2827.環境先進国ドイツに学ぶ その7



環境先進国ドイツに学ぶ その7
                    平成19年(2007)12月15日(土)
                「地球に謙虚に」運動代表 仲津 英治
比良山に今冬2回目の雪が降りました。山頂付近は朝日を受け、白銀が
輝いておりました。
 この報告は、私も参加したセブンーイレブンみどりの基金によるドイ
ツ環境研修(10月10日―18日)のレポートの続報です。お付き合いいた
だければ幸甚です。
 
公と民の握手;太陽光発電装置の設置
10月15日にBUND(ドイツ環境・自然保護連盟)を訪問した午後、窓口のウルリッヒ
さんが、BUNDが推進役になった太陽光発電の実例を見に行こうと案内してくれまし
た。

マインツ市から南へ列車で15分ほどのところ、ライン川沿いのナッケンハイムという
農村です。なだらかな丘陵は一面ワイン用のブドウ畑でした。マインツ市内では我々
も建物の屋根に注目していたのですが、あまり太陽光発電装置は見かけませんでした。
 人口5200人、副村長のウェバーさん等関係者が出迎えてくれました。

 3年前新築された村の公民館の屋根上に市民が出資して会社を作り、その出資金で
公民館の屋根の上に太陽光発電装置を設置したのです。リーダーのフリードリッヒさ
んが簡単に経緯を説明してくれました。

 ナッケンハイム村が公民館の新築のする際、屋根上に太陽光発電装置を設置する計
画を立てたのですが、資金不足で取り止めとなりました。しかし村民が屋根を貸して
くれたら、お金を出し合って、太陽光発電装置を設置すると村長に申し入れしたので
す。村としても収入が入るので、村長は快諾し、ことが進められました。

 ここでBUNDのラインラント・ファルツ州本部のリーシェル理事(財務担当)が、
銀行家でもあり、出資話をまとめ、会社を作ったのです。ラインラント・ファルツ
州本部には既に5年間で15箇所の太陽光発電装置を設置した経験があり、信用が確立
していました。いずれも個人の出資者を募り、会社を設立して、第3者の屋根を借り
て太陽光発電装置を設置し、使用料を払い、かつ出資者には配当金を払う方式です。

リーシェル理事はそのノウハウを熟知しており、BUNDの理事としても信頼されて
いました。自身大きな農家の屋根を借りて90KWの太陽光発電設備を設置している
とのことでした。出資者は6人で、市民会社法という連邦法に基づく簡便に作れる
個人連名の会社です(多くの法規により、義務される株式会社ではありません)。

 ナッケンハイム公民館の太陽光発電装置の概要を申し上げましょう。
出力;45.9KW
メーカー;三洋電機
投資額;23万Euro(約3700万円、80.2万円/KW)
売電料;50セント/KWH(約80円/KWH)
個人配当金;出資額の5%を保障。
利益;年5%程度 積立中。
削減炭酸ガス量;37トン/年(1KWHあたり概ね500kgの炭酸ガス量が削減
できる) 
村への屋根賃貸料;売電料金の2%

日本の売電料金は23円/KWH前後で市販電気料金と同じです。ちなみに
市販電気料金は20セント/KWH(32円/KWH)ですから、市価の2.5倍で
電力会社が電気を買ってくれるわけです。

        写真 ナッケンハイム公民館と太陽光発電装置

発電電気は、全て地元の電力会社が買取る契約となっており、10年で元
が取れます。これは2000年に制定された再生可能エネルギー法という連
邦法に基づくものです。2000年当初の太陽光発電電気の買取価格は60-70
セント/KWHでした。年々買取り価格は下がる仕組みになっており、太
陽光発電の他、風力発電、バイオガス生成など再生可能エネルギーに市
民が早期参入するほど得な制度を設け、再生可能エネルギーの促進を図
っている訳です。

 出資者は、一人当たり年間925KWHの発電量があれば、採算がとれるの
ですが、実際は、1175KWHもあり、村も屋根使用料で潤って行く訳です。
皆さんご機嫌な顔つきでした。私どもには地元特産のワインを振舞ってく
れました。美味しかったですね。

       写真 発電制御室と、説明するフリードリッヒさん6人分の電
力計がある。

仲津英治の意見;
 ライン川南部は日当たりが良く、ブドウの生育にも好条件がそろってい
るようです。その豊かな日光をソーラー電気に変える時代となりました。
ここでポイントは、国家や州が財源難で、太陽光発電装置など再生可能エ
ネルギー生産設備を自ら作れない、あるいは、補助金を出せない場合、
個人の有志の資金力を活用する制度です。つまり個人の投資意欲を引出す
制度を行政が設ければ、ドイツのように太陽光発電設備、風力発電設備が
急速に普及するのです。今回も移動車中から林立する発電風車をたくさん
見かけました。

そして再生可能エネルギーは、当初は高くつきますが、いずれは安くなっ
て、従来の電気、石油並みの価格水準に下がり、結果炭酸ガス発生量も抑
制され、地球温暖化にブレーキもかけることができるのです。公と民の
握手により、地球温暖化を少しでも制御したいものです。
      
             写真 田園の中の発電風車

 翻って、日本の実情を申し上げましょう。国は平成18年(2006)度から太陽
光発電装置への補助金制度を廃止してしまいました。結果国内の太陽光発電
導入の勢いは完全に止まりました。2004年まで、世界1の太陽光発電設備量
を誇っていた日本は、2005年ドイツにその座を譲ったようです。ドイツは
樺太と同緯度の北国です。日本ほど太陽光線に恵まれていないのにですよ。
この結果はエネルギー政策の差以外何者でもありません。

 もう一つ我大津市の例を申し上げましょう。おおつ環境フォーラムの諸氏
が、以前から太陽光発電装置が設置されている膳所小学校を2005年に訪れた
ときのことです。教頭は残念ながら、太陽光発電にほとんど関心がなく、2
基(1基9KW)の内、1基からの発電電気は殆ど使われていなかったそう
です。公費を使って設置された太陽光発電装置が、長く無用の長物だったの
です。今年の8月漸く関電と売電契約も結ばれ、校内で有効利用されるよう
になったとのことです。

 そして数年前同じくおおつ環境フォーラムのメンバーが大津市に対し、公
的施設の屋根を市民共同発電所に開放し、その電気を公的施設が使うような
仕組みを提案したところ、同市の担当部局は「目的外使用」に当たるとの見
解で、彼らの申し出を断られました。今こそこの姿勢を改めて欲しいのです。

                                      以上
*******************
仲津英治
「地球に謙虚に」運動代表


コラム目次に戻る
トップページに戻る