5976.世界の構造と特殊な日本の構造



日本は、世界的なグローバル化から取り残されている。このため、
グローバル社会の覇権が変化したことも気づいていない。このグロ
ーバル社会の構造とその変化を述べ、日本の構造も考察する。
                         津田より

0.グローバルとローカル
グローバルな人たちとローカルな人たちに、世界の人たちは割れて
いる。10年前に米国出張時、IBMを首になった人が、オーストラリア
の会社に行くと話していたが、その時は白人たちが主にグローバル
に転職していた。英語が使えれば英語圏内の会社は問題なく移動で
きるし、国籍を問わないと話していた。

今や、途上国などの優秀なSTEM系人材は、英語力を持てば世界
のグローバル企業に、採用されるように変化した。インド工科大学
卒業生の初年度の給与が年俸1000万円という。AI・IOTな
どの技術者として理系卒業生は、グローバル企業に世界均一に高給
で雇われている。

グローバルな人たちは、STEM系人材、経営者、投資家、大企業
の社員などで構成されている。基本的に英語力があることが必至条
件であり、その上に専門分野のスキルが高いことである。

ローカルな人たちは、地域社会に生きる人たちであり、ローカルな
言語で生活し、モノの生産にかかわっている。日本では75%が、
こちらに属している。

そして、グローバルな人たちが、ローカルな人たちを安い労働力と
して使い利益を得る方向である。このため、貧富の差が拡大してい
るし、安い労働力を求めて、グローバル企業は工場を世界的に移転
してきた。このため、先進諸国の労働者の賃金が上がらない。

しかし、IT系企業は、安い労働力を必要としていない。グローバ
ルな人たちだけで高利益を得ることができる。

それが証拠に、株価が高い企業はグーグル、アマゾン、アップルな
どIT主体の会社であり、GMなどのモノ作りの会社の株価は、安
いことになっている。米国のトップ企業であったGEもダメ、石油
会社は原油価格が低迷して株価もダメである。

1.グローバル社会の世論形成
このため、このグローバルでコスモポリタンな社会でも世論形成の
主要メンバーが変化している。10年前は、欧米の白人投資家たちが
世論形成を主導していたが、今やインド人など多様な発展途上国出
身のIT系グローバル企業経営者が主導し始めている。

欧米投資家は、IT企業には大きな資本が要らないことで大きく投
資できず、しかし今、不動産などの投資よりIT企業の方が利益が
大きい。このため、IT系途上国経営者は大儲けしているので、力
を増しフェアトレードなどの途上国ローカルがより大きく儲けられ
るように誘導したり、途上国の発展を手助けしたりし始めている。

もう1つのグローバル世論が、欧州の脱炭素、脱大量生産であり、
米国投資家が利益を上げてきた石油会社や大量生産企業から離れる
方向である。これもIT系経営者が欧州の意見に乗り、形成された
のである。

2.米国の分裂と衰退
米国は多様な移民を戦後も受け入れてきて、米国をグローバルで勝
てるよう推進してきた。しかし、その結果がグローバル人材でもロ
ーカル人材でも白人以外の移民が力を増している。

グローバルな人達でも、ニューヨークなど東部白人投資家や大銀行
が力を失い、シリコンバレーなど西部のIT企業群のインド人など
途上国出身の経営者が力を持ってきた。

ローカルでも中部工場地帯の中産階級白人が失業して、生活が苦し
くなっていた。南部に進出した日系自動車会社は、黒人など多様な
人たちを雇用して、一組み立て工員であった黒人の優秀な人を工場
長までにしている。

ここに目を付けたのが、バノン氏である。グローバルとローカルの
白人 対 グローバルとローカルの白人以外の移民たちの対立軸を
作り、トランプ大統領を当選させた。

このため、バノン氏は、移民がいない日本を理想社会としてみてい
るように感じる。

そして、トランプ大統領がまず行ったのが移民制限であり、技術者
のH1Bビザ発給制限でインド人を追い出すことである。次にグロ
ーバルな脱炭素化の世論に背を向けたことである。米国が分裂して
、米国の白人たちがグローバル社会でも力を失い、そのため、それ
に反発しているのである。

この結果は、米国の衰退につながることになる。今後もSTEM系
人材の質で技術力が決まるからである。

3.日本の構造
日本には、モノづくりのグローバル企業しかない。IT企業群もロ
ーカルである。孫さんはソフトバンクの経営者というより、投資家
の面が強い。

モノ作りは基本的にはローカルである。日本のグローバル企業は、
日本のローカルにある中小企業を進出した国のローカルに呼び込み
日本の中小企業を進出国のローカルに入れて、納入金額を下げて利
益を得る構造にして、労働力は安く、技術は日本仕様という上手い
構造にして、グローバル展開してきた。

お膳立てをグローバル大企業がして、ローカル中小企業は英語力を
必要とせずに海外進出してきた。

なぜ、日本のローカルが世界進出ができるかというと、ローカルの
技術力が強いからである。

江戸時代の藩制度で、各藩が他の藩と競って商品開発したからであ
る。このため、各地方に差別化された技術が蓄積されているからだ。
その根本は職人芸である。

この職人芸が中小企業の海外進出で流出することになる。
このため、タイの自動車部品会社が、世界に安いが高品質な自動車
部品を売ることになる。

日本のIT企業が弱いのは、STEM系人材が少ないことによる。

日本にはSTEM系人材は年間16万人しか生まれない。しかし、
人口の1%しか優秀ではない。やっても5%である。今、子どもは
100万人しか生まれない。その1%とすると、年間1万人しかい
ないことになるし、5%でも5万人しかいないことになる。世界に
通用する人材は、これしかいないことになる。

インドや中国では、子供が年間1000万人生まれたと少なめに見
積もっても、1%で年間10万人、5%で50万人にもなる。

ということで、グローバル日本企業は、優秀なSTEM系人材を求
めて、シリコンバレーに研究所を建てて、世界から優秀なSTEM
系人材を世界基準の年俸で雇っている。しかし、H1Bビザ発給制
限となると、米国である必要がなくなる。米国IT企業は、既にバ
ンガロールや北京に研究所を建てている。

一方、日本はローカルに根付いた職人芸がまだまだあるし、試行錯
誤を丹念に行うということは日本人しかできないことである。全員
の技術力を上げて、その上に試行錯誤をおこなう日本流の技術開発
は他国ではできないことである。

日本は、ローカルであるもの作りの技術を差別化して生き残りを図
るしかないように思う。IT系企業のグローバル化の可能性は少な
い。

もう1つが、グローバル社会の流れをいつも見ていることが重要で
ある。グローバルな社会の変化が世界の潮流の変化として現れてく
ることになる。

脱炭素のグローバル世論が出てきて、日本の石炭火力重視は問題視
され始めている。脱炭素社会の技術はモノ作りの技術でもあり、日
本の出番である。早く、キャッチアップするしかない。

さあ、どうなりますか?

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