5994.ボルトン補佐官で米国の戦略が変わる



トランプ大統領は、シリア撤退を志向していたが、シリア政府軍の
化学兵器使用でシリア懲罰攻撃を行った。米国の戦略はどうなるの
か。それを検討しよう。       津田より

0.トランプ大統領の支離滅裂
当初、トランプ大統領は、IS掃討作戦が完了したので、クルド人勢
力と行動を共にしていると、トルコとの戦闘に米軍が巻き込まれる
ことになると、シリアから米軍を速やかに撤退するとしていた。

しかし、東ドータ攻撃でシリア軍が化学兵器を使用したとして、レ
ッドラインを越えたとシリア政府を非難して、シリア攻撃を行った
。前回の4月より大規模な攻撃になったようだ。

マティス国防長官は、ロシア軍幹部との直通電話で妥協的を見つけ
てシリア懲罰攻撃を行った。これにより米ロの直接的な戦闘を避け
た。

それと、トランプ大統領の攻撃予告のツイッターで奇襲効果がなく
なり、退避行動をシリア・イラン軍に許したことだけは確かである
。トランプ大統領は、軍事に疎いことがわかる。

1.ロシアのシリア内戦介入の現状
ロシアは、シリアに対してもクリミア半島や東ウクライナで確立し
たハイブリッド戦術を使っている。ロシア民間軍事会社の要員多数
がシリア内戦に従事している。

その理由は、シリア内戦だけではなく、イラン軍は多方面で軍事活
動をしているので、イラン軍やイラン革命防衛隊など多数の死傷で
軍事力は消耗して、ロシア軍が必要になっていた。

しかし、ロシアも多数の戦闘機、陸軍軍人を民間人として参加させ
て、消耗戦になっている。ロシアの経済力は、韓国より少ないので
この経済力で長期にシリアの内戦を戦うことは相当な経済力の消耗
になっている。このため、ロシア経済は欧米の制裁もあるが、長期
低迷を続けている。

今後、米正規軍との戦いになると、ハイブリッドのロシア民間兵士
では、今のゲリア兵や民兵との戦いとは違い、大負けすることにな
る。そして、ロシアは負けこんでくると、戦術核兵器の使用を選択
するという。

しかし、米軍もロシアとの戦いでは、何が飛び出すかわからないの
で難しいことになる。というように米ロの直接対決は、両方にとっ
て不利益になる。

このため、米ロ両軍間の直通電話での交渉が行われたのだ。そして
、妥協点を見つけて、シリア懲罰攻撃を行ったのである。

2.ジョン・ボルトンで米国の鎖国化は破棄
ジョン・ボルトン氏を安全保障担当補佐官にしたことで、中東戦略
は大きな影響が出ることになる。ボルトン氏は最強のネオコンであ
り、軍事強硬派と目されている。軍人で穏健派のマクマスター前補
佐官は、軍事力を使用しないで、脅しに使うことがよいという主義
であるが、ボルトン氏は軍事力を積極的に使い、相手を屈服させる
べきという主義である。

トランプ大統領は、北朝鮮対応の取引を有利にするために国際派を
追い出し、軍事強硬派を政権内に引き入れてしまった。これが、シ
リア撤退からシリア懲罰攻撃に大きく一変させた理由でもある。

トランプ氏の鎖国政策は、ボルトンを補佐官にしたことで強国政策
に変わった。この見直しは多方面に及ぶ。これは、大きな戦略の見
直しを意味する。しかし、トランプ大統領は、当初の構想とは大き
く違うことを認識しているのか疑問である。外交取引しか頭にない
からで、戦略的なことを無視している。

ボルトン指示で安全保障担当の補佐官、副補佐官が多数解任され、
ボルトン氏と同じ考えの人物が起用されている。これは政権の性格
を大きく変えうる。

ボルトンが狙っているのは、中国との貿易戦争の拡大や中国の嫌が
る台湾旅行法により正常な台湾・米国の関係が築いたことで、国家
全体主義国に対する反撃ということになる。

