5985.風雲急を告げる世界経済と中東紛争



米国経済は好調であるのにNY株が暴落し、中国でも資金調達ができ
ずに海外資産売却に走る企業が出てきたし、かつ中東ではシリア、
クルド、トルコの3つ巴の戦いに、イスラエルも参戦して戦争拡大
の様相になっている。3つのリスクが押し寄せてきた。今後の世界
を検討したい。  津田より

0.米国株はどうなるか?
2月初めに大暴落したが、23日の米ダウ平均が大幅に続伸し、前日
比347ドル51セント高の2万5309ドル99セントになった。この理由は
、米長期金利の指標である10年物の米国債利回りの低下が続き、金
利上昇で株価の割高感が高まるとの警戒感が後退したことだ。

最高株価26,616ドル71セント(18/01/26)で直近安値23,360ドル29セ
ント(18/02/09)なので、3/4以上を戻したことになる。最高値まで
1000ドルちょっとである。というように市場に安心感が戻ってきた。

イエレン前議長は、FRBの資産圧縮のために米国債を売ったが、株暴
落で、パウエルFRB新議長は、10年物米国債を110億ドル買い、長期
金利を押し下げた。これにより市場に安心感が広がった。パウエル
プットが来たと市場は評価した。銀行は国債を売り、得た金で株を
買ったようである。実質的なPKOである。政権と銀行が繋がっている。

しかし、FRBは3月に政策金利を0.25%上げるので1.75%になり、長短
金利をフラット化するようである。しかし、年4回の利上げではな
く、3回と当初予想通りと思われている。

トランプ大統領は、11月の中間選挙に勝つために、そこまでは景
気(米国では株価)を持たせる必要があり、それをパウエル議長は
忖度したのである。このため、11月までは米ダウ平均は高値維持
か上がり続ける可能性が高い。

1.米政権の政策
減税とインフラ投資、米軍装備の拡充などで企業の利益は増すこと
が確実であり、株価は高値維持か上昇する。そして、長期金利は3
%以下に固定するのであるから適温相場を保持することになる。そ
の上に、ドル安政策をトランプ政権は行うようである。

しかし、その後は株価の大調整になる。財政赤字で国債発行量が多
いが、中国は買わないので、金利を下げるためにFRBが買うことにな
る。

もう1つ、ドル安にするという。日本企業の海外利益を年度末の配
当などが必要で日本に戻すための円買いはあるため、円高になりや
すいが、その上に米国機関などがユーロ・円買いドル売りをするが
、買った円をどうするのであろうか?

私は日本株に再投入するしかないと思っている。ゼロ金利の日本国
債を買うことはないはずで、日本株買いである。

しかし、米国は日本とは違い人口が増加しているので、物価上昇が
比較的容易に起こり、そのため賃金UPで物価3%以上に上昇したら
、3%以上に短長期金利も上げざるを得ないことになる。

長期金利を下げることは、米国債をFRBが買い入れることでできるが
、実体経済での物価上昇はFRBには止めることができない。また、長
期金利を押し下げるために、米国債買いをFRBが行うということは量
的緩和であるが、短期の政策金利は上げるというアクロバット的な
金融政策になることを意味する。

無理な金融政策は、その反動も大きいことを覚悟する必要がある。
今年後半は米株大暴落が確実になっているとみる。それまでは株価
は高値維持か上がることにはなるが、上がった時期に株式投資家は
なるべく早く手仕舞ったほうがよいと思うがどうであろうか?
「頭と尻尾はくれてやれ」の意識が必要である。

2.中国経済
海外投資を膨らませている海航集団、安邦保険集団、大連万達集団
、復星集団の資金調達が厳しくなり、海外資産の投げ売りが始まっ
ている。

ドイツ銀行株を持つ海航集団は、大量のドイツ銀株を売りドイツ銀
の株価は15ドルになった。大連万達集団は、ホテルとテーマパー
クの大半を売却すると発表した。安邦保険集団は、保険未払いの可
能性があり、政府の管理下に置かれたなど、中国経済の変調をうか
がわせる事態が出てきている。

