5986.貿易戦争でどうなるか?



トランプ大統領は、鉄鋼とアルミの関税を20%、10%上げると
した。これに対抗処置として欧州は、ハーレー、リーバス、バーボ
ンに25%の関税を掛けることを明言、中国は米国産大豆に20%
以上の関税を掛けることになるようだ。貿易戦争が確定した。さあ
、どうなりますか?    津田より

0.トランプ政権の内紛
トランプ大統領は、大きな2つの課題の解決が必要である。1つに
クシュナー氏とイバンカ氏のビジネスが中国政府の支援で儲けてい
ることが問題視されて、FBIの捜査対象になっている。もう1つが中
間選挙に勝つことで、政権の安定を図りたいことである。

1つ目の問題として、クシュナー・イバンカ氏の2人が米CIA情報へ
接近を禁止されたこと。2人が中国寄りであり、米中対決戦略を作成
した国防省や官邸内軍人たちと対立しているようである。

ケリー首席補佐官、マクマスター安全保障担当補佐官とクシュナー
・イバンカ氏の中国政策や中東政策での意見相違が原因である。
このため、ケリー、マクマスター補佐官の辞任がささやかれている。

自分の故郷やビジネス優先のクシュナー・イバンカ氏と米国家戦略
優先の軍人たちとで権力争いになっている。外交であるから国務省
ティラーソン長官が出てくるはずが、中東やアジア担当の高級官僚
がいないために、アドバイスができない状況になっている。

クシュナー・イバンカの両人が政権内で中心的な存在になっている
が、米国より自分のビジネスを優先した対応は、今後の米国の戦略
や経済には、大きな足かせとなっている。

しかし、北朝鮮への攻撃や中東での米軍撤退などを控えて、ケリー
首席補佐官を変えることはできないとトランプ大統領は見ているよ
うで、クシュナー・イバンカ氏のCIA情報へのアクセス禁止したこと
に理解をしている。クシュナー・イバンカ氏から北朝鮮攻撃情報が
中国に漏れることを極度に警戒しているようである。その上に、イ
バンカ派のホープ・ヒックス広報部長などを辞任に追い込んで、ク
シュナー・イバンカ氏の官邸内孤立化を図っている。

マクマスター氏はばかばかしくなり辞任方向であるが、次に推薦し
たのが対中強硬派の通商製造業政策局長ピーター・ナバロであり、
もしくは、ネオコンのジョン・ボルトンとのうわさがある。よって
、今後も政権内の対立は続くことになる。商務長官ウィルバー・ロ
スも対中強硬派であるが、2人と争わないように、鉄鋼とアルミの
関税UPを対中向けとはせずに、米国への貿易黒字国全部を対象にし
ているし、理由を安全保障上の問題として中国向けとはしていない。

1.中間選挙に向けた政策
中間選挙が11月に行われるが、3月13日にペンシルベニア州で
下院補欠選挙があり、その戦いを有利にするためには、鉄の街ピッ
ツバークの有権者を味方にする必要があり、鉄鋼の関税を20%に
したようだ。

大統領選挙で公約したアメリカ・ファーストの保護主義的な政策の
実行を中部州の白人労働者階層の有権者から求められていた。中国
訪問でも、中国に鉄鋼輸入差し止め要求をしなかったことで、この
地域での支持を失い、下院補欠選挙も民主党候補が有利になってい
た。

トランプ大統領は、この有権者が望む保護政策を今まで、イバンカ
氏やクシュナー氏とゲイリー・コーン経済担当補佐官が止めていた
が、中間選挙に勝つために、対中強硬派の意見を入れたようである。

事前にイバンカ氏を平昌冬季五輪に行かせ不在にし、コーン補佐官
には相談しないで大統領自らが表明したようである。ケリー補佐官
がイバンカ氏の冬季五輪出席を反対した理由も、この保護主義を止
める必要からであったようだ。

