2826.覇権衰退の意味と意義



覇権衰退の意味と意義
                 tomato

米国覇権衰退への関心は多くの人が共有してるはずであ
るが、覇権の意味と作動原理についての論議がない限り
その本当の意味は陽の目を見ない気がする。

当コラムでよく言及されてる覇権の意味とはいったい何
なのだろうと考えてみると、軍事力や財力といった物理
的国力や行使力を示してると考えられる。

ここに数々の取捨や偏見があることを指摘したい。
まずは当コラムのタイトルを国際戦略としながら国際と
いう意味についての論議がない。要するに国際とはどん
な領域かについてたずねてみたい。それは単純に国がひ
しめいてる世界で一国の富強のための戦略なのか、それ
とも国際領域という特殊環境の中での戦略を模索したい
のか。

 個人的には当コラムの基本的方向性が前者にあるとい
う認識の下、そういった分析がどれだけ役立つのか疑問
に思う。国際政治のリアリズムの方向性はもちろん強大
国中心的であり主体としての国家を中心としていて権力
基盤である軍事力や財力を重視する方向性を持っている。
 しかしこれは幾分批判の対象となった捕らえ方であり
国際的環境は与えられた条件では決してない。

つまり環境に応じた国家のあり方以前に国家の必要性や
その期限から政治的権力の本質を探るアプローチが必要
であり積極的に成されてきている。

覇権はかなり巨大概念である。リアリズムの偉大さはア
ナーキカルな環境がはこびる国際領域を捉えていること
であり、それは現実的に説明力が高い。しかし国家や覇
権と言う構築的で条件的要素が多い概念を物理的な数値
から換言することはあまりにもナイーブである。もちろ
ん物理的権力は重要な要素である。

 だが冷戦時から現代までの時代は米方のもつ統制力が
ものを言わせてきた。つまり国際経済システムも然り軍
事的には核の非拡散と統制それと軍事力規模において市
場資本主義の恵みを各国に認識させており軍事的には平
和主義の裏に隠された巨大規模の軍備を保っている。

覇権は関係的に構築された,される,概念であり現代の
覇権は米方にある。本人は米国主義者でも西洋に劣等感
を抱くものではない。歴史的に見なければ変化の本質は
把握できないということを言いたいだけである。覇権は
歴史的に構築されるものであり数値上で維持されるもの
ではない。陰謀論的言い回しのように聞こえるかもしれ
ないが資本主義システムの恵みは今カルテルを形成して
いる。

 中国も厳密に言えばアメリカの輸入許容量やIMFの役割
に同意をしている。今ある反発は表面的であり本質的に
動乱が可能になるぐらいまで蓄積がなされ大義名分がそ
ろうまでは覇権体制は衰退しない。覇権は同意されもの
かあるいは中心の交代がなされるものであり衰退するも
のではない。
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(Fのコメント)
トマトさん、緻密な論理をありがとうございます。
このコラムを開始した当初から長い間、何回か覇権に
ついての見解を示してきたと思っています。

国際戦略についても同様に議論してきたように感じてい
ます。もちろん、議論のレベルが低いという感想はある
と思いますが、トマトさんの疑問にはある程度、その過
去の議論で答えているように感じますがどうでしょうか??

覇権とは、世界の国家がその覇権国家の言うことを聞く
かどうかでしょうね。今までは米国の意見を世界はよく
聞いていましたが、だんだん聞く国が少なくなっていく
ように感じているし、現実の国際会議での米国の意見が
通らないように思う。これを覇権衰退と言っています。

覇権は、ある時一気になくなるのではないし、一気にで
きるものでもないと思います。その意味では、今は覇権
の交代期、不安定期というのだと思いますがどうでしょ
うね。


覇権と日本
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/kako/hakty.htm
1787.覇権とその移行期について
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k6/161023.htm
1185.覇権の構図
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k5/150301.htm
430−2.国際戦略の考え方
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/kak3/1302042.htm
436−1.国際戦略の考え方2
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/kak3/1302101.htm
440−1.国際戦略の評価はいかに
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/kak3/1302141.htm
2647.国際戦略の思考とは
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L9/190512.htm


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