金融危機のサインであるミンスキー・ポイントであると解任時の記
者会見で述べていた周小川中国人民銀行前総裁の言葉の通りの事態
になってきた。このため、金融引き締めを政府も行い始めているこ
とによるが、金融引き締めを行うと確実に景気は悪くなる。

投資経済の中国では、インフラ投資がなくなり、その上に民間投資
も減退することで、景気後退の可能性が出てきているように感じる。
今年度中には景気後退が表面化する可能性がある。

米株価は、無理な高値維持策で持たせる方向であるが、中国経済は
確実に減速するようである。日本企業の業績を左右することになる。

3.中東情勢
シリアとトルコ、それにクルド人勢力が北シリア地域支配の勢力争
いをしている。イスラエルもシリア空爆を行い、その紛争に加わっ
ている印象を受ける。

米国はクルド人勢力とイスラエルに肩入れしているが、クルド人は
アフリン攻防戦で侵略してきたトルコ軍に対抗するために、シリア
政府に支援を求めた。シリア軍は援軍を差し向け、トルコ軍との戦
闘になっている。

米国はトルコに対して、米軍がいるマンビシを攻撃するなと要求し
ているが、アフリン攻略は認めている。クルド人勢力は、トルコの
勢力範囲外で海への出口が欲しくて、アフリンなどの西寄りの北シ
リア地域を占領している。それに対して、クルド人勢力の海への出
口を与えたくないトルコが、そのシリア西地域の奪還を目指してト
ルコ系民族の保護を名目に侵略してきた。

トルコ軍とシリア軍の戦いを中止したいロシアは、仲裁会議を開い
て、トルコ、シリア、クルド人勢力の仲介を買って出ている。米国
は仲裁会議にも出席せずに、この地域での覇権はないに等しい状態
である。

しかし、その仲裁がうまくいっていない。IS打倒のために米軍も多
数、その地域に駐留しているので米国も関与しているが、関与レベ
ルが大きくない。トルコとクルド人の対立関係を無視したことへの
代償である。

イスラエルは別個にレバノンのヒズボラを叩くために、シリア内戦
に参戦しているヒズボラに対して空爆をしているし、サウジが裏に
いるスンニ派シリア反政府軍を支援している。

このように完全に敵味方がわかりにくい状況になっていて、米国は
自国軍をどのように撤退させるのかを問われている状態である。

米国は、クルド人勢力を支援してISを倒したが、もう1つの味方で
米空軍基地のあるトルコとクルド人勢力の紛争に明確な方針が立た
ないようである。

スンニ派の盟主サウジとは関係なく、トルコ・エルドアン大統領の
独自の動きであり、シリアの裏にはイランやヒズボラがいる構図で
ある。トルコはイランやロシアとの経済関係でもよい。トルコはク
ルド人独立が問題であり、スンニ派対シーア派という戦いとは大き
く違う。

クルド人はトルコを敵としているが宗教はスンニ派であるし、シー
ア派のシリアやイランとは敵対関係ではない。シリア内での自治権
を要求しているだけである。シリアのラタキアがクルド人が望む海
の出口であり、その面からもシリアとは友好関係を保つ必要がある。

そのラタキアにはロシア空軍がいるので、クルド人はロシアにも敵
対していない。

しかし、この民族紛争が絡む中東戦争が起きると、米軍の引き上げ
が必要になり、クルド人勢力に味方しながらトルコと戦うことにな
り、中東政策の混迷が深くなる。米国はイスラエルの首都をエルサ
レムと認めたことで、中東の多くの国との真剣な対話ができず、代
償を払うことになりそうである。

マクマスター大統領補佐官は、エルサレム首都容認に反対したが、
補佐官を辞任して米軍の撤退戦の指揮を執るようである。難しい戦
争になりそうだ。明確な敵対関係がなく、その中で戦うということ
になる。

もし、中東で戦争になると、米軍の引き上げで先に中東に海兵隊や
空母を送り、北朝鮮との戦争は当分棚上げの状態にする必要がある。

この中東情勢を正確に記述しているのが、黙示録であることも気に
なるポイントである。イスラム教の黙示録ではマンビシが焦点とな
っている。

さあ、どうなりますか?


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