2.米国と中欧との貿易戦争
商務省ロス長官は、対中向けではないため、米中の貿易戦争にはな
らないと声明している。しかし、中国や欧州の対抗策が出てくると
、それへの対抗処置が米国にも必要になり、米国対中欧の貿易戦争
が明確化することになる。欧州と中国以外の日本を含む国は、貿易
戦争回避の方向である。

既に欧州は、米国から輸入されるオートバイのハーレー、ジーンズ
のリーバス、お酒のバーボンに25%の関税を掛けるとしているの
で、米国の産業に大きな影響が出てくることになる。米国内でアル
ミや鉄を使う製造・飲料メーカーなどにも価格上昇の圧力がかかる。

中国は、米国産大豆に20%以上の関税を掛ける方向で検討してい
るようであるし、既に米国債を売却しているようだ。外貨準備を米
国債から他国の国債にシフトするリザーブ・シフトを行っていると
いう。

このため、米国債の金利が上昇し、ドル安円高になっている。シフ
ト先の国債が流動性の高い日本国債である可能性もある。中国は、
自国で持つ米国債を海外証券会社名義のままして米財務省に報告し
ないで、売却を隠せるようにしている。このため、逆に中国が米国
債を購入しているように見せかけることも可能である。

この中国の米国債売却があるので、金利上昇で価格が安くなっても
、中国の手口を知る金融機関などの玄人は米国債を買わないようだ。

3.トランプ大統領のわかりにくさ
トランプ大統領の政策決定手法が周囲の政権幹部にも同盟国のリー
ダーにもわかりにくい。トランプ大統領は、予測不可能にして政治
交渉を有利にすると言うが、味方もわからないので皆がトランプ大
統領についていけないようである。

ビジネスの交渉では、手の内を見せることは良くないかもしれない
が、政治では、ある程度の方向性を政権幹部や同盟国に見せて、敵
にも見せて、見通しをよくする必要があると思う。というより、ト
ランプ大統領には、方向性のある戦略がないのかもしれない。その
時の情勢で方針が変わるために、予想不能にしている可能性がある。

組織に従順な軍人のマクマスター補佐官やケリー補佐官などでも、
トランプ大統領についていけないようである。また、自由貿易主義
のゲイリー・コーン補佐官の辞任もあり得るようだ。

どちらにしても、国防省が作成した対中戦略が実行されるかどうか
は不明と見たほうがよいように思う。

4.日本経済の動向
国際政治が経済活動に影響して来たことで、世界的な株価の動向が
わからなくなっている。この影響を一番受けるのが、日本である。

日本企業の海外依存度は、ここ数年で高まり、売り上げに占める海
外比率が高まってきた。その分、世界の貿易戦争の影響を受けるこ
とになる。世界景気が落ちると、日本企業の業績も下落することに
なる。そうすると、経常収支も赤字になり株安円安になる。

景気後退に強いはずのデフェンジブな企業、国内需要の企業も人口
減少で売り上げが落ちる。これでは海外投資家は日本から逃げる。
その日本売りが今起きている。

このため、本来なら円安になるはずが、中国の米国債売り日本国債
買いで円高になっている。よって、日銀の買いがなくても、日本の
長期の国債金利は想定より低下している。

しかし、株価下落でPER13倍以下になり、株価は非常に魅力的に見え
ているが、上昇局面を維持しているのか、または、下降局面に入っ
たのか、まだ判断はできないが、徐々に貿易戦争は世界の景気に影
響を与えることだけは確かである。このため、下降局面に入ったと
見るがどうであろうか?

日本の経済金融政策は、世界の景気が良いことしか見ないで、景気
後退を想定しないことで、再三注意したが、大きな代償を日本国民
全員が払うことになりそうである。

もう1つが、世界的な銀行間取引金利が上昇している。これはどこ
かの金融機関の破綻が差し迫っているとも考えられる。日本の銀行
に対してものかもしれないので、マイナス金利を一刻も早く止める
べきである。どちらにしても流動性不安が出る可能性もあるという
ことだ。

現在、少なくとも円高になっているので、この機会に皆さんの金融
資産をある程度、海外に移すべきであると思うが、どうであろうか?

さあ、どうなりますか?


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