特に中国に対する攻撃という要素が大きい。しかし、米国が一国で
取り組むことはできない。同盟国との協調が必要になる。事実、英
仏2ケ国にシリア懲罰攻撃で共同歩調をお願いした。ドイツが不参
加なのは、メルケル首相とトランプ大統領の関係が最悪であること
が影響している。

そして、ロシアとは、シリアで敵対関係にあるが、米ロ直接対決は
しない関係を継続するようだ。

日本は、ネオコンのボルトン補佐官の登場で、米国が鎖国化しない
ことで、大きな利益を得ることになる。軍事強硬的関与ということ
は、世界の覇権を米国は、握り続けることを意味するからである。

米国の鎖国化で、世界からの撤退になり、中国とロシアが優位にな
ると危惧し、その時は、日本の防衛をどうしたらよいかを根本から
見直さないと大変だと思ったが、そうではなかった。

マティス国防長官は、軍事力を脅しに使うことがよいというマクマ
スター前補佐官と同じ考え方であり、ジョン・ボルトンとは考えが
違う。今後、トランプ政権内で、マティス対ボルトンのせめぎあい
が起きることになる。

3.米中貿易戦争
というように、市場が心配した地政学リスクは、シリア限定的懲罰
攻撃により終了した。次は、中国との貿易戦争の行方である。10
兆円の関税引上げ項目リストを作っているとトランプ大統領は、ツ
イッターしている。

中国は、自由貿易を堅持すると言いながら、関税や国内障壁を多重
に設けているが、それをすべて見直すことは無理がある。中国の政
治体制は、政治が主で経済が従の関係であり、政府の干渉が経済の
全般に行き渡っている。これを変えることはできない。

ということで、非関税障壁をなくせと言う米国の要求は実現できな
い。特に国家目標のIT企業育成策の破棄は絶対にしない。もし、そ
れをすると、習近平国家主席は、米国に屈服したことになり、体制
が維持できない。

このため、中国との貿易は関税の引き上げで大幅に減ることなる。
このことで、東南アジアやメキシコなどからの輸入品が、中国から
の輸入品にとって代わる可能性が高い。

一部が米国生産になるが、それは付加価値がある製品だけである。
靴や服などの低価格商品は、労働賃金が安い地域で生産するしかな
い。中国を締め出しても、変わる国は多数存在するので、生産地が
シフトするだけである。

すでに、ユニクロは、生産を中国からカンボジアやバングラディッ
シュに完全に変えたという。これと同じ事が起きるだけでだ。

中国は、生産を高付加価値製品にシフトする必要があるが、まだ完
全には置き換えれない状態である。それと、高付加価値製品は生産
を米国に戻せと言う要求になるので、無理である。

中国の商圏を拡大して、米国市場から撤退するしかないことになる。

そして、中国は米国の農産物最大消費地であるが、中国は米国の農
産品を買わなくなる。すると、日本や欧州などの国が米国産を買う
ことになる。世界の農産物は不足気味であり、売り手市場であり買
い手市場ではない。

しかし、トランプ大統領は、日本を明確に農産物の市場にしようと
日米首脳会談に臨むことになる。

4.日米首脳会談
また、独裁経済大国の中国との交渉を有利にするために、米トラン
プ大統領はTPP再加入を行うとしたが、日本が了承しないと始まらな
い。

もちろん、米国は、日本に対してTPPかFTAの選択を迫ることになる
し、その前に行う日中経済対話で、中国は鉄鋼輸入制限の対米共同
歩調を提案することになる。

日本は、日米首脳会談で、鉄鋼を品目毎の関税調整を提案すること
にしている。現地日系企業の作る製品以外の鉄鋼製品を関税除外に
するよう提案するようだ。また、貿易不均衡対策をパッケージで提
案するようである。

また、為替監視国に日本が対象となっているが、これは金融量的緩
和による円安も容認しないということである。これにも緩和案を持
っていく必要がある。

しかし、日米が揉めることはないようだ。日米同盟堅持で友好的な
首脳ゴルフをして帰ってくることになる。安倍首相にとっては、日
本国内の方が大変なことになっている。

さあ、どうなりますか?



コラム目次に戻る
トップページに戻る