負ければ2年間は、より厳しいアメリカ・ファーストで、
かつ国内政治では、レームダックになる。

このため、大統領権限でできることを頻発させる。それが、外交・
軍事、貿易と移民問題である。移民問題以外の分野は、民主党とト
ランプ大統領は同じ意見であるから民主党も阻止しない。

対イランの中東戦争や貿易不均衡の解消をスーパー301条で行う
管理貿易、米国内産業の活性化のためにゼロックスのように日本企
業と米国企業の合併を促進して、日米企業して米国での生産拡大を
行うはずである。このために、日本に対しても貿易不均衡を問題視
してくる。

今の米国産業で競争力があるのは、農産物とマクドナルドなどの文
化産業、シェールガス、防衛産業やIT系の最先端分野であるが、中
国が米国のIT系最先端分野や防衛産業にとって代わる可能性がある。
顔認証などAI分野と戦闘機などの防衛産業だ。

米国防衛産業の得意先である日本や韓国との同盟関係を破棄はしな
いはずであるが、貿易不均衡を使い、より米国優位な関係を築く方
向である。そのためには、中国の脅威を維持させる必要があるが、
米国に取って代わることには反撃するしかない。

4.日本の針路
このような無謀な米国の保護貿易には日本も反対するしかない。貿
易がないと日本は存立できない。再生可能エネルギーでエネルギー
の自立はできたとしても、農産物の自給は無理がある。

戦後一貫していた米国の思想である自由貿易、民主主義、人権尊重
というイデオロギーを米国が捨てたことにより、世界的に敵と味方
がわかりにくくなる。イデオロギーの違いによる敵・味方ではなく
、自国の国益になるかどうかで敵と味方という区分になり、明日の
敵が今日の友という状態になる。

戦後の自由主義対社会主義という世界観は、その基盤を失う。ビジ
ネスや国際政治上でも、世界観の急激な変更が必要になっている。

日本が不得意な急激な変化が起き、八方美人外交しかできない。米
国とも味方であるが、自由貿易という意味では、中国などとも共闘
する可能性が出ている。

このような混沌とした時代は、予測精度が重要になる。このコラム
では予言書から見た世界観を持ち、その予測精度を上げているが、
このような手法が重要な時代になってきたように感じる。

それだけ、難しい時代になったということである。

さあ、どうなりますか